Abissale solitudine~海の底に消えた鍵~   作:紅 奈々

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標的2

あれから学校へ向かって歩いていると目の前にそこそこ大きな建物が見えてきた。

ここからはその建物の敷地だというように門が建っている。ここは、彼―――神谷(こうや)璃王(りお)が通う並盛中。

今は誰もその門を潜る人間は居ない。それもそうであろう。今は授業中である。

璃王が校門を潜った後、「ねぇ」と、声を掛けられた。

声の方を向けば、艶のある漆黒の髪に目つきが悪い黒目の男子生徒が立っていた。肩に学ランを羽織り。その袖には風紀委員会の証、「風紀」の腕章が着けられている。

両手にはトンファーを持っており、今にも襲いかかってきそうな雰囲気だ。

メンドイ奴に絡まれた。璃王はその顔に陰鬱な色を見せる。

 

 

「君、今日も遅刻だよ」

 

 

璃王に声を掛けると彼は璃王に近付く。

璃王はその場に立ち止まった。

 

 

「キョウ・・・・・・」

 

 

雲雀恭弥。

並盛最強にして最凶の不良の頂点に君臨する、並盛中学風紀委員長。並盛の不良風紀委員長と言えば、必ず彼の名前が挙がってくる程の有名人だ。

尤も璃王に言わせれば唯の戦闘狂なだけだが。

不良で風紀委員ってどんなだよ。不良の時点で風紀もクソもあるかよ、真面目な不良かよ、と言うのが、璃王の雲雀に対する第一印象だった。

今では互いに気を許しており、信頼しあっている仲だ。少なくとも、クラスメイトよりは。

 

 

「学校は遅刻する為にある」

 

 

「遅刻する理由としてはマイナス点だね。

ま、君だけは遅刻もサボりも許している僕は甘いんだろうね」

 

 

璃王の言葉に雲雀は眉を顰めた。その後でふっと軽く笑う。

変な奴だ、と璃王は思った。

普段はサボっている生徒を見ると直ぐにそのトンファーで「咬み殺しに」行くクセに。

「だから・・・・・・」と、雲雀は続きを言う。

 

 

「いつでも応接室に来なよ、璃王」

 

 

「気が向けば、な」

 

 

やっぱ変な奴だ。璃王は雲雀とそんなやり取りをすると、校舎へ入っていった。

下駄箱を開ければ、水浸しの上履きが入っている。

「またかよ」と璃王は呆れる。犯人は解っているので、水浸しの上履きは無視して傘立てに器用に隠していた替えの上履きを取り出して、それを履くと教室へ向かった。

 

 

廊下を歩いていると、各教室から教師の声が聞こえる。今は授業中だから当然だが。

自分の教室へ着くと、後ろのドアから教室へ入っていった。だが、タイミング悪く黒板に向かっていた教師が振り向いた為、教師と璃王の目が合った。

やば。面倒くせぇことになった、と璃王が思った時、教師の禿げ上がった額に青筋が浮かんだのが見えた。

 

 

「神谷、またお前は!お前もう中二だぞ!?遅刻なんかして恥ずかしいとは思わないのか!

しかも連絡無しで!今まで何をしていたか!!

そんなことで将来どうするんだ、まったく最近の若いモンは弛んどる!もう少し将来のことを考えて勤勉にだな・・・・・・」

 

 

璃王を視界に入れるなり教師は璃王を怒鳴りつけ、延々と説教を垂れる。

それをウゼーと思いつつ璃王は自分の席へ歩く。

璃王の机には無数の小学生並みの落書きとその上に献花がされてあった。

ふうっ、と溜息が零れる。

 

 

「大体、俺がお前の年の頃は暗い中でも懐中電灯で机に向かって必死に勉強してだな・・・・・・」

 

 

そんな話を右から左に流しながら、璃王は「オレが小学生辺りには既に英語なんて日常会話からその応用まで、イギリス人が話す言葉は全部マスターしてましたが何か?」と思う。

璃王は既に帝王学を勉強していた為、中学生で習う程度の知識は既に身についていた。下手したら名門大学まで行ける程の学力を持っている。

なので、璃王にとって学校は「必ず通わないと行けない所」ではない。それでも通っているのは、日本が義務教育だからだ。

 

 

「今の高校は金を積めば馬鹿でも通えるらしいが、そんな親不孝な・・・・・・って、聞いているのか神谷!!」

 

 

璃王が献花されている菊を見ながら、こいつら、菊の花言葉知ってんのか?色によって違うが、高貴、清浄、高潔、僅かな愛、誠実、真実だぞ?

嫌がらせのつもりで添えるなら花言葉調べてから添えろよ、中途半端だな、と璃王が思っていたら、説教を垂れていた教師がいきなり怒鳴ってきた。

教師の話を聞いていなかった璃王が「何か?」と言いたい様な顔で教師を見ると、教師は「もう良い、座れ!」と黒板に向き直った。

璃王の机には、「死ね」や「消えろ」「学校に来るな」等のベタな落書きから、「最低男」「猫背ヤロー」「中二病」などの璃王の人格や外見を否定するような落書きが書いてある。

数えられない程に書いてあるのに加え、油性のマジックで書いてある為、消そうと思っても消えないし、消したり机を取り替えたとしてもまた書かれるのでキリがない。

璃王が席に着くと四方八方から石入りの紙くずや暴言が書かれた紙くず、硝子なんかが投げつけられる。

基本的には避けなくても当たらないが、顔に向かってくるモノは教科書ではたき落とす。

この学校で自分の味方は恭だけ。その恭には現状は話していないが、「味方である」と言うだけでも璃王にとってはいいことだった。

 

 

 

 

そうこうしている間に授業が終わって璃王は保健室へ行く為、教室を出ていた。

廊下を歩いていると、後ろから「おい」と声が掛けられた。

「めんど・・・・・・」と思いながら璃王が振り返るとそこには、茶髪のサイア人と銀色のタコ頭と黒髪の男子が居た。

「ちっ」と舌打ちすれば、サイヤ人が璃王に寄ってくる。

 

 

「お前、また理絵奈ちゃんを泣かせたんだってな!」

 

 

ふーっ、またか。璃王は毎度毎度のお決まり文句に溜息が出る。

三人の後ろを見れば、ピンクのロングヘアーに髪と同じ色の上目遣いの女子生徒が隠れるようにして付いていた。

保坂理絵奈。

璃王が虐めを受けるようになったそもそもの根源だ。自分の事を可愛いと思っているらしく、璃王から見れば相当イタイ人。

そして、サイヤ人ヘアーとタコ頭、黒髪の男子はそんな保坂を「守る」騎士気取りのイタイ連中、と言うのが璃王の認識だ。

沢田綱吉、獄寺隼人、山本武。いつも何かと絡んでくる暇人だ。

 

 

「お前、女子を泣かせるとかサイテーだよな」

 

 

獄寺が突っ掛かってくるが璃王は意に介さず、その場を後にした。

そんな璃王の背中に三人から罵詈雑言が投げられるが、璃王は知ったこっちゃないと無視をする。

それよりも、こいつらの下手な芝居を見ている方が反吐が出る。

そんな事を思いながら璃王は、保健室へ急いだ。

雲雀とマーモン、どっちが好き?

  • 雲雀
  • マーモン
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