「あー、そいつぁ……また何とも難儀な話だなぁ」
カリーニングラードに戻って来た紀沙は、モスクワでの歓待とは一転、人知れずバルチースク海軍基地に戻ってきていた。
戻ってきた時には、すでにロシア海軍から提供された物資の搬入が始まっていた。
中には通常弾頭の魚雷や軍需物資も含まれていて、イ404は規格を合わせるために少々ナノマテリアルを動かしているようだった。
そして戻ってきた紀沙が最初にしたことは、クルー達の意思を統一することだった。
簡単に言えば、ロシアのクリミア解放作戦に参加する、と言う話だった。
またそのために緋色の艦隊の勢力圏を突破しなければならず、相当の困難が伴うだろうと言う話だ。
ヨーロッパにおいてロシアの後援を得るためとは言え――もちろん、ロシアに協力したからと言って後援してくれる保証は無い――今のイ404にとっては、厳しい条件であることには違いなかった。
「核ミサイルねぇ。いやあるのは知ってたけど、そこまで露骨に出してくるとは思わなかったぜ」
「まぁ、
イ404が作戦日までに黒海に到達すること。
それが、ロシアが英仏――緋色の艦隊に核を撃たない条件だ。
もちろん条件だと示されたわけでは無く、紀沙が
これが駆け引きと言うものかと、むしろ感心さえしていた。
「相手に「
「接待攻勢からの落差がやばかったんだー……」
英仏の人間のために危険を犯す義理は、紀沙達には無い。
しかし、だからロシアの核攻撃を認めるかと言えば、それは違うはずだ。
イギリスの人々やフランスの人々を見捨てて良いかと言えば、絶対に違うはずだ。
紀沙は、固くそう信じているのだった。
「まぁ、それはそれとして、艦長ちゃんよ。俺達はこのままロシアさんの良いように使われるだけかい?」
冬馬の言葉に、紀沙は目を閉じた。
ロシアによる核の脅しに、潜水艦1隻でどう対応するのか。
先のミハイル大統領との会見を思い出しながら、紀沙はそれだけを考え続けていた。
◆ ◆ ◆
「わかっているよ、中佐。キミが今回の私の判断に不満を持っていることはな」
イ404が出港準備を進めているまさにその時、ミハイル大統領は執務室にいた。
あれほどの歓待の渦中にあったモスクワは、今は静まり返っている。
街の各所には戦車が配備され、通りに立つ歩哨はモスクワ市民の動向に注意を払っていた。
人々は身を竦めながら隅の方を歩いて、擦れ違っても挨拶すら返すことが無かった。
「カリーニングラードから出航されては、鹵獲が難しくなります」
「はは、まぁそう言うな中佐。考えてもみたまえ」
執務室の壁には大きな世界地図が掲げられていた。
日本で発行される世界地図とは違い、大西洋をメインに置いた地図だ。
そこに、ダーツの矢が何本か刺さっている。
ミハイル大統領は手の中で何本かのダーツの矢を遊ばせており、彼が投げたことが窺える。
「今この段階でイ404を鹵獲したところで、我々には運用のノウハウが無い。噂に聞くメンタルモデルとやらが我々に従う保証も無い」
日本政府も、鹵獲後しばらくは「ただ持っている」と言うだけの状態だった。
霧の艦艇は通常の軍艦とは違う運用方法が必要なのは明らかで、それは一朝一夕で獲得できるものでは無い。
そして何より、霧の艦艇は一度反乱されれば手がつけられないと言う危険性がある。
もちろん、ミハイル大統領はロシアの力をもってすればイ404の運用は可能だと思っている。
しかし同時に、《今すぐは無理だ》
彼は傲慢ではあっても慢心家では無い、無理なものは無理と理解している。
だから、イ404を
「持ってきて貰おうじゃないか、クリミアの
どの道、ロシアが今戦力を必要としているのは
緋色の艦隊の勢力圏をロシア海軍が抜けるのは至難の技であるし、まして何億ルーブルもかけてきた核ミサイルを緋色の艦隊ためのだけに使うのは
だからこそ、イ404のクルーには利用価値がある。
イ404がクリミアまで来れば良し、辿り着けなくとも別にロシアに損失は無し。
バルト海から黒海までの長く困難な道のりを代わりに踏破してくれると言うのであれば、僅かな軍需物資や生活物資の提供など安いものである。
鹵獲などいつでも出来る、いつでも出来ることを今急ぐ必要は無い。
このあたりは、政界の頂点を極めた人間特有の間の取り方だった。
「…………」
そしてそれがわかっているから、アレクサンドル中佐も何も言わない。
何も言わずに、ミハイル大統領のダーツが地図上の日本を射抜くのを見ている。
しかし何故だろう、ミハイル大統領の判断は大局を見たもので、本来なら感心しても良いはずなのに。
アレクサンドル中佐は、この判断にどこか危うさを感じずにはいられなかった。
言うなればそれは、軍人としての直感だった。
◆ ◆ ◆
考えがある。
そう言い残して紀沙がブリーフィングルームを出た後、残されたクルー達の間には、いつになく深刻な空気が漂っていた。
誤解しがちだが、紀沙と彼らの関係は群像と僧達との関係とは違う。
「どう思うよ?」
「結構なことじゃないか、ドーバー海峡を突破する作戦があるって言うならさ」
「そう言うことじゃないって」
わかっているだろうに、あえて言葉を選んだ梓に苦笑じみた顔を向けて、冬馬は言った。
「
群像とそのクルーは、同じ学舎で学び共に国を出奔したと言う点で共通している。
しかし、冬馬達は違う。
彼らは統制軍の人事によって紀沙の下に配されていて、それはつまり大なり小なり事情を抱えていると言うことだ。
「しかしそうは言っても、今回の件は仕方が無かった面もあるのでは?」
「核兵器で脅されるなんて思わなかったものね~」
怖いわぁ、と全く怖くなさそうな顔で言うあおい、そして副長の恋。
静菜、良治……全員、それぞれにイ404に乗る事情がある。
彼らはボランティアでは無く、軍人なのだ。
つまり基本的には統制軍の利益、あるいは日本の国益を優先して動く。
一方でそうは言っても、彼らも人間だ。
これだけの時間を共に過ごし、また修羅場も潜ってきたわけで、情も湧いてくる。
恋や梓などはどちらかと言えばそちらで、現状維持派と言える。
そんな彼らに対して、冬馬は椅子に背中を押し付けながら言った。
「さて、どうなのかねぇ。この艦は艦長ちゃんの私物じゃないだろ」
振動弾頭輸送任務完了の際、横須賀に戻るのが筋だ。
いくらイ401の存在があったと言っても、やはりそちらが本筋だ。
本国の無言は黙認とも取れるが、横須賀に戻った時にどう言う処分がされるかはわからない。
「それに最近の艦長ちゃんはどうも様子がおかしい」
「疲れてるんだろうさ、無理も無いだろ」
「自分で信じてないことを言うもんじゃないぜ梓の姐さんよ。それにおかしいってのは様子だけじゃなくて、なんつーんだろな。雰囲気が変わったって言うか……なぁ、軍医殿?」
「…………」
いつからか、紀沙の纏う雰囲気が変わってきた。
それはクルー全員が感じていることで、紀沙が蒔絵を遠ざけた理由にも通じる。
しかもその変わり様は、経験だとか覚悟だとか、そう言うものでは無い。
まさに、
「つまり」
それまで黙っていた静菜が、じろりと冬馬を見据えた。
「艦長を更迭すべきだ、と?」
「何もそこまで言っちゃいねーさ」
ただ、と、静菜の圧力を受け流しながら冬馬が応じる。
「ただ、もしその時が来たら、って言うのは考えておくべきだろ。お前らはどうするんだ? 俺はもう、どこまで行ったらやるかってのは決めてるぜ?」
沈黙。
余りにも急進的な冬馬の言葉に、その場にいる誰もが沈黙を選んだ。
梓でなくとも言葉を選ぶ必要があると、誰もが思っていた。
そんな中で。
「良いわよぉ」
あおいは、にっこりと笑いながら言った。
まるで、ティータイムの何でも無いお喋りのように。
「その時は誘ってね~、冬馬くん」
にこにこと笑いながら、そう言ったのだった。
この場にいない紀沙がこの時の彼らの会話を聞いていたなら、何を思っただろうか。
悲しんだろうか、怒ったろうか、それとも納得してしまうだろうか。
ただ、いずれにしても。
「ほら、聞いたでしょ?」
たとえ、どれだけ針の筵の上にいたとしても。
「ボクだけが、艦長殿の本当の味方なのさ。そうだろう?」
「…………」
紀沙は、もう止まれないのだ。
止まってしまえば、二度と歩き出せなくなってしまう。
歩けなくなってしまえば、その時は……。
◆ ◆ ◆
おかしい、と、ヒュウガは思った。
彼女はフッドと共にバルト海の海底に『マツシマ』3隻を着底させていたのだが、紀沙達がカリーニングラードの港から出てくるのをじっと待ちながら、同時に色々とやっていだ。
具体的には、イ401とついでにイ15の行方を追っていた。
「お姉さま達はいったいどこへ行ったのかしら」
あの『ムサシ』との衝突の後、イ401の行方は誰も知らない。
騒々しいイ15の行方もわからないとなると、行動を共にしていると言うのが自然だろう。
そこまでは良かった。
そこまでは、ヒュウガにも理解できる。
理解できないのは、その後も合流を目指そうと言う動きが見えないことだった。
ただでさえ少ない戦力を分散するメリットが、今のイ号艦隊にあるとは思えない。
合流したところを『ムサシ』達に狙われることを懸念しているのか?
それならば、ほぼ筒抜けな行動を取っているイ404のことはどう考えているのか?
イ404が目立った行動を取っているのは、一つにはイ401へのメッセージでもあると言うのに。
「お姉さま……ああっ、お姉さまお姉さまお姉さま! お姉さま成分が不足してこのヒュウガ、もういい加減にどうにかなってしまいそうですぅっ!」
我が身を抱き、くねくねして見せたところで、何かがどうにかなるわけでは無い。
あるとすれば、今となっては唯一の話し相手であるフッドがドン引きするぐらいだ。
まぁ、ヒュウガにとってはフッドは割とどうでも良い存在なので、ドン引きされること事態はまったく気にしていなかった。
「はぁ、ま、あの艦長が何か企んでるんでしょうけれど」
十中八九、これは千早群像の考えだろう。
イ401が撃沈されていたり、群像やクルーがのっぴきならない状態に陥っているのであれば、沈黙と言うのはあり得ない。
何かを考えているからこその沈黙、そして群像はこちらがあちらの意図に気付くだろうと思っている。
「千早群像の頭の中、か」
興味深い検証対象ではある。
これを期に千早群像について検証してみるというのは、悪くないのかもしれない。
もう一つの検証対象である千早紀沙についても、そうだ。
「我々はどこから来たのか、何者で、どこへ行くのか」
千早紀沙は、もしかすれば霧にとっても謎であることを教えてくれるかもしれない。
霧が、どこから来たのか。
キィ、と両の瞳を輝かせながら、ヒュウガは思考していた。
自分達がどこから来て、そして何を成すべき者なのか。
千早兄妹と言う存在が、教えてくれるような気がした。
◆ ◆ ◆
思考すると言うことであれば、この霧の艦艇も相当のものだろう。
東洋方面艦隊旗艦『コンゴウ』不在の今、事実上の旗艦となっている『ナガト』は、日本近海の封鎖を片手間に、そして近隣の『ガングート』や『レキシントン』らを牽制しながら、自らは小笠原沖に陣取って動くことは無かった。
まるで、総旗艦『ヤマト』のように。
『ナガト』は『ヤマト』が戻ってくるまで総旗艦の任にあったが、その時はむしろ七つの海を渡って様々な地点に出没していた。
『ヤマト』が戻りメンタルモデルを得てからは、極東の海域から動いていない。
「その後の『タカオ』達はどう?」
「そうね、大人しくしているみたい。コアの記憶領域にアクセス制限をかけられていれば、大人しくならざるを得ないでしょうけれど」
遊女のような女学生のような姿をした、艶やかな黒髪の2人のナガト。
自身の主砲の上に座り、まるで別人のように会話をしている。
どちらもナガトであるのに、彼女達は何故かそれぞれが別個であるかのようだった。
「でも『タカオ』が私達の考えている通りのタカオだとしたら、いかにヤマトと言えど押し留められるものでは無いわ」
「そうね、でもそれは私達も同じこと……」
ナガトはタカオ達を艦隊戦で破り――アタゴとマヤに砲火を集中させると陣形が崩れるので、時間はかかったが割と楽だった――ヤマトの下へと封印状態で送り届けた。
そしてヤマトがタカオ達の記憶領域にアクセス制限をかけるのを見ていたわけだが、2人はそれは長続きしないだろうと思っていた。
もとより、ヤマト自身もそう考えている様子だったが。
「私達はもう、誰かの命令で動く存在では無くなった」
「『アドミラリティ・コード』はすでに存在しない」
ナガトはヤマトよりも先に、タカオが横須賀で得た情報を閲覧していた。
その内のいくつかは、霧の現在の存在意義を覆しかねないような、そんな情報だった。
おそらく、ヤマトは知っている。
そしてナガトが
それでも放置しているのは、ナガトが動かないと思っているからか。
「会ってみたいわね」
「会っておけば良かった、でしょう。それを言うのなら」
ナガトが――つまり、タカオが横須賀の第四施設で得た
「千早兄妹に」
「千早翔像に」
「それから」
「千早――いえ」
第一、霧が言う『アドミラリティ・コード』なるものはすでに存在しない。
第二、
第三、霧はそもそも
「
ナガトは、思考を続ける。
真実を抱いたまま思考を続ける。
彼女がいつ動くのか。
それはまだ、ナガト自身にもわからないのだった。
それすらもまたヤマトと同じということが、何とも皮肉に思えるのだった。
◆ ◆ ◆
そしてまた、ここ黒海のクリミア沖でも思考する霧の艦艇がいた。
黒海のクリミアと言えば、ロシアのミハイル大統領が<騎士団>なる勢力からの奪還を目指している地域である。
だが実のところ、ここは霧も奪還を目指している
「うん、大丈夫だよ。お姉ちゃん」
大戦艦『セヴァストポリ』は、ロシア方面黒海艦隊の旗艦である。
そのメンタルモデルは白銀の髪に黒瞳の美女の姿をしており、それはロシア方面の他の2艦隊の旗艦、『ガングート』と『ペトロパブロフスク』に良く似ていた。
黒い軍服を身に纏った長身でスレンダーな美女は、しかし戦艦の主砲の上という無骨極まりない場所に立っていた。
そんな彼女の視線の先には、斧の形にも見える半島が見えている。
さらに言えば彼女は今、自分自身と同じ名前を持つ都市を正面にしていた。
何十万人だかの人間がいるだろうその場所、しかし『セヴァストポリ』はそこに住まう人間にはまるで興味が無かった。
興味があるのは、クリミアを占拠している<騎士団>だった。
「クリミアには相変わらず近づけないけれど、奴らは海には興味が無いみたい。……わかってる、油断はしないよ。人間との戦争が終わったら、今度は海に来るかもしれないものね」
<騎士団>!
それはいつからか現れた正体不明の集団であり、明らかに人類の科学力を超えた技術を持っている。
今も、あの要塞港セヴァストポリの様子を窺うことができない。
霧の力をもってしても見通せない遮蔽フィールドが張られていて、中の様子を知ることが出来ないのだ。
「
しかも<騎士団>は、陸の侵略を始めた。
まずクリミア一帯、ウクライナ南部オデッサを陥とし、立て続けにモルドバ、ルーマニア、ブルガリアを占領した。
奴らの軍事力は異常なまでに強大で、セルビア、マケドニア、ギリシャにまで触手を伸ばしていた。
そして、先日セルビアが降伏した。
これによりバルカン戦争――セルビア・ブルガリア対ルーマニア・モンテネグロ・ギリシャの戦争――は終結し、軍人や政治家、一部の豪商以外の人々は安堵を覚えたかもしれない。
今やバルカン半島の半分以上は、<騎士団>領と化していた。
そしてギリシャが制圧されれば、『セヴァストポリ』ら黒海艦隊は出口を失うことになる……。
「それでも私達は霧の黒海艦隊だから、『アドミラリティ・コード』が私達に命じた至上命令だから」
それでも、『セヴァストポリ』達は黒海から逃げるつもりは無かった。
たとえそれで孤立してしまったとしても、<騎士団>の湖と化しつつある海域だとしても、地中海の『ダンケルク』艦隊からの補給ルートが断たれてしまったとしても。
霧の最高規範たる『アドミラリティ・コード』がそう命じた以上、彼女達はそこを動かないのだ。
――――嗚呼。
もし今の『セヴァストポリ』を以前のタカオが見ていたら、彼女はどう思っただろう。
もしかしたならば。
タカオは、このような事態こそを防ぎ得たかもしれなかった。
そして10日の後、霧の黒海艦隊との連絡は途絶することになる……。
◆ ◆ ◆
ロンドン、
英国首相との会談と同盟関係の強化、そして英国議会での演説、及び勲章の授与。
まさに大盤振る舞いと言った風の歓待であって、傍目には媚びられていると言っても良いだろう。
煌びやかな宮殿の佇まいと相まって、虚飾に満ちている、と言う表現がふと頭に浮かんだ。
「前から思っていたのだけど」
純白のフォーマルドレスを身に着けた――翔像もタキシードである――ムサシが、真っ白な瞼を翔像の方に向けながら小さく首を傾げていた。
口元に浮かんだ小さな笑みは、どこか悪戯っぽい。
「お父様は、演説もお上手ね」
「思ってもいないことを言うものではないな」
「ごめんなさい、怒った?」
「こんなことくらいで怒ったりはしないさ」
返事がわかっていたのだろう、ムサシはくすりと笑った。
それから翔像の手の中にある古めかしいデザインの、しかし新しい小箱に目を向けた。
イギリスの国章が押されたそれは、いわゆる
わかりやすく言えば、翔像を
フランスを降伏に追い込み、またイギリスを欧州艦隊の海洋封鎖から解放したと言うのが授与の理由だ。
ただ、別にフランスが英国領になったわけでは無く、霧の封鎖が解けたと言っても英国の船舶が自由に海に出られるわけでは無い。
イギリスの状況は何ひとつ変わっていないのに、この動き。
「あわよくば、お父様をイギリスの軍人にしてしまうつもりなのかしら?」
「いや、もっと陰湿で強かな連中だよ」
「……?」
勲章によって確かに
議会の演説も首相との会談も実のあるものでは無く、「緋色の艦隊の行動を可能な限り支援する」と言う空手形のみ。
自分達の仲間にはしないが、自分達の役には立ってほしい。
名を授け実を受ける、イギリスが過去何度も世界各地でやって来たことだ。
まったくもって、油断なら無い国なのだ。
そう言う意味では、フランスやドイツ、ロシアよりも狡猾な国だった。
自分達は結束し、自分達以外を動かすことによって、いつの間にか自分達が最も得をしている。
かつて彼らはヨーロッパで、アフリカでアジアで同じことをやっていた。
そして、今も。
「裏でアメリカ政府やフランス内部の
「勉強になるわ。……ああ、ところでお父様。実はさっき、北海を哨戒していた駆逐艦が面白いものを見つけたと報告してきたのだけど」
面白い、と言うことに興味を引かれたのか、今度は翔像の方がムサシを見た。
ムサシは今度は顔全体で笑顔を浮かべていて、翔像をして真意を読み取らせなかった。
笑顔のまま、ムサシは言った。
笑顔で言うにしては、それはなかなかに衝撃的な内容だった。
「――――イ404が浮上状態で北海に現れて、緋色の艦隊に
最後までお読み頂き有難うございます。
そして繰り返しになりますがこの物語はフィクションであり、実在の団体・個人とは無関係なのであります……!
と言う訳で、少しずつ物語の根幹を成す設定を出していきます。
そこから私が考えているアルペジオのエンディングを想像してくれたりすると、とても嬉しいです。
それでは、また次回。