「おい。大丈夫か?」
ニックはできるだけやさしく話しかけた。
あの血みどろを見れば誰でも萎縮してしまう。そう思った。
「あ、あなた方は?・・・。」
最初に声をあげたのが村長と知ったのはずいぶん後だった。
「近くを通りかかった者です。」
「冒険者ですか?」
「冒険者?なんですかそれ?」
「ちがうのですか?」
「違いますよ・・・我々は・・・。」
ローブの男、カイナン・トゥールマンが答えた。
第三位階相当の魔法を扱うネクロマンサーだ。相変わらずぽソぽソしゃべる内気な男だ。
「村人の諸君無事かな?」
アインズ様だ。
「あなたは?」
「たまたま近くを通りかかった者でね。助けに来た。」
村人たちは顔見合わせている。助けにきた?こんな辺境に?
そんな言葉が聞こえる。
「おうおう!てめぇら礼も言えねぇのか!」
ハリスに無言で肘鉄を入れた。
「・・・ふん。だがただではない。報酬をもらいたいのだが?」
村人たちの顔に安心感のようなものが現れた。
その後の事はつまらない話だ。村人のけがをハリスや連れてきた神官のやつに治癒をませて、残りは兵士の死体はアンデッドにして、村人の死体は葬った。
あの村娘エンリとネムの家族はだめだった。
「ところで、人間達をどう思う?」
アインズはアルベドに問うた。答え明白だが。
「下等な種族。きれいにできたらせいぜいします。」
「ニック。おまえは?」
「わ、私ですか!?」
話を振られ私は戸惑った。正直答えればいいのか、それとも・・・。
私は咄嗟にアルベド様を見た。あの方ただ私を見ていた。
「・・・哀れに思いまする。」
「なぜ?同じ人間だぞ?」
「彼らがもしナザリックの民ならばこうはならなかったからです。」
そうだ。彼らがもし同胞ならばただでは殺されない。あの戦争の時と同じだ。
みんな至高の方のために喜んで死んだ。多くの敵を犠牲にして。
ならば、少なくとも無駄ではない。
意義ある行為。意義ある死だ。
「故に哀れに思うと?」
「はい、それに彼らの中に武器をもって戦っていた者はいませんでした。死ぬべくして死んだのです。」
自業自得。誰もいなかったのか?危機感を持つ者は?いれば少しは抵抗できたものを。
いや、むしろよかったのかも。
抵抗すれば攻撃は苛烈さを増す。そうすれば間に合わなかったかもしれない。
故に、死すべくして死す。
村はずれの小さな丘。その小さな墓地にあの娘の泣く姿が妙に目に焼き付いていた。
(おい、ニック。妙なやつらが来ているぜ。)
ハリスの楽しそうな伝言がそれをかき消した。