チェックメイト~戦略の天才はISで何を求めるのか~   作:DRINK

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2.入学先は……IS学園!!

 

 

とある私立の多目的ホールの中で、複数の高校の受験が一斉に行われる。その中には俺達が受ける藍越学園もあった。

 

 

_____のだが、

 

 

 

 

やや薄暗い廊下に2人の影が動く。その動きに合わせて、足音が連続して鳴り響いた。早いリズムで刻まれるそれは、いかに本人達が焦っているのかが伺える。しばらくすると、その内の1人がおもむろに口を開いた。

 

 

 

 

 

「なぁ龍一、本当にこっちで合ってるのか?進んでいく度、人がいなくなってくんだが……」

 

 

「……」

 

 

「あからさまに目を反らすな!?」

 

 

 

「しょうがねぇじゃん!!案内図見ても意味わかんないし、誰かに聞いても理解出来ないんだからさ!?」

 

 

「まさかの逆ギレ!?」

 

 

 

焦りとストレスからか、龍一は最早八つ当たりの様に一夏へ怒りをぶつける。それもその筈、この多目的ホールは『ここはテロ対策でもしているのか?』と疑問に思うくらいに複雑な内部構造をしていたのだ。

 

例え、道を聞いても全員が理解出来るとは限らないだろう。断じて、龍一が方向音痴なのではない。理解力が足りなかった理由でもない。そうであってくれ。と龍一は心の奥で言い訳をしつつ、更に暗い廊下へと進んでいった。

 

 

しかし、そんな2人にも1つの兆しが見えた。廊下の奥には扉があったのだ。その扉には比較的新しい紙で『関係者以外立ち入り禁止』と書いてあるため、試験会場では無いのだろう。だが、そんな大事な部屋だ。多少の職員の出入りはあるのかもしれない。そこで道を改めて訪ねれば、ギリギリ受験には間に合うかもしれない。2人は顔を見合わせてから、藁にもすがる思いでその扉へ走った。そして、その扉の向こう側にあったのは_____

 

 

 

 

「「あ、IS?」」

 

 

 

 

IS、通称インフィニット・ストラトスと呼ばれるものだ。何でも、篠ノ之束という天才科学者が開発した最強の兵器らしい。しかし、女性にしか使えない代物のため、男女のパワーバランスが一変してしまった原因でもある。

 

 

この多目的ホールではIS学園の受験も執り行われると龍一達は小耳に挟んでいた。2人とも「どうせ、俺等には関係ないからいいかな」と思って今の今まで忘れていた様子だったが……

 

 

龍一はそんな現代の小学生でも知っている知識を掘り起こしながら、その扉の奥へ更に歩みを進めた。後ろから一夏が止めようと声をかけるも、耳を傾けようともしない。結局、諦めたのか一夏も龍一の後を追いかけた。

 

 

龍一に取っては不思議な感覚だった。吸い込まれる様に体が勝手に動く。頭が真っ白になりながらも一歩、また一歩とISに近づく。そして、とうとう龍一は立ち止まった。そこには二台のISがある。

 

 

そして、龍一はそのISへゆっくりと触れた。瞬間_____ISは反応した。

 

 

 

 

「うわぁ!?なんだこりゃ……」

 

 

龍一の隣で並んで立っていた一夏は驚いて盛大に尻餅をつく。その時、一夏も別のISへと触れた__触れてしまった。

 

その途端、一夏の触れたISも光に包まれる。一夏は困惑した。いや、この状況になったならば誰でも困惑する事だろう。それに比べれば幾分、一夏の方が冷静だった。

 

 

 

「こら!君たちはここで何をしている!!」

 

 

ちょうど良いタイミングで現れたのは3人のIS学園の職員だ。そして、その3人は龍一達の下へ駆けつけた途端、唖然とする。

 

 

「うそ!男なのにISが反応している!?」

 

 

「しかも、2人も!?」

 

 

 

 

一夏は自分が何をやらかしたのか、これから何が待っているのかを理解し、顔を真っ青にさせていた。一方の龍一は未だにピクリとも動こうとしない。しかし、絶望の色を浮かべている理由ではなかった。むしろ、笑っているのだ。

 

 

この時、龍一は初めてチェス以外に興味を持ち、その出会いに感動した瞬間だった。

 

 

この事は世界的に報道され、この2人の話題が巷を賑わせる事になるのは遠い未来では無い。

 

 

龍一が中学三年生の頃。藍越学園、受験日当日の出来事である。

 

 

 

 

 

 

____そして、四月。

 

 

 

龍一side

 

 

 

拝啓 お母様

 

 

桜の花も咲きそろい心の浮き立つ季節となりましたが、お母様の事ですから頭でも打っていない限り、お変わりなくお過ごしのことと存じます。個人的には、頭を強く強打する事をオススメ致します。てかしろ。してください。

 

最近は自宅へ赴く事も出来なくてすみません。今度近いうちにでも、足を運びたいと思います……と言いたいところですが、どうやらもうしばらくは行けそうにありません。

そして、誠に突然ながらとある高校に受かったことをこの場を借りてご報告致します。何処の高校かは聞かないで下さい。無言でテレビのスイッチをつけて頂ければすぐにわかります。

お母様の事だから、どうせにやにやふ抜けた笑いでも浮かべているんでしょ。あぁ、そうだろう!笑えばいいさ!!そのまま馬と鹿に蹴られて死ね!!馬鹿、ばーか!!!

 

 

……ご、ゴホン失礼。

 

つまり、何が言いたいかというと____

 

 

 

 

______俺は生まれて初めてパンダの気持ちが理解出来ました。

 

 

 

 

 

パアァァン!!

 

 

 

「何時まで現実逃避している。さっさと自己紹介せんか!」

 

 

 

 

 

今は亡き母親(という事にしたい)に脳内電波を送っていたところで、俺の意識は現実世界へと引き戻された。関羽(千冬さん)が持つ出席簿(聖剣エクスカリバー)から放たれる龍殺しの一撃で、その名の通り俺は尊い犠牲となったのだが……因みに、隣の席の一夏は自分の自己紹介の時にあの世へ逝ってしまったようで、横目で見ても微動だにしていなかった。ただのしかばねのようだ。

 

 

さて、ふざけるのはここまでにしてまともに自己紹介をしようと席を立ち上がる。

 

 

「て、天童 龍一です。よろしくおねがいします。」

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

ヤバイ、勢いで立ったものの何も考えて無かった。自己紹介って何言えばいいんだっけ……好きなチェスの定跡?自分のレーティング?あれ、そんなんだっけ!?このままではボッチや一夏と言う不名誉極まりないレッテルが貼られてしまう!どうしよう!?ええい、こうなったら!!

 

 

俺は思いっきり息を吸い込んで高々と宣言する。

 

 

「以上で__ったあ!?」

 

 

その宣言を言い終える前に出席簿は再び脳天へ振り下ろされた。あ、あの野郎…何時か絶対に仕返ししてやる!

 

 

 

「お前もか馬鹿者。一夏ならまだしも、お前は何か1つくらい言えるだろ。」

 

 

 

 

「は、はい…天童 龍一です。チェスが得意です。一年間よろしくお願いします。」

 

 

 

「ったく…出来るなら初めからそれをやれ。」

 

 

出来たらとっくにやっている。そんな些細な抵抗を心の中で呟きながら、意気消沈した形で腰をおろす。周りからくすくすっと上品な笑い声が聞こえる。それが俺の、いや俺達のナイーブな心に更なる追い討ちをかけたのは言うまでもない。そしてこの時、俺達が思う事は同じだっただろう。

 

 

「「これは…想像以上にキツい……」」

 

 

 

 

無情にもチャイムが鳴り響く。それが今の2人には何処か遠くに聞こえた。SHRが終わり、教師の山田真耶と織斑千冬は職員室へ向かうため立ち去る。ボッチや暗いヤツのレッテルは回避したのだろうが、それよりも何か大事な物を一気に失った気がした。

 

とりあえず、席を立ち上がり一夏のところへ向おう。そして、しかばねと化したままの親友へと声をかけた。

 

 

「よう、生きてるか?」

 

 

「あぁ、何とかな……ってか俺達は珍獣かよ。見てみろ、後ろの扉に他クラスの人まで除きに来てやがる。」

 

 

「ははは、珍獣ってのはあながち間違いじゃないかもな。特にここではな。」

 

 

 

一夏の言葉に苦笑いで返すしか方法はない。早くも今後が心配になってきたところで、俺達のもとに1人の少女がやって来た。大和撫子という言葉が似合う風貌をしたその少女は俺達の見知った顔だった。

 

 

「よっ箒。久しぶり!」

 

 

「あぁ、龍一も元気そうだな。ちょっと一夏を借りてっていいか?」

 

 

「別にいいぞ。ホレ行ってこい一夏。積もる話もあるだろう?」

 

 

「いや、そしたら龍一も……」とか何とか聞こえるが、俺はもう聞く耳を持つ気はない。まぁ、それが箒のためだしな。そんなこんなで一夏と箒を見届けた後、俺は再び席へ座った。因みに、リア充爆発しろ!とはならない。そんなことしたら、俺の古き親友である五反田弾に申しわけない。と言うか気の毒である。

 

 

「ほら見て!あの子が1人目の男子IS操縦者よ!」

 

 

「何でも去年、チェスの世界大会で優勝したらしいわ!」

 

 

「うそ!?知的なイケメンね。私、話しかけて来よっかなぁ♪」

 

 

「ちょっと、抜け駆けする気!?ずるいわよ!」

 

 

 

 

 

一夏が立ち去ってから、妙に周りの声が大きく聞こえた気がする。ってかめっちゃ聞こえる。この気まずい雰囲気に思わず頬を引きつらせ、幼馴染みの2人の帰りを1人寂しく待った。

 

 

 

そんな人の気持ちなど知ってか、知らずか、本人達は授業の始まるギリギリまで帰って来なかったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※レーティング
チェスの強さを数値化したもの。
初心者は500~1000辺り。
日本代表レベルは2300以上。
世界トップレベルは2800程度。



何だか「こんなの一夏じゃない!?」的な感じになったような気がします。


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