Abissale solitudine~海の底に消えた鍵~   作:紅 奈々

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第三楽章 Causale―理由―
標的1


璃王は虐めの理由を眠りながら考えていた。

別に璃王にとっては下らなくどうでも良いことだが、ふと考えてしまったのだ。

ただ、虐めについては何とも思っていない。

思うことがあるとしたら、「イジメ?何それ美味しいの?」程度にしか思っておらず、バクテリア程も気にしていない。

寧ろ、イジメとバクテリアならバクテリアの方が気になるくらいだ。

 

朝、教室に入れば頭上に降ってくる水。暇人。んな事してるから頭悪いんだろうが。

机の落書きに関して。馬鹿丸出し。

授業中に投げられる石入り紙くずやその他の危険物。んな事してるから授業も理解できないんだろうが。んな暇あるならノート取れよ。

今までされてきた事を思い返して、それに関して感想を付けていく。

そこまで思い返して、ふと、ウチのクラスに授業をまともに聞いている奴が居ないことに気が付いた。

おいおいおい、ちゃんと授業聞いてやれよ、40分間ずっと独り言言ってる教師が可哀相じゃねぇか。

そこまで思うと璃王は「オレも人の事を言えなかった」と思い直す。璃王も教師の話は全く聞いていない。

 

保坂理絵奈の気色悪い芝居。それに騙され、そこから生まれる下らないトモダチゴッコ。反吐が出そうだ。

そう言えば・・・・・・と、璃王は思う。

何でオレは保坂から嫌がらせを受けてんだっけ?

そもそもの原因が少し思い出せない。あれは確か、中一の時・・・・・・だったか?

璃王は、去年のあの日の出来事を思い返す。

 

 

 

それは、よく晴れた、春から夏に変わるくらいの季節だった。

その時璃王は一年A組に在籍していて、宿泊学習では沢田綱吉、獄寺隼人、笹川京子、保坂理絵奈と同じ班だった。

班を作って初めはその班の中で仲良くなっていこう、とかそういう目的の行事だった気がする、と璃王は思い出す。

本当は宿泊学習は行かない予定だったのに、雲雀に脅されたのだ。「学校行事をサボる毎に璃王は風紀委員のパシリね」と。

それも、一日二日ではなく、1ヶ月単位だ。そんな面倒くさい事を1ヶ月もしたくはない。璃王は渋々行くしかなかった。

宿泊学習最後の夜にこそっとテントを抜け出して、昼間見つけた湖へ行った。

思った通り、夜の湖面は月を映して昼間とは違った顔を見せている。

そこで璃王は誰も居ないと思って、歌を口ずさんだ。

 

 

「君の代わりなんて居ないから この先にあった君と使うはずだった時間は

何かあれば君と比べたり 直ぐに思い出せる内は

どうしても埋まらない 埋められない

時間が解決してくれるって? どんどん壁作るクセに!

やっぱ君じゃなきゃダメで

あの頃の二人にはもう戻れない もう一度やり直すより

今新しく らしく始めればいい・・・・・・」

 

 

不意に人の気配がして、璃王は歌うのを止めた。

闇の中を注視すれば、そこには暗がりでも解りやすいピンクの髪が見えた。

そのピンクの髪の人物は、保坂理絵奈。彼女は璃王に近付いてくる。

 

 

「あ・・・・・・あの、さっき、璃王君が出て行くのが見えて・・・・・・」

 

 

じっと無言で見つめられて保坂は、言葉を探す。

漸く出てきた保坂の言葉に璃王は暫く黙った。

 

 

「・・・・・・誰」

 

 

璃王が暫く黙っていたのは、目の前に居る女子の名前を思い出せなかったからだ。

一応、班のメンバーの名簿には目を通したが、名前と顔が一致しない。

そもそもこの頃は、雲雀と草壁の名前しか覚えていなかったのだ。

 

 

「え・・・・・・?あ、あたしは理絵奈よ・・・・・・保坂理絵奈。

同じクラスで同じ班の・・・・・・」

 

 

「ふーん」

 

 

やや舌足らずな喋り方で言う保坂の言葉に璃王は素っ気なく返す。

どうも、この女は苦手だ。

初めて話した時はそんな印象を持っていた。

何だかすっかり気分も害された感じがして璃王は立ち上がると、テントへ戻ろうとした。

そんな璃王の服の裾を掴んで、保坂は璃王を引き留める。

 

 

「あ・・・・・・あの、璃王君・・・・・・その・・・・・・っ、あたし、初めて会った時から璃王君のことが好きです・・・・・・!

つっ・・・・・・付き合って下さい!」

 

 

保坂の言葉に璃王が振り返ってみれば、告白してきた張本人は顔を茹で蛸のように真っ赤にして、上目遣いでこっちを見上げていた。

その顔を見ても、特に何とも思えない。女に告白されても嬉しくないのは当然だ。自分も女なのだから。

だが、長身で肌も白く、ぶっきらぼうだが整っている顔をしている璃王は何処からどう見てもイケメンだから、一目惚れをする女子生徒も少なくはない。

その上で璃王は一度、学校の行事の親睦会でライブをさせられている。

それも相俟って、この時の璃王の人気は半端無かった。

 

 

「そんな事に興味はねぇ。そんなことは他の奴にでも言うんだな」

 

 

その日は冷たく突き返して、何事も無かったかのようにテントへ戻った。

 

それから程なくして、保坂理絵奈から細かい嫌がらせを受けるようになった。

嫌がらせと言っても、本当に些細なことで気になる程のような事じゃなかったので、璃王は気にしていなかった。

 

雲雀とマーモン、どっちが好き?

  • 雲雀
  • マーモン
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