油断した。
風邪ひいた。
インフルエンザだ・・・・・
アルビオンのインフルエンザを持ち込んだらしい。
学院はパンデミック寸前。
ギーシュもキュルケもタバサも私も学院の自室に隔離状態。
ウェールズ様は王になって。
姫様は婚約解消。
ああ、・・・もはや語るきがしなぁい。
ウェールズ様は国に帰ったけど。
噂じゃ姫様もインフルエンザにかかったみたい。
四月なのにインフルってかかるんだ・・・・。
今思えば和解記念とか言ってアルビオンで数日お祝いムードに流されて遊んで、手も洗わないでご飯食べたり、飲んだり、外で寝たりとかアルビオンで好き勝手やってたのが悪かったんだろうなぁ・・・・
頭いあたぁい・・・
喉いたぁい・・・
体の節々がいたぁい・・・。
助けてサイトぉ・・・・・。
第六十九話 海外のウイルスはシャレにならない
「やってくれたな、ご主人サマよぉ・・・。」
サイトはマスクで口を多い、くぐもった声で寝込むルイズの顔を見て一言。
「頭いたぁい・・・。」
「はぁ、・・・・アルビオンのインフルエンザの抗体持ってなかったのな。」
サイトはルイズのベッドに腰を掛け、ルイズの脇に挟んだ体温計をひろい、体温を見る。
「39度、完全にインフルだな、ゆっくり寝てろよ、薬飲んでたら一週間でなおっから。」
サイトはそういうとルイズの洗濯物が入ったかごを手に取ると部屋を出ようとドアに振り替える。
「あ・・・ちょ、まちなさい、・・・洗濯物は私が・・・。」
「今更だろうが、ゆっくり寝てろ。」
アルビオンから帰ってきてルイズのサイトに対する態度は少し変わった。
洗濯物は今までサイトに任せる時はまかせっきりだが帰ってきて以来完全に自分の洗濯物を触らせようとはしなかった。
この歳で自立の芽生えか?
とサイトは考えていたりする。
顔を真っ赤にしながらルイズは洗濯物のかごの山の頂点にかかる自分のパンツを見る。
「う、・・・うううう。」
熱で動けない体を動かそうにも動かない。
「じゃーな、寝てろよご主人サマ。」
サイトはそっけなく言うと、ルイズの部屋から出ていく。
後ろ姿を見てルイズはぼんやりする頭で思う。
はっきり言って自分の気持ち?考え?がよくわからない。
あのアルビオンの任務から帰還してからサイトに対するとどうも自分の頭の中がおかしくなる。
あんなにはっきりとこれまでサイトに対して物が言えたのに、自室に戻ったり、二人きりになると話が進まない。
言葉が見つからない?感情が変?
ルイズはそれが異性に対する思春期真っ盛りのあたりまえの感情ということにまだ気が付いていないようだ。
コンコンと扉がノックされる。
サイトがもう帰ってきた?
ルイズは熱でだるい体を起こし。扉を見る。
この対応もルイズ自身よくわからない。
今まではマンガ本片手に適当にサイトに接したのに、待ってました、という態度で彼を何故か部屋に迎えてしまう。
本当に、この感情はなんなのか。
扉がゆっくり開き、ルイズのよく見る彼女たちの顔があらわになる。
「・・・・・なんで洗濯から帰ったら患者が増えてるんだよ。」
「ごほごほごほ!!!・・・み、みずのみたぁい・・・。」
「ゲホ・・・・。」
ルイズの大きいベッドにキュルケ、タバサがマスク姿で寝ていた。
「ちょ・・・狭いんだけど。」
ルイズはさらにけだるい感じにキュルケを見る。キュルケは疲れ切った顔でルイズを見た。
「お見舞いにきたのよぉ・・・あと男共が部屋に看病ってきてうっとおしいのよ、悪いけどここで治るまで寝させなさいよぉ。」
「部屋の隣がうるさい、あと全部めんどくさい。でもお見舞いに来た。」
キュルケとタバサがけだるそうにサイトを見る。
「「・・・・。」」
無言で彼を見る彼女にサイトは腕を組み。
「いや、看病しろって言いたいんだろ?お前ら全部めんどくさいから俺に看病しろっていいたいんだろ!?」
「「うーーーーーーん、頭いたぁいぃ・・・・。」」
二人そろって言葉を放つとキュルケとタバサはサイトの言葉を無視して布団を顔まで被る。
「はぁ・・・・。待ってろ、水と氷枕用意すっから・・・。」
サイトはあきれ果てた顔でまた部屋を出る。
そういえばギーシュはどうした?
ふとサイトは親友の一人を思い出す。
アルビオンから帰還後、姫様にその功績を讃えられ、ギーシュとサイトが学院で修練に励んでいた学院の自警団のような隊はめでたく正式な国の部隊として認められ、ギーシュには勲章を授与された。
その矢先での病床に伏せるギーシュ。
まぁ彼も男だ、自分のことは自分でできるだろうと通りがかったギーシュの部屋のドアをそっと開く。
「ひ・・・・ひ、・・・・モ、モンモランシー・・・。」
「まぁ、ギーシュ、私のギーシュ、どうしたの?震えて、熱が上がってきたのかしら。」
暗い部屋にベッドで横たわるギーシュの体は革製のバンドでがんじがらめにされ、そのベッドの横にはあらゆる水の魔法薬を両手に持った目の下にクマができたモンモランシーがゆらりと佇む。
「も、もう薬はいいよ、おかげで体が楽になった、さ、さぁ・・・・この拘束具を・・・。」
「だめよ、ギーシュ、あなた・・・ほっておいたら別の女とまたどこかに行くんでしょ?それに今は病気ですもの、私が見てあげないと・・・・・・・死ぬまで。」
「え?なんて言った?今なんて言った??」
キュルケとタバサを連れ、アルビオンに赴いた彼をモンモランシーは完全に浮気旅行と勘違いし、彼がインフルになったのを知った彼女はここ数日、彼に張り付いていた、まるでそれは彼女のほうが病的なように、彼の自由を奪う形のいびつな看護の仕方である。
「ずっと一緒よ、ギーシュ。病気のあなたを一人にしないわ。」
彼女の重い声が部屋に響き、ギーシュはインフルエンザというより恐怖で震えていた。
ドス黒いオーラが部屋を包み、サイトはドアの隙間から唖然とした顔でその光景を見ていた。
「は!!さ、サイト!?たすけ・・・。」
ギラリ!
サイトに感づいたギーシュがベッドから頭だけ動かし、助けを求める。
その瞬間にもはや鬼のような表情のモンモランシーがサイトの顔をにらみつける。
パタン
サイトはドアをゆっくり閉め、そのまま足早にギーシュの部屋を去った。
「いやぁ、・・・ギーシュはうらやましいなぁ!!綺麗で面倒見のいい彼女がいて!!」
そう大きな声でギーシュの部屋の前で大きく独り言を言いながらサイトは足早に水と氷枕を持ち、ルイズの部屋に戻る。
いつか夜中に見た ミザリー という映画を思い出しながらも、頭の中でギーシュの今の現状と照らし合わせるのを必死で否定する。
「お、・・・お帰り。」
ルイズはサイトが真っ青な顔で帰ってきたのに疑問におもいつつ、体を起こしてまた彼を迎える。
「ああ、寝てろよ。あんま体動かすな。」
寝息を立てて寝ているキュルケとタバサの頭にタオルで包んだ氷枕を敷いていく。
「・・・・うん。」
サイトはルイズの頭に敷いていた氷枕を交換し、ふと、彼女に目を合わす。
ルイズもサイトと目が合い、・・・・赤面する。
「?どうしたよ。」
「な・・・なんでもない!」
ルイズは深く顔まで毛布をかぶり、横に寝返る。
サイトは首を傾げ、時計をふと見る。
「んじゃぁ俺は外で洗濯の続きしてくっから、ゆっくり寝てろよ。」
ルイズはうんといいながらどこか寂し気に部屋を出るサイトの後ろ姿を見る。
ルイズは毛布の中でうずくまり溜息をついた。
うまく自分の感情を自分で理解できない。
今まで抱いたことがない感情。
ルイズの心の底ではこれが何なのかうっすらと気が付いていた。
公爵の娘であり、姫の女官、そして虚無の担い手だろうといわれる自分。
いろいろな肩書が彼と出会って増える一方、彼に対する感情も増えていく。
その感情をまとめ、そして一つにすれば自ずとこの彼にたいする感情はひとつしかないだろう。
それは・・・・・
「うーっす、寝込んでるかー・・・まな板娘ぇ。」
「台無しだよクサレ天パー。」
ルイズはお見舞いに来た銀時に辛辣な言葉と氷枕を投げつける。
「インフルエンザねぇ・・・俺は何ともネェけどなぁ。・・・神楽と新八がインフルにかかっちまってよ、お妙に看病頼んで俺は逃げてきたってわけよ、んで?お前もなってんの?インフル、貧乳でもインフルになるんだな・・・・。」
バキ
銀時の頭にタバサの杖がめり込む。
銀時は床をはいずり、流血する頭を押さえ、ベッドに手をかける。
「じょ、冗談だよ・・・・お見舞いにきてやったぜ。」
「バカはいい、インフルも呆れるから。」
タバサは銀時をにらみ、せき込みながら辛辣な言葉を彼に放つ。
「で?・・・そっちはあれからどうなのよ?」
ルイズはせき込みながらアルビオンからの彼らとその敵の動向が気になるのか、やや真剣な面持ちで彼に質問する。
「その話は治ってからだな、・・・お見舞いのケーキここ置いとくから食うんだぞ。じゃーな。」
銀時はそう言い残すと、タバサの杖を頭から引っこ抜き、タバサのとなりに放り投げる。
「・・・とりあえず報酬は感謝するぜ、今は気にせずゆっくり休め。」
やさしく微笑むと銀時は扉を開ける。
「しかしまぁ学院中ウイルスが充満してる気がすらぁ、こりゃぁ俺も移るかもなぁ。」
銀時はそうつぶやくと扉の前をふと見る。
そこには黒い服装のコルベールが目の前にいた。
「よぉ、なんかひさしぶりじゃねぇか。」
「ごほごほ・・・や、やぁミス・ヴァリエールがアルビオンに任務に赴いたと聞いてね。私もお見舞いに来た次第だよ。」
彼にもインフルが移っているのは見てわかる、だが、彼も教師、生徒を見舞うのは当然といったように銀時に話をしている。
「・・・・あれ?なんか服変えたか・・・・?」
コルベールは銀時の言葉に得意げにせき込みながら・・・・
「ゲホゲホ・・・・ああ、風邪をひいたときは昔から薄着でいてね、どうだね?銀時殿、君も裸で闊歩すれば風邪なんて気にならないほどの胆力がつくようになるよ?」
「・・・・ミスタ・コルベール?裸って?服着てるんじゃ・・・・。」
ルイズは体を起こしコルベールの姿を目をこらしよく見る。
「って!なんでお前体中にウイルスまとわせて歩き回ってるんだぁぁぁぁ!!」
銀時の大声でルイズもコルベールの姿に顔面蒼白になる。よく見れば黒い服はぞわぞわとうごめき、黒いウイルスの集合体を彼は着こなしていた。
「ゲホ・・・ゲハ!!ゲヘァ!!・・い、いや、江戸の源外さんの発明を見に行ったついでに夜のかぶき町を案内されてね、・・・そこで一時間二万円でこの服を買ったんだ・・
グハァ!!・・・い、いや・・・これも胆力を養う訓練、別になんともないさ・・・。」
「それインフルとか風邪関係ねぇだろ!!ただの性〇じゃねぇか!!」
「な・・・なに?なんの話してるの?」
青い顔でコルベールの異常な姿、言動、そして口から血を吐く彼にルイズはあっけにとられた顔で銀時に質問する。
「お前は寝てろ!ルイズ、こんな来たねぇ教師にお前のお見舞いなんざさせてたまるかぁぁぁ!」
「あ、これ、名古屋に寄ったときのお土産でういろうなんだが・・食べるかい?」
そこには黒いウイルスにまみれたお土産袋がコルベールから銀時に手渡される。
みやげの名前は銀時の目の前でウイルスに汚染され、ういるすと変わっていく。
「食えるかぁぁぁぁ!女子生徒の部屋で裸でお見舞いに来る性〇教師からのお土産なんざ渡せるかぁぁぁぁ!!」
コルベールはそう銀時にすっぱり言われ、銀時に引きずられながらルイズの部屋を後にする。
「な・・・なに?さっきの・・・?ゲホゲホ・・・」
「ああ、もう気にすんな、お前は大丈夫、何も見てねぇ。」
銀時は息も荒げに扉を閉める。
しかし、またその扉をノックする音が銀時の背中越しに聞こえる。
「あ、・・・また誰かお見舞いきた?」
「誰だよ・・・ったく、またあの変態教師なら追い出して。」
「ルイズさん!アルビオンに行って来たんですか??体はなんともないですか?アルビオンのインフルエンザはしつこくて有名なのでお見舞いに来ました!」
鈴のなるような声で金髪と巨乳を振り乱し、浅黒い体と顔で彼女、ティファニアがルイズの部屋を訪れる。
「お久しぶりです!ティファニア・ウエストウッド・ウィル・〇ミスです!」
「お前は誰だぁぁぁぁ!!!ウィル・〇ミスなんてこの学院にいねーだろぉぉぉぉ!」
※顔はヅラのウィル・〇ミスで姿形はティファニアを連想してください。
銀時は目の前にいる顔と体系が合わない化け物を見て戦慄し、ルイズと一緒に悲鳴を上げる。
「ぎゃああああああ!ティファニア!?どうなってんの?」
「む!、落ち着いてください!アルビオン編で出番がないからと言ってこれからモブに移る気はさらさらありませんよ!?こう見えても虚無の担い手の一人、この学園中にはびこるインフルのウイルスを私が吸収し、みなさんを助けに回ってるんです!」
キランとポーズをとり、ナチュラルハイになっているティファニアに似合わぬウィル・〇ミスの顔。銀時は背中に寒気を感じる。
「見ていてください。虚無の力の一つ、 吸収 を!」
すう、と息を吸い、ティファニアは手を前に組み、呪文を唱える。
「イエス!ウィーキャン!打倒!トラン〇!打ちのめせ共和〇!!」
「ギリギリだよ、・・・。」
銀時のつぶやきにもティファニアは息を大きく吸い込む、みるみるうちにこの部屋に充満したウイルスの粒子を彼女の口を介して吸い込まれていく。
その光景を見ながらルイズの体、キュルケも目を覚まし、タバサの体もだんだん楽になっていく気が三人揃って感じた。
「す、すごい、体が嘘みたいに楽になるわ!」
キュルケが驚きの声をあげ、ベッドから這い上がる。
「楽になった。」
「すっごいわ!ティファニア!!インフルがどんどん治ってく気がする!!」
ティファニアはすうううと息を吸い込み、そのウイルスの粒子をすべて吸い込みつくした。
「・・・・・・・。」
銀時はどうもいやな予感がしていた。にっこりとルイズ達三人に向かって微笑むティファニアの表情を見ながら迫りくる混乱の影を感じる。
「げ。」
「「「????」」」
げ、と一言発したティファニアは笑顔がだんだん崩れていく。
「限界。」
ドヴァァァァァァァァァと音を立て、ティファニアの口からウイルスの粒子がタバサやキュルケ、ルイズに津波のように押し寄せる。
ルイズの眼前にはウィル・〇ミスになったキュルケ、タバサ、銀時が移る。
もはや暴走を止められないインフルウイルスの粒子は宿主の姿形を変え、ルイズを見つめていた。
「イエス!ウィー!キャン!」
ルイズに向かってそう白い歯を見せるウィル・〇ミス達、ルイズは顔面蒼白になり、ベッドから転げ落ちる。
「いやああああああ!」
ふとルイズは自分の顔を鏡で見た。
そこにはキュルケ達と同じく自分の顔もウィル・〇ミスになった姿が映し出されていた。
「うあああああああああ!!!」
絶望の声を悲鳴と一緒に叫び、ルイズは頭を抱えて天井を仰ぐ。
「んがはぁ!!」
変な声をあげ、ルイズは自室でベッドに一人、体を起こして目を覚ました。
気が付けば夜中、あたりには椅子に眠りこけるサイトの他にはだれもいない。
「・・・ゆ、ゆめ・・・・?。」
ルイズは悪夢を見ていた、自分の顔もウィル・〇ミスではない、鏡を見てほっとする。
サイトの顔も念のため確認する。
異常なし、いつものサイトだ。
はぁ、と溜息をつき、ルイズはサイトの自身の看病の跡に気が付く。
体はもう楽だ、それに相反してサイトは疲れ切った顔でぬれたタオルを握り、椅子にうなだれて寝ている。
溶けた氷枕、何度も変えたであろうぬれたタオル。
水が飲めない自分に水差しで水をやっていただろう水差しが枕のそばに転がる。
思えばこの使い魔は何時でも自分のそばにいた。
過去を克服し、あのアルビオンでも正面から異国のテロリスト相手に戦い、勝ってきた。
わがままも自分の容赦ない命令も、真剣に彼は立ち向かって成してきた。
ルイズはアルビオンでの彼の言葉を思い出す。
一人にはさせない。
それは今もこうして看病する彼の姿を見ていれば嘘をついてなどいないのは明白だろう。
自分は基本、素直になれない、でも、この心のもやもやと、なぜ?なぜ?はインフルと一緒に捨ててしまおうと思った。
「ありがとうね、サイト、・・・・ご、・・・ご褒美よ。」
ルイズはサイトの口にそっと自身の唇を重ねた。
ほんの一秒に満たない彼へのキス、ルイズは起きない彼の表情を見てやさしく微笑むと背伸びをして着替え始める。
夜中だがあれだけ眠ればこのまま寝ることもできない、まずはお風呂に入ろう、そう考え、ルイズは汗にぬれた服を脱ぎ捨て、着替えを完了し、お風呂に向かう。
扉を開けるのは正直言うと名残惜しい。
だが、あせる必要はないと思う。
この気持ちがサイトに対する恋心と解った彼女はサイトの寝顔を振り返って一瞬見るとまた優しく笑った。
焦る必要はない、だって彼は私の傍にいつもいるから。
そうルイズは心につぶやき部屋を出る。
アルビオンの死地をかいくぐり、日常はまた戻ってきた。
彼女の心に少しの変化をもたらして。
日常編スタート。
アルビオン編ご拝読いただきありがとうございました。
日常編はこの話からまたスタートします。
銀魂のあんな話、こんな話を元に創作していくのでまた立ち寄ってくださいね~。