IS 幽霊の笑顔   作:リディクル

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前編最後の話にして、後編へとつながる幕間と呼べる話。

短編よりもこちらを先に書いたほうがいいと考えたため、予定を変更してこちらを先に投稿しました。

とても短いのでご了承ください。
それではどうぞ。

※彼に関してはちょっと古典的なSFみたいなからくりを使いました。








 

 

 

 薄暗い部屋の真ん中に、柩のような装置が置かれている。側面からは何本ものコードが伸びており、その全てが部屋の壁の至る所とつながっていた。まるで、映画に出てくるような光景の真ん中に、スコール・ミューゼルは立っていた。

 彼女の視線は、柩のような装置に注がれている。その眼差しは、まるでその中から出てくる何かを待ちわびているようにも見えた。

 どれほど時間が経っただろうか、突如として響く電子音と、空気が抜ける音。それらの音が鳴り止むと、ゆっくりと装置の蓋が開いていく。

 その中から、ある人物がゆっくりと出てくる。白い病院着のような衣服を身に付け、おぼつかない足取りで床に足を付けた黒髪の少年。その顔は、何ヶ月か前に男で最初にISを起動した人間のものと全く同一のものであった。

 

 ――織斑一夏である。

 

「おはようございます、ボス」

 そう言って、スコールは織斑一夏に向けて笑みを浮かべる。それに対応するように、織斑一夏もまた、笑みを返す。どこか儚げで、弱々しい笑みだ。

「おはよう、スコールさん」

「お加減は大丈夫でしょうか?」

「うん、記憶の方も無事に転写できているよ」

 スコールの問いに応えた一夏は、彼女に近づこうと足を踏み出そうとした。しかし、ふらつき倒れそうになる。それをスコールがすぐさま近づき、体を支える。

「無理はなさらないでください、今まで眠りについていたのですから」

 そう言って、スコールは心配そうな顔をしながら、一夏の頬を撫でる。それをくすぐったそうに受け入れながら、一夏は口を開く。

「ごめん。でもやらなくちゃならないことがあってね」

「更識楯無のことですか?」

 スコールの言葉に、一夏は頷く。そんな一夏に苦笑しながら、スコールは口を開く。

「まだあちら側のあなたが死んでから、3時間しか経っていないんですよ?」

「確かに、まだ対して時間は経っていないかもしれないけど――」

 

 今もなお、彼女は苦しんでいるから。

 

その言葉に、スコールは呆れたような表情でため息をついた。

「全く、あなたは()()()()()()()()から頑張りすぎですよ」

「今日の午前9時以降の記憶はないからね」

 その言葉とともに、一夏はスコールと目を合わせる。スコールが見た彼の表情は、真剣そのものだった。

「最後にログを取ったのはその時だから、その後の彼女を知らないんだ」

 だから、そう言って、一夏は言葉を紡ぐ。

「早く手を打たないと間に合わなくなる。そんな気がするんだ」

 一夏の言葉を聞き、暫しの間、スコールは考える。はっきりと言ってしまえば、自身にも、今抱きとめている自身が敬愛しているボスにも利益がない。だが、ボスはそれが分かっていても、更識楯無を守る手を打つのだろう。言葉だけでは止まらないことを、スコールは知っている。

 だからこそ、スコールが先に折れたのは、必然であった。

「――分かりました。構成員を使い、手を打ちましょう」

「ありがとう、スコールさん。俺のわがままを聞いてくれて」

「いいのですよ、私はスコール・ミューゼルなのですから。そして――」

 私は、あなたと共にあるのですから。その言葉とともに、一夏を抱きとめていた手を移動させていく。片手で腰を支え、もう片方の手で彼の手を取る。まるで、紳士が淑女をエスコートしようとしているかのようだ。

 そうしてスコールに支えられながら、一夏はゆっくりと歩き出す。小さく、しかし一歩一歩確実に、二人で部屋の出口へと歩いていく。

 

 やがて、扉の前につくと、スコールがパスワードを打ち込み、扉を開く。暗い部屋に、白い光が差し込んでくる。見慣れた通路と、見慣れた蛍光灯、そして無機質な白い廊下も、2()()()と変わらずに、一夏を出迎えた。

 ――この部屋から出れば、もう自分はIS学園の織斑一夏ではなくなる。亡国機業(ファントムタスク)首領の織斑一夏に()()のだ。それが、織斑一夏という存在に課せられた運命なのだ。そしてその運命を、自分が違えるわけにはいかない。

 脳裏に浮かぶ、楯無の笑顔。彼女が自分の最後の瞬間にどのような表情をしていたのかは、今となっては知る術はない。だからこそ、自分は振り返らない、振り返ってはならないのだ。

「スコールさん」

 一夏がスコールを呼ぶ。その声に、スコールは反応する。

「なんでしょうか、ボス」

 その声は、慈愛に満ちたものだった。おそらく、今の一夏の心境を理解しているのだろう。そう考えたからこそ、一夏は覚悟とともに、言葉を口にする。

 

「これから、忙しくなりますね」

 

 その言葉とともに、一夏は足を踏み出した。

 楯無の笑顔が、未だ脳裏に残っている。だが、一夏はそれを無理に振り払おうとは思わなかった。何故ならば、彼女の笑顔こそが、織斑一夏という存在がそこに在る目的であり、また存在した証明になると、今もなお信じているからだ。

 存在を証明するものがある限り、そして存在する目的を見失わない限り、彼は迷うことなく自分の道を進むことができるのだ。

 

 

 

 

 

 ――だからこそ、彼は幽霊となれた。

 

 

 

 

 




これにて、前編は終了です。

本当に賛否両論な内容の作品ですが、これからも読んでくださると嬉しいです。

最後になりましたが、ここまで読んでくださって誠にありがとうございます。
これからも、どうぞよろしくお願いします。



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