リディクルの名状しがたい短編集   作:リディクル

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連載候補だった一夏×簪もののプロローグだったものです。
よければどうぞ


世界よ、これが我々の総意だ

 

 

 薄暗い会議室のような場所に、人影が複数存在していた。

 その誰もが自身の姿を隠し、素性を知られないようにしていた。まるで、フィクション作品に出てくる秘密結社の会合のような様相であった。しかし、異様なのはその雰囲気だけではない。会合の参加者であろう彼らが発する言動も、人知を超えたものであった。

 

「フィーヒヒフィヒヒ! 一夏×簪! 一夏×簪!」

「イッピーがぁ、かんちゃんにぃ、乙女ゲー顔負けのセリフを吐くんだよぉ」

「一夏×簪は、主が我々に与えてくださったひとつの真理であり、それこそが我々人類の誠にたどり着くべき理想郷なのです」

「御託は後だァ! 二人を絡ませろぉ!」

「ヒャッハー! 活きのいい一夏×簪だァ!」

 

 ――否、既に人知を超えたあとの、踏み入れてはならない領域に到達しそうだった。

 そんな混沌の災禍に飲み込まれた会議室の中で、一人の影が右手を上げ、口を開く。

「――静まりなさい」

 その声を聞いたとたん、今まで騒いでいた者たちは嘘のように静まり返った。その様子を確認した影は続ける。

「席に着きなさい」

 影たちは一糸乱れぬ動きで、全員が席に着いた。全員が座ったのを確認し、最後に騒ぎを収めた影が自らの席に着く。その後、どこからともなく現れたふたりの影が、順々に水が入ったコップを配っていく。

 最後のコップが参加者に配られたのを確認した影の一人が、給仕役の影二人に手を挙げる。それを確認し、給仕役の二人は奥へと下がっていく。

「では」

 リーダー格らしき影が、言葉を発する。

 

「定例会を始めましょう」

 

 その言葉とともに、その会議室にいる全員がかぶっていたフードを脱ぐ。フードの中から出てきたのは、金、銀、ピンク、青、黒、茶などの色とりどりの髪の毛と、多種多様な国籍であることがわかる顔の数々だった。

「まず、国際IS委員会への()()()がどうなっているのか教えてちょうだい」

 リーダー格の、銀髪の絶世の美女が言葉を発する。

 その言葉に、金髪の伊達男が手を挙げて答える。

「国際IS委員会への布教は、ほぼ完了といっても過言ではないですぜ、ボス。後残ってるのは委員長のBBAだけで、あいつらの実働部隊も今では敬虔な信徒になってます」

 伊達男の言葉に、定例会に参加している全員がおお、というどよめきの声をあげる。その言葉が意味することは、ただ一つ――

「これで、ISの分配は我々の思うがままというわけか」

 その意味を、黒髪と金髪が混ざったような髪の毛の、武人然とした男が答えた。

「ですが、そううまくいかないのが世の常です」

 そう言ったのは、どこか神父を思わせる雰囲気の初老の男だった。彼の顔には、どこかもの悲しげな表情が浮かんでいた。

「何があったのか、説明してくれるかしら」

 リーダー格の銀髪美女が、初老の男に次の言葉を促す。

「――亡国機業が活動を再開しました」

 

 初老の男の言葉に、会議室にいた者たちは色めき出す。

 彼らは内に溜め込んだ怒りを、言葉とともに吐き出していく。やれ、あの大馬鹿野郎ども。やれ、まだ殴り足りないようだな。やれ、神の裁きを落とすべきです。

 また、会議室は混沌に飲み込まれたかに見えた。しかし、銀髪美女が無言で右手を上げると、それも一瞬で収まった。

「亡国機業による被害は?」

「まだ出てはおりませんが、時間の問題でしょう」

「あの二人への被害は?」

「当分――原作が開始されるまでは保証しましょう」

「ならば良し」

 そう言って、銀髪美女は全員を見渡しながら口を開く。

「この問題は実働部隊に任せるわ、責任者!」

「ここに」

 銀髪美女の横に、サングラスをかけたスキンヘッドの男が現れる。彼もまた、この定例会に参加していた人間の一人だ。

「亡国機業への対応をお願いするわ」

「彼と彼女に懸けて」

 そう言って、スキンヘッドの男は霞となって消えた。

 

「さあ、再開しましょうか」

 その言葉とともに、話し合いが再開される。再開された直後に発言したのは、ピンク色の髪の幼女だった。

「なぁんかね、イッピーを排除しようとしてたバカが何人かいたから始末しといたよ」

 その言葉に、会議室のいたるところから「でかした」という声が上がった。

 幼女はその言葉を聞き、満足そうな顔で席に着く。その直後に立ち上がったのは、筋骨隆々の男である。

「倉持技研に派遣していた同士達からの報告なのですが、打鉄弐式の開発が最終段階に移行したようです」

 その報せは、彼らにとっての悲願そのものであった。

「原作開始に間に合いそうなのか!」

「いえ、しかし今のペースを保つことができれば、一巻の途中までには完成するという予想が挙げられています」

 彼らは歓喜に湧いた。冷静に見守っている銀髪美女も、どこか興奮した様子だ。

 歓喜の渦が収まり、筋骨隆々の男が座ったあとに立ち上がった神経質そうな男は、どこか苦々しげな顔をしていた。

「私からは悪い知らせだ、例の計画の研究所が兎に襲撃された」

「被害は?」

「なんとか研究中のコア一つだけで済ませた。研究内容も厳重に守っていたから、奴には知られていないはずだが…」

「念には念を入れましょう。後で実働部隊の責任者に連絡をとって何人かそちらに派遣させるわ」

「恩に着る」

 そう言って神経質そうな男は座る。それを確認した銀髪美女は、自身の横で議事録を書いている女性に声をかける。

「原作開始までは?」

「彼がISを動かすという意味では、今日を入れて4日後、入学初日という意味では、あと1ヶ月と24日です」

 議事録係の女性の言葉に「ありがとう」と答えた銀髪美女は、もう一度定例会に参加している者たちを見渡しながら、口を開く。

「今聴いたとおり、徐々に原作開始が近づいているわ。ここからはより一層に気を引き締めて、それぞれの為すべきことに望むように。あと、彼と彼女はこれからデリケートな時期を迎えるわ。だから、不用意な接触は避けるように同士たち言い聞かせておきなさい」

 

 それでは、これで定例会を終わりにするわ。

 

 定例会が終わり、一人会議室に残った銀髪美女は、携帯電話を取り出し、ある番号にかける。コール音がきっかり3回なった時に、かけた相手が電話に出た。

『あらー、四季ちゃんこんばんわー』

 電話相手の言葉に、四季ちゃんと呼ばれた銀髪美女は頬をほころばせる。

「こんばんは、こんな時間にごめんなさい、透華ちゃん」

『別にいいよー。今日定例会だったんでしょ? どうだったの?』

「特に、何もないわ。でも原作も近づいてきたから、気を引き締めろとは言ったわ」

 四季のその言葉に、透華と呼ばれた相手は、それもそうね。と答えた。

『でもね、何をするにしても、体が資本なんだから、あなたもしっかり休まなきゃダメよー?』

 透華のその言葉に、四季は少しだけドキリとしたが、それを表に出すようでは組織の長をやることができる器ではない。しっかりと押さえ込み、口を開く。

「わかってるわ、私たちが頑張っているのは、他でもないあの子達のためだもの」

『そうよー、だから、しっかり休める時は休んで、頑張る時に頑張らなきゃ』

「ええ、そうね」

 やるべきことはたくさんある。だが、今それを滞らせる訳にはいかない。そして、自分が倒れれば、この組織だけではなく、あの子達にも害が及んでしまう。だからこそ、倒れるわけにはいかず、万全の状態で大きな力に挑まねばならないのだ。

「忘れていないわ、そう、全ては――」

 自分と、そして電話越しの彼女との誓いの言葉を、もう一度自らの口で紡ぐ。

 

「私の一夏のためでもあり」

 彼女の名は織斑四季、織斑一夏の実母である。そして――

『私の簪のためでもある』

 電話越しの彼女の名は更識透華、更識簪の実母である。

 

 

 

 その誓いから4日後、織斑一夏は()()()()ISを起動する。

 しかし、その近くには、更識簪の姿があった。

 

 

 

 

 




この話に出てる奴らって、みんなチート転生者なんだぜ…(白目)
力を持った奴が全力でネタに走るとこうなります(血涙)
そして既に外堀埋める前から内堀が埋め終わってるというね(吐血)

何はともあれ、ここまで読んでくださってありがとうございました。
これからも一夏君と簪ちゃんのますますの活躍を祈りながら、次の話をお待ちください。

面白ければ、感想もお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いします。
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