サモンナイト ー生贄の花嫁ー   作:ハヤクラ派

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感想が少なくて(元から少ない)凹んでる私です。
最近は初心に帰って書きたいものを書いてこうと思う事にしました。
まずは完結!それが目標ですね!


第18話 光の賢者

 

 

因縁――

かつて聖王暗殺未遂事件という事件があった、それを解決した立役者の名はファミィ・マーン。

そして、それを行ったと言われる実行者、オルドレイク・セルボルト。

どれ程の悲運か、この二人の子供がサイジェントで出会ってしまったのだ。

一人が、自分の力を制御できず、認めてもらいたい一心で逃げ続ける少女、ミニス・マーン。

もう一人が、界を挟むほど離れてしまった家族のもとに帰ろうとする少女、クラレット。

 

そして、オルドレイクの息子。その圧倒的叡智と膨大な魔力を手にした青年、

ソル・セルボルトがいま、ミニスに漆黒の凶刃を撃ち放ったのだった。

 

 

「いやぁ…、いやぁぁぁぁぁーーっっ!!!」

 

ミニスは明確な殺意を感じ取り、ついに感情の糸が千切れてしまった。

頭を抱えて、恐怖で泣き叫ぶと同時に、魔力が解放される。

 

――シギャアアアァァァ!!

 

「白銀の翼竜か…」

 

ソルの放った凶刃、ダークブリンガーは翼竜の召喚の時の衝撃で全て吹き飛ばされる。

そして、白銀の翼竜は完全な状態で姿を現した。

 

「これが…、お兄ちゃんの言っていたワイバーン」

「うわああぁぁーーーん!!」

「ちょっと、大丈夫なの!」

 

――ギャアアアァァァッッ!!

 

今までと違う状況、自らの主に向ける殺意を感じ取った翼竜は、

躊躇せずにその爆炎をソルへと打ち放った!

 

「誓約の名の下に――、来い!【天繰避傘】!!」

 

ソルの呼びかけに応え、シルターンより一体の妖怪変化が姿を現す。

和紙で作られた傘からギョロリと目を開き、回転しながら巨大化し爆炎を封じきる。

 

「暴発程度の召喚術で勝てると思っているのか?ベズソウ!【ギア・ランペイジ】!」

 

召喚されたのは2体のベズソウ、刃を展開しながら翼竜を中心に左右に展開し、

翼竜の翼を切り裂いてしまった。

飛行の要となる翼を引き裂かれ、翼竜は地上へ墜落してしまう。

 

――グルゥゥゥゥッッ!!

 

唸り声を上げ、碌に動かない翼竜はソルに威嚇した、

今の戦闘で実力は圧倒的なものと翼竜も理解していたが、

それでも翼竜はミニスを守りたかったのだ。

 

「頑張って、負けないでぇ!!」

 

フィズが泣き叫ぶミニスを支えながら翼竜を応援する、

それに応えたのか翼竜は大量の火球をソルに向かって撃ち放った。

 

「無意味だな。アーマーチャンプ、【アストラルバリア】!!」

 

出現したのはハヤトも召喚する召喚獣、アーマーチャンプ。

しかし彼とは違い、両手に持っている盾が割れ、六角形の電磁力場を展開する。

アストラルバリアと呼ばれるアーマーチャンプの最終防御機能、

それはやすやすと翼竜の連続火球弾を防いでしまった。

 

「ひっく…うっく…いやぁ…」

「嘘…」

 

ミニスもフィズもあまりの実力差に呆然としてしまう、

そして止めを刺すべくソルが更なる召喚術を仕掛けた。

 

「貫け腐らせろ、【ネウロランサー】!!」

 

召喚されたのは4本の魔槍、それらは翼竜の体を支える足へと殺到し、

貫かれた翼竜の足は腐食し腐り落ちてしまった。そして翼竜も体勢を保てず、

その場に倒れ伏してしまう。

 

「サプレスの下僕よ…、刻まれし痛苦とともに、汝の使える主に忠誠を示せ…。セルボルトの名の下にソルが命じる――」

 

召喚されたのは、赤銅色の肌を持つ筋骨隆々とした悪魔だった。

そして、手にした巨大なハンマーを翼竜に向かって振り上げる。

 

「やめてぇ……、やめてぇぇーー!!」

「潰せ」

 

悪魔に振り下ろされたハンマーは翼竜の頭蓋を打ち砕き、

息絶えた翼竜は無念の念を目に残しつつメイトルパへと送還されていった……。

 

「…ふん」

 

圧倒的だった、名のある召喚師すら蹴散らすほどの力を持った白銀の翼竜は、

ソルの召喚術の前になすすべもなく打倒された。

例え十全の力を発揮していたとしても、恐らく戦いにならなかっただろう。

ソルはそのままミニス達に歩んでゆく、どうなるかなど明白だった、

恐怖で足がすくんでしまい、彼女たちは身動きを取ることすらできない。

 

「来ないでよぉー!」

「お願い、もう一度来て…、助けて!」

「無駄だ、奴も魔力を消費している。再び召喚するまで時間差があるからな」

 

もうどうしようもない、彼女たちは理解した、この男から逃れられないと。

そして、男の手に捕まろうとしたとき…。

 

「待て!!」

 

一人の少年が彼女たちを助けるために姿を現した。

 

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「ミニスが外に飛び出していったんですか!?」

 

クラレットはキムランと別れて孤児院に戻って来ていた。

すぐにミニスが狙われる事を考えてマーンの屋敷まで連れて行こうと考えていたが、

それはミニスが家を飛び出していったことで破綻してしまった。

そして飛び出した理由がガゼルにあると聞きクラレットはガゼルに怒鳴りつけた。

 

「どうして!どうしてもっと穏便に出来なかったんですか!ミニスが誰かに狙われてることはガゼルさんも」

「やめてよ、姉ちゃん!」

 

クラレットに誰かがしがみついて必死になって止めた、アルバだった。

 

「悪いのは、ケンカしちゃったオイラ達なんだから!ガゼルはただ、悪いことをしたオイラたちの事を叱ってくれただけなんだよ!」

「だからって…、だからって他に求める方法があるじゃないですか…」

 

ガゼルの肩を掴みながらクラレットは後悔する、もっと早く真相に気づく機会はあったはずなのに、

迂闊にも翼竜の事ばかりで楽観視してしまったのだった。

 

「ミニスは…、一人ぼっちなんですよ?どんなに私達が助けても、まだ彼女は一人なのに気づかないガゼルさんじゃ、ないじゃないですか」

「…わかってたさ」

 

重く沈んだその声が、ガゼルさんのものであると、私は最初信じられなかった。

もう二か月近く一緒にいるが一度たりともこのような声を聞いたことがない。

 

「わかってたから、ぶん殴ってやったんだよ……、そうしなけりゃいけないと思ったから、俺はあいつをぶん殴ってやったのさ」

 

ハヤトの様に優しく接するのもいいかもしれない、

でもガゼルさんはわかっていたんだ、優しくでは本当の意味でミニスを助けられないと、

周りから腫れ物を触るような扱いを受けていたミニス、

彼女を本当の意味で変わらせるためには時には厳しくしなければいけないとガゼルは知っていた。

 

「だから、あいつは誰にも心を開けなかった。自分の気持ちを聞いてもらう以前に、相手がビビッて近づいてこないんだからよ」

「………」

「が、本当に問題なのはそこじゃねぇんだ」

「え…?」

「自分の気持ちが伝わらないせいで、あいつが他人の気持ちまで考えられなくなっちまってる事なんだよ」

 

自分に向けられる言葉を、ミニスは素直に受け止められなくなっている。

自分に都合の悪いことから目を背け、自分の間違いを認めようとしなくなっているのだ。

 

「それじゃ、ダメなんだよ…、つらいことから逃げてばかりいたら、あいつは何時までも一人ぼっちのままになっちまう」

「あっ…私…、すいません」

 

お互い顔を伏してしまい、黙り込んでしまった。

二人ともどう声をかければいいかわからずに戸惑ってしまう。

そんな彼女の背をなだめるようにエドスが叩いた。

 

「ミニスの事なら心配ないさ、フィズが追いかけていったそうだし、ハヤトだってすぐに後を追って行ったはずだ」

「そうですか、ハヤトが……ハヤト」

 

クラレットは先ほどの事もあり不安だった、出来るなら3人とも無事で帰ってくることを願うだけだった。

 

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ハヤトは驚愕していた、ミニスとフィズを追いかけていったら、

翼竜の召喚される魔力と一緒に戦闘する音が聞こえてきたのだった。

そして彼が辿り着いたとき、翼竜が敗れ送還されるところだったのである。

 

「お前は…、フィズとミニスから離れろ!!」

「なんだ、お前か」

 

なんで…、なんでこいつがいるんだ!?

ハヤトの脳裏にかつての戦いが思い出される、敵は手加減をしながら、

こっちはクロと一緒に全力で挑んだハズだった…。

しかし実際には手も足も出ず、ラムダさんの力が無ければ死んでいた。

 

「お兄ちゃん!」

「ハヤト!」

 

二人がソルから離れてハヤトの後ろに回る、

ハヤトはソルから目を離さず、にらめつけていた。

 

「余程焦ってきたようだな、武器を持っていない状態で勝てると思ってるのか?」

「……くそっ!」

 

迂闊だった、すぐに追いついて連れ帰れると思っていたけど、

まさかこの男に出くわすなんて…、サイジェントに居るとは思っていたが。

 

「バノッサから話は聞いている、随分と実力を上げたようだな」

「バノッサを知っているのか!?」

「バノッサは血縁上は兄にあたる男だ、知っていて当然だ」

「なんだってっ!?」

 

バノッサが兄!?こいつが…、じゃあバノッサが召喚術を使えたのも、

手も足も出ないほど強くしたのもこいつだったのか!

 

「奴はいう事を無視したせいで、随分と無茶をしているからな、その原因を取り除くいい機会だな」

「取り除く…?」

「貴様を殺すという事だ」

 

ソルの体から膨大な魔力が膨れ上がる、

俺はサモナイト石を握り、魔力を流して攻撃に備える、そして…。

 

「フィズ!みんなの所まで走るんだ!」

「でも…、お兄ちゃん!」

「悔しいけど、絶対に勝てない。だからみんなを呼んできてくれ!!」

「ダメよ、ハヤト!殺されるわよ」

「…やるだけやってみるさ、ムジナぁ!!」

 

召喚されたのはタヌキの召喚獣ムジナ、言いつけを守っていたのか、大量の煤を周りにぶちまけて視界を遮断する。

 

「小癪な真似を!」

 

ソルは迂闊に召喚術を行使できなかった、ミニスはいい交渉材料になる、

迂闊に殺してしまったらそれこそ意味がない。

 

「来い、ウィンゲイル!」

 

召喚されたロレイラルの機械兵士ウィンゲイルは暴風を生み出し煤を一気に吹き飛ばした。

そして吹き飛ばした煤の煙の中からハヤトが突っ込んでくる!

 

「はぁぁっ!」

「チッ!」

 

ハヤトはシャインセイバーを手に取り、ソルに切りかかった、切れ味も維持も魔力だよりだが、

武器の持たないハヤトにはこれが今できる最善の手だった。

ソルも長剣を抜き出してその攻撃を防ぐがハヤトは召喚術を使わせまいと乱撃を打ち続ける。

 

「腕を上げたな」

「お前を倒すためにここまで鍛えたんだ!」

 

ハヤトが一番恐れていたのはソルだ、師範は大多数で倒せばいいと言っていたが、

一対一で戦う事をハヤトは考えていた、その為、あの戦いの事を常に頭に入れて訓練してたのだ。

ソルはハヤトと近距離で戦う事がマズいと思い距離を開けるために召喚術を使う。

 

「食いちぎれ【オオアカ切断虫】!!」

 

現れたのは橙色の大型の虫だった。シルターンに住む妖怪変化、そのハサミのような口が特徴的だった。

ソルの後ろに現れ、ソルごと挟み切ろうとするが、ソルがオオアカ切断虫を踏み台に跳躍し、

オオアカ切断虫はハヤトに襲い掛かる!

 

「ぐっ!?ペトラミア!」

 

比較的低い魔力で召喚できるペトラミア、しかもどうしてかハヤトを気に入ってるようだ。

ラミアはハヤトの後方に現れ、ハヤトを抱きかかえると跳躍し、ソルとオオアカ切断虫に同時に魔眼を放った。

 

「詠唱なしか、やはり異常だな」

 

ソルは軽々と魔眼を無効化するが、オオアカ切断虫は石化してしまい、

役に立たないと判断され送還されていった、ハヤトもラミアを送還して再びソルに接近する。

 

「狐火の巫女!!」

 

ハヤトに接近させまいと、ソルはシルターンの妖怪の巫女を召喚し、

その炎でハヤトを焼き尽くそうとするが、ハヤトはシャインセイバーを投擲してそれを打ち消す。

そのままシャインセイバーが狐火の巫女を貫き、送還されてしまった。

 

「…強くなったな」

「はあ・・・はあ・・・」

 

ソルは純粋に驚愕していた、最初合った時より数段強くなっていたのだ、

バノッサの話を聞いていたが所詮拡張した話だと割り切って聞いていた、

だがそれは真実だと知り、ソルはハヤトに対して危機感を抱き始めていた。

 

「このまま放置すれば危険だな…、これで終わりにしてやる!」

 

膨大な魔力と共に赤いサモナイト石に魔力が籠められる、

ハヤトもそれに応えるように赤いサモナイト石に力を送った。

そして今ここに、二体の鬼神の将が召喚される!

 

「セルボルトの名の下にソルがその力を望む――、来い!鬼神将ゴウセツ!!」

「力を貸してくれ…、鬼神将ガイエン!!」

 

現れたのは山をも切り裂く鬼神の将、互いに同じ立ち位置の者だが、

今は自らの召喚師の命に従いその大太刀を振るった!

 

「真・鬼神斬!!」

 

ガイエンはハヤトの声に応え、魔力を剣に籠め、最上の剣を振るう。

その剛剣は凄まじい衝撃と共にゴウセツを押し始めた!

 

「真・鬼神斬か、まさか召喚獣の協力を経てそこまでの技を出せるとはな」

「俺達の今できる最強の技だ!このまま突っ切る!!」

 

ハヤトは自分の持つ魔力を一気にガイエンに送り勝負を決めようとするが、

ソルは静かに魔力を高めて、ゴウセツと魔力を同調し始めた。

 

「冥途の見上げに一ついいものを見せてやる、召喚獣の魔力と同調することで限界以上の技を引き出せる技法だ」

「なっ!?」

 

ハヤトはガイエンが押され始めてくることに気づいた、そしてガイエンの大太刀が弾かれて、

ゴウセツはガイエンごとハヤトに真・鬼神斬を超えた究極の一撃を振り下ろした!

 

「鬼神烈破斬!!」

 

ガイエンはその一撃を受け一瞬で消し飛んでしまい、ハヤトも衝撃で吹き飛ばされてしまう。

あまりの一撃の前に周辺の建物まで被害を受けて路地は吹き飛んでしまうほどだ。

 

「う…ぐぅぅ…!」

 

ハヤトはそれでも最後の力を振り絞り立ち上がった。

…勝ち目はないことは最初からわかっている、少しでも時間を稼ぐために戦ってるんだ。

二人が孤児院まで逃げ切るだけでいい、だから…もう少しだけ…!

 

「お前は危険だ、ここで始末しておくべきだな、バノッサに悪いがな」

 

ソルは黒のサモナイト石を取り出して、魔力を送り始める。

そして召喚されたのは巨大な端子のような機械が出現した。

 

「……っ!」

「ボルツテンペスト!」

 

バチッ!と言う音と共にハヤトの体から力が抜けていった。

意識が暗闇に沈み始める、体を起こそうと思っても体が完全に動かなかった…。

そして…、遠くの方からフィズたちの悲鳴が聞こえ、ハヤトは意識を闇へと落としていった……。

 

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その頃、孤児院ではミニスの事を集まった全員にクラレットは話していた。

三兄弟と血縁関係にあったという事実は誰もが目をあるくするほどの衝撃だった。

そして、広場で襲われた事から予測するし、無色の派閥が関わっているのではないかという事を伝えた、

一人飛び出していったミニス、ハヤトやフィズが追いかけているが、捕まってしまうかもしれない。

アカネが街へと繰り出して探してくると言ったがそれで見つかるかわからない。

エドスも三兄弟の屋敷に向かうといい、出て行ったきりだ。

そして、広間で待っていたクラレットは嫌な予感がよぎり始めていた…。

 

「……ッ」

「どうしたのクラレット?」

 

リプレがクラレットの様子を見て心配していた、

彼女は右腕につけたミサンガを抑えて痛がってるようだったからだ。

 

「それが…、いやな予感がして…」

 

なんで…、なんでこんなに嫌な予感がするの…、

ハヤトも遅い気がする…、それに…、どうして…、

どうしてリィンバウムに来たばかりのような不安が…。

 

理由もない不安の恐怖がクラレットを襲っていた、

リィンバウムに来たばかりの家族に会えなくなり苦しみ抜いた、

あの恐怖がふつふつと沸き上がってくる。

そして、決定的な事態がクラレットのみに起きた。

 

「あっ…」

 

ぶちっとクラレットのつけていたミサンガが千切れてしまったのだ。

パラパラとビーズが床に広がってゆく。

 

「・・・・・・・」

 

クラレットは千切れたミサンガを見つめていた。どうしてか、ある予感が彼女の頭に浮かぶ、

そして、ガタッと椅子から飛び出し、クラレットは一目散に孤児院の外に飛び出していった。

 

「クラレット!?」

「姐さん、どこにいくんだよ!」

 

周りの言葉は既に彼女の耳に入ってなかった、ただ真っ直ぐ自分の信じた方向に走ってゆく。

路地を抜けて、繁華街へと進む道に入っていく。

 

「なんで…、どうして!」

 

理由などわからなかった、まるで自分の一部が削れてゆく感覚が彼女を襲っていた。

まるであの日…、彼を失いそうになったのと同じ感情がクラレットを蝕んでいた。

 

「あ…ああァッ!!」

 

道を進んでいくと、開けた場所――、いや、無理やり吹き飛ばされたと思われる場所についた。

そして、その中心に倒れている一人の少年の姿があった。

 

「いやぁ…」

 

足取りが重くなってゆく、認めたくはなかった、

だが、その少年の顔を見て感情が抑えられなくなった。

 

「ハヤトォ!!」

 

そこには、全身を電流で焼けただれ、息絶えたハヤトの姿があった…。

 

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目を開けても、そこは闇の中だった。

ざらついた床板の感触、よどんだ空気、

どうやら自分は真っ暗な部屋に閉じ込められている、そうフィズは理解した。

こういう時は、慌てたらだめなのよ。そうフィズは沸き上がる恐怖を抑えて思考した。

落ち着け、落ち着け、と何度も自分に言い聞かせ、深呼吸をする、

 

「どこも、いたくない…。うん、体はちゃんと動かせるわ」

 

手足の自由を奪われていない事に感謝した、この際、子供扱いされたことはありがたい、

次にフィズはミニスの行方を探す、自分と同じように捕まったのなら近くにいるはずだと。

 

「…どこ?」

 

ミニスのついでに捕まったことは、気にしてない、

それよりも自分は誰に捕まったのか、そしてお兄ちゃんは大丈夫なのか。

それが気がかりだった、自分たちを逃がすために戦った兄は無事なのか、

気になることは多々あるが、現状を何とかしようと手を動かし、周りを探る。

 

「あ」

 

フィズはミニスの柔らかな衣服に触れてほっとした、

どうやらミニスはまだ気絶しているようだった。息をしているか確認し、

このまま寝かすことにする、無理に起きられて騒がれるのも困るからだ。

 

「…ひぐっ」

 

ミニスに触れて思い出した、あの男、自分たちを守ろうとした翼竜を一方的に倒した男、

ハヤトが戦ったはずだが、よくよく考えてあの男、相手ではハヤトは…。

 

「大丈夫…だよね?」

 

ハヤトの無事を信じきれない自分がいた、怖くて涙が出てくる、寝てるミニスの手をギュッと握った、

今は人肌を感じたかった、もし無理に我慢したら、自分はダメになってしまいそうだったから。

 

「ん…んぅ?」

 

フィズに手を握られたせいで、ミニスはゆっくりと目を覚ました、

そして暗闇の中、自分の手を握って泣いているフィズに気づく、

どうしていいかミニスに、すぐに答えが出なかったが、その時、ドアがゆっくりと開き始めた。

ぎしぎしと重い音を立てながらまぶしい光が入ってくる。

 

「そろそろお目覚めの時間ですよ、お嬢さんがた?」

 

芝居かかった口調でそう言ったのは、フィズの記憶にない人物だった。

 

「あんた誰よ?」

 

両手いっぱいに飾られた悪趣味な腕輪を付けた典型的な貴族の御曹司のような男、

あまりに軟弱な格好に、あきれ果てた声でフィズは特に考えもなくそう言ってしまった。

そんな彼女の冷たい態度にも気づかないのか、御曹司は白い歯を見せて笑う。

 

「これは失礼…。僕の名前はギブン・ウォーデン。そちらのマーン家のお嬢様ならば、よくご存じだと思うのですが」

「ウォーデンですって!?」

 

事態を理解したミニスは、信じられないという顔をして叫ぶ。

 

「負け犬ウォーデンの三男坊が、私をどうするつもりよっ!!」

「言葉を謹んでくれませんかね。マーン家のお嬢さん?」

 

ムッとしたのを隠そうとして、ギブンと名乗った若者はぎこちなく顔をゆがめる。

 

「誇り高き我がウォーデン家の名を、泥棒風情のマーン一族にけがされるのは心外です」

「無礼なのはそっちじゃないのっ!!」

 

噛みつくような勢いの居に素に、ギブンは大きく身を引いた。

フィズはその姿に期待通りの情けない男という事を理解した。

 

「ザ、ザガルドっ!」

「やれやれ。だから、最初からよしとけっていったでしょうが…」

「ふん…」

 

扉から出てきたのはザガルドと呼ばれた、大男。

そして自分たちを襲ってきた、ソル・セルボルトも姿を現した。

 

「いやぁぁーーっっ!!」

 

ミニスはソルの顔を見ると悲鳴を上げ、震えあがってしまった、

フィズはそんなミニスを支えながら必死にソルの方を睨みつけている。

 

「ソル、あなた。このお嬢さんがたに何かしたのですか?」

「さあな、俺はただ、この女がいたから連れて来ただけだ」

 

何事もない様に、ソルはそう告げる。

彼にとってあの程度の翼竜など何もないに等しいものだ。

 

「まあいいでしょう、本来ならば、お招きするのはマーン家のお嬢さんだけの予定でしたが、このザガルドとソルがしくじりましてね…、こうしてお友達にもご同行願ったわけですよ」

「……ふん」

「別に、俺はしくじったつもりはないがよ」

 

雇われている身でありながら、主に対して忠誠の欠片も出さない二人を、

御曹司は寛容な態度のつもりで無視した。

 

「そういう次第ですが…、僕は別に、お嬢さんがたに危害をくわえようとは思っていないんです。紳士的なのが、僕の性分でしてね」

 

何処が紳士的なのか、そうミニスは毒づき。フィズも小さく舌打ちをする。

 

「ですから、ひとつ穏便に用件を済ませるとしましょう。あなた方が卑怯な手段で我々からせしめた、サモナイト石のペンダントを返してください」

 

ギブンがミニスを攫った目的はミニスの持つ翼竜のサモナイト石だった。

はるか昔からウォーデンとマーンは対立しあっており、争い続けていた。

そしていつかの話、ウォーデンの召喚師がマーンの召喚師に敗北し、

命を助ける代わりに、ウォーデンの秘伝召喚術、翼竜のサモナイト石を命の対価に渡したのだ。

それ以来、翼竜のサモナイト石はウォーデンがマーンに敗北したという証になってしまい。

ウォーデンがそれを取り返すことが悲願となっていたのだ。

しかし屋敷の奥深くに安置された石を取り返すのは不可能に近かった、

だが、今代のマーンの少女がなぜか持ち出していると知り、ウォーデンはそれを取り返すべく動き出したのだ。

 

「…そんなに返してほしければ、返してあげるわよ」

 

いまだ、ソルの恐怖が拭えないのか、涙目になりながらサモナイト石を掌にのせてミニスは差し出した。

それはかつて、命を対価にウォーデンが行った行動と同じものだった。

 

「物わかりのいい事です。では……」

 

ついに、悲願が達成されると心を震わせながらギブンが石を掴もうとするが。

 

「のわあぁぁぁっ!?」

 

すさまじい衝撃が走り、ギブンは弾き飛ばされてしまった。

 

「……アハハハハ、どうしたの?遠慮しなくってもいいのに」

 

サモナイト石の加護は今だ健在でミニスは安心した、

つまりこの石のこの効力がある限り、自分の命は安全だと理解してたのだ。

迂闊に自分を傷つければアイツが出てくる、あのギブンがそれを容認するはずがないと踏んでいた。

 

「おっ、おのれっ!よくも僕を図ろうとしたなぁっ!ザガルド、あれを取って来るんだ!」

「冗談じゃねぇ、あんな物騒な石、触りたくなんかねぇよ」

 

ギブンはザガルドに命令するが、それをザガルドはあっさりと拒否してしまった。

 

「……」

「あ!?」

 

しかし、ソルが何の躊躇もなくサモナイト石を掴むとバチバチと衝撃が走る音が聞こえるが、

なんの影響もない様にソルがその石を観察し始める。

 

「使用者の魔力を利用して拒絶しているのか、随分と高等な手段を使えるんだな」

「どういうことだ?」

「翼竜の仕業だろうな、ウォーデンの誓約が一部解除されてるせいで、色々と干渉できるのだろう」

 

今だ、衝撃を放ち続ける石を握りながら、ソルはそう視察した。

ギブンはソルに対して「なんとかしろ!」と命を下すとソルは剣に手をやる。

 

「来ないで…、来ないでよぉ!?」

 

剣を抜き、ミニスに近づくがミニスが暴れるように倉庫の隅に逃げてしまった。

フィズはその様子を口を押えながら恐怖している。

 

「ザガルド、抑えてろ。騒がれると面倒だ、首を跳ねる」

「ちょ、ちょっと待てよ!お前、何やってるんだ!?」

 

ギブンは石をどうにかしろと命令したのに、なぜそれがミニスの殺害になるのか、わからない。

ソルはギブンの知識不足に深く溜息を吐いて、答えた。

 

「この石はミニス・マーンの魔力で動いている。なら所有者を殺害すれば、いずれ残留した魔力はなくなりただのサモナイト石に戻るだけだ。その後に石を好きなようにすればいいだろう」

「だが、殺すのは僕の性分に…」

「殺した後の事は気にするな、あの孤児院付近にでも死体を放置しておけば足が付くことはない、サイジェントはそういう街だからな」

 

ソルはフラットに罪を押し付ければいいと考えた、ミニスがあそこにいたのは事実だ、

それにはぐれ召喚獣や札付きの連中を多数抱えてるフラットなら押し付けるのに十分だと判断した。

 

「……いやダメだ、このお嬢さんは連れて帰ります!」

「…ッ」

「お前が言うなら、それでいい、雇い主だからな……」

 

ソルとザガルドは内心舌打ちした、面倒な手順を踏んで石を取り上げるのに手間がかかるからだ。

そんな面倒な手段を選ぶ、この男に嫌気が指すが、計画の為にぐっとこらえた。

 

「でも、いいのかい?このお嬢さんは召喚術を使えるんじゃねぇのか?」

「大した召喚獣でもない、それにここで召喚すればどうなるか、その翼竜が把握してるはずだろう」

 

ここは地下倉庫だ、あのような巨大な召喚獣を出してしまえばそれこそ崩落してしまう。

外の様子を把握できる翼竜がその事に気づかないわけがないとソルは判断した。

 

「―――けてくれるんだから」

「ん?どうしました?」

「お兄ちゃんが助けてくれるんだからっ!!」

 

フィズが呟く言葉を聞くように、ギブンが耳を傾けると、

部屋に響き渡る大声でフィズが叫んだ、その声に驚き、ギブンは耳を塞ぐ。

 

「ぐぅっ!?」

「お兄ちゃん…?ああ、アイツの事か」

 

ザガルドはフィズの言ってる人物に心当たりがあった、自分の不意打ちを防いで、

正面からやりあった手練れの剣士、聞くところ剣を持って1.2ヵ月らしい。

 

「そうよっ!ハヤトが来ればあんた達なんてあっという間なんだから!」

 

ミニスもフィズのいう事に合わせて声をあげた、

ミニスやフィズにとってハヤトはヒーローだった。自分たちを助けるために全力を尽くし、

そして、沢山の人を守って来た。だから今回もキッと助けてくれる、二人はそう信じていた。

 

「随分とその人物の事を信頼しているのですね。それでザガルド、その人物は?」

「あぁ~、それがな」

 

チラリとソルの方を見る。ザガルドはソルがハヤトと対峙したことを知っている、

だが、その結末については聞いていないのだ。簡単に聞いたとき、「もう気にする必要もない」だった。

ギブンからの視線を感じて、ソルがその問いかけに答えた。

 

「気にする必要もない、死んだ人物に何時までも気にかけていても意味がないからな」

「……え?」

「な、なに言ってるのよ…、ハヤトが?」

「アイツは殺した。危険だったからな」

 

認めたくはない事実を二人は突きつけられて、呆然としてしまった。

ハヤトが死んだ、フィズにとっての家族が。ミニスに初めての友達が……、死んだ。

 

「嘘よ…、そんなの嘘に決まってるでしょ!」

 

認めたくない一心でフィズは叫ぶ、あのハヤトが死ぬはずがない。

死にかけることは何度もあった、だけど死んだことはないんだ!そう信じて反論する。

 

「認める認めないはお前たちの勝手だ、だが事実は変わらない」

「ひっぐっ、嘘よ…、嘘よぉぉぉーーっ!!うわぁぁぁぁぁん!!!」

 

身内が殺されて、泣き叫ぶフィズをミニスはただ見るだけしかできなかった。

そして自分のせいでハヤトが死んだことを理解した。

自分がこの街に来なければ、あそこで孤児院を飛び出さなければ。

 

「私のせいだ…、私のせいでハヤトが…、私のっ!!

 

頭を抱えてミニス目からぼろぼろと大粒の涙が零れ落ちる。

自責に押しつぶされそうになり、ミニスはもう何も抵抗がする気がなくなった。

これ以上、自分が何かをすれば、きっとまた人が死ぬ、今度はフラットのみんなの誰かが…。

 

「行くぞ」

「ッ、あんましいい気分じゃねぇな」

「おい、僕を置いてゆくな!!」

 

ソルが先に部屋を出て、それにザガルドが付いてゆく、

なぜか彼らの主であるはずのギブンが一番最後だった。

そして、泣き叫ぶ二人の少女の悲鳴を塞ぐように暗い扉は再び閉じられたのだった。

 

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「なんでっ、傷は治ったのに…、なんで息を吹きかさないのっ!」

 

既に日が落ちた路地裏で一人の少女が戦っていた。自分に出来る召喚術を駆使して彼の傷を癒す。

精密な召喚術により、彼の体の大部分の治療は済んでいた。だが…。

 

「お願い…、死なないで、ハヤト!」

 

あと一歩、彼の命に届く力がクラレットは引き出せなかった。

彼の心臓が止まった原因は電撃によるショックが原因だった、

細胞壊死をこれ以上起きないように常に回復を続けているが、時間が経てば魔力が尽き、本当の意味で彼が死んでしまう。

 

「私じゃ…、わだじじゃ…、ハヤドを…」

 

ぼろぼろと涙を流してハヤトの顔に手をやる、自分ではもう助けられない…、

大切なこの人を助けられない…、いつもそうだ、自分はハヤトに助けてもらってばかりで、

私はハヤトの事を守れない、彼が死ぬところを見るだけしか…。

 

顔に手をやり、後悔で心が潰れそうになる。そんな時、一つの傷跡に目に入った。

 

「これって…」

 

首元に出来た傷、かつてトードスに操られたユエルに食い千切られた傷だった。

 

「…ある、まだ方法が!!」

 

自身の持つ杖に目をやる。かつてハヤトの傷を癒し、ガレフたちを救ったあの召喚術。

あの光の天使を召喚することが出来れば、ハヤトを救えるかもしれない。

涙をゴシゴシと拭き、クラレットは杖に魔力を通した。

 

「宿命の意味を知り、それに命を捧げるものの声を聞け――」

 

普段決して口にしない、全力の詠唱。彼女の存在に関わる宿命の言葉。

 

「セルボルトの――、うっくっ!?」

 

彼女の中にある、【何か】が蠢き暴れまわる。まるでその力自体が意識を持つようにクラレットに反発する。

クラレットは意識がとびそうになるが、必死にそれを抑えた。

 

ダメ…、これじゃあ召喚することもできない…。

 

抑えるのが精一杯でクラレットは召喚術を行使できなかった。

そして、クラレットは決断した。愛しき人を救うために、自分を捨てるほどの覚悟を。

 

「な…ら、もう抑えません、力を…、力をください、ハヤトを救うために!」

 

クラレットは力を開放した、かつて儀式後地で暴れまわった魔力がクラレットとハヤトを中心に奔流する。

クラレットはその魔力から使える魔力を限界まで引き出し、杖に送り込み続ける。

意識が跳びそうになっても、彼女は決してその行為を止めようとしない、なぜならそれを止めれば…。

 

「必ず、助けます!だから、力を貸して……、宿命の意味を知り、それに命を捧げるものの願いを聞いて―――」

 

再び詠唱を始めるクラレット、既にその表情に苦痛の色は見えない、

彼女は大切な愛しき人を救うために言葉を紡ぐ。

 

「セルボルトの名の下に、クラレットが汝の力を望む―――!【光の賢者エルエル】!!ハヤトを…、助けてっ!!」

 

クラレットが召喚術を行使する、魔力の奔流が杖のサモナイト石を満たし、光の賢者を降臨させた。

そして、その瞬間、路地裏は光に包まれ、二人の姿は光の中へと消えていった……。

 




ハヤトの蘇生なるか!?ってとこで終わりにしました。
もっと書こうかと思ったけど切りのいいところで区切ることに。

原作だとミニスのシーンはフィズと一緒に体を寄せ合って泣いてるんですけど、
ソルの介入のせいでもう最悪ですね。うま味です。

次回は原作を結構飛ばして一気に進む予定です。
あと2話で終わらせたいなぁ。
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