サモンナイト ー生贄の花嫁ー   作:ハヤクラ派

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ミニス編の始まり始まり、この小説。アマゾンで0円だったんやで。
送料だけやったわ…、なんか怖いんだが。


第15話 翼竜襲来

「由々しき事態だ…」

 

咲き誇る美しい花園、季節感がなくどこか歪だが、それを気にするものはここにはいない、

ここは金の派閥の統治者、マーン家の管理する屋敷なのだから。

ここに住む者たちは召喚師と呼ばれる超常の力を操れるものたちなのだ。

 

「よりにもよってこんな時に…!」

 

その花園でお茶をしている3人の男性がいた、長男のイムラン、次男のキムラン、三男のカムランである。

そのうちイムランは唇を震わせて頭に青筋を立てている、彼が多大なストレスを感じてる時の反応だ。

 

「本当に参りましたね」

 

その横で同じようにお茶をしているカムランが口を開く、

口調は落ち着いてるがやはり新たに発生した問題で頭がいっぱいの様だ。

 

「ここんとこ静かだったから安心してたのによぉ」

 

土仕事の後なのかいい汗を拭きながらキムランが答える、

だがその口調には何時もの豪胆な感じは失われていた。

 

「しかしだ、このまま放って置くわけにも行くまい…、関わるまいと決め込んだところでアレが我らに災厄をもたらすのには変わるまい」

「確かにそうですね…、まあ、遅かれ早くてアレが我らの前に現れるのは決まってますし」

「そうとは限らねぇんじゃねぇか?」

 

キムランが二人の考えを否定する、ここサイジェントは聖王国西の果て、

中央のゼラムからはそれこそ数日馬車に揺られてなければならないほどの距離だ。

徒歩に至っては長くて一月近くかかるほどである。

 

「いくらアレだって、こんなに遠くまでは…」

「貴様はアレの持つ力を甘く見てるのだ!」

 

ダンッと大きな音を立て、イムランが机をたたく、カシャンと机の上の食器が音を立てるがどれも落ちなかったようだ。

キムランはそんな兄の形相に驚き、カムランは溜息を吐いて頭を抱える。

 

「話に聞く限り、アレに秘められた力と言うのは底知れないらしいですからね……」

 

紅茶を飲み、カムランが再度口を開けた。

 

「それこそ街一つ軽々と滅ぼすほどらしいですから」

「ともかく…ッ対策だけは…ッ建てて置かなければなるまいッ!」

 

相当頭に来てるのか今までで一番の形相でイムランが叫ぶ。

 

「一刻も早く、確保するのだ…、それも我々自身の手でッ!!」

 

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「………ふわぁぁぁ~~~」

 

孤児院の広間で緑茶を飲みながら一人の少年、ハヤトは大きく口を開き欠伸をしていた。

アキュートの一件から既に一週間が過ぎ、とても平和な日々が戻ってきている。

 

「なんか…、平和だなぁ、まあ見かけだけなんだろうけど…」

 

サイジェントはおおむね平和に戻った、街の暴動の引き金を引こうとしてたアキュートと和解し、

オプテュスは望まない形であったが、メンバーの大半が死亡し自然崩壊したそうだ。

だがそのオプテュスの裏で無色の派閥と言う組織が蠢いていることはハヤトも理解していた。

 

「…どうするかなぁ」

 

訓練をするにもウィゼル師範はここ数日、用事が出来たとのことで新しい剣を受け取ったきり連絡はない。

レイドとラムダさん達は近場の温泉に湯治に出てるそうだ、

クラレットの話では悪魔系列の召喚術の余波を受けて心身にダメージを負っているらしい。

二人は俺達の危険があるかもしれないと断ったが無理に戦っても足を引っ張る危険性があったそうで、

セシルさんと一緒に出て行ってもらった、あの二人も色々話すことがあるから丁度いいだろう。

 

「釣りにでも行くかな…、でも不用心だよなぁ……」

「おにーちゃん♪」

「ん?フィズどうした」

 

緑色の髪を後ろに三つ編みをした少女、フィズが笑顔でハヤトに話しかけてきた。

 

「もしかして、暇なのかしらぁ~?」

「暇って言ったら、暇なんだよなぁ、訓練相手になるレイドもいないし、ガゼルは逃げるし、エドスとジンガは仕事だしさ、クラレットも家事や調べ物があるらしいし」

「暇だったら暇っていいなさいよ!まったくもう、怠け癖が移ったの?」

「そうだな…、よし!今まで大変だったけどこんなに怠けたらまずいもんな!」

「それでこそ、お兄ちゃん!」

「じゃあ、ハヤト。はいコレ」

 

するといつの間にか立っていたリプレが買い物袋とメモを渡してくる、俺はそれを見て目を丸くした。

 

「ん?」

「ん?じゃないわよ、はい、パンを焼く小麦粉がなくなって来たのよ、買ってきて」

「この前…、買ったんじゃなかったっけ?」

「誰かがドンドン住居者増やすからもうないのよ、察しなさい」

 

どうだ、と言わんばかりの正論を受けて、ハヤトはへこんだ、

まあ実際の話、このフラットに加入したメンバー、

自分にクラレット、クロにジンガ、モナティ、ガウム、エルカ、それにたまに来るユエルとスウォン、

そのほとんどが自分に関わっているんだ、そう言われては何も否定は出来なかった。

 

「なんだよハヤト、また言いくめられてるのかよ、クククッ」

「ガゼルぅー」

 

そんなハヤトの様子を見て部屋から出て来たガゼルが嘲笑う、

不貞腐れたようにハヤトはそんなガゼルを見るが、リプレはガゼルに近づき…。

 

「なに自分は関係無い様に言ってるのよ、あんたも行くの」

「…ハアァ!?」

「当たり前でしょ?ハヤトは字がまだ読めないんだから、どの小麦粉買えばいいかわからないでしょ、ガゼル。あんたどうせ暇なんだから行きなさいよ」

「俺はな…、これからやることが」

「何を?」

「…ぐぅ」

 

まさにぐうの音も出ない、実際口に出してるがそんな状況だった。

 

「ったく、口うるせえな、俺の母ちゃんかよ」

「……私は貴方達の母親よ!!」

 

そう言いながらいつの間にか持っていた綿棒を振い、

パコーンといい音を立てて、ガゼルの目の中に星が舞うのだった。

 

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「痛つぅ~、ったく本気で殴りやがってタンコブで来てるじゃねぇかよ」

「自業自得だろ?それにしても…」

 

人混みで賑あう商店街を二人で歩いてゆく、ハヤトはこの光景を見て少し考える事がある、

あの時、結局自分がやったのは正しかったのかイマイチ踏ん切りがつかないのだ。

ただ、レイドとラムダさんが争うのを止めたかった、その一心で戦ってたのだから。

 

「俺のやったことってホントに正しかったのかな…」

「…!」

「痛っ!何すんだよクロ!」

 

買い物に付いてきて勝手に俺の頭に登って寛いでるクロが俺の髪を引っ張る、

ガゼルはそんなクロを見てニヤケながら答えてくれた。

 

「お前がやってることに全員納得してるんだろ?だったらそれでいいじゃねぇか」

「ガゼル…」

「たくよ、一々悩み過ぎなんだよ、考えるのクラレットの役目だろ?お前は突っ込んでいくだけでいいんだぜ」

 

簡単に言ってくれるなぁ、と思いながらハヤトはガゼルの言ってることに納得していた。

結局自分は別の世界の人間だ、だけどその世界じゃ、人を思いやる心は随一だろう、

その心を持つ自分やクラレットにみんなが納得してくれるならそれでいいよな。

 

「考え過ぎなんだよ、ハヤト、クラレットの事やフラットの事、おまけにアキュートの事まで全部自分で何とかしようとしてるじゃねぇか」

「そんなつもりはないんだけどなぁ…」

「ラムダの奴もお前の言葉が切っ掛けでアキュートを解散させたんだぜ、ローカスだって人から盗むのを辞めたみてえじゃねぇか、みんなお前のおかげで変わったんだぜ。もちろんいい方向にな」

「ガゼル……」

「なんだ?」

「変なもんでも食べたのか?リプレが拾い食いするなって言ってただろ?」

「うるせぇ!」

「……(はあ」

 

ハヤトの頭で寛いでるクロは二人の会話にため息を吐く、

だけどその表情は何やら安心してるようだった。

 

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商店街の端、食糧品を取り扱うお店が見えてくるころ合い、

ガゼルはふとあることを思い出した。

 

「そういえば纏め買いするならもっと人数連れてくればよかったな、タヌキとかよ」

「タヌキって…、モナティのことか?」

 

モナティはレビットという垂れ耳兎の亜人であると聞いてる、タヌキと呼ばれるのは、

その顔つきがタヌキに似てるからだ、初めて聞いたときリィンバウムにもタヌキ居たのかと思った。

試しにムジナを召喚してモナティと見比べたらそっくり過ぎて大笑いして本気で怒られた事を思い出す。

 

「本人気にしてるんだから、あんまりからかわないでくれよ?」

「お前だってタヌキの召喚獣、召喚して見比べたろ」

「そりゃ…、ちょっと比較対象あったほうが実は似てないって証明できると思って…」

「へいへい」

 

そう言いながら店の中に入り、小麦粉を買う、

節約のために纏め買い、それがリプレの信条の為、

俺やクロ、ガゼルが全員で持つ、一番多く持ってるのはクロだ、相変わらず謎の力持ち。

店を出て軒先を抜けようとしたが、予想以上に重いためちゃんとした道を歩こうと広い道に出ることにした。

 

「しかしさぁ、リプレってホント力持ちだよな」

 

リプレの仕事は非常に多い、炊事洗濯家事、子供たちの世話、

今でこそ手伝う人は非常に多いがそれまでずっと大変だったという事だろう。

 

「こんな時だから気づくんだよなぁ、感謝しないとなぁ」

「別にいいんだよ、あいつはそれを楽しんでるからな」

「ならいいんだけどさ」

「変に反省したところであいつに余計な気をつかわせるだけだ、そうならこういう具合によ、黙ってこき使われてやったほうがずっとマシってもんだろ?」

 

十数年来の付き合いであるガゼルがそう言い切る、それを聞いてハヤトは感動した。

 

「すごく感動した、リプレに伝えないと」

「おいやめろ」

「伝えたらおかず増やしてもらえるかもよ?」

「だからやめろって言ってるんだよ!」

「…!」

 

ガゼルの反応にハヤトが面白がっているが、

荷物を持っていたクロが足を止め、空を見て何か気になってる様子だった。

そしてハヤトも。

 

「そう照れなくて……、ん?」

「どうした?」

「いや、魔力を感じて…」

「そういや、なんか聞こえねぇか?」

 

ハヤトが不審な魔力を感じ取り、ガゼルは長年の盗賊の聴覚で何かの騒ぎ声を聞く、

通りの奥の歓楽街の方を二人で見ていると眩い光が二人の目に入った。

 

「これって…、召喚術の光だ!!」

「!!」

「な、なんだ!?」

 

光が天空へと上がり、空に異界のゲートが出現する、

そこから現れたのは全身が白銀に輝く、ワイバーンと呼ばれる召喚獣だった。

 

「な、なんだありゃ!?」

「ドラゴン!?こんな街中で、なんであんな召喚獣が!」

 

―シギャアァァァァーーー!!!

 

大きな咆哮を上げ、その大口を開き幾多の火球を吐き出して眼下の街並みを攻撃してゆく、

悲鳴や怒号などがぐちゃぐちゃに聞こえて、街が大混乱になっていった。

 

「おいハヤト!お前の召喚術でどうにかしろよ!」

「ガイエンならどうにかできるかもしれないけど…、この距離じゃ無理だ、行くぞガゼル!!」

「ケッ、仕方ねぇな!」

「!」

 

小麦粉の袋を全員放りだし、爆炎の方へと全員走ってゆく、

ガゼルは短剣を取り出し、ハヤトはサモナイト石に手をやった。

 

「頼んだぞ、みんな」

 

うっすらと石達が光るのを確認し、ハヤトは翼竜の元へと向かって行った。

 

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「おら!死にたくなかったら早く退きやがれッ!」

「立てるか、すぐにここから逃げるんだ、早く!」

 

炎が周りに燃え移り始めている街中では既に人はまばらだった、

腰を抜かしてるものや放心してるものを無理やりここから逃がしてゆく、

ある程度逃がしたらガゼルがハヤトに声をかけて来た。

 

「で、どうやってアイツを止めるんだ、まさか俺達で倒すんじゃねぇだろうな?」

「方法は二つある、召喚師に戻させるか、アイツを倒すかだ」

「マジで倒すのかよ!?」

「ガイエンならたぶん勝てる…、一発放ったら俺が倒れるけど」

 

鬼神将ガイエンの必殺技、真・鬼神斬なら間違いなくあの翼竜を倒せる、

だけどそれを放てばハヤトは魔力を切らして倒れてしまうのだ。

召喚師を探すため二人は周りを見るが人影は既にない。

 

「にしてもどこのどいつがこんなマネしやがったんだ?」

「マーン三兄弟ってことはないと思う、いくらあいつらでも自分の領地を破壊したりはしないだろうし」

「だろうな、あの金の亡者どもが自分の領地をわざわざ台無しにするわけねぇ」

 

流石に三兄弟が街を破壊するのはありえないと二人で頷く、

だったら翼竜を呼んだのはマーン三兄弟と敵対する連中か無色の派閥のどちらかだ。

 

「まさか…、呼ぶだけ呼んで逃げやがったんじゃねぇだろうな」

「可能性はあるけど…、そんなことするのか?」

「ムイ!!」

 

普段声を上げないクロが声を上げて一点を指す、

翼竜はまるで旋回するように一か所をぐるぐる回ってることにクロは気づいたんだ。

 

「あそこだ、あそこに召喚師がいるはずだ!」

 

ハヤトは召喚師を逃がさないために一目散にその場所に向かった。

突き進んで広間に出た、そしてその中心にいる何かをハヤトは見たが。

 

「え?」

「うわぁぁぁぁぁん!」

 

地面に尻餅をついた、金色の髪の少女がその場でわんわんの泣いていたのだ。

周りの状況はお構いなしという感じで、大粒の涙をポロポロとこぼしながら少女は力の限り泣いていた。

それを見たハヤトはある状況に酷似してることに気づく。

 

「似てる…、あの時のクラレットに」

 

少女から魔力が垂れ流しでかなりの量が出てることをハヤトは感じ取った、

魔力の暴走、かつてのクラレットほどではないがそれに近い状況だった。

周りには誰もいなかった、もしかしてあの翼竜は…。

 

「馬鹿野郎!なにぼさっとしてんだ!!」

 

ガゼルの声が切っ掛けになり正気に戻った俺は頭上に目をやる、

凄まじい勢いで自分めがけて、襲い掛かってくる翼竜に戦慄した。

すぐさま召喚獣を召喚しようとするが間に合わずに…。

 

「!!!」

 

――シギャァァッッ!!

 

クロがチャージからの体当たりを胴体にかまして何とか攻撃を避けることが出来た、

しかしクロの攻撃を受けても翼竜は何の変わり映えもなく、再び天空に舞い上がる。

 

「ムイ!!」

 

クロの激しい声に、少し心を落ち着かせて、再び石に手をやり、そして剣を抜いた。

旋回してた翼竜はその場に止まり、滞空してこちらに目をやる、

その口からは火の粉が漏れ始めており、いつ火球を放ってもおかしくなかった。

 

「あの野郎、俺達に狙いを付けたようだぜ」

「クロが体当たりをかましたせいかな」

「!!」

 

誰のせいだというふうに憤怒するクロだがそんなことよりも…。

 

「今はあいつを何とかするのが先だ、行くぞ!」

「ッ!厄日だな、おい!!」

「!!」

 

二人と一匹が翼竜に向けて突っ込んでゆく、

翼竜はなぜか火球を撃たず、その爪で切り裂こうと強襲してくる!

 

「おりゃ!!」

「!」

「ゲレレサンダー!!」

 

各々が攻撃を仕掛けるが、ガゼルのナイフはその甲殻に簡単に弾かれ、

ハヤトのタケシーも効果は薄く、クロの拳も体格の差で吹き飛ばされる。

 

「これならどうだ!!」

 

ハヤトは全力で剣を振るい、翼竜を切り付ける!

魔力を籠めた、全力の斬撃が翼竜の甲殻を切り裂き鮮血を迸らせた。

 

――シギャアァァァ!!!

 

「うわっ!?」

 

その場で大きく羽ばたき今度はハヤトに向かって噛みつこうと口を繰り出すが、

ハヤトはすぐに準備していた召喚術を発動させる。

 

「アーマーチャンプ!!」

 

巨大な盾を構えた鉄巨人が翼竜の攻撃を防ぐ、

圧倒的な衝撃と共に鉄巨人が出現して翼竜を防ぐ。

 

「次はこれだ、戒めの光輝にて我が敵を封じろ!【ヴァインシェード】!!」

 

無数の白亜の布が出現して翼竜を手足や口を雁字搦めに封じ込める。

翼竜がそれを千切ろうと暴れるが布は更にきつく結ばれてゆく。

 

「おお、すげぇじゃねぇか!」

「関心してる場合じゃないんだよ、クロ頼む!」

「!」

 

ハヤトのこの召喚術、白亜の縛布は魔力を籠めれば籠めるほど、その強度が上がってゆく、

ハヤトはこの翼竜を食い止めるのにかなりの魔力を籠めているのだが、徐々に布が千切れてゆく。

クロはそれを理解したのかチャージを限界まで貯めてダッシュと組み合わせて体当たりをかました!

 

「!!」

 

ドゴンと轟音と共に翼竜が吹き飛ばされて、そのまま広間に隣接する一軒家に突っ込む。

そのまま家は衝撃で完全に倒壊してしまった。

 

「あ………やっちまった」

「…」

「気にすんな、誰も見てねぇよ」

 

家一軒ぶっ壊して少し悪いことした気分に一同はなるが、

翼竜は再び動き出し、天高く舞い上がる!

 

――グウゥゥゥッッ

 

唸り声を上げてハヤトの方を睨みつける、

ハヤトはその様子を見て、やはりガイエンで決めるしかないと覚悟を決める。

しかし翼竜は……。

 

「えっ…、きゃぁぁぁぁっっ!!」

「やべぇ、アイツの所に!」

「くっ、間に合え!!」

 

翼竜は今まで狙いもしなかった、少女の方に向かって突っ込んでゆく!

ハヤトは全身に魔力を集中し少女の前にすぐに立ちふさがった。

 

――シャギャァァァァッッ!!

 

アーマーチャンプ…、だめだ、間に合わない、正面から受け止めるしかない!

ハヤトは全身に限界まで魔力を溜めこみ、突っ込んでくる翼竜に正面から挑む!

体当たりの様に頭蓋で特攻してくる翼竜を剣を盾にして正面からハヤトは受け止めた。

 

「うぐぐぐぐっ!ぐぅぅーー!!」

「!!」

「食らいやがれ!」

 

ガゼルがナイフを目に向かって投擲し、翼竜の瞼を切り裂いて怯ませた、

次にクロが翼竜の顔面をぶん殴り体勢を崩させる。

そしてハヤトは赤いサモナイト石を取り出して全ての魔力を籠めて召喚術を発動させた!

 

「力を貸してくれ…、鬼神将ガイエンッ!!」

 

現れた山さえ切り裂いたと言われる逸話を持つ鬼神将、

大太刀を抜き放ち鬼神将、最大の奥義が放たれた!

 

「真・鬼神斬!!」

 

――シャギャァァァァァァッッッ!?!?

 

真・鬼神斬の一撃が翼竜の翼を切り裂き吹き飛ばす、

翼竜がそのまま倒れてやがて動かなくなった……。

 

 

「はあっ!はあっ!や、やったのか?」

「……………」

「だ、大丈夫か?」

 

少女が放心状態で翼竜を見ながら呆けてるようだった、

まるでこの状況が信じられないといった感じだ。

 

「嘘…、アイツを倒せるなんて…」

「アイツ…?」

 

少女の言った言葉の続きを聞こうと耳を傾けるが…。

 

「ハヤト!そこから早く逃げろ!!」

「っ!?」

 

ガゼルの視線が上に向いてるのに気づいてすぐに上を見る、

そこには多数の瓦礫と看板が崩れ落ちて来ていた。

 

「きゃぁぁっっ!!」

 

少女もその光景を見てしまい頭を抱えてしまうが、焼け石に水だろう、

俺も碌に動けない状況だったため、せめて少女だけでも守る為に少女の上に覆いかぶさる。

 

「!」

 

クロが何とかしようと突っ込んで来ようとダッシュを使おうとするが。

 

――シャギャァッッ!!

 

「な、なんだと!?」

「!?」

 

傷だらけの翼竜がそのまま突っ込んで俺達の上に覆いかぶさる、

瓦礫が翼竜の背中に当たりバラバラに砕け散るがハヤト達は無事だった。

 

「…俺達を助けてくれたのか、なんで」

 

訳も分からない俺だったが、一つだけわかったことがあった、この召喚獣は……。

 

「この少女の召喚獣だったのか…」

 

それに気づくと同時に翼竜が送還の光に包まれて消えていった、

恐らくそれで傷だらけの体も向こうで回復しているだろうと、ふと安心した。

自分の腕の中で抱えられている少女は気を失っており、

恐らく彼女が気を失ったため魔力が途絶えた為、送還されたと思う。

 

「助かった~」

「無事か、ハヤト!」

「…」

 

ガゼルとクロが俺の事を心配してくれている、実のところ、もう一歩も動けないんだよな。

 

「しかし、あのワイバーンは何だったんだ?」

「ああ、それは…」

 

それを答えようとするがガシャガシャという、鎧の歩く音が聞こえてくる。

ガゼルはその音を聞くと焦り始めた。

 

「やべぇ、騎士団の連中が来やがった、早くズラかるぞ!」

「ガゼル、この子も頼む連れて行ってやってくれ!」

「はぁっ!?お前何言ってるんだ、そんな奴、騎士団に任せればいいだろ!」

「違うんだ、ワイバーンを召喚してたのはこの子なんだ!」

「はっ…?お前何言ってるんだ?」

 

ガゼルはハヤトのいう事を理解できなかった、こんな小さな子があんな召喚獣を召喚できるはずがない、

おまけに自分の身まで危険に晒してたのだ、そんなことありえないとガゼルは思っていた。

ハヤトはそんなガゼルの態度も仕方ないと思っていたがそれでもこの子を一人に出来なかった。

 

「この子はラミと同じだ、召喚術を暴走させてるんだ、制御ができてないんだよ!だからこのままじゃ騎士団の連中に捕まっちゃうんだ。頼むガゼル!」

「チビと……わかったよ!」

「ありがとう、ガゼル。クロ、俺を引きずってでも連れて行ってくれ」

「!」

 

ガゼルは少女を抱える、ハヤトもクロに引きずられる形でその場を離れてゆく。

ガゼルは後ろの足音を確認しながら知り尽くした路地裏を走り続ける。

大切な彼の友人と、腕の中で眠る少女をより安全な逃げ道に導くために…。

 

---------------------------------

 

北スラム、かつてオプテュスが縄張りを築いていた危険地帯、

今現在はオプテュスの大半のメンバーが失踪してしまったため統治者の居ないただのスラム街になってしまった。

そこに一人の青年がいた、貴族なのか身分のいい服を着ているがその眼光は近寄りがたかった。

青年の名前はソル・セルボルト、無色の派閥、セルボルト家の召喚師だった。

 

「白銀の翼竜、かつてウォーデンの持っていた秘伝召喚獣か」

「おお、随分派手に暴れてたぜ、まああのガキが倒すとは思わなかったけどな」

 

ソルと相対する男、太くて低い、どこかひび割れた感じのする声色だった、

幾多の傷が顔に入っており、その傷跡から歴戦の強者だと思わせる風貌だ。

そんな男を前にしても淡々とソルは言葉をつなげる。

 

「それで、ウォーデンの方には感づかれてないだろうな」

「そんなヘマはしねーよ、ともあれ、めでたくマーンのガキも確認できたんだ、ご注進行くのがスジなんだが」

「そうだな、すぐに連絡したほうがいいだろうな、感づかれる訳がないと思うが、もしものことがある」

 

ソルが片手を上げると男の後ろに黒ずくめの男たちが現れる、

どれも普通の気配を持っておらず、そこにいるだけで殺気を放っていた。

 

「命令だ、監視だけに留まり指示がない限り、介入するな。わかったな」

「ヒュゥッ!」

 

まるで泣き声のような声を男が上げると、黒尽くめの男たちも消えてゆく。

ソルはそれを確認すると、スラム街に足を動かした。

 

「何度も確認するようで悪いんだがよ…」

「わかってる、組織に戻れるように伝手は用意しておく、勝手な真似はしないで貰えるな」

 

そう伝えるとソルはスラムの闇へと消えていった。

男がそれを見届け、懐から煙草を取り出し、火をつけて一服する。

 

「こんな機会はねぇ…、組織から一度落とされて、戻れる機会は二度とこねぇ、悪いがよ。決めさせてもらうぜ?」

 

ピンッと半ばまで吸い込んだ煙草を指ではじき、湿った地面に触れてジュッと音を立てたその時には、

既に男の姿は消えていたのだった……。




第三者の加入のせいで難易度はかなり高くなるでしょう。
まるでサモナイ2の序盤のルヴァイドさまルートみたいやぁ…。

ワイバーンは強敵ですけど、ハヤトには切り札がある為、苦勝しました。
特に気にしてなかったけどガイエンのやり方って古の召喚術の正しいやり方だったんだな。
まあ、ハヤト君ぶっ倒れてますけどね。
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