ごぼごぼと相手の胸から血が滝のように流れた。
二人目はもう首がない。近くにないということはぽーんと飛んでったか。
「おい、終わったか?」
「ああ、あっけないな。」
モモンガは困っていた。遠隔視の鏡で周辺を確認した所、村が襲われていた場面に遭遇。ゲートで移動した。
二人の人間種NPC。確かハリスとニックだったか、そのほか30名のナザリック民兵を連れ地上に来た。そして。二人の女が殺されそうになった所に登場した。
「下等生物風情がモモンガ様、いえアインズ様のお手を煩わすとは。」
アルベドが吐き捨てるように言った。
「弱いな。着ていた鎧も魔法がかかっている割には柔い。」
まさか、一合と合わずに一撃で屠られるとはこの世界のレベル基準を下方修正せねばならないか。
「おい、もう大丈夫だぞ。」
「これ飲め死ぬぞ。」
エンリはアインズ以上に困惑していた。骨の化け物が来たと思ったら普通の人間が後からきて兵士を一瞬で倒してしまったのだから。
「の、飲みます!だから妹は!」
「別にとって喰いは・・・しないよな?」
「さあ・・・あ!エントマ様の土産にどうかな!きっと喜びなさるだろう。」
エンリは油汗が止まらかった。エントマ?みやげ?どっちしろ碌なことにはならないような気がした。
「おまえたち、行くぞ。」
「「は!申し訳ございません!」」
やはりこのおそらくリッチが親玉に違いないなとエンリは思った。
「おい、そこの娘。襲撃者の中に魔法詠唱者はいたか?」
「い、いえ・・・たぶん。」
必死に逃げたのだ。確実性は低かった。
「たぶんだぁ~?てめぇもう少し頭使って記憶をほじくり返せ!魔法でひねり出してやろうかぁ!」
「ひぃ!」
「よ、よせ!杖をおろせ!」
「かしこまりました。」
「おまえたちは村に向かえ。村人を助け、その後情報を入手するのだ。」
「・・・恐れながら、別段助けなくともアンデッドにして聞き出せばよろしいのは?」
村娘は視界のはじからわかるくらいびくついていた。小さいほうは今にも失神しそうだ。
それも考えたがこの世界はまだまだ分からないことだらけだ友好関係は築けるうち築けておくことがいいに決まっている。おそらく次はないと思われた。
「不服か?」
ちょっと強めに言っておこう。
「申し訳ございません!」
ハリスは地面に頭をこすりつけた。
「そうか。ではゆけおまえたち!これが初戦だ気を引き締めよ!」
「「「「「は!必ずや至高の神に敵の血を捧げて見せます!」」」」」
「ロンデスさん!変な連中がばぁ!」
デズンの体にぽっかりと大穴が空いた。穴の向こう側にいる人間のにたにたした顔が
はっきりと映るぐらい。
「何者だ貴様!」
「うるさい。」
今度はモーレットの首がポーンとまるで毬のように飛んだ。杖で殴られたのにその頭はつぶれることなく飛んでいった。
「なんだこんだけしかいないのか?楽しめるのはせいぜい数分か。」
杖に付いた肉片をとんとん落としながら面倒臭そうにハリスは言った。
向こうでは29名の同胞が騎兵を片付けている。逃げられると面倒だ。
「うおおお!」
兵士は剣を振り上げるとカン!と簡単に止められた。
「魔法詠唱者なのになんだこの力は!」
「ふん!」
目の前の男が力を込めると兵士の肩に杖がめり込んだ。もんどりうって倒れた。
痙攣して動かなくなった。
「柔いな。明らかなレベル不足だね。」
「おい。いつまで遊んでるつもりだ!ごみくずどもを掃除しろ!」
ニックが怒鳴る。右手には哀れな兵士の首をもっている。
「親玉は?」
「こいつだよ。こいつ。」
ニックはプラプラともっている首を振った。
「へえ。強かったか?」
「いや。命乞いして金をやる言ったからどんだけ持ってる?て言ったら今は持っていない!でも見逃してくれたら!ていうお決まりさ。」
「的にもならね。」
「撤退だ!総員撤退しろ!合図の角笛を鳴らせ。」
ロンデスはこの状況下で唯一まとも指示を飛ばせる人間だった。
仲間たちは武器を捨て逃げている。盾を捨てないのは少しでも生き延びたいという可能性に縋りたいのからか。
だが無意味だった。なにもかも、矜持も鍛えた技も。
「うげぇ!」
盾ごと矢で射ぬかれ。
「たのむ!たのべぇ!」
慈悲はなく。
「ぐあ!いたい!やめてぇええええ。」
わざと痛めつけられ。
「うで・・・俺のうでは・・・。」
敵のファイヤーボールで飛ばされた腕を探し。
「かみさま・・・が!」
後ろから刺され。
たとえ抵抗しても。
「はあああ!」
「おいおい。へっぴり腰。もっと腰に力いれろよ!」
腰から切られ上半身がまるで木の葉ように舞い。
「俺の剣が・・・。」
「手入れ不足。失格。」
首を飛ばされ。
「おい!どうしたんだ!兄貴!俺だよ!ルンベルだよ!」
「しかたがないだろう・・・友達の頼みだし・・・なぁ?」
「うげげげげげ。いいねえええ!最高だぜ。」
チャームかをかけられ同士討ちさせられた。
「くそ!なんでスケルトンが!」
「これただスケルトンじゃない!ぐ・・・」
「よしよし。アインズ様ために働いてくださいね・・・。」
仲間をアンデッドさせられた。
「ぐえ!ばは!うが!」
何本も槍で刺された。とうに息絶えているのに。
こいつら遊んでやがる!・・・。
逃げないとこいつらはまともじゃない。
「おーい。そこの君。」
!?
「君だよ君。君良いね状況わかっているねえ。逃げた方がいいこと。」
「おまえたちは何者だ。王国の騎士?か?」
「いいや違うよ。」
さも当然のように目の前のローブの着た男は言った。
「・・・取引をしないか?望むものを用意する!必ず!」
「では情報を。」
「どんな情報だ!ほ・・・帝国のか!」
「その前にじっとしてくれるかな。もうそろそろ終わるしね・・・。」
気づけば戦闘は終わっていた。仲間の死体が水死体のように静かに横たわっていた。
ロンデスは耳が痛くなるくらいの静けさを味わっていた。