Abissale solitudine~海の底に消えた鍵~   作:紅 奈々

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この話で、この小説のタグ「シャマッシー」の意味が解ると思います!
つーか璃王・・・・・・だんだんキャラが崩壊してきたような気がする・・・・・・。


第四楽章 Kyoko―笹川京子―
標的1


「トライデント・・・・・・シャマル・・・・・・」

 

 

「よぉ、璃王。どうした?んな死にそうな顔して。

美人が台無しだぞ?」

 

 

真っ青な顔で額に脂汗を浮かべながら、璃王が保健室に訪れた。

いつも通りの朝を迎えてた筈の今日は、「いつも通り」とはいかなかったのだ。

登校中にいきなり、悪阻並の吐き気と何とも言い難い気持ち悪さを感じた途端に頭痛と胸の痛みに襲われた。

呪いを抑え付ける薬の副作用にしては酷すぎる、と思った璃王は教室へは逝かずに保健室へ来た、と言うわけだ。

それを璃王はシャマルに説明した。

 

 

「お前はまず、漢字の勉強からだな」

 

 

「オレの学校へ「いく」は「行く」じゃなくて「逝く」だ・・・・・・っげほっ、ごほっ!・・・・・・うぅ・・・・・・」

 

 

呆れた様に突っ込むシャマルに反論すると、喉が痛くなるような苦しい咳に襲われ、璃王はソファーに倒れた。

口を覆っていた手には、喀血したと思われる血がベットリと掌を紅く染め上げていた。

掌の血を見て、璃王は戦慄する。これって・・・・・・!?

何で、呪いが末期状態になっているんだ!?と、璃王は混乱すると共に、また襲いかかってきた胸の激痛と頭痛に意識が薄れていく。

 

 

「はぁ・・・・・・っ、ぐっ、うぅ・・・・・・」

 

 

あまりの痛みにさっきよりも脂汗が吹き出て、背中がぐっしょり濡れて気持ちが悪い。

それよりも、さっきよりも長く続く激痛に璃王はソファーの上でのたうち回った。

そんな璃王の傍に寄って、シャマルは璃王の額に触れる。

 

 

「すげぇ熱じゃねぇか!脈も早ぇ。

お前、昨日暴れたりしてねぇよな?

つかお前、痣も広がってんじゃねぇか!」

 

 

璃王の手首に指を当てると、璃王の脈の速さにシャマルは眉を顰めた。

黒い痣も、手の甲から首筋にまで広がっており、シャマルは驚愕の声を上げる。

 

 

「昨日は・・・・・・依頼、受けてねぇよ・・・・・・」

 

 

絞り出すような璃王の言葉を聞くと、シャマルは璃王の服を剥いだ。

黒い痣は右半身に(まだら)に広がっており、呪いが進行しているのが一目で解った。

シャマルの目が険しくなる。

 

 

「この傷!お前これ、どうした!?」

 

 

「え・・・・・・?あ、なん・・・・・・でも、ねぇ・・・・・・っ」

 

 

黒い痣よりも先に目に付いたのは、璃王の体中にあるまだ新しい傷痕だった。

その傷痕を見て、シャマルは眉を顰める。

傷のことを問われた璃王は昨日のことを思い出し、咄嗟に嘘を吐いた。

別に、山本を庇ったわけじゃない。一般人同然の山本に押し飛ばされて窓を突き破ったなんて、殺し屋として格好悪すぎて言えるかよ。

そんな璃王にシャマルはこれ以上何も追求せずに立ち上がった。

 

 

「お前がいつも定期的に服用・投与している薬な。あれは血管を通して全身に作用する薬ってのは知ってるな?」

 

 

「あぁ・・・・・・」

 

 

シャマルの言葉に璃王は頷く。

小さな時から何度も何度も聞かされていた言葉だ。

シャマルは説明しながら戸棚を漁る。

 

 

「正常に作用している状態ならお前の呪いを押さえる役割を果たすが、ちょっとの衝撃でその薬は呪いの進行を抑える「薬」から呪いを急激に進行させる「毒」になる事も説明したよな?

だから、投与して二十四時間は安静が必要な事も話したよな?」

 

 

「・・・・・・あぁ」

 

 

シャマルの言葉に頷く璃王。これも、小さい時から耳に(たこ)ができるくらいに聞かされていた。

そこで、シャマルの額に青筋が入る。やべっ、地雷踏んじまった。

思った時には既に遅く、シャマルは顔に般若を降臨させていた。

 

 

「お前なぁ、何故直ぐに来なかったんだ、このドアホ!!」

 

 

「薬を投与・・・・・・したのが、予定、日・・・・・・より、早かっ、たから・・・・・・別に良いか・・・・・・と、思った・・・・・・」

 

 

シャマルの剣幕に怯むこともなく璃王は言った。

まさか璃王も、大した事のない怪我でこんな事になるとは思っても居なかったようだ。

璃王の言葉にシャマルは呆れた様に頭を抱え、白い包み紙と水を持ってきた。

 

 

「起き上がれるか?」

 

 

シャマルは璃王に声を掛けると、テーブルに包み紙と水を置いて、璃王に手を差し出す。

それを無視して璃王は背凭れに手を置いて起き上がる。

起き上がる時に込み上げてきた吐き気に噎せ返った。

 

 

「これは、お前に投与している薬よりも最も強力な薬だ」

 

 

説明しながら、シャマルは璃王に包み紙を手渡す。

包み紙を開いてみると、緑色の如何にも体に悪そうな粉末が盛られていた。

シャマルの説明は尚も続く。

 

 

「お前の呪いと同じ毒素を持った薬でな・・・・・・」

 

 

「服毒自殺でもしろと」

 

 

シャマルの言葉に璃王が呟くと、プチッと何かが切れる音が聞こえた気がした。

説明が途中で中断されたのでシャマルの顔を見てみれば、シャマルは額に青筋を浮かべ、またもや般若を召喚している。

おいおい、あんまり怒りっぱなしだと高年期になったら血圧上がって血管切れるぞ。

梨●プシャーッ!じゃなくて、鮮血プシャーッ!になるぞ。何だ?それでふ●っしーに対抗するのか?シャマッシーか?笑えねぇー・・・・・・。

璃王は苦しいにも関わらず、そんな事をふと思ってしまった。

 

 

「おい、途中から口に出てるぞ。ったく、誰がシャマッシーだ、俺はあんなキチ梨と対抗する気なんざなぁ・・・・・・って、んな話はどうでもよくてだなぁ!

お前、「毒を以て毒を制す」っつー言葉を知らんのか?悪いモノは悪いモノで牽制するって事なんだがな。

今し方、それしか方法はねぇんだよ。若しくは次の定期投与まで苦しむか、だ」

 

 

シャマルの言葉の意味は何となく理解できる。つまり、毒を飲んで毒を殺せ、と。

とにかく璃王は、次の定期投与まで苦しんでいたら死んでしまうので、この怪しい薬を飲んでみることにした。

怪しいが、背に腹は代えられない。この劇薬を飲まないと死ぬんだったら、飲んでやるか。

 

 

「劇薬って人聞き悪ぃな、おい!」

 

 

シャマッシーは取り敢えず、スルーの方向で。とにかく璃王は、シャマルが何か言っているが我関せずに薬を飲んだ。

うぇ、まず・・・・・・。何だよこの、青汁をもっと苦くしてキシリトールをぶっ込んだようなこの味は・・・・・・。

これ、本当に薬か?シャマッシーはオレを殺す気か?つか、何気にシャマッシーにハマった。よし、次からはシャマッシーと呼ぶ決意をしよう。

璃王はそんなどうでも良いような決意をした。

 

 

「変な決意をするな!」

 

 

さっきからシャマッシーは人の心を読んだかのようにツッコミを入れてくる・・・・・・。シャマッシーはふなっ●ーと違ってどうやら、読心術が出来るみたいだ。すげぇな。と、璃王は思った。

何故かシャマッシーと会話が成り立っている。

そんな事を不思議に思っていると、「お前、口に出てんだよ!!」とシャマッシーが呆れた様にツッコミを入れた。

 

 

「だぁぁぁぁぁぁああっ!?説明文での俺の名前がシャマッシーになったじゃねぇか!つーか、んなことはどうでも良い・・・・・・いや、良くないんだが、今はそれどころじゃなくてだな!

とにかく良いか、璃王。

毒が相殺されるまで・・・・・・つまり、明後日の昼まで絶対に安静にして腹と腰には衝撃与えるなよ!?」

 

 

何か一人ツッコミして騒がしいなぁ・・・・・・と、璃王が思っている間にシャマルの説明が始まった。

つーか、世界観壊すなよ。

そんな事を思いながら璃王はシャマルの言葉を聞く。

 

 

「この薬は初めに子宮に作用して仮妊娠みたいな感じで毒素を育てるからな。明日には軽く腹が出ている状態だ。

毒が相殺されたら腹は引っ込む。

この薬は男にとっては毒にしかならないが、女にとっては薬にもなる。

ただし、衝撃を与えなければの話だ。良いな?絶対に安静にするんだぞ!」

 

 

シャマルは念を押すように説明した。

とんでもねぇモン飲まされた・・・・・・と後になって気付いたって遅い。後の祭りってこの事だな・・・・・・と璃王は説明を聞きながら思った。

「はいはい、要するに腹と腰に衝撃与えなきゃ問題なし、だろ」と言いながら璃王は窓を開けて、その窓枠に足を引っ掛けた。

それを見てシャマルが「いやいやいや!?」と声を上げた。

 

 

「俺の話聞いてたか、お前・・・・・・ってあぁ!!

ったく、彼奴にゃ絶対子供を作らせられねぇな、一日持たずに胎児が死んじまうぜ!

子供が出来たとしても、ベッドに括り付けて強制入院モンだな!」

 

 

シャマルが止めようとした時には既に璃王は窓から飛び降り、地上へ着地していた。

 

雲雀とマーモン、どっちが好き?

  • 雲雀
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