Abissale solitudine~海の底に消えた鍵~   作:紅 奈々

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第七楽章 Cerrah―セラ・C・ヴァルフォア―
標的1


「やぁ、元気そうだねぇ、リオン。

久しぶりに会った筈なのにそんな気が全くしないよ」

 

 

突然の介入者に沢田、獄寺、山本、雲雀は驚きに目を瞠る。

蒼いロングストレートの腰辺りまでの髪、右目に掛かる長い前髪。

そこだけを見れば、誰もがこう思った。

 

 

「ド・・・・・・ッ、ドッペルゲンガー!?」

 

 

「なワケねぇだろ」

 

 

沢田の絶叫とも取れる叫びに、リボーンが冷静に突っ込んだ。

そう、誰もが初めてその姿をリオンと列んで見ると、必ず「ドッペルゲンガー」若しくは「双子」だと勘違いをする。

尤も、沢田の様にドッペルゲンガーだと勘違いするのは稀なのだが。その様に見紛う程、介入者とリオンは瓜二つだった。まるで、生き写しのように・・・・・・。

 

 

「まだやってたのか、セラ?

リオンの真似事」

 

 

呆れた様に言う、リボーン。

そんなリボーンに目を向けると、セラと呼ばれた少女は「クックック」と喉を唸らせる特徴的な笑みを見せた。

そんな所も相変わらずだな、とセラと旧知のリボーンとシャマルは思う。

 

 

「真似事じゃないさ。

オレもリオンもひとりの殿方を愛し、どちらが振り向いて貰えるかと競い合っていた仲だ。

その方の好みに合わせれば、生まれた時から「アウラの再来」と謳われたオレとリオンが似ない筈はないんだよ」

 

 

セラの言葉に雲雀が反応する。

リオンにはそこまで想っていた人間が居たのか?と雲雀は思う。

そんな雲雀に目を向けるとセラは、何かを見透かしたように口角をニッと上げ、含み笑いをする。

 

 

「安心しなよ、風紀委員長君。

彼はリオンの扉の鍵を持っていたワケじゃない。

リオンはただ、憧憬と恋慕がごちゃ混ぜでそれの境界線が今の所ないだけだから、まだチャンスはあるだろうね。くくくっ」

 

 

喉を唸らせて笑うセラに雲雀はムカツキを感じた。

同じ容姿をしていても、同じなのは容姿だけで中身は全くの別物だ。

そんなセラと雲雀を見て何の0話をしているのか解らず、璃王は小首を傾げながら「恭とセラは仲が良かったのか」と不思議そうな顔をしていた。

 

 

「まぁ、そんな話は置いといて。

話してやっても良いんじゃないかねぇ、リオン。

オレは最近転入してきたばかりで、君の状況は君の記憶を通してからしか解らない。

オレも、常に意識を繋いでるワケじゃないから大雑把なことしか解らないし、詳しい話を聞きたいねぇ。

ウチのクラスでも流れている噂も被害者を騙っている人間の話も信用できないしさぁ」

 

 

口調はいつも通り飄々としているが、真剣な顔のセラに璃王は彼女の顔を見る。

自分と同じ顔が見つめ返してきて、璃王は溜息混じりに言う。

 

 

「嫌だね。

此奴らはオレの言葉よりも保坂理絵奈の猿芝居に騙されてんだぜ?意識繋いでたんならその光景も見た筈だ。

今更、何を言う必要もないだろうが」

 

 

「言っただろう?

オレは常に意識を繋いでるワケじゃないって。

仮に常に繋いでおいたとして、そんな面妖な能力でリオンと意識を共通したって、それで君の事を理解したとは言わない。

他人を理解するって、そんな簡単な事じゃないだろう?」

 

 

セラの言葉を突っぱねて今も尚、何も話そうとしない璃王にセラは溜息混じりに言った。

それは曾て、セラが自分の想い人に言われた言葉だ。

璃王は言葉を無くす。

 

 

「それに、ちゃんと話さないと解らないこともあるだろう?

少なくとも、話し合う意思があるから、リオンの話を聞く気になったから、ここに来たんだろう、君たちは?」

 

 

後半の言葉は、沢田達に向けられたモノだ。

璃王と瓜二つのインディゴの目で射貫かれ、沢田と獄寺、山本は足が竦んだ。

触れれば凍てつきそうな眼光は、「ただの好奇心なら出て行け」と警戒している様だった。

唯ならぬ殺気に睨まれてもいない雲雀まで動けない。

 

 

「何でこうなったのか経緯を聞かせて貰おうか、ボンゴレ十代目、沢田綱吉。

事と次第によっては、たとえあの方の所属するマフィアのボスだろうが容赦しない」

 

 

セラに睨まれた沢田は蒼い顔で彼女を見詰めることしかできなかった。

教室での出来事を話せば、その瞬間が命の終わりだと直感したのだ。

沢田が物怖じしている事に感付いたセラは内心で舌打ちした。

――こんな情けない奴があの方のボスだと?笑わせるな!

セラがそんな事を思っている間に、獄寺が慎重に口を開いた。

 

 

「さっき・・・・・・そいつが吐血した時に、俺は違和感を感じた。

俺達は普通に殴り掛かったりして、それを神谷は避けてたんだ。

所が、腹を蹴られて腰を床に打ち付けた時、こいつは吐血して――――・・・・・・!」

 

 

ポツリポツリと言葉を紡ぐ、獄寺。

セラと目が合うと獄寺は、言葉を途中で切った。

セラの殺気を孕んだ視線が今度は獄寺を射貫く。

 

 

「・・・・・・で?リオンが吐血しました、さて、その後は?」

 

 

先程の飄々とした喋り方は何処へか消え失せて、抑揚のないセラの声が獄寺に続きを促した。

絶対零度の視線が、感情の読み取れない声色がその場に殺伐とした空気を充満させる。

獄寺は、促されるままに続きを話した。

 

 

「唯の好奇心で・・・・・・無理矢理、神谷の眼帯を剥いで右目を見たんだ・・・・・・

血の様に真っ赤な目が見えて、それで、ある一族の“忌み子”と呼ばれていた子供の話を思い出した。

だから、どうしても真相が知りたくて・・・・・・」

 

 

「それだけ?他に気付いた事があるだろう?」

 

 

「その後でヒバリさんが神谷を庇って・・・・・・ヒバリさんが秩序を乱す様な生徒を庇うわけがない、と思っ・・・・・・!?」

 

 

獄寺の言葉に苛立ちを露わにセラは問い質す。

そうすると、沢田がその時に思った事をそのまま述べようとしたが、全部言い終わる前にセラは沢田の横っ面をビンタした。

パァン!と乾いた音が、広くもなく狭くもない部屋に響く。

沢田の頬は赤くなっていて、その頬に沢田は手を当てた。

 

 

「き・・・・・・み・・・・・・?」

 

 

突然の事で目を白黒させている沢田は、目の前で自分を引っ叩いた手を包み込む様にぎゅっと握り締めて、涙を目尻に浮かべたセラを呆然と見た。

そんな事がなければ璃王の話を聞こうともしなかった奴らに苛立つ。璃王の事も信じることもしないで、一方的に璃王を痛めつけた人間が腹立つ。

何より、そんな時に何の力にもなれなかった自分自身に腹が立った。

 

 

「てめぇ、どういうつも・・・・・・」

 

 

「それはこっちの台詞だよ、ファッキン野郎共」

 

 

「何ぃっ!!」

 

 

掴み掛かってくる獄寺の言葉を遮ってセラは怒鳴りつける。

セラがそこまで激昂したのを見たことがなかった璃王は、驚いて目を白黒させた。

 

 

「君には失望したよ、ボンゴレⅩ世(デーチモ)

君の様な人間にボンゴレの血(ブラッド・オブ・ボンゴレ)が流れているなんて、宝の持ち腐れだねぇ」

 

 

嘲笑する様にセラは吐き捨てた。

その硝子細工の様なインディゴの双眼は「此奴らは信用するに値しないグズ野郎どもだ」と呟いている様だ。

そんなセラの言葉はまだ、続く。

 

 

「学校の絶対君主が絶対なのかい?

君らは自分の意思で状況を判断する能力に欠けています、と。

なら、そんなボンゴレはなくなってくれた方が助かる。消えてしまえ」

 

 

セラの言葉は一見すると暴言の様に聞こえるが、正論だ。

自分で考える力を持っていない人間がボスになろうなんて、集団自殺以外の何物でもない。

それをセラは知っている。

伊達にボス候補だったわけではないのだから。

ボス候補としての教養を身に付けているセラからすれば、沢田達がどれだけ教養がなっていないのか窺い知れる。

これが、自分が所属しているファミリーの同盟ファミリーのボスとは。失望する。

セラは溜息を吐いた。

雲雀とマーモン、どっちが好き?

  • 雲雀
  • マーモン
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