サモンナイト ー生贄の花嫁ー   作:ハヤクラ派

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2万2千文字、今まで書いた文字数では中堅クラスの文字数か、
原作と違い、結構結末が異なったりするので、差異を知りたい場合は原作買えよー。
アマゾンだと今、1円だそうだ、0円は俺が買った。




第16話 繋いだその手は

転がり込む形で帰って来たハヤトとガゼル、

しかしその手に小麦粉ではなく女の子を抱えて来たのを見た最初の一言が。

 

「小麦粉、どうしたの?」

 

唐突な流れには既に慣れ切ってたリプレはさほど驚きもせず、

動けないハヤトは置いといてクロとガゼルに小麦粉の回収を命じる。

そして翼竜と激闘を繰り広げた立役者のハヤトは……。

 

「熱づぅぅ!!熱い熱い!」

「わわっ!ごめんハヤト」

 

進行形でユエルのストラの被験者にされていた。

 

「いいんですよ、ユエル。もっとガツンとやっちゃってください」

「でも…」

「大丈夫ですよ、無駄にタフですし、少しぐらい痛い方がいいんですよ」

「クラレット…、勘弁してくれ…」

「何言ってるんですか!ワイバーンと正面から戦うなんて無茶して魔力の過剰付加だけで済んでる時点で運がいいんです!大体は火達磨にされてもおかしくないんですよ!」

「うぅ…」

 

ペチペチと頬を叩かれへこむハヤト、連れて来た女の子を見た時、「またですか」と白い目で見られ、

おまけに翼竜と戦ったことを話すと物凄い剣幕で怒ったのだ。

 

「しかしよぉ、兄貴がワイバーンってのとやり合うなんてな、俺っちも戦ってみたかったぜ!」

「さすがはマスターですの、ワイバーンさんを撃退するなんてすごいですの♪」

 

脳筋と能天気が何か言ってるが、それを耳に入れたクラレットは更に怒り始めた。

 

「何言ってるんですか!ワイバーンはメイトルパの召喚獣でも上から数える方が早いほど強い上級召喚獣なんですよ!普通は逃げるべきです!二人とも召喚獣の危険性を考えてるんですか!」

「ふみゅぅ~」

「お、おお…」

「…こっちに火飛ばないうちに退散しないとね」

 

エルカはそんな二人を見捨ててさっさと部屋から出る、

メイトルパの族長の娘としては翼竜の危険性は良く知ってる為、彼女が二人を庇うことはないのだ。

 

「でも、本当にあの女の子が召喚したんですか?」

「間違いないって、魔力持ってたし、あの子が気絶したときに消えたんだから…、痛っ!」

「わわ、ごめんなさい」

 

ユエルが必死にストラを操作してハヤトを癒す、

ストラ自体はセシルのおかげで基礎を覚えて癒すことが出来るようになったユエルだが、

問題だったのはオルフルの生命力だった。

膨大な生命力を操作しきれず、ストラの出力が高すぎで逆に相手を傷つけてしまうのだ。

その為、体全身を痛めてるハヤトは絶好の訓練対象なのだ、無論お仕置きも含まれてる。

 

「だが、仮にあの子が召喚できるもんなのか?ワシにはそうは見えないのだが」

「そうですね…、どう説明すればいいのでしょうか」

 

エドスの問いかけにクラレットは少し眉をゆがめて悩む、解りやすい様に言葉を考えているのだろう。

 

「召喚師の魔力の絶対量はあまり変化しないんです。例えばハヤトが100として私は400ぐらいですから」

「え!?そんなに魔力に差があったのか」

「わかりやすく言ってるだけですよ、実際はもっと私の方が高いですし、魔力運用もありますから」

 

ま、まあ1、2ヵ月の俺よりずっと高くて当然だよな。

 

「彼女もたぶんワイバーンを召喚できる魔力は持ってるんだと思います。でも問題は技量ですね」

「技量?」

「ええ、召喚師も組み分けがありまして、C~Sまでのクラスに分かれてるんです。ワイバーンは…誤差がありますけど召喚できればAランクですね」

「なるほど、つまりあの子もAランクの召喚師ってことか?」

「いえ、召喚というのは制御出来て成功なんです。たぶん何かの衝撃で召喚されてしまって、召喚獣が暴れてたのかもしれません」

「なるほど…うーん」

 

つまりあの子は、自分で翼竜を制御出来てないってことか…、

俺達があの子の扱いについて悩んでると、リプレが声をかけて来た。

 

「とりあえず今はあの子をどうするかだけ考えましょう?」

 

その一声で満場一致で全員が納得した、少し考え過ぎてたようだな、

また翼竜が出てきたら何とかすればいいだけだもんな。

 

「それじゃあ、私達はあの子の様子を見てくるので、ユエル。ハヤトの事を頼みましたよ」

「え”!?」

「うん、ユエル頑張るね!」

「頼りにしてますよ」

「えへへ」

 

クラレットに頭を撫でてもらって笑顔になるユエル、

だけどそれって俺の治療がこのまま続行ってことなのか。

 

「しっかりと、治るまで、動かないように」

「……」

「返事!」

「はい!」

 

自業自得…、俺は諦めて不慣れなストラ治療を受けることになった。

 

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「あ、姉ちゃん」

 

私達が少女の寝ている、部屋に入るとアルバが最初に声をかけてくれた、

子供たちの中で一番年上だけど、唯一の男の子、今日は少女が寝ているためか、

気を使っていて声を小さくしている。

 

「あの子、まだ寝てるみたいだよ。なんだかすごく疲れてるみたいだ」

 

クラレットか少女に近づいて様子を見る、目を細めて何かを確認してるようだった。

 

「クラレット、どう?」

「魔力が少し減り過ぎてるみたいですね、ハヤトと同じ魔力の枯渇が原因ですね」

 

ハヤトは戦闘で大きく魔力を消費すると回復のために長く寝たり、お腹を空かせたりする、

一時的な症状の為、命に別状はない、あくまである程度の段階までではあるが。

 

「……(ぎゅう」

 

枕元にはラミちゃんがいてくれた、大きなクマのぬいぐるみを抱きしめて心配してるようだ。

 

「大丈夫ですよ、ラミ、きっともうすぐ目を覚ますはずだから」

「…(こくん」

 

心配そうに頷くラミ、素質がある為、一応ハヤトと同じように召喚術の勉強をしている、

ハヤトの様に友誼を持って召喚されるメイトルパの仲間たちは幼いながら協力していける資質を持っていた。

正直な話、教えるのは少し不安だったが理解ある子だったし、召喚獣側も協力的だったので問題はなかった。

 

「全くいい気なもんよね、いい加減目を覚ましてもいいのに」

「フィズ、そんなこと言ったらこの子がかわいそうでしょ」

「…ふーんだ」

 

少し離れた椅子の上で不貞腐れてるフィズ、

見知らぬ女の子にベットを独占させられていることが気に入らないようだ。

…そういえば昔、春ちゃんも。

 

「この子、やっぱり普通の家の子じゃないわ」

 

少し考えに浸り始めていたがリプレの一言が私の意識を浮き上がらせる。

 

「だって、この子の来てる服って、私達が買えないような高級な品だもの」

 

壁に掛けてある彼女の上着を確認する、確かに気を付けて洗ってあるのかよれもシミもない、

そして極めつけは留め具などに使われてる金具は金で出来ていた。

 

「これ、キルカの布よ、クラレットの使ってるものよりもきっともっと高級な」

「そうなんですか?」

 

そういいながら上着を触りながら自分の服を触り比べる、

確かにこの少女の服の方が随分と柔らかい感じがする。

 

「ねえねえ、ちょっとあたしにも触らせてよ」

 

フィズが見たこともない高価な服を興味津々にしている。

私はせがまれるままに服を手渡すと頬をすり寄せてその柔らかい感触を堪能した。

その時。

 

「ちょっと貴女、私の服、勝手に触らないでくれる!」

 

何時の間にか目を覚ました少女が身を起こし、

敵意を剥き出しにしてフィズの事を睨みつけていた。

整った顔立ちは可愛いが、その迫力にクラレットは少し驚いていた。

 

「ごめんなさいね、ほらフィズ」

 

リプレが少女に謝って、フィズにケープを渡すように促すが、

フィズは、ムッとした顔でそれを拒否すると、逆に少女に食い掛かってしまった。

 

「なによ!ケチケチしなくたっていいじゃない。減るもんじゃないんだから!」

「ちょっとフィ、」

「減らなくたって、そんな手で触られたら、汚れちゃうって言ってるのよ」

 

フィズを嗜めようと私が声を出すが、間髪入れずに帰って来た強烈な一言を聞いて何となく察した。

この子は【そういう子】なんだと今のやり取りで理解できた。となると…。

クラレットが少女の事を考えてるが、それを察せず、少女が更に口を紡ぐ。

 

「アナタみたいな平民の子が、べたべた触っていいモノじゃないって言ってるの!!」

「な…、なんですって!?」

 

たちまちフィズの顔が怒りで真っ赤になって飛びかかろうとするが、

それはマズいとクラレットがフィズを掴み引き留める。

 

「はなしてってば!この女に、思い知らせてやるんだから!!」

「フィズ、ダメですって、病み上がりなんですよ!」

「むぅぅーー!!」

「ねえ、クラレット。フィズを連れて外で待っててくれる、アルバとラミもお願いね」

 

事態についていけないアルバは、ぐずり始めたラミを連れてクラレットと一緒に部屋の外へと行った。

 

「痛つぅ~、ん?どうしたんだ?」

「なんであんなの連れて来たのよ!」

「え?え?」

「思った以上に大変でした…」

 

ユエルの治療をいまだ受けていたハヤトは事態を理解できなかった。

 

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ハヤトが肌着に着替えたころ、少女がリプレに連れられて、

広間に姿を現した。涙の後を綺麗に拭いて身だしなみを整えたその姿はやはり普通の街の子供とは違う。

広場にいるメンバーをキョロキョロと見渡すとハヤトを見つけて頭を下げる。

 

「あ、貴方は…、あの時はどうもありがとうございます」

「ああ、覚えてたのか、怪我が無くてよかったよ」

「いえ、貴方が助けてくれなかったら、どうなってたか…」

 

先ほど聞いた話と全然あってない事に少しハヤトは戸惑ったが、

頬を少しだけ赤く染めたその姿に少し好感触だった。

 

「ロリコン…」

 

聞きたくない言葉と白い視線が突き刺さる気がするがあえて今回は気にしない方向にしよう。

 

「感謝もいいけど、みんなに貴女の名前を教えてあげて?」

 

リプレに促されて、ハヤトから全員に視線を移す。

少女はおずおずと口を開くと自らの名前を口にした。

 

「ミニスです…。どうも、ありがとう…」

 

子供部屋の一件をハヤトと同じように聞かされたガゼルが拍子抜けした顔でハヤトを小突いた。

 

「……なんだよ、全然おとなしいじゃねぇか」

「うん、俺もびっくりしてる、フィズがアレだったからさ」

「……」

 

やはり事態の変化に戸惑ってあのような態度をとってしまったと二人は思ったが、

クラレットの表情は晴れてないようだ……、俺は関係ないよな?

 

「ふーんだ。どうせ、ネコを被ってるだけよ」

 

先ほどのやり取りのせいでフィズがそう決めつける。

ハヤトがそれを嗜める横で、まずはガゼルがミニスに挨拶をした。

 

「俺はガゼルってんだ。ま、どこも怪我がなくてよかったな」

「ええ、おかげさまで」

 

気安いガゼルの口調にも丁寧に返答するミニス、

自分たちの知ってる子供の年齢に合わない礼儀に少し、引いてしまうが話題をすぐに変えることにした。

 

「あ~、もう一人、一匹か?クロの奴どうしたんだ?」

「クロ…?」

 

ミニスは誰の事を言ってるのか、わからない、

それに気づいたのかハヤトがそれに答えてくれた。

 

「俺の護衛獣だよ、とはいっても認められてないけどな、そういえばクロの奴どこ行ったんだ」

 

クロがどこに行ったのかわからないとハヤトは普通に答えるが、

何故かミニスが不機嫌そうな表情をしていた。

 

「悪いな、アイツたまに居なくなるんだよ」

「……いえ、いいです」

「??」

 

なぜミニスが不機嫌になるのかよく理解できないハヤト、

そのまま挨拶は続き、そしてモナティの番になった時にそれは起こった。

 

「よろしくですのー、ミニスちゃん。モナティと言いますの」

 

フラットのみんなを笑顔にするようなモナティの笑顔、

そして差し出された、手を見て何を思ったのかミニスはその手を、叩いたのだ。

 

「無礼者っ!」

「にゅっ!?」

 

叩かれた事よりも、ミニスに怒鳴られてびっくりしたモナティは、

そのまま後ろの方に倒れ込んでしまった。

 

「モナティ!」

 

ユエルが、倒れたモナティのそばに駆け寄り、ミニスの事を睨む。

 

「何すんだよ!」

「貴族の子女に対して、そんな呼び方許されると思ってるの!それに貴女、なに私の事を睨んでるのっ!!」

「う、うにゅぅぅぅ……っ!」

 

畳みかけるようなミニスのその言葉の前に、モナティは頭を抱えて蹲ってしまった、

ユエルはそんなモナティを庇う様にミニスを睨みつけ、唸り上げ始めている

 

「…ふう」

「クラレット?」

 

横目で見たクラレットはやっぱりこうなりましたか、といった感じの顔をしていた。

もしかしてクラレットはミニスがこういうことを起こすのを知っていたのか?

 

「ほーら。やっぱりいい子ぶってただけじゃない」

「礼儀知らずな相手には、それ相応の扱いで十分だってことよ……、ま、もっともアナタみたいに、人の寝ている間にその持ち物をどうにかしちゃうような子には、こんな事説明したって無駄でしょうけどね」

「……ッ!!」

 

ガタンと椅子から立ち上がるフィズ。だけど隣に座っていたガゼルが無言でズボンの裾を引いたようで、フィズは大人しく椅子に座った。

フィズが怒りに燃えるその視線をミニスにぶつけるが、ミニスは冷笑を持って受け止めていた。

モナティは完全の泣きべそかいてるし、エルカに至っては最初から広間にいなかった。

もしかしてクロとエルカの奴、察してたのかもしれない、ミニスがどういう人物かを。

 

「まあ、なんだ…、とにかく二人とも落ち着け、ユエルもだぞ」

 

そんな重苦しい空気が流れる中、エドスが声を出して場を収めてくれた。

 

「ミニスは、やっぱり貴族だったんだな」

「ええ、そうです」

「だったら、早く帰らないと。ご両親もきっと心配してるぞ?」

 

両親とという言葉を聞いたミニスの表情がわずかに曇る、

まるでそれ以上の追及を拒んでるようだった。

 

「どこに住んでるのか教えな。すぐに俺が、送ってやるからよ?」

「……」

 

何かあるのだろう、爪を噛み始めて言葉が出ないミニス。

 

「今日も遅いし、帰るのは明日にした方がいいのかもしれないわね」

 

リプレがそれを察してくれたのか、気遣うようにミニスに話しかけた。

 

「無理しなくていいのよ?一晩泊まって、まずは体を休めましょう?」

「……」

 

うなだれたまま、ミニスはリプレ連れられて部屋へと戻っていった。

 

「よく我慢したな、チビ」

「……明日まで、だよね」

 

普段の彼女が見せないような表情でガゼルにフィズが縋り付いた。

 

「明日になったら、あの子帰っちゃうんだよね!?」

「ああ、そうだぜ、だからもうちょっとだけ我慢してやれよな」

 

そういいながらフィズの髪をくしゃくしゃと撫でるガゼル、

もしかして、何となく解ってたのかもしれないな、フラットに新しい人物を入れればズレ始めるって、

今までが運が良かっただけで、こういう事も何時か起きるかもしれなかったって。

だから俺もフィズを元気づけるために声をかけた。

 

「明日には必ずミニスの保護者を見つけるから、もう少し頑張ってくれよな」

 

目線を合わせてフィズを励ますと彼女は泣いていた、

ぐしゅりぐしゅりと涙と鼻水まで流して苦しんでいたのだ。

俺の妹も小さい頃はよく泣いてたなと思い出して、フィズを顔を拭いてやった。

 

「…うん」

 

目はまだ赤いがフィズが少し頑張ろうとしてることが伝わる、

こうして前途多難な一日がやっと終わったのだった。

 

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次の日、玄関先で俺とクラレットはミニスが出てくるのを待っていた。

クラレットも今回の事で色々と気になることがあるそうで、着いてくると申し出たのだ。

それに俺もクラレットに聞きたいことがあった。

 

「なあ、クラレット」

「なんですか?」

「もしかしてなんだけどさ…、ミニスが貴族の子ってこと、気づいてた?」

 

あの時、やたらと落ち着いてたような気がする、

もし知らなかったなら、きっとクラレットも混乱してると思う。

 

「ええ、気づいてました。確証もありましたし」

「やっぱりかぁ…」

 

クラレットはやっぱりミニスが貴族だって気づいてたんだ。

だとしたらどうしてミニスの事をすぐにみんなの前で話さなかったんだ?

 

「なあ、クラレット。どうして予めみんなに話しておかなかったんだ?話して置けば、フィズが泣くことも」

「…あそこまで険悪になるなんて思ってませんでしたけど…、やっぱり確認を取りたい好奇心が上でしたから…」

「好奇心?」

「召喚獣が本当にどう扱われてるか、です」

「!?」

 

そういえば、今まで召喚獣は奴隷とか労働力とか色々と聞かされてきたけど、

直接確認するのは今回が初めてだった、みんなを笑顔にするような純粋なモナティに、

あそこまで叱咤するとはその話を聞いていた俺達全員が思いもよらなかったのだ。

 

「先入観、召喚獣は人に使役されるべき、そういった感覚が刷り込まれてるのかも知れません。私自身、無色の派閥に居た時はそれが普通でしたし、外でそれが普通なのかはわからなかったですから」

「それでミニスを使って確認をしようと…」

「あの子ぐらいの年齢で行動を確認できればこの世界がどうなのか理解できますから…、モナティには謝っておきました。許してくれましたけど…」

 

クラレットはたぶん、俺達が居なくなった後の事を考えてるのかも知れないな。

何時か元の世界に帰る、そんなときにモナティ達まで連れて行くわけにはいかない、

だからこの世界で召喚獣がどんな扱いなのか、改めて再確認する機会が目の前に来たってことか…。

 

「クラレット」

「…ハヤト」

「連れて行ったっていいじゃないか」

「え?」

「メイトルパに帰る手段が無くてそれでも俺達と一緒に居たいってモナティ達が思えば一緒に連れて行ってやればいいだろ?父さんや母さんなら笑って許してくれるよ、春奈は…、まあ平気だろ、面白がると思うし、妹が出来たとか言って喜ぶさ」

「…ふふ、ハヤトは何でも私の事わかってくれるんですね」

「一人で考えるなって約束したろ?」

「それは貴方にも言えますよ、ハヤト?」

「え、えっと……」

 

二人が何時もの様に桃色空間を形成してると、少し困惑したようなミニスが出てくる、

ガゼルもミニスと一緒に出てくるが、こっちは馴れてるのか少しうんざりしているようだ。

 

「気にすんなよ、こいつらはたまにこうなるんだ。何時もの事だからよ」

「そうなのね、うん。ならいいわね」

 

ある程度の事を飲み込んだミニスはハヤトたちと一緒に街に出ていくのだった。

 

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三人はミニスを連れて街を歩いていた、ミニスは相変わらず自分の家について口を聞かない、

朝から昼にかけては孤児院に居たのだが、ミニスは何も言わないので街に出ることにしたのだ。

貴族の子女だとわかっているため、街に出れば探してる使用人などに出会うかもしれなかった。

もし見つかって誘拐犯だと決めつけられれば逃げればいいという安直な考えもあったが。

しかし、意外だったのはミニスだった、

外に出るのを嫌がると思ったのだが実際は喜々として外に出たいと言ったのだ、

孤児院に居るのも悪くはないそうだが、外に出たいところは子供らしい。

クラレットは「この街の子じゃないかもしれませんね」と言っていたがそれでも籠るよりはましだろう。

 

「貴方達ってこんなところで暮らしていて平気なの?」

「こんな所ですか…」

「う~ん」

 

クラレットとハヤトが周りを見る、南スラムは正直な話、少し汚いのである。

孤児院周辺は綺麗にしてるがそれから離れると、工場区が隣接してるせいもあり、

染料の独特な匂い、城壁のせいか日が差しにくい為、地面がじめじめしてたりなど、

お世辞にもいい場所ではない、治安も北よりましだがいい方ではないだろう。

ミニスは足元を注意しながらそれを指摘していた。

 

「平気っていうか、馴れちまってるからなぁ…」

 

ハヤトにもクラレットにもすぐに理解されてたせいで意外なことを聞かれたなぁと思いながらガゼルが答える。

 

「赤ん坊の時からずっとここで暮らしてるからな、捨てられたのも、ここ路地裏だって話だし……」

「そうだったんですか…」

「え!えっ?捨てられたですって!?」

 

混乱し、大声を上げてから、ミニスはその口をふさぐ、気まずそうにガゼルを見るが、

別に気にした様子は無かった、そんなガゼルに続き、ハヤトが口を開いた。

 

「なあミニス、あそこにいる殆ど…、全員だな、みんな居場所を無くした人たちなんだ、捨てられたとか、戦争で孤児になったとか、……召喚されてはぐれになったとかさ。本当に色んな人たちが集まって生まれた場所なんだよ。まあジンガみたいなやつもいるけど」

「極め付けなのは私達ですよね、ハヤト」

「え、それってどういうことなの?」

 

何を言ってるのかわからないミニスは二人に聞いた、

ハヤトとクラレットは苦笑いしながらそれにこたえてくれた。

 

「俺達さ、はぐれ召喚獣なんだよ」

「ウソ!?貴方たちはぐれだったの!?」

「ええ、名も無き世界と言う、場所から召喚されてしまったんです。まあ、私の場合ははぐれから元の世界に送還されたって感じになるんですかね」

「そうだな、クラレットは、リィンバウム出身だしな」

 

重要な部分をぼやかしてハヤト達はミニスに話した、

10年前にリィンバウムから名も無き世界にやって来て、兄妹として生活したこと、

その後、こっちの召喚術の事故でクラレットが呼び出され、ハヤトはクラレットに召喚され、

送還する方法を失ってしまい、現在に至ると。

儀式の事やクラレットの出身などは話さなかった。

 

「まあ、モナティやアカネや俺の召喚獣のみんなと付き合ってさ、俺は色々と考えさせられたよ。過去にどんな事情があっても、大事なのは今のその人の生き方だと思うからな」

「まあな…、要は、そいつらと楽しく付き合っていられるかってことだよな」

「あんなところにいたら召喚獣も人も関係なくなってきますからねぇ」

「だな」

 

そんなやり取りをして4人はスラムを抜けた。このまままっすぐ行けば商店街だったが、

とりあえず左に回って市民広場に足を運んだ。

ガゼルは「とりあえず広場をぶらつくとしようぜ」と言っていたが、

クラレットが「どうして人の多い商店街に行かないんですか?」と言うと。

 

「懐具合の都合、ってことでって、クラレット、お前わかってて言ってるよな」

「うふふ」

 

そんなやり取りをミニスが見て、くすくすっと笑った。

それは礼儀などではなく年相応の少女の見せるごく自然な笑顔、

ハヤトはそれを見て、ミニスも普通の少女だったんだなと安心したのだった。

 

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「ここが市民広場だっていうの?」

 

市民広場についた4人、しかしミニスはまるで信じられないという顔をしていた。

彼女の持っていたイメージとは、どうやら大幅に違ったらしい。

 

「まあ、公園じゃなくて広場だからなぁ…」

「運動広場とか多目的広場とか言った方がいいと思う気がしますね。まあそれだとあの噴水いりませんけど」

 

相変わらず、ダメ出しをするクラレット、意味もないものなどを見ると少し口が悪くなる、

別に非難してるわけではないが、もっと有意義に使ってほしいと思ってるだけだった。

 

「それじゃあ、お前らが想像してる市民広場ってのはどんなんだよ?」

 

イメージと全然違うと落胆してたミニスとダメ出ししていたクラレットにガゼルは聞いた、

ハヤトに聞かなかったのはいい答えを出せない気がしたからだ。

 

「そうねぇ、まず、ちゃんと塗装された道が必要でしょ」

「噴水はもっと大きい方がいいですよね」

「そうそう」

「あと、遊べる遊具も必要ですよね、憩いの場になりますし」

「私の知ってるところだと噴水周りに花壇があって、綺麗なお花が咲いてるの。食べ物だって出店が出ていたわ。一度だけ、そこで買ってもらったパンケーキ、凄くおいしかったなぁ…」

「へぇ……、食べ物の出店なんて、祭りの時ぐらいしかお目にかかったことないぜ」

 

ハヤトはその話を聞いて最近行った市民広場の出来事を思い出した。それはかつての花見の時、

酒池肉林とまでは行かないが、主に主犯格二人(夏美と春奈)のせいでしんどい思いをしたことを…。

 

「いい思い出…、無いなぁ」

「「??」」

 

へこんでる俺の事を理解できない、ミニスとクラレットは置いといて、

ガゼルの奴、自然な形でミニスがサイジェントの住人じゃないことを聞き出したな。

サイジェントの住人なら市民公園を知ってるはずだからな。

 

「まあ、市民公園は色んな催しものが行われてるからな、ついこの前までサーカスが来ていたし」

「サーカス!?」

 

サーカスの話を聞いてミニスが好奇心からその話を聞きたがっていた、

近くのベンチに座り、サーカスについて話してあげた。

 

「って訳なんだよ」

「へえ…。あの、はぐれたちってサーカスの団員だったのね」

「ガウムはともかくモナティは失敗ばかりしてたらしいけど」

「うふふ、どんな失敗をしてたのか、なんだか想像できちゃうわね」

「今でも失敗良くしますから…、少し良くなりませんかね、あれ」

 

ひとしきりの談笑が続き、やがてミニスが羨ましそうに言った。

 

「いいなぁ…、私、そういうのって見たことないから…」

「え?だって、お前みたいな貴族の子供なら、いつだって行けるんじゃないのかよ?」

「そんなことないわ、お勉強しなくちゃいけないことがいっぱいあるから。お屋敷の外にお出かけすること自体少ないんだもの。それに…」

 

俯き、寂しそうな顔をしてミニスは呟いた。

 

「連れてってくれるような人なんて、私にはいないし…」

 

貴族がなんでも手に入る、そんなことなんてないんだな、

この少女はたぶん一緒に居てくれる誰かが欲しいんだろう。

親でも姉妹でも、友達でもいい誰かが、だから俺は…。

 

「なぁ…、え?」

「……(ふるふる」

 

俯くミニスに気付かれない様にクラレットは俺に静止をかけて首を振る、

そうだったな、俺はこの世界の住人じゃないんだ、何時か帰るとき、ミニスを置いてってしまう。

無責任にミニスを助けようなんて考えたら、きっとミニスはまた辛くなるだろうし。

 

しかし、そんな気まずい沈黙は、突如として響き渡った轟音によって破られることになった。

 

――ドゴォォォォォォォン!!

 

「きゃぁっ!?」

「うわっ!」

 

俺とクラレットは跳ね上がったベンチごと、地面に投げ出された、

二人して思いっきり、すっころんでしまし、少々情けなかったが、すぐに体を起こす。

ガゼルはミニスを横抱きにして跳躍して難を逃れてた、こういうところが流石だと思う。

 

「…!、ハヤト、召喚術です!」

「なんだって!?」

「あっ、あれを見て!」

 

クラレットが召喚術の魔力を感じ取り、先ほどの衝撃が召喚術のものだと確定した、

そして、抱かれたままのミニスが指をさす方向に視線を向けるとそこには召喚獣の姿が見えた。

 

「ありゃあ、なんだクラレット!」

「あれはヒポスです、メイトルパの幻獣です!」

 

クラレットも召喚できる、メイトルパの幻獣ヒポス、

突然広場のど真ん中に出現した巨大な召喚獣のせいで広場は大パニックだった。

俺はミニスに視線を向けるが、ミニスは魔力を出しておらず、あれはミニスのものではないと理解できた。

もしかして、ミニス以外にも召喚師がこの街に来てるのか…?

 

「ハヤト、ヒポスが!」

 

重々しい足音を鳴らしながら一直線にヒポスがこちらに向かってくる、

倒すことは可能だったが、ミニスもいるし、何より厄介ごとを増やせないため逃げることにする。

 

「逃げるぜ、ハヤト、クラレット」

 

ミニスを再度抱きかかえなおし、ガゼルが駆けだそうとしたまさにその時。

 

――ブモォォォォォォッ!!

 

バグパイプの様な唸り声を上げたヒポスがガスを吐き出して、広範囲をガスで包み込んだ。

 

「ハヤト!催眠ガスです。吸わないでください!」

 

ハンカチを取り出して口と鼻を抑えるクラレット、

俺はガゼルとミニスの方を確認するが、二人はガスの対策が出来ず、

そのまま地面に倒れて気絶していた。

 

「ガゼル!ミニスっ!大丈…ッッ!?」

 

倒れた二人にハヤトが駆け寄ろうとした時、殺気を感じ取ったハヤトが剣をすぐに抜き放ち殺気のある方に我武者羅に振る、

ガキィン、と音を立てて何かを弾くとすぐにそっちの方を確認する。

 

「ヒョオォォォォッ!!」

 

奇怪な雄たけびと共に繰り出した刃を防ぐ、サモナイト石を取り出すか悩んだが、

その考えをすぐに捨て、目の前の男に意識を向けた、

男はそのまますぐに突っ込み、刃――、鉤爪で攻撃を仕掛ける、

ハヤトはその攻撃を防ごうと剣を上げた瞬間、男は蹴りを繰り出すが、

スタウトとの戦いで暗殺者のやり口を理解し始めてるハヤトは咄嗟に腹に力を入れてその蹴りを耐えた。

 

「うぐっ!」

 

凄まじい衝撃が骨まで響いたが、耐え抜き、吹き飛ばされながら体勢を立て直した。

ガスが空気に溶け込んでいき、視界が晴れ始めると、ハヤトは男の姿を確認できた。

それは真っ黒な服装に身を包んだ筋肉質な男、目につく場所に無数の刀傷が刻まれており、見るからに普通ではなかった。

そんな凄みを感じさせる男は、こっちの姿を確認するとニヤリと笑った。

 

「驚いたな、不意打ちのはずだったがなんで気づいた?」

「剣を教えてくれる人が、いつも殺気込めて攻撃してくるからな」

「ほう…、だが悪いがよ、アレは連れていくぜ?」

 

男が背を向けて倒れてる二人の方に向かう、

そうか!俺を蹴り飛ばしたのは俺をあそこから遠ざけるため!

ハヤトもすぐにその男に近づこうとするが、蹴りが思ったより深く入ったせいかうまく立てない。

このまま男の行動を止められないと思われたが…。

 

「ゲレレサンダー!」

「うおっ!?」

 

別の位置から二人に被害が及ばない程度に威力を落としたタケシ―の電撃が男を襲うがかわされる。

クラレットは再度召喚術を行使するために魔力を高め始めた。

 

「思ったよりも厄介な連中だな!」

「くっ!」

 

シャインセイバーやタケシ―で攻撃を仕掛けるが、ガスを少量吸い込んでしまい、

意識に影響が出ていたクラレットは正確に男を狙えなく、そのまま接近を許してしまう。

 

「きゃあっ!」

「クラレット!」

「おっと、動くなよ?」

 

クラレットの顔に鉤爪を向け、脅す男を俺は睨め付ける、

男はそれを見ると少々苦い顔をして口を開いた。

 

「クライアントの命令でね、この女も手を出すなってことなんだが…」

「うぅ…」

「あくまで殺すなって話だ、女として一生の傷をお前も残させたくないだろ?」

「…目的はミニスか?」

「そうだ、さっさと連れてきな」

 

こいつの目的はミニスだけってことか、クラレットとミニスを交換してさっさと逃げたいってことだな、

普通に考えて一日の付き合いしかないミニスと何年も一緒に居るクラレット、決めるまでもないが。

 

「ハヤト、わかってますね?」

「ああ、わかってるさ!」

 

俺はサモナイト石に魔力を通し、召喚術を発動させる、赤い光が周囲に漏れ始めた、

その光景を確認した男が、動揺し始める。

 

「おい!この女がどうなっても…」

「ガイエン、頼む!」

 

現れた鬼神将ガイエン、俺の指示に従い、その大太刀から鬼神斬を男とクラレットの下に振り下ろした!

 

「ッ!!」

「あっ!」

 

男は盾にする感じでクラレットを前に突き出すが、剣速は一向に変わらず、

すぐさまクラレットを手放して男は飛び出す形でその場から離れる、

そして鬼神斬の一撃はクラレットに直撃して、粉塵が巻き上がった!

 

「お前、自分の仲間ごと攻撃するだと…、正気か!?」

「よそ見すると…」

「【バラライカバインド】!!」

 

突然、男の足元から草木が生えだしてその動きを封じた、

男はすぐに声がある方の確認をすると、そこには先ほど吹き飛ばされたはずのクラレットの姿があった。

 

「ハヤト、今です!」

「ああ、聖母プラーマ。ガゼル達を頼む!」

 

ハヤトは隙出来ている間に、プラーマを召喚して、ガゼル達の治療を始めた、

二人は無色との戦いに備えていくつかの決めごとをしていた。

その中にクラレットが人質に捕らえられたときの対処の話もあったのだ。

ハヤトは反対したが、幻実防御と言う確実な防御方法があるクラレット。

だからこそ、ハヤトはガイエンでクラレットごと攻撃するという暴挙に出れたのだ。

そして男はその行動にまんまと騙され、今現在クラレットの召喚術で動きを封じられていた。

 

「そういうことかよ」

 

察したのか悪態を男は付くが、いまだ落ち着いていた。

 

「話してもらえますね。あなたは何者なんですか?」

 

クラレットが落ち着いた男に声をかけて降伏を促すが、

男は何を思ったのか煙草に火をつけて吸い始める、その行動に多少ハヤトはイラつくが、

クラレットはどうにも思わず、蔓草の強度を高めていた。

 

「あんまり、人を睨んでばかりいると俺みたいになるぞ?」

「ッ!」

 

突然煙草をクラレットに投げ飛ばし、クラレットはそれを回避するが、一瞬魔力が途切れかける、

蔓草を鉤爪で無理矢理切り裂いて、男がクラレットの召喚術の届かない範囲に下がると口を開いた。

 

「ったくよ、なーにがあの二人なら大したことないだ、全然やべぇじゃねぇかよ」

「逃げる気か!」

「そりゃ逃げるだろ、ここで戦っても得なんてないしな、そいつらも起きたからな」

 

ガゼルたちに視線を向けると、既にガゼルは起きており、

ミニスもゆっくりだが意識を戻し始めていた。

 

「てめえっ、待ちやがれぇっ!」

 

ガゼルが叫んだ時には既に男は路地の角へと消えてゆく、

あれだけの攻撃を仕掛けてきたにもかかわらず引くときはあっさりとした手際だった。

 

「ガゼルさん、深追いはよした方がいいです。罠かも知れません」

 

クラレットが追おうとするガゼルを止める、

ガゼルも理解できたのか、舌打ちをしながら足を止めた。

 

「とりあえず、ミニスを連れてここから離れよう、今の騒ぎでまた騎士団の人たちが来るかもしれない」

「それもそうだな…、だがよ、ここから離れるとしても、一体どこへ行くつもりなんだ?」

 

まっすぐ孤児院に戻ればつけられる危険性がある、アイツが無色の派閥の手先かはまだわからないのだ。

しかし、このまま街中をうろつけば再び襲われる危険性もあった。

 

「どうしましょうか…」

「うーん」

 

二人してこれからの行動を悩んでいた時、きゅぅ~という可愛らしい音を立ててミニスのお腹が鳴る。

 

「やだ…」

 

頬を赤く染めた少女に彼らは苦笑した。そういえば彼女は今朝の食事も、パン以外手を付けていない。

遠慮してるかと思ったが、フラットでは普通だったがあれはハヤト達の世界の料理だった、

異世界のそして庶民の作る料理を口にすることは、彼女にとって勇気のいる事かも知れない。

 

「そういえば」

 

そういうとクラレットはポッケの中から包みを取り出して、それをミニスに手渡した。

それはクラレットが子供たちのお菓子として作った飴玉だった。

白く変色したハチミツを大量に買い、味が変わらないように溶かしていくつかのお菓子を彼女は作っていた。

この飴もそんな彼女の作品の一つだった。

 

「これなら食べれますよね?」

「うん…!?美味しい!」

 

料理は発達してるが、いくつかのお菓子はいまだ発展不十分なものがある、

名も無き世界、特に日本は安く美味しくが基本であるため、安い材料でも美味しく作れるのだ。

美味しそうに飴を舐めるその姿は可愛らしい女の子そのものだった。

 

「とりあえず、ぺルゴさんの所に行きましょう、あそこなら襲ってきても平気ですし、ミニスが食べれるものもあると思いますから」

「そうだな」

 

ぺルゴはアキュートの参謀役で、元騎士の男だ、

彼なら事情を話せばきっと力になってくれるはずだ。

 

「しゃあねぇな…、でもよ、素材はともかく、リプレとクラレットの作るメシの味はいけるんだぜ、食わず嫌いはよくねぇぞ?」

「食べなれてないのもの食べると体調を崩すこともありますし、ゆっくりと馴れていけばいいんですよ?」

 

ミニスがすまなそうな顔をしていたが、特に返事は返すことなく、飴を舐めていた。

そんな彼女の手をクラレットはやさしく握った。

 

「え?」

「さっきみたいなときにはぐれないように、手を繋ぎましょ?」

 

握ったときは震えていたが、少し経つと安心したのか、彼女は落ち着いた。

 

「うん」

 

最初の震えた、もしかしたらミニスの手を握ってくれる人は居ないのかもしれない、

ミニスの手を握るのはきっとミニスを連れて行こうとする人物だけ、

だからこんな風に手を繋ぐことに馴れていない、そうクラレットは思った。

 

「大丈夫だよ。俺達がしっかり、守ってやるからな」

 

そういいながらハヤトももう片方の手を握ってやる、

これで大丈夫だろ?と言い、ハヤトが笑顔で答えるとミニスも安心したのか、口元が緩んだ。

おーい、いくぞー!と先に進んでいたガゼルが声を出し、ハヤト達はそれに応えるように歩いていった…。

 

---------------------------------

 

「何やってるんだよお前は!」

 

大きな罵声が路地裏の静けさを台無しにしていた、

逃げ帰った男に待っていたのは雇い主の叱責だった。

戦いとは無縁な雰囲気を纏ってる貴族風の青年、それが彼の雇い主だった。

 

「せっかく雇い主の僕が直々に手を貸してやったというのに、むざむざアレを逃がしてしまうなんて…!」

「へえへえ、悪うございましたよ」

 

悪びれない様子で男がそう言った。その態度がまた、余計に青年の感情を逆なでさせる、

地団駄を踏み鳴らし始めた若者を男は呆れた顔で眺めてた。

 

「けどよ、あんたも知ってるだろ?俺が勝ち目のない戦いをしない主義だって、あいつら相当なやり手だぞ?」

 

戦ったのは二人の召喚師、一人は不意打ちを防ぎ、もう一人に至っては恐らく目の前の男よりも強力な召喚術の使い手だ。

とある伝手から聞いていたが、見立てよりも実力が上だったため、引かざるえなかったのだ。

 

「だから、お前がそう言ったからっ、わざわざ僕が召喚術でアイツらを眠らせてやったんじゃないか!」

「俺があんたに頼んだことは、下手に騒ぎにならないようにしてくれってことだぜ?あんなデカブツ呼び出しやがって…、あの女みたいな召喚術使えっての、これでアイツらが狙われてますよって教えてやったも同然じゃねぇか」

 

恐らく、これで奴らは警戒を強める、おまけにこっちの手口の内、二つほどばれてしまったのだ、やり難くなったと男が思った。

 

「それに騒ぎになって困るのは、俺じゃなくてアンタだろうががよ?」

 

青年は身に覚えがあるのかぐうっとうめいたがすぐに前以上のかんしゃくを起こしてわめきたてる。

 

「……うっ、うるさいっ!お前がドジを踏まなければ、今ので成功したんだっ!!僕はちっとも悪くない…、それとも、お前は雇い主の僕に逆らうつもりなのかっ!!」

 

いつも言われてることを言われ、男はこれ以上の口答えをやめた。

何も言わなくなった男にくぎを刺し、青年がその場から去っていく。

しかし今回の相手は少々厄介だった、話に聞いた限りただの召喚術が少し使える少年との話だった、

だが実際はどうだ、殺気を読み、仲間を信じて仲間ごと攻撃する度胸、厄介な相手だ。

もっと厄介なのはあの女だろう、召喚師でおまけに雇い主よりも場数を踏んでいる使い手だ、しかもコンビネーションが良い。

 

「ああ言うのは思った以上にやり難いもんだ、で、さっさとママゴト終わりにして対象を連れ去った方がいいんじゃねぇのか?」

 

男が自分の影をノックすると、その影に何かが浮かぶ、それは表現し難いものだったが男は馴れているように問いかけてた。

 

『奴の秘伝召喚獣は優秀だ、お前も知ってるはずだ』

 

影から曇った声が聞こえる、それは男の協力者の一人、ソル・セルボルトの声だった。

 

「ああ、ミラーヘイズといったか?」

『秘伝召喚獣は召喚師を限定させる家系に連なるものしか行使できない召喚獣だ、それを解除するには家系のものに誓約を解除してもらうしかない』

「アレの持ってるのも秘伝召喚獣だろ?だったらアレの…石だったか?あれだけでいいんじゃねぇか」

『まだ9歳の少女だ、連れ帰れば多少使い道もある、それにセルボルトとしてはマーンの召喚師に因縁もあるからな』

「気に入らねぇやり方だな、まあ俺からは何も言わねぇよ」

 

悪態を男が付いたが、ソルはそれを気にすることはない、

そして監視を続けろ、と命令を下し、影が普通の状態に戻り、ソルの気配が消えた。

 

「気に入らねぇな…、ホント気に入らねぇ」

 

男が口癖の様に呟きながら路地裏の暗闇に消えていった。

 

---------------------------------

 

ペルゴの店を出た4人は悩んだ末、昨日の騒ぎがあった場所に向かうことにした。

 

「やばいんじゃねぇのか。また、さっきの召喚師が襲ってくるかもしれねえぞ?」

「ああ…。けど、ミニスと最初に会った場所ってところは無視出来ないんだ」

 

どんな事情かは知らないが、翼竜を召喚してたのはミニスだ、

だがここまで一人で来たって事はわからない、もしかしたらミニスを探す人たちがいるのかも知れなかった。

無目的に街を歩くよりはずっとマシだとハヤトは主張したのだ。

 

「………」

 

ミニスは相変わらず、その話題になると口を閉ざしてしまう。かと言って彼らの提案には従う、

自分から考えるのをやめてるような感じがハヤトの頭を過ぎり、理解できない不安が募った。

 

家に帰るのを嫌がってるのは確かなんだけどなぁ…。

だけどその理由が…、まてよ…。

 

自分にはなかったがハヤトはこのミニスの行為に見覚えがあった。

確かずっと昔…、まだ7.8歳の頃の事だ、あの時、春奈が…。

 

「あっ!?」

 

ミニスが小さく悲鳴を上げ、繋いでいた二人の手を一瞬で振りほどいてしまう。

 

「ミニス!どうしたんですか」

 

突如として三人の下からミニスは逃げ出してしまった。

 

「どうしたんだミニス!」

 

ハヤトの制止の声を聴かず、ミニスは一目散に逃げて行ってしまった、たちまち角を曲がり、路地の奥へと消えて行ってしまった。

 

「ハヤト、追いかけないと!」

「ああわか「うわははははは」ん!?」

 

追いかけようとした彼らの後ろから野太い声が聞こえる、

どこかで聞いたことある声だとハヤトは思い出そうとするが実際に確認した方が早いと思いそちらを向いた。

 

「やっと見つけたぜえぇぇぇ!!」

「「キムラン(さん)・マーン?」」

 

ハヤトとガゼルは構えた、彼らマーン三兄弟は現在フラットの面々と敵対関係にある、

クラレットは先日の一件もあったため、なぜミニスを追っているのかわからない状況だった。

 

「何しに来やが……って、おい!?」

 

しかし、キムランはハヤトたちに目もくれず通り過ぎ、ミニスを追いかけて行った、

まるで彼らの事が最初から眼中にないというように。

 

「キムランの目的はミニスだ!」

「って事は…今まで襲ってきたのも連中の仕業かよ!」

 

二人が同時に駆け出し、クラレットもその後を追いかける。

 

「確か、前にカムランと戦った時、メイトルパの召喚師がいたはずだ、手下の召喚師に使わせたのかも知れない」

「あのバカ三兄弟め…、今度はいったい、何を企んでるんだ!」

「…本当にそうなんでしょうか?」

 

繁華街を舞台に追走劇が始まった、先頭を走るミニスは入り組んだ路地を滅茶苦茶に走り回った、

とにかく追っ手を振り切ることを考え我武者羅にミニスは走り続ける。

それを追いかけるキムランだったが、すっかり汗だくになってしまった、

体力に自信のある彼だがミニスにはあと一歩及ばない、距離を詰めるが躓くたび距離がまた開く、

同時にそれは後ろから迫る彼らとの距離を縮めることに繋がった。

 

「……息が切れてるぜ、おっさんよ?」

「ぬぐわあぁぁぁっ!?」

 

ガゼルに足を引っかけられ、キムランが盛大に転倒した、

勢いをつけてたため顔をゴリゴリと地面に擦れ付けてしまうほどだった。

 

「ごっ、ごのガキャァッ!?「悪いキムラン!」うぎゃっ!?」

 

角で転倒したため後ろから走るハヤトは気づかず、キムランの背中を踏んづけてしまった。

一応、名も無き世界の住人、良識はある為、一言謝りを入れてガゼルを追いかける。

 

「って…、テメェらッ「ああ、ごめんなさい!」フゴッ!?」

 

続いてクラレットもキムランの事を踏んでしまった、

本当は立ち止って傷を癒してあげたいところだが、サプレスの召喚師なら平気と思い、

見失うわけにも行かなかったためハヤトをそのまま追いかけてしまう。

路地裏で、キムランはただ一人、痛みに悶えていた…。

 

---------------------------------

 

「なんて無茶なことを…」

 

駆け付けたハヤトたちは、最悪の事態を前にうめくしかなかった。

廃材が積まれた山の中腹に蹲ったミニスは、高いところから降りられなくなった子猫の様に小さく震えていた。

 

「こりゃ、下手して登ったら一気に崩れてきちまうぜ」

「クラレット、召喚術で」

「駄目です、迂闊に召喚術を使えばゲートができる余波で崩れるかもしれません」

「こんな時、クロがいれば…」

 

無いものねだりをしていたも仕方がない。

 

「そこから動くんじゃねぇぞ、ミニス!」

 

そう声を駆けながらガゼルは瓦礫の山を登り始めた、

出来るだけ衝撃を与えず、気を使いながらゆっくりと彼女の居る場所に向かう。

 

「頼むぞ、ガゼル」

「お願いします」

 

息を飲みながら二人が見守る中、ガゼルはなんとかミニスの下にたどり着いた。

 

「さあ、下りるぞ?」

「ううぅぅぅ…っ、で、できないよおぉぉ…」

「甘えてんじゃねぇっ!」

 

マジかで叱咤されて、ミニスがビクッと体を震わすが、パニックを起こしかけた思考が驚きで落ち着いてきた。

 

「心配すんな、俺がそばについていてやるから…な?」

 

ガゼルに励まされながらミニスは震える体を必死に動かしてゆっくりと降り始めた、

一応もしもの時の為に下にはハヤトたちが待機してるが、それが起きないことを願う、

だが、後ろから凄まじい殺気を感じ、ハヤトが振り返るとそこには憤怒の形相を浮かべたキムランがいた。

 

「てめえら、よくもやってくれたなぁ…」

 

完全に逆上したキムランが刀を抜き放ち、それに魔力を集中させ始めた、

召喚術を行使するときに何かを媒体するのは基本だ、サモナイト石はもちろん、剣や杖にも含まれる。

キムランは召喚術を行使しようとしていた!

 

「待ってください、キムランさん!」

「うるせえぇぇっ!」

 

足を引っかけられ、背中と頭を踏まれたキムランは頭に血が上っており本来の目的を忘れている、

そして現れたのは小さい小悪魔、プチデビルと呼ばれる召喚獣だ、

普段なら対処可能だったが、後ろにいるミニスたちの事を考えると最悪の状態だった。

 

「やっちまえ!エビルスパイク!!」

 

三又の槍が五つ、出現するとそれはハヤトたちに向けて殺到する!

 

「っ!」

「おりゃ!」

 

剣と杖を取り出し、ハヤトとクラレットがそれぞれ対処するが、

ハヤトたちに当たらなかった槍が地面に激突し衝撃が走った!

 

「きゃああぁぁっ!」

 

地面に走った衝撃で廃材がぐらつき始める、足元が揺れる恐怖に少女が再びパニックになり、

傍らにいるガゼルにしがみついた。

 

「キムランさん、やめてください!」

 

クラレットがキムランを説得しようと声を上げるが、逆上してるキムランは話を聞かず、

再び召喚術を使おうとプチデビルに魔力を送り始める。

 

「次でしまいだっ!」

「させるかあぁぁっ!」

「ハヤト!」

 

クラレットはサモンアシストでハヤトの召喚術を高速化させ、五つの武具を召喚する、

シャインセイバー、放たれた光将の剣は三又の槍を弾き飛ばし、そのままプチデビルを貫き、送還させた。

 

「んだとおっ!?」

 

後手で召喚したにもかかわらず、高速で召喚し、的確に槍と召喚獣を無力化したその能力にキムランが驚愕する、

しかし問題だったのはプチデビルの槍だった、シャインセイバーとは違い武器そのものではない召喚術、

プチデビルの作り出した現象であった、三又の槍はプチデビルが居なくなっても魔力が四散しない限り消えることはない。

 

「のわあぁぁっ!?」

「まさかっ!」

 

キムランの眼前に突き刺さったやりを見て、すぐさま後ろを確認するハヤトとクラレット、

そしてその光景に息をのんだ。

弾き飛ばされた槍が今まさにミニス達に激突しようとしてたのだ。

迫り来る凶器を前に、ガゼルは為すすべもなかった、ミニスにしがみつかれた彼には対処する手段がなかったのだ。

ハヤト達も召喚術を使い、助けようとするが、それすら間に合わない。

 

「ぐうっ!」

 

少女を庇い彼の背中は回転する槍に激突した、その衝撃で足元が大きくふらつき、ついに二人はバランスを崩してしまう!

 

「ミニスっ!ガゼルさんっ!」

 

槍の衝撃が切っ掛けで廃材の山が崩落を開始する、二人は斜面を転がり落ちる、

さらに追い打ちをかけるように、上からもがれきが崩れだし、津波のごとく二人の上から落ちかかった。

ハヤトは後悔した、さっさと召喚術で助ければよかった、しっかりとキムランの攻撃を捌けてたら、

そんな後悔ハヤトを追い詰める、二人が叩き付けられる、その瞬間、魔力の奔流をクラレットは感じ取った!

 

「これって…」

 

眩い光が廃材を吹き飛ばし、爆発したように四散する。

呆然とするハヤトの頬に激しい風が吹き付ける、嵐のような突風は粉塵を吹き飛ばし、

廃材はいずこかへと吹き飛ばされてゆく。

そしてそれを成した存在を二人は目の当たりにした。

 

「ワイバーン…」

 

ハヤトが撃退した白銀の翼竜は召喚されたことを証明するように咆哮を上げる。

その両足には気絶してるガゼルと、大声を上げて泣き叫んでるミニスがしっかりと抱え込まれてた。

 

「で、出やがったあぁぁぁ!!」

 

素っ頓狂な悲鳴を上げてキムランが、逃げ出した。

普段の彼からは想像もつかない醜態に二人はお互いの顔を確認しながら信じられないと思った。

 

――シギャアァァァッ!!

 

まるで怨敵を追い払う様に火球を放ち、その爆炎がキムランを襲う、

爆炎の奥の方を見るとキムランが逃げていく姿が小さくなっていった。

 

「ミニス!!」

「わあぁぁぁ…っく、うっ、うわあああぁぁぁん!!」

 

ボロボロと涙をこぼし、手足をばたつかせながらミニスは泣き続けている。

 

「今、助けます!シンドウの名の下、クラレットが…」

「待ってくれクラレット!」

 

クラレットは召喚術で翼竜を攻撃しようとするが、ハヤトがそれを止めた。

 

「でも、急がないと二人が!」

「よく見るんだクラレット、ワイバーンは二人を攻撃したりしない!」

 

二人で翼竜の様子を見守ると、翼竜は泣き続けているミニスの顔を覗き込む、

燃えるように鮮やかだった瞳がその輝きを弱めてく、今まで感じてた凶暴な意思が消え始めているのを二人は感じ取った。

それを証明するように、翼竜は次第に羽ばたきを弱め、二人は大事にそっと地面に降ろされた。

 

「大丈夫か!?」

 

駆け寄ろうとした二人を、正面から翼竜は睨みつけた、

威嚇するようにその牙を剥き出しにして、唸り声を響かせる。

 

「いやあぁぁぁぁっっ!!」

 

その声を聞いてミニスが泣き声が増す、翼竜はミニスに視線を戻すと、

彼女の様子をうかがった、翼をすくめたその姿はまるで戸惑ってるようだった。

 

「ミニスを…、守ろうとしてるんですね」

「ああ、前回の時もそうだった、間違いなくミニスを守ろうとしてるんだ」

 

前回、ミニスを瓦礫から守ったのも召喚獣が召喚師を守る誓約に基づくものかもしれない、

だけどあの翼竜の様子からそれはないかもしれない、単純にミニスを心配してるようだった。

 

「ミニス、ワイバーンを送還してください!」

 

クラレットがミニスに送還するように促すが、泣き叫ぶ少女の耳にその言葉は届かない、

近づこうとするが、足を動かしただけでも翼竜は威嚇して近づけない。

 

「マズい、このままじゃ…」

 

ガゼルの様子を見るが、遠目からだと身動き一つ起こさないガゼルに焦りが生まれる。

服のあちこちに血が滲んでおり、一刻も早く治療しなければ取り返しのつかないことになるかもしれない。

かといって無理に召喚術で治療しようとしても意図を理解してくれなければ翼竜に攻撃される。

 

………これしかない!

 

ハヤトは今まで出会った召喚獣たちの事を思い出す、全ての召喚獣と分かり合えたはずだ。

翼竜だってミニスを守ろうとしてるだけなんだ、だったら…。

 

「ワイバーン!俺達はミニスをどうこうしようとする気はないんだ、今から証明する!」

 

ハヤトが一歩前に出ると翼竜は威嚇する、ハヤトはそれに恐怖しつつ、

翼竜に認めてもらうために持ってる剣を鞘ごと翼竜のそばに投げ捨てた。

 

「ハヤト、何を!?」

 

クラレットがハヤトの行動に驚くがハヤトはそれを気にせず、次は石を全て翼竜のそばに投げ捨てた。

手を広げながら一歩、また一歩とハヤトは翼竜のそばに歩いてゆく。

 

「一回戦っておいて信じてもらえないかもしれない、だけど俺はガゼルとミニスを助けたいだけなんだ、頼む信じてくれ!」

「ハヤト…」

 

クラレットはそんなハヤトを後ろから固唾を飲んで見守る、

もし彼が攻撃されるならその瞬間、こちらも反撃に出るよう身構える。

それに気づいたのか翼竜が唸り声を上げ始める、だがハヤトは…。

 

「クラレット、頼む信じてくれ」

「・・・・はい」

 

身構えたクラレットが杖を捨て、ハヤトと同じようにサモナイト石も杖に添えるように置く、

その光景を翼竜はじっくりと見定めていた。

翼竜は知っていた、この二人が自らの主を理解し、支えてくれたことを、

石を通し見知っていたのだ、そして一度戦った相手にもかかわらず、自分の事を信じてほしいと願ってることを。

そして翼竜は威嚇していた目を沈め、ミニスをもう一度見ると惜しむように送還されていった。

 

「…ありがとう、ワイバーン」

 

翼竜が送還されるのを確認すると、ミニスがその場に倒れ込んでいた、

恐らく翼竜がミニスに何かして意識を落としたのだろう、ミニスに外傷などはなかった。

 

「リプシー、お願いします!」

 

クラレットは聖霊リプシーを召喚してガゼルの傷を癒し始める、安堵した表情を浮かべてるとこから間に合ったみたいだな。

しかし、本当に怖かった…、方法があれしかなかったからって言って武器なしで翼竜の前に立つなんてもうやりたくない。

だけど、収穫も非常に大きい、あの翼竜は敵じゃないし、分かり合えることが分かった、

ミニスがこっちに敵意を持ったりしなければ頼もしい味方になってくれるはずだ。

 

「まあ、何もないのが一番なんだけどな」

「よう坊主、少し遅かったみたいだな」

 

今の声に反応して、後ろを振り向くとそこにはスタウトの姿があった。

アキュートの幹部の一人、いつも酒臭いが今日も酒臭い彼が今俺達の前に現れた。

 

「スタウト、どうしてここに?」

「ぺルゴの奴に頼まれてな。ちょいと様子を見に来たってわけだ」

「そうだったんですか」

「クラレット、ガゼルは?」

「もう大丈夫ですよ、今は気絶してるだけです」

 

ガゼルを治療出来て安心したのかクラレットは笑顔だった、

その笑顔を見ただけでほっとした、本当に間に合ってよかった。

スタウトは治療されたばかりのガゼルを荷物を担ぐように抱えた。

 

「なんにせよ、まずはこいつらを運ぼうや、詳しい事情はそれからでいい」

「そうだな、クラレット、ミニス頼めるか?」

「はい」

 

俺はクラレットの杖を持ち、自分の剣と石を回収した、

スタウトはこっちから帰った方がいいぞといってさっさと歩いて行ってしまう、

俺はそれを追って速足で歩き始めた、クラレットもミニスをおんぶしてそれを追う。

 

「…か……ま、……だよ、……わた……」

「……ミニス、貴女は」

 

ミニスを背負ってるクラレットの足が止まる、その表情は悲痛な顔を浮かべてた、

クラレットは気づいた、ミニスがどのような苦しみを抱えてることに、ある程度察してしまったのだ。

 

「…クラレット?」

「あ、今行きますね」

 

クラレットはミニスを背負いなおしてハヤトを追っていく、

しかし、ガゼルとミニスを救えたのにもかかわらず、クラレットの足はとても重いものだった…。




クラレットは他人の気持ちをよく理解できるので、ミニスの境遇に気づけました。
ハヤトは単純にミニスを妹と重ねてるだけです(年下の女の子は妹と重ねてしまう)
それと翼竜を信じた理由は語られてるように彼は召喚獣の殆どは分かり合えると思ってるだけです、
まあ、リィンバウムでは異端の考え方ですね。

ちょっと独自設定が増えてきたんで、しばらくしたらしたためるかな。

※たまに活動報告も書いてるんでお暇な方は返信どうぞ。
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