が、戦闘シーンが短い。あと淡々としている。
そして山田先生がメインであるというビックリな出来になりました。
時系列としては、一ヶ月後に第一巻開始くらいの時期です。
それでもよろしければ、どうぞ。
アサルトライフル《ヴェント》の弾が、ばら蒔かれる。そのほとんどが、目標との距離を置くための牽制目的で発射されたものだ。ヴェントの弾を認識した目標は、腰部にある四機の小型スラスターを細かく動かして回避行動を取る。
その間に距離を離した山田真耶は、右手に持っているヴェントで弾をばら撒きつつ、左手にアサルトカノン《ガルム》を展開。目標に向けて三発撃つ。目標がそれに気づき、回避行動を取る。一発目、回避。二発目、回避。三発目、着弾。目標の姿が爆発に包まれる。
しかし、彼女の表情に安堵はない。煙が晴れていくと、そこには無傷の目標の姿があった。それを確認するやいなや、真耶はすぐに戦闘行動を再開する。ヴェントの弾をばら撒きつつ、ガルムを撃つ。目標は彼女の射撃を回避しながら右腕に
ブクブクという音ともに白い泡のようなものが肥大化し、それが砲の形に固まっていく。
――いつ見ても、精製の様子は生理的嫌悪を催すものだと、真耶は頭の片隅で思う。
そして、彼女がそう考えている間に、兵装の精製が完了した。完成した形状を見る限り、何処かの国が開発したレールカノンに酷使していることを、真耶は瞬時に見抜く。その一瞬後に、ISが警告を発する。ロックされている。砲口がこちらに向けられ、砲弾が発射される。
自らが纏うISが回避不可能という計算結果をはじき出すのと同時に、真耶は反射的にヴェントを格納し、シールドを展開する。その一瞬にも満たない刹那の後に、目標が放った砲弾がシールドに着弾。衝撃はPICでも相殺しきれず、そのまま後方に吹き飛ばされる。襲ってきた衝撃に苦悶の表情を浮かべながらも、スラスターを操作し、なんとか体勢を立て直す。壁にぶつかることはなかったものの、ほぼアリーナの端まで飛ばされてしまった事実に、真耶は焦りを感じた。そこに追い討ちを掛けるように、ISが敵機接近の警告を出す。
――しまった。そう思ったときには、既に
右腕に精製されていたレールカノンは、既に長大な実体剣に変化しており、目の前まで迫った彼は、それを今まさに振るおうとしているところだった。
ほぼ一瞬しかない時間の中で、真耶が手榴弾を展開し、彼に投げつけられたのは彼女の実力と幸運が合わさった結果と言えるだろう。彼女が投げた手榴弾は、吸い込まれるように彼の胸部に命中し、爆発した。それによって一瞬の隙が生まれた。その間に、真耶はその場から離れようと全力で上昇する。しかし、爆風を裂くように振るわれた実体剣がそれを妨げる。
振るわれた実体剣を右腕のシールドで受け止め、その勢いのままに左へと半ば吹き飛ばされるようにその場を脱する。彼もまた、そんな彼女を追撃するように、背部の大型スラスターに火を灯して追ってくる。真耶は追ってくる彼を迎え撃つべく、右手のシールドを背部に移動させ、そのまま右手にヴェントを展開し、フルオートで撃つ。ヴェントの弾をものともせずに突っ込んでくる彼の速度は、今纏っているIS以上のもので、すぐに追いつかれる。
彼が再度実体剣を振るう。弾切れになったヴェントを投げ捨て、空いた右手に背部のシールドを移動させ、再びそれで防ぐ。今度は振りおろしであったため、受け止めた瞬間から押さえ込まれたかのようにその場から動けなくなる。
決して押し切られまいと体全体に力を入れ、歯を食いしばりながら、真耶は左手に持つガルムを突きつけようとする。そんな真耶の動きに呼応するように、実体剣で押し切ろうと大型スラスターの出力を上げながらも、左腕にハンドカノンを精製した彼は、同じようにそれを真耶に突きつけようとする。
『――そこまで』
拡声器から聞こえたその声とともに、両者の動きは止まり、一定の距離まで離れる。真耶が全ての武装を格納するのと同じように、彼が精製した実体剣とハンドカノンも、溶けるように形を崩し、彼の腕と一体化した。まるで最初から存在しなかったかのように、跡形もない。
息を整えながら、真耶は改めて彼の姿を観察する。全身白の騎士甲冑のような見た目。腰部の小型スラスター四機と背部の大型スラスター二機は、まるで翼を彷彿とさせる形状だ。だが、それら全ての特徴には、自らが纏うISのような機械的な要素がほとんど感じられない。観察すればするほど、まるでなにかの生物のように感じてしまう。
『では、これにて模擬戦を終了する』
その言葉とともに、今回の模擬戦は終了した。
自身の纏っていたラファール・リヴァイヴを格納庫に戻し、アリーナへと戻ってきた真耶は、未だに騎士のような姿のままの彼と話をする女性の存在を見つける。その女性は、真耶にとってはよく見知った人物だった。そう、織斑千冬だ。
「どうだ、調子は」
『……まだ兵装の精製速度に難がある』
千冬の問いに、何かに納得していないような声で彼は答える。兵装の精製速度に関しては、ついさっきまで相対していた相手である真耶から見れば、十分に早い。しかし、彼はそれ以上を実現したいらしい。そんな彼に向かって、千冬は苦笑を浮かべながら口を開く。その声は、いつもの彼女のイメージとはかけ離れた、とても優しげなものだった。
「今のままでも十分だ。確かに早いに越したことはないだろうが、一朝一夕で得られるようなものではないからな。お前はゆっくりでいいんだ」
そう言って、千冬は愛おしそうに彼の右腕を撫でる。彼女にそうさせながらも、彼は反論する。
『何かあってからじゃ遅いんだ。ただでさえ、今年度の新入生には爆弾が多いんだから』
「お前が心配するようなことじゃないさ」
撫でていた手を、右腕から離しながら、千冬は言う。
「たとえ何かあったとしても、私たちが居る。だからお前が出るような事態にはならないし、そんなこと私がさせないよ」
目を合わせるかのように、千冬は彼の顔にあたる部分に目を向ける。彼もまた、顔を動かし、見下ろすような形で、彼女の顔を見る。
そのまましばらくの間、二人の間に沈黙が流れていたが、先に折れて声を出したのは彼の方だった。ため息を付くような音の後に、彼は言葉を紡ぐ。
『――わかったよ』
その声は、何処か諦めたようなものだった。その言葉の後にでもさ、と言い、彼は右腕を伸ばし、千冬の頬に手を添える。それを千冬は、くすぐったそうな表情で受け入れる。
『もうどうしようもならなくなって、助けが欲しいって思ったら、遠慮なく頼ってほしい』
その言葉に、千冬は嬉しそうに目を細め、頬に当てられている彼の手に自身の手を添える。
「ああ、わかっているさ」
その様子を見ていた真耶は、本当に仲がいいものだと思いながらも、二人の態度には、何処か遠慮というか、双方ともお互いに対して何か負い目のようなものを感じているように思えた。
彼の特性については、真耶自身もここに配属される時に聞かされているが、それ以上のことは知らない。何故ならば、彼という存在自体が最重要機密として秘匿されているのだ。その事実は、このIS学園の教員の中でも、ほんのひと握りにしか彼の存在は知らされていない。また、そういった事情のためか、彼が行動できる範囲は、この地下区画以外では、様々な規定の元で限定されている。そうしたことがある関係上、代表候補生なども、一部の例外を除き、彼の存在を知っている者はいない。
そのため、何故彼の存在が秘匿されるに至ったのか。そして、何故彼という存在が生み出されたのか。その本当の理由を知る者は、それこそ当事者である彼以外には、彼の身内である織斑千冬と、この学園の学園長とその夫ぐらいだろう。
――まるで、何者かに見せないような隠蔽具合だと考えたことは、一度や二度ではない。だが、真耶はそのことを積極的に追求することはなかった。千冬と彼の間に、過去何があったのか気になるが、それは当人たちの問題であって、自分たち部外者が首を突っ込んでいいものではない。
ただ、できるならば、彼と彼女は何も隔たりなく仲良くして欲しいというのが、真耶の偽らざる本音であった。
そのような感傷に浸っていた真耶の携帯端末が、小さく電子音を鳴らす。端末のディスプレイを確認すれば、学園長の文字がそこにはあった。その文字を確認するやいなや、自然かつ無駄のない動きで通話ボタンを押した。
「はい、山田です」
『山田教諭、学園長です。今よろしいかしら』
妙齢の女の声が、耳に届く。間違いなく、学園長の声だ。はい、大丈夫ですと答えた真耶に、学園長は一度ごめんなさいね、と謝罪の言葉を入れてから、言葉を紡ぐ。
『おそらく模擬戦は終了しているように思えるから、すぐに帰ってこられるのであれば帰ってきてちょうだい。もちろん、織斑教諭と彼も連れてきて』
そう早口でまくしたてる学園長の言葉の端々には、何処か焦りが垣間見えた。ただ事ではないと感じ取った真耶は、冷静に言葉を返す。
「何かあったのですか?」
『詳しい理由はあなたたちがこちらに来てから話すわ。ただ、かなり厄介な事象だから、できれば早く来て欲しいの』
学園長が焦りを見せることはごく稀だ。なので、彼女の言葉には嘘偽りがないということを瞬時に悟った真耶は、わかりました。と言い、端末での通話を終了し、二人のもとへと近づいていった。
『山田教諭?』
最初に真耶の接近に気がついたのは、彼だった。彼の言葉に、千冬も反応し、真耶の方へと顔を向ける。その表情は、いつの間にか真剣なものへと変わっていた。
「どうしましたか、山田先生」
その声も、鉄を思わせる冷たく、堅いものへと変わっている。それは、地上で教師をしている、織斑千冬の姿だった。相変わらず、切り替えが早いものだと感心しながら、真耶は口を開く。
「学園長から、至急戻ってきて欲しいという旨の連絡をもらいました」
その言葉に、千冬は「わかった」と返し、彼の方を向く。
「そういうことだ、そろそろ元の姿に戻れ――」
一夏。
その言葉とともに、彼の体を覆っていた、甲冑のようなものが全て光の粒子となって消滅する。あとに残っていたのは、黒い髪の青年が一人立っているだけだ。
彼の名は、織斑一夏。
敵に決定打を与えられる兵器がない!⇒じゃあその都度作ればいいじゃん
そんな考えから、思いついた一夏生体兵器ものです。
実はこれで連載しようと思っていましたが、一夏の設定の関係上、コミュが難しすぎる+もうコイツだけでよくね? となったため、短編に格下げしました。
というか原作で登場しているキャラ全員に優勢取れるというチートです、この一夏。それこそ、神様転生の特典がなきゃ勝ちの目がほとんどないくらいの。
ちなみにもし連載していたら、メインヒロインがのほほんさんで、転生者ありという内容でした。
さて、長くなりましたが、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
これからもほかの作品ともども、どうぞよろしくお願いします。