ゼロの使い魔と万事屋銀ちゃん   作:銀桃

70 / 80
トリステイン魔法学院。

草木も眠る丑三つ刻・・・・。

一日の授業を終え、学生達は寮で眠る。

ここはその一室、ルイズの部屋。

サイトはルイズと一緒にベッドに入り、寝息を立てる。

その横で同じ様にルイズも眼を閉じ、眠る。

アンティーク時計の秒を刻む音だけが部屋に木霊する。







「眠れない・・・。」




ルイズは血走った眼を開き、いきなり声を発する。

明日は月曜、寝なければ授業に悪影響だ、早く寝たい、早く寝たいと思えば思うほどルイズの眼は冴えていく。

「全然眠くない、全く持って眠くない、まんじりとも眠くない・・・・。」

毛布を蹴とばし、ルイズは仰向けのまま上体を起こし、まっすぐ血走った眼で虚空を見る。






眠れない・・・・。


第七十話 よく寝ても胸は育たない。

サイトは心地よく眠っていた。

 

アルビオンでの戦いの疲れも最近になって癒えてきている、それは十分な睡眠と食事のせいでもあるだろう。

 

過去を克服した精神的な余裕もあるのか最近は本当によく眠れる。

 

それに自分のご主人様のベッドは寝心地がいい。

 

そんなサイトはふと体が揺さぶられるのに気が付いた。

 

「・・・ん。・・・んあ?」

 

サイトはゆっくりと夢の中から醒めるように眼を開き、目の前の人物の顔を見る。

 

 

「・・・・・眠れないんだけど・・。」

 

「・・・・あ?」

 

夢から覚めたら目の前には血走った眼のルイズの顔、サイトは薄暗い部屋でそのホラーチックな光景に驚くことはなく、彼女の顔を間近で見ながら寝ぼけ眼で応答する。

 

「眠れないんだけど。」

 

「・・・・・あ、そう・・・・・・・・・・目閉じてたら寝れるだろ?」

 

ルイズはサイトの肩を鷲掴みにし、ゆさゆさと何度も揺らす。

 

「眠れないんだけど・・・・・ねぇ、眠れないんだけど、眠れないんだけど?」

 

「だぁぁぁぁぁ!うぜぇぇぇぇっ!!何嫌がらせしてんだよ!」

 

たまったもんじゃないサイトはルイズの彼を揺さぶる嫌がらせから彼女の手を振り払い、上体を起こす。

 

「何?・・・何してんの?」

 

「眠れないんだけど・・・・。」

 

顔面を間近に寄せ、ルイズはサイトにさっきから同じ言葉を発している。

 

「眠れないって、お前、俺にどうしろって言うんだよ。」

 

「あんたのベッドのそっち側寝やすそうね、ちょっと変わりなさいよ。」

 

「いや、ベッドの寝る場所変えても同じだろ・・・何したいんだよ。」

 

「どきなさい、邪魔・・・。」

 

「うおげ!!」

 

ベッドからつまみ出されたサイトは床に転び、ルイズはサイトの寝ていた場所に仰向けに寝転び、毛布をかぶる。

 

「ってぇ・・・・位置変えても同じだろうが・・・。」

 

ブツブツ言いながらルイズの寝ていたベッドの位置にサイトはしぶしぶ寝ころび、同じく毛布をかぶる。

 

時計の秒を刻む音が木霊し、サイトは落ち着いた睡眠の時間が戻るだろうと再び夢の中に戻る。

 

 

「眠れないじゃない。」

 

「結局同じじゃねぇかよ!」

 

二人は上体を起こし、毛布を取る。ルイズは眼を見開くとサイトを見る。

 

「そっち側寝やすそうね、代わりなさいよ。」

 

「だから変わんねーよ!!お前さっきからなんなんだよ!!」

 

「全然眠れないのよ、どうなっちゃったの私・・・?」

 

「はぁ、・・・寝れないんなら羊でも数えてろよ、そのうち眠くなるから・・。」

 

サイトはそう冷たくあしらうようにルイズの質問に答え、毛布をかぶる。

 

「俺明日早いんだよ、最近朝の修練ギーシュとしてなかったし・・・。」

 

「・・・・目閉じてても全然眠くならないのよ、寝よう寝ようとしてもなかなか眠りに入らない、・・・・考えて見なさいよ、寝てる時って瞼閉じてるじゃない、寝るって眼を閉じてるだけでよかったはずじゃない、じゃぁ目玉の位置ってどこに持っていけばいいの?腕ってどこの位置に置いとけばいいの?脚って組むんだっけ?そのままだっけ?仰向けだっけ?うつ伏せだっけ?明日の朝ごはんなんだっけ?明日の授業の一限目なんだっけ?人はなんで眠るんだっけ?人はどこから生まれてどこへ行くんだっけ?このクロスオーバーはいつまで続けるんだっけ?」

 

「やめろよぉぉぉぉ!!こっちまで寝れなくなるだろうがぁ!!」

 

ルイズの質問攻めにたまらなくなったサイトが毛布をめくり、再び上体を起こす。

 

「眠れないんだけど・・・。」

 

「・・・・・・はぁ、そりゃそうだろ、お前インフルにかかって一週間授業自粛してたろ?体調悪かったのは始めの四日間、残り三日は一日ぐーたらぐーたらしながら深夜のテレビ見ながら昼夜逆転生活してたろ?体のサイクル夜行性になってんだよ。」

 

「・・・・。」

 

寝れない理由は不規則な生活と知ってルイズはぐうの音も出ない。

 

「つーかもう夜中の三時じゃねーかよ、おまえ、こんな時間に起こされたら始祖でもぼやくぞ、 吾輩の辞書に、睡眠三時間はない、とか言うぞ?」

 

「始祖関係ないでしょ・・。」

 

「眠くねーんならそのへん散歩してこいよ。体使ってないから眠くならねーんだよ。」

 

ルイズはサイトにそういわれ、それもそうか、とベッドから降り、ネグリジエのままで部屋の外に出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜中に寮内や外に出るのは基本は規則に反している、寮内を歩き回り、サイトの言う通り、ルイズはとろーんとした表情で眠気が襲ってくるのを感じる。

 

いい感じだろう、このまま寮内をぐるっと回って自室に帰れば二時間くらいは眠れる。

 

そう思いながらふと、キュルケの部屋の扉から明かりが漏れ、半開きになっている。

 

ルイズはなんとなくその部屋の中を覗いてみた。

 

 

 

 

「ひい、ふう、みい、・・・えーっと先輩の男子から貰った指輪をヤ〇オクで売ったらこんだけかぁ、・・・あ、ヴィエリから貰ったバッグも売ろうかしら、まぁまた今度ねだったらあいつなら買ってくれるでしょ?」

 

指輪にバッグ、そして手のひらにはお金を握り、数えながらパソコンの前で独り言を言いながら男心を金に換算し、キュルケはニヤニヤとパソコンのモニターを見る。

 

「うひひ、まぁ一週間で男共から金巻き上げてこのブランド ビッチ の財布とバッグのセット手に入れてやるわ、・・・・あ、新入生の男子も結構な名門な子が数人いたわね・・・明日のスカートもうちょい短めにして廊下歩いてみようかしら?」

 

ルイズはその光景を見ながら本人に聞こえんばかりの大きな舌打ちをし、その場を去った。

 

「!!!!だれかいるの???まさか聞こえてた???」

 

キュルケは一人で焦り、部屋の外に出るがそこにはもうルイズの姿はない。

 

 

 

 

 

またルイズの歩く先の扉から明かりが漏れている。

 

そこはモンモランシーの部屋。

 

あのキュルケの自室での言動、人間は人の見ていない所で本性が明らかになる。

 

好奇心からかルイズはそっとモンモランシーの部屋を覗く。

 

コポコポ・・・

 

試験管にビーカー、それを手に取りながらモンモランシーはルイズに負けないくらいの血走った目でそれらの実験道具や液体を眺める。

 

「惚れ薬の材料はそろったわ、・・・後はギーシュに飲ませるだけ。アルビオンにキュルケとタバサを連れて旅行に行ってたらしいけど、この薬であいつの心は私の物よ、・・・・・ふ、ふふふ・・・・・あはははは・・・。」

 

「・・・・・。」

 

ルイズは狂喜に満ちたモンモランシーの笑みをそっと見なかった事にしてその場をそーっと去って行った。

 

ここで出て彼の濡れ衣を晴らすこともできるだろう。

 

しかし、ルイズはそれをしなかった。

 

だって関係ないから。

 

 

 

 

 

ここまで来たらルイズは次に一旦外に出て外の空気を吸おうと思った。

 

夜空がきれい、そう考えながら深呼吸をする。

 

カーン

 

カーン・・・・

 

何かを撃ち付ける金属音が響くのが聞こえた、その音の聞こえる方にルイズは脚を忍ばせ近寄る。

 

 

 

「・・・・死ね、・・・・死ね、・・・私と銀さんの仲を邪魔する女は死ねばいい・・・。」

 

カーン・・・カーンと広場の木に藁人形を撃ち付ける後ろ姿、その姿は見覚えのあるメイドのシエスタだった。

 

藁人形にはエレオノールの顔写真。

 

「滅びろ、・・・・滅びろ・・・。」

 

頭に火のついた蝋燭に白装束、虚空のような瞳でシエスタは丑の刻参りをしていた。

 

「・・・・・・誰!!?」

 

シエスタは気配を感じ、後ろを振り返った。

 

そこにはだれもいない。

 

「・・・・気のせいか、・・・これを見られたからにはミス・ヴァリエールでも・・・。」

 

ルイズは顔を真っ青にし、物陰に隠れ、その場から素早く立ち去る。

 

銀時と彼女と自分の姉に何があったのかはあまり知らない、知りたくもない。

 

そしてこれからは少し、ほんの少し、シエスタとは距離を開けようと思った。

 

 

 

 

 

 

ルイズはそろそろ自室に帰ろうと思いながらふと食堂のぼんやりとした明かりが眼に入った。

 

ここまでいろいろ見て来たんだ、と思いながらルイズは食堂の中、厨房にこっそり脚を踏み入れる。

 

 

 

 

 

「えーっと・・・・ここを切って、いや、難しいなぁ・・・。」

 

そこにはこんにゃくと包丁を片手に全裸で調理?をするギーシュの姿があった。

 

蒟蒻に切れ目を入れ、あれでもない、これでもない、と首を傾げている。

 

ルイズには彼が何をしてるのか、ナニをしたいのかは理解できない。

 

だがこれだけは言える。

 

次、食堂で蒟蒻が出たら残そう・・・。

 

 

 

 

 

自室に帰ったルイズははぁ、と溜息を吐いた。

 

なんだかいろんな、余計な物まで見た気がする。

 

ルイズはベッドに横たわると、やっぱり眠れないので天井をぼーっと見る。

 

「・・・・寝れるか?」

 

ルイズに背を向けているサイトの声。

 

ルイズは首を振り。

 

「全然寝れない、・・・・もういいわ、このまま起きて授業出る。」

 

力なくそう言い放つルイズにサイトははぁ、と溜息を吐き、ルイズの方に振り向く。

 

 

 

 

「・・・・え、ちょ、ちょっと!!あ、あ、あんた何して・・・。」

 

サイトは寝ころぶルイズを自分に抱き寄せ、頭を撫でる。

 

「俺が小さい時、寝れない時に三郎さんにしてもらった事だよ。・・・はよ寝ろ。」

 

「・・・・・・。」

 

頭を他人に撫でられると不思議とルイズの瞳は重くなる、サイト自身はこれがやらしい事でもエロイ事でもないと考えての行動なのだろう。

 

ルイズは最初、サイトの行動に胸をドキドキさせ、恥ずかしいのか顔を真っ赤にさせていた。

 

だがだんだんと眠気と安堵が彼女を包み込む。

 

サイトはルイズを抱き寄せたまま彼女の頭を撫でる。

 

寝てしまうのはもったいないかもしれない、そう思いながらルイズは夢の中に誘われる。

 

 

 

 

 

翌朝・・・・。

 

 

「サイト!もう朝だよ。修練・・・・。」

 

ギーシュはルイズの部屋の扉を開け、固まる。

 

そこには抱き合いながら眠るサイトとルイズの姿。

 

ギーシュは無言のままその場に石の様に固まり、その光景を見つめる。

 

「あら、ギーシュ、どうしたの・・・・?」

 

キュルケがルイズの部屋の前で固まるギーシュの後ろから部屋の光景を見る。

 

「・・・わお、大胆・・・。」

 

ルイズのネグリジエがはだけ、ほぼ半裸の上体で寝息を掻きながらサイトに抱かれているのを見てキュルケはにんまりと一言つぶやく。

 

 

キュルケが銀時達を巻き添えにしてルイズに恋愛指南をするのはそう遠くない話だった。

 

部屋の鍵はちゃんとかけましょう。

 

 

 




次回予告!!(書く事ないから・・・)

タバサ、という少女の話。

本名、シャルロット・オルレアン。

彼女の本名はキュルケしか知らない。

好きな事は寝る事と、食べる事、そして読書。

彼女は寡黙でキュルケ以外には心を開かない。

いや、キュルケにも完全には心は開いていないだろう。

彼女は眼鏡をかけている。眼鏡、これがないと生まれつき、視力に難がある彼女は行動が著しく損なわれる。

彼女には謎が多い。

その謎は誰にも明かせられない。

明かすことは許されないから・・・・。


次回!メガネを選ぶときはフレームよりレンズに金賭けろ。

シリアスではない、しばらくギャグ続きます。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。