Abissale solitudine~海の底に消えた鍵~ 作:紅 奈々
標的1
あれから、二日が経過した。
昨日はあまりの倦怠感に学校を休んで寝ていたら、あっという間もなく昨日の一日が終わった。
昨日のことを振り返れば、驚くことの方が多かったような気がする。
まず、昨日は朝起きたら腹が妊娠何ヶ月だ?と言うくらいの大きさになっていた。
流石の璃王もそれには仰天したモノだ。今では何とかシャツを着れば腹の膨らみが誤魔化せるくらいの大きさになったが、それでもまだ少しは出ている。
次に驚いたのは、これが悪阻か!?と言うくらいに強烈な吐き気。
昨日は食べ物を一切受け付けない、スポーツドリンクでも飲めない状態になり、仕方がないのでコクコーラを飲んで過ごした。
不思議とコーラは普通に飲めた。
次にその体の重いこと。歩く度に脚の付け根が痛かった。まるで自分の体じゃないような錯覚に見舞われたのだ。
そんな時にいつまでも学校に来ない璃王を雲雀が心配したのかは謎だが、雲雀がベランダの窓から不法侵入してきたことは本当に驚いた。
そしてそこからはもう修羅場。
璃王の大きくなった腹を見た途端、何を勘違いしたのか雲雀は璃王の手を取って「こうなったら、結婚しよう。僕が責任を取るよ」とか言っていきなりプロポーズしてきたかと思えば、性別はどっちが良いだの、女の子だったら何て付けるか男の子だったらどういう名前にしようかだのそんな話から、式はいつ挙げようか、その前に両親に顔合わせと報告が・・・・・・だのそんな事を延々と語られた。
そんな雲雀の誤解を解くのに半日費やしたような気がする。
誤解が解けた途端に「あの藪医者・・・・・・咬み殺す!」と窓から出て行った時には嵐が去った、と安心したのは言うまでもない。
そして、暫くした後でそう言えばここは六階なんだが、どうやってここまで上って降りていったんだ?と思った途端に恭はバケモノだったのか・・・・・・と一人で納得していた。
そして、今日は昨日程ではないが、まだ気持ち悪さが尾を引いていた。
それでも璃王はいつものように準備して、アリゲータに餌をやると家を出た。
そう言えば今日は理科があったっけな。尚更逝かねぇと理科担当がうぜぇな。
前もパラジクロロベンゼンの化学式だの何だの・・・・・・生徒いびりしてるから、アラフォーでも結婚所か彼女すら居ねぇんだよ。
まぁ、一年の時に居た根津とか言う奴よりゃマシだがなと、璃王が考えている間に行き付けのコンビニのファミメが目の前に近付いた。
丁度良いから昼飯でも買ってくか、と璃王はファミメに立ち寄った。
緑のカゴに蜂蜜入りのミルクティーと菓子パンと適当な菓子を入れて、レジに持って行くと「いらっしゃいませー」と可愛らしい声がレジの奥から聞こえ、店員が小走りでレジに駆け付ける。
「あ、璃王君!
おはよう、これから学校?」
明るく可愛らしい声で璃王に声を掛けてきたのは、三谷
並盛高校夜間部の一年で、長い紫の髪を両サイドの低い位置で三つ編みにしていて、紅い大きな目が特徴的な笑うと八重歯が可愛いアルバイト店員だ。
璃王が買い物に行くといつも見かけて、つい最近になって逆ナンされ、今では仲良くなっている。
鈴那の言葉に璃王は頷いた。
「あぁ、昨日は無断で学校サボったから、行かないと何処かの風紀委員長閣下に殺される」
璃王がそんな事を言えば、「大変だねー」と鈴那は大きな目を細めて笑う。
いつの間にか、彼女の顔を見るのが日課になってしまっているな、と璃王は思った。
別に彼女のことは嫌いではない。好きかと言われればそうかも知れないが、これも恋愛とは違う気がする。
そんな事を思った璃王はそう言えば、京子に告白された時に感じたモノと同じ様な感情だと、思った。
この感情がなんなのかはもう一切合切忘れ去ってしまったモノなので思い出せない。
「あ、ねぇ!今日の夕方、時間空いてる?」
「え?あ、あぁ・・・・・・」
鈴那は会計をしながら、考え込んでいた璃王に話を振ってきた。
突然話を振られた璃王は思わず頷いてしまったが、今日の予定を頭の中で確認した。
今日は学校に行ったら応接室行って、理科だけ受けてその後は応接室で書類の整理をするから、夕方には終わってる筈・・・・・・だよな。
大丈夫か。
本日の予定を確認していたら、璃王の返事を聞いた鈴那は解りやすく顔を輝かせた。
「本当!?じゃあ夕方、並盛商店街のゲートの前で待ってて!
今日、創立記念日で学校が休みなんだ!
この間、すっごく美味しいケーキ屋さん見付けたから、一緒に行こ!」
鈴那は凄く生き生きとした顔で言った。そんな顔されて誘われると、断りにくい。
まぁ、甘い物は好きだし、璃王と鈴那は店の外でも何回か会っているので、今更断る理由もない。
璃王はレジスターに表示された金額を払うと、承諾する。
「解った。生きてたら行く」
買い物袋を受け取って、璃王は言った。
鈴那は「学校に行くだけで大袈裟だよ~、行ってらっしゃい!」と笑って璃王を見送った。
そんな鈴那に微笑みかけて璃王は、店を出ると鞄の中に買い物袋を詰めて学校へ向かった。
璃王は彼女に学校での事は話していなかった。
態々触れ回るような事でもないし、鈴那は女友達だ。そんな彼女に必要以上の事を喋る必要は無い。
ただ――――まさか、あんな事が起こるなど誰が想像しただろうか。
1時間後の悲劇を璃王はまだ、知らない――――。
雲雀とマーモン、どっちが好き?
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雲雀
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マーモン