サモンナイト ー生贄の花嫁ー   作:ハヤクラ派

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22話だけど小説版エピローグです!
シリアス続いたけどやっと終わったぜ!

かなり悪ふざけしすぎなので気に障るかもしれません、
先に謝ります、ごめんなさい。


第22話 帰るべき場所へ

夢を見ていた、何も知らずに平和な日々を謳歌していた時を、

家族が友人がそして愛しき人がいるあの日々、とても遠くに行ってしまったものだった。

その夢を見るたび思う、いつの日か必ず元の世界に帰ると…。

しばらくその夢に浸ると意識が覚め始めてくる、これは夢なんだから当然だ。

そして俺は目をゆっくりと覚ました。

 

「……あ~」

 

声が出るか確認して、体を動かそうとする。

…すごく体が痛い、何というか、全身が重くて動かすだけで辛い、

それだけじゃなくて息苦しさもあった。

まあ、当然だよな、あんな無茶を続けて生きているだけで、儲けものだ。

 

「良かった、ちょうど起きたのね」

「…クラレット?」

 

声に反応して俺は呟いた、いつも大変な事の起きた後は必ずクラレットがいてくれた。

だけど、その人物はクラレットじゃない、服はフィズの服だったが、

金色の髪の少女、ミニスだった。

 

「もう、間違えないでよね」

「はは、ごめんごめん。いつも起きた時、クラレットがいてくれるからさ」

「そう、ならいいけど」

 

とりあえず、ミニスにあれから何があったか、聞くことにした。

凄まじい戦闘のせいだったのか、あれから騎士団が来てしまったが、

キムランがこっちの問題だと言って追い返してくれたらしい。

今回の主犯のギブンは拘束され、賠償責任などを取ってウォーデンに請求するとか言っていたそうだ。

まあ、俺には関係ない話だな。

 

「それで…、クラレットは?」

 

俺が一番気になったのはクラレットだ。流石に今回は騒動が激しすぎた。

どういうわけか、クラレットの魔力が孤児院から感じないのだ。

何となく、何となくだが感覚が鋭くなっている気がする…、ガイエンを降ろした影響のせいなのか?

 

「クラレットなら、キムラン叔父様と一緒にウォーデンの尋問をするって言ってたわ」

「尋問…、拷問にならなきゃいいんだけど」

「流石に叔父様たちでもそこまでは……、ありえるかも」

 

二人で笑いながら冗談を言い合う、たぶんソルの事を聞き出すつもりだな。

だけど、アイツがそんなことを話すとも思えないし、ギブンってやつも利用されてただけだろうな。

そう思いながら一応、ミニスに聞くことにした。

 

「なあ、その…、ソルってどうなったんだ?」

「うん…、あの後、騎士団に探させたみたいなんだけど、結局見つからなかったみたい、関わってた連中は全員死んでたんだって」

「…隠蔽も完璧か。まあ当然だよな」

「………ねえ」

 

ミニスがベットに手をかけて身を乗り出す、なにやら覚悟を決めているようだ。

ジッとこっちの目を見つめてミニスは口を開いた。

 

「ハヤト、その…、うちに来ない?」

「うちって…、ミニスの家?」

「う、うん、私のお母様って金の派閥の議長をしてるのよ。もしかしたら元の世界に戻る方法が分かるかもしれないわ」

「金の派閥の議長、そんな偉い人なのか…」

 

まあ、確かにミニスの持つ魔力は凄かったけど、まさかそんな凄い人が母親なのか。

 

「それに、無色の派閥が狙ってきても、そう簡単に手出しできないはずよ。だって私達がいるのは聖王都のゼラムなんだから。きっとじっくり調べられるはずよ」

 

確かに少なくとも孤児院より安全だろう、金の派閥の議長の家なら警備も完璧だと思うし。

きっと安全に元の世界に戻る為に調べ事が出来るはずだ。………生活にも困らなそうだし。

 

「確かに、ミニスの家なら元の世界に安全に戻れるかもしれないな。それもいいかもな」

「じゃあ!」

「でも、俺は行けない。ごめんな」

「ど、どうしてなの! ここに居たら命が幾つあっても足りないかもしれないのよ!?」

 

ミニスの誘いを断り、ミニスが怒る。

確かに一度死にかけて、ミニスの目の前でもまたやられかけたから心配になるのは仕方ないよな。

 

「みんながいるからだよ。みんながここにいるから俺は尚更残らなきゃいけないんだ」

「みんながいるから…?」

「俺とクラレットがいなくなったら、きっと喜々としてあいつらはフラットのみんなを襲う、だからここから離れるわけにはいかないんだよ」

「…そう」

 

俺が家族の事を大事に思ってることはアイツらがよく知ってるはずだ。

だから俺とクラレットがいなくなれば、きっとフラットの何人かを人質にするはずだ。

ミニスの誘いは嬉しいけど、受けるわけにはいかなかった。

 

「ごめんな…、俺達の事を思って言ってくれたのにさ」

「………ううん、違うわ。私、貴方と一緒に居たかったの。ハヤト」

「ミニス?」

 

ミニスが震える手で俺の手を握ってくる、少し冷たいが芯はとても暖かかった。

下唇を少し噛みながらミニスはこっちを見て答えた。

 

「私ね。ソルに捕まった時、凄く怖かった。私のせいでハヤトが死んじゃったって…、私の事、怖がらないで遊んでくれたハヤトがもういないって言われて、凄く苦しかったの」

「……」

「フィズが励ましてくれて、もしかしたらまだ生きてるかもしれないって思えて、他のみんなも助けに来てくれたから、もう少しだけ頑張ろうって思えた。でもそのせいでアカネって人が殺されそうになって、またいなくなっちゃうんだって、私のせいでまた誰か死んじゃうんだって思えてホントに…怖かった」

 

俺の手を握るミニスの力が強くなってゆく、俺も弱い力で握り返してあげた。

ミニスは俺の手を見て、視線を戻して話を続けた。

 

「でも、ハヤトが助けに来てくれた。凄く嬉しくて…、同じようにすごく怖かった。ソルと戦って、また殺されるんじゃないかって怖くって…」

「だけど、ミニスが助けてくれたじゃないか」

「そうだけど、シルヴァーナとフィズがいなかったらきっと、ハヤトは殺されてた。だからハヤトが無事だったとき、本当に嬉しかったの、ボロボロなのに、私の事、気にかけてくれて。それで…、気づいたの」

 

ミニスは少し気恥ずかしそうになりながら、頬を赤く染めて答えた。

 

「その…、私。ハヤトの事、好きなってるんだって…」

「………え? えっと」

「だから! 私、ハヤトの事、好きなのよ!」

「えっと……、友達としてなのか?」

「ううん、恋人として好きなの」

 

ミニスガ何ヲ言ッテルノカ分カラナイ。

……俺の事が好き? いやいや、俺はただミニスを守ると無茶やってただけだし、

何よりソルとの時はクラレットを守ること優先だったはずだよな。

何処に俺のこと好きになる要素があったんだ!?

 

あからさまに混乱するハヤトを見て、ミニスの表情が曇る。

 

「その…、迷惑だった?」

「いや、迷惑っていうか…。女の子に告白されるの初めてで…、いや自分も告白なんてしたことないけど」

「あれ?そうなんだ」

 

ミニスはハヤトとクラレットの関係を見て恋人同士と思っていたが、

実はこの二人。まだ恋人同士ではないと気づかされた、

玉砕覚悟の告白だったが、ミニスは心の中でまだチャンスがあるかも、と少し思った。

 

「えっと、俺のどこが好きになったんだ?」

「うん、色々気にかけてくれたし、初めての友達だったし、それに…、私達のこと守る為に戦ってる姿がカッコよかったから…」

「あ~、そうっか…、きっと危機的状況とかで錯覚してるんじゃないのか?」

「むう、それでも! それでも私はハヤトの事が好きなの!」

 

心底ハヤトは困った、ここまで想われてしまえば、迂闊に断ることもできない。

だけどこのまま引きずるのは少しどころかかなり問題だった。

何とかミニスを諦めさせるためにハヤトは色々投げ掛けた。

 

「だけどさ、歳の差とかあるだろ? 世間体とかさ」

「ハヤトって何歳なの?」

「16歳」

「私は10歳よ。たった6年差じゃない、もっと差がある人たちだっているわよ」

「いやでも、ミニスって金の派閥の貴族だろ? だったら…」

「ハヤトは全部の召喚術使えるじゃない、それに召喚師の腕前だって叔父様たちを超えるほどなんだから問題ないわ」

「うーん…まあ確かに」

 

どうあがいても諦める気がないミニスにハヤトは覚悟を決めた。

しっかりと伝えないときっとお互い不幸になる、そう思って口を開いた。

 

「ミニス……、ごめん」

 

俺の言葉を聞いて、ミニスが少しつらそうな顔をした。

 

「………うん」

「俺さ、守りたい人がいるから、命よりも大切な人がいるからさ」

「好きな人?」

「うん、大好きなんだ。この世界の誰よりも」

「……そっか」

 

ミニスは俺の手を放し、天井を見上げる。

すこし虚空を見つめ、落ち着いたのか、再びこちらを見つめた。

 

「…わかった、諦めるわ」

「ごめんな、本当に」

「ううん、初恋は実らないとか言われてるし…。素直に諦める事にするわ。それに……、クラレットにだったら諦められるから」

「ミニス…」

「でも、私を助けてくれた。お礼は貰ってもらうわよ?」

「お礼?」

「そう、この世でたった一つだけしかない、宝物よ。受け取ってくれるかしら?」

 

そんな大事な物を俺にくれるのか…、断るわけにはいかないよな。

ミニスが勇気を出して告白してきて、それを断ったんだ。それ以外の頼みは聞いてあげないと。

 

「ああ、分かったよ。受け取るよミニス」

「うん、じゃあちょっと目を瞑ってくれるかしら」

「…これでいいか?」

「うん、いいわよ。少し待っててね、すぐに終わるから」

 

俺は目を瞑り、ミニスのお礼を受け取る準備をする。

……いや待てよ?なんでお礼を受け取るのに目を瞑る必要があるんだ?

するとグッと俺の肩にミニスが手をかけるのを俺は感じ取った。

 

「…ん」

「っん!?」

 

突然、唇に柔らかい何かが押し当てられ、俺はびっくりして目を開けてしまう。

そして俺は驚いた、眼前にいたのはミニスの顔だった、唇同士が触れ合っているこの状況。

いわゆる、接吻。キスというモノだった。

完全に不意打ちを受けてしまい、呆然と俺はしてしまう。

ミニスがゆっくりと俺から離れて俺の顔を見る。

 

「は、初めてだから…、それだけは覚えていてよ」

 

顔を真っ赤っかにしながらミニスは俺の方を見てそう告白した。

もし俺がクラレットの事、好きじゃなければ一目惚れするほどミニスは可愛った。

この世でたった一つしかない宝物、そうか、ファーストキスかそうだよな。

っていうかさ…。

 

「俺も…、初めてだったんだけど」

「あ、そうなの?」

 

それを聞いて、幸せそうな顔をして、初めて同士ね。とミニスは呟く。

完全に不意打ちを受けて口に手をやりながら俺はしばらく考えてた。

柔らかかったな……、いやいや、そうじゃないだろ。こんなことバレたら…。

照れたり、顔を青くしたりきっと忙しそうな表情をころころ変えていただろう。

そんな俺を見て、ミニスは笑顔になって答えた。

 

「私、帰るね」

「帰る…、もう帰るのか?」

「うん、あんまりここに残るの良くないから…、言いたいことも言えたし、それに振られちゃったけど、告白も出来たしね」

「…そっか」

「また、会えるかな?」

「きっと会えるさ。でも、次会った時は一人前の召喚師になってるんだぞ」

 

手を伸ばし、ミニスの頭を撫でる。告白されても俺がミニスに対する想いは変わらない。

露骨に態度を変えるのはお互いに良くない、だから俺にとってミニスはミニス。そう思うことにした。

 

「…うん、頑張るね。シルヴァーナと一緒に」

「ああ、頑張れミニス」

 

そして、俺の部屋からミニスは居なくなった、孤児院の人の気配が少ないのはたぶん見送りに出てるんだなと思った。

再びベットに身を預けながら、俺は目を瞑り意識を沈める。

目を瞑るとどうしてもあの感触が蘇り、小さい子に何させてるんだー!と悶えながらハヤトは眠りについた。

 

---------------------------------

 

ハヤトとミニスのやり取りから少しして夕闇が現れ始めるころ、

波止場にはフラットの面々とキムランの姿があった。

 

「みなさんには、本当にご迷惑かけました」

 

丁寧なお辞儀をしてミニスは見送ってくれる人たちに微笑んだ。

自分の命を助けてくれた人。お礼をするといったのだが、

そんなもののために戦ったわけじゃねぇよとガゼルは言ってくれた。

本当にいい人たちでずっとここに居たいと思ったけど……、私はお母様の下へ帰ることにした。

 

「もっと、ゆっくりしてってくれればいいのに」

 

リプレが名残惜しそうにするが、ミニスは小さく首を振る。

 

「リプレお母さんのそばにいると、つい甘えちゃうから…」

 

彼女だけじゃない、ここにいる人たちは本当に優しくて、暖かくて、

ずっと、ずっとここに居たいと思うけど…。

 

「でも、私には帰る場所があるんだから…」

 

自分に言い聞かせるように、そこへ戻ろうと思う。

帰りたくても帰れない人たちだってこの世界にはたくさんいるんだから…。

 

「うにゅうぅぅぅぅ……」

「ちょっと馬鹿レビット、泣いてたらコイツが困るでしょ!」

「にゅっく、でっ、でもおぉぉ……」

 

意地悪ばかりしてしまったのに、モナティが泣いてくれている。

エルカだって、口は悪いけど、私を守る為にあんなに必死になって戦ってくれた。

この二人にも…、きっと元の世界に帰れる日が来るいいんだけど…。

 

「また来いよな」

「ばいばい……」

 

アルバの声にうなずき、泣きだしそうなラミの髪を優しくなでる。

 

「もう、自分に負けるんじゃねぇぞ」

 

そしてガゼルもそう言ってくれた、彼が叱ってくれたから、

私は前を見て逃げることをやめて、きちんとお母様とお話ししようと思ったのだ。

 

「ミニス」

「クラレット」

 

最後にクラレットが一歩踏み出して、私と目線を合わせる。

そして一枚の手紙をミニスに手渡した。

 

「お礼はいらないと言いましたけど…、これをファミィさん、いえ、金の派閥の議長ファミィ・マーンに渡してくれませんか?」

「お母様に?」

 

クラレットがミニスに渡した一枚の手紙、言い方も含め、お礼などというモノではなく、

それがとても重要な物だとミニスは理解した。そしてそれを見ていたキムランが口開いた。

 

「いったい何の手紙なんだ?」

「そうですね…、このサイジェントの未来に関わる非常に重要な事ですね」

「!?」

 

ミニス持つ手に力が入る、サイジェントの街を周ってこの街が自分の思っている以上に荒んでることは理解できた。

そして、それを作った原因も…、だからこの手紙に書かれていることが恐ろしく思えてきたのだ。

そんなミニスに気づいたのか、クラレットは笑顔でミニスに答えた。

 

「大丈夫ですよ。その手紙には即物的な運営に関することや、永続的な街の運営、街を動かす新しい方法などを簡単にしたためただけですから、三兄弟の皆さんには飛び火しませんよ。………たぶん」

「そこは大丈夫とか言えよ!」

「元はといえば誰のせいだと思ってるんですか。まったく、イムランさんがあんな差別的で頑固者じゃなければ直接教えたいぐらいですよ!」

「じゃあ、なんだ? その手紙にはこのサイジェントを変える可能性があるってことなのか?」

 

エドスがそう答えると、クラレットは静かに頷いた。

自分は専門の人物ではないが、学校で教わっていることはある程度理解はしている。

成績も上から数えた方が早いほどだ、そんな彼女の知識をフルに使ったことがその手紙には書かれているようだ。

改めてミニスがクラレットの顔を見ると、彼女の目にクマが出来ていることに気づいた、あれからミニスが帰ると決めて、

きっと寝ないでこの手紙を必死に書いていたのだろう、この街を救いたい、その可能性を彼女は信じて…。

 

「わかったわ、クラレット。絶対にこの手紙、お母様に届けるわ」

「お願いしますね、ミニス」

「任せといて、ハヤトの為にもしっかりやるわ!」

「……ん?」

 

普通なら気づかなかったであろうが、クラレットは気づいてしまった。

ハヤトの事を言ったミニスの頬が少しばかり赤くなっているのを、こういうのが何かクラレットは知っていた。

名も無き世界、その世界でハヤトを慕う幾人かの女子生徒で日比野絵美と呼ばれる人物。

春奈のクラスメイトでハヤトを慕う女子の中ではかなり飛び切りの人物だ。

幸いな事にハヤトが鈍感なおかげでほとんど気づいていないようだが、ミニスはそんな彼女と同じ表情…いや、それ以上の情愛を抱いてる気がする…。

まさか…、流石にハヤトが…、そんな事を考えながらクラレットはミニスに【確認】してしまったのだ。

 

「……えっと、ミニス? ハヤトと何かあったんですか?」

「え? えっとねぇ」

 

ミニスが両手を頬に当てながら嬉しい表情を抑えてニコニコしている。

クラレットは笑顔を絶やさぬようにして、その妙に不快で不安な感情を押さえ付けている。

 

「ふふ、私ね。助けてくれたお礼で、ハヤトと初めてを交換したんだから」

 

「……………………………へぇ?」

 

 

 

 

 

 

世界が凍る。

 

 

クラレットは何も言わない、彼女の目の前には幸せそうなミニスの顔、

時折、唇を触る姿は何を交換したか。予想するのは簡単だった。

 

「せっかく誘ったんだけど、断られちゃったんだ。だからクラレット。ハヤトの事お願いね」

「………………………………えぇ、いいですよ?」

「ク、クラレット?」

 

反応が明らかに遅い、クラレットに違和感が凄まじく感じたリプレは彼女の肩を軽くたたく。

 

「どうしたんですか、リプレ?」

「ううん、なんか様子が……ヒッ!?」

 

クラレットが顔をリプレたちに向けると誰もが彼女の様子に恐怖した。

 

「…ううっ、うわあぁん!!」

「ラ、ラミ。オイラがついてるから!」

「うわああぁぁん!!!」

 

あの、クラレットを慕うラミすら、今の彼女を見て号泣する、別れを告げる波止場があっという間に恐怖の舞台に変わったのだ。

エドスは冷や汗が止まらずに滝の様に汗を流し一歩また一歩と離れてゆく、

リプレはガゼルの後ろに隠れてクラレットを見る、ガゼルは視線を合わせないようにしていた。

エルカも普段馬鹿レビットと罵るモナティに抱き着いて、震えあがっていた。

クロとユエルに至っては頭を抱えて震えていた。野生の本能が強いこの二人は本能的に恐怖したのだ。

 

「?? どうしたんですか?」

「お、おい」

「ん?」

「い、嫌なんでもねェよ、ハハハ…」

「ふふ、可笑しなキムランさんですね。そうだ、私、【用事】を思い出したんで、ちょっと孤児院へ帰ってますね。ミニス?」

「ん?なにかしら」

 

クラレットはミニスの方向を再度見る、その笑みは決して相手と仲良くするものではなかった。

笑みとは元々相手を威嚇するもの、笑いながらミニスを見てこう答えた。

 

「調子に乗らないでくださいね?」

「ふん。早い者勝ちよ。掻っ攫われても文句なんて言えないでしょ」

 

クラレットは負の感情で真っ黒に染まったように見える瞳でミニスを見下ろす、

そして、クラレットは孤児院へと向かって行った。

 

「なあミニス。お前スゲェな」

 

キムランはあの異常な状態のクラレットに正面から対抗したミニスを称賛した。だが…

ミニスはまるで糸が切れたようにその場で崩れ落ちた。

 

「お、おい!?」

「こ、怖過ぎよ、クラレット。あそこまで思ってるならさっさと既成事実の一つでも作り…なさ…い…よ…」

 

それなら諦めもつくのに、そう思いながらあまりの恐怖で汗をダラダラと掻いたミニスが気絶する。

後に彼女は語る。ソルに襲われたり、シルヴァーナを召喚したりなど、色々あったが、

一番大変だったのはクラレットとのお話だったと……。

 

---------------------------------

 

そんな事があった頃、フィズは孤児院に残っていた。

彼女はミニスと既にお別れの挨拶をしていたのだ。

最後の最後でミニスとフィズは本当の友達になれた。

凄く悲しくて、涙がボロボロと出たが、二人は仲直りし親友へとなった。

彼女の姿も変わっていた、チャームポイントと言える、三つ編みを解いていた。

そして手には紫色のリボンが握られている。ミニスのリボンだった。

それを見ながらフィズは波止場のある方を見てつぶやいた。

 

「もう行っちゃったかなぁ…」

 

そう思いながら、みんなが帰ってくるまで落ち着かないとプラプラしていた。

ハヤトは再び寝たようでフィズは起こさないであげようと思う。

彼の戦いは召喚術の良く分からない自分でも無茶だとわかるほどだった、だから休ませてあげたかったのだ。

だが、そんなフィズに近寄る何かがいた…。

 

「むっ!?むぅ~~~!!!」

 

突然口元を塞がれ、茂みへと引きづりこまれる、

まさかアイツらの残党!? そう思い恐怖で震えあがりそうあったが、実際は違っていた。

 

「騒いではいかん」

「……!?」

 

フィズの口を押えていたのはウィゼルだった、その手には包まれた棒のような布がある。

ウィゼルはハヤトがまた剣を壊したと聞いて、新しい剣を持ってきたのだ。

そして、フィズが首を傾けるとウィゼルはそっと口元を抑えていた手を放した。

 

「お爺ちゃん?」

「………来るぞ」

 

ウィゼルの視線の先に、人影が現れた。クラレットだ。

足音を立てずに物音一つ立てずにゆっくりと歩んでいた。

どうしてクラレットにここまで警戒するのだろう、そう思ったフィズはクラレットを直視すると…。

 

「ヒッ!?」

「ム!」

 

再び口元を抑えられる、そのままウィゼルは気配を完全に殺した、フィズもその中に取り込む。

 

「…?」

 

クラレットは何かを気にしてキョロキョロとするが、再び歩んでゆく。

そして孤児院の扉を音を立てずにまるですり抜けるように進んでいった。

やがて、気配が消えたのか、ウィゼルは抑えていた手を放した。

 

「うぅ…!?」

 

フィズはミニスのリボンを抱きしめて、その光景に恐怖する。

理由は分かる、ミニスだ。あいつが幸せそうにハヤトとキスをしたとさっき話していた。

お兄ちゃんにはお姉ちゃんがいるから無理よと言ってやったが、まさかそれがこんな結果になるなんて思ってなかった。

 

「何という殺気…、いや殺意と呼ぶべきか、あそこまで負の感情を持ち、自我を保っているとは…」

 

ウィゼルはこれが贄の真の力なのかとか、島で出会った奴に匹敵する、などと言っているが本件には関係ない。

ある意味、いつものフラットなのだが、今回ばかりは度が過ぎていた。そして……。

 

---------------------------------

 

「……ん?」

 

誰かの視線を感じた。それに気づきふと目を覚まし、体を起こし周りを見る。

周りには誰もいなかった、既に日が沈み。部屋の中も暗くなっているようだ。

 

「気のせいか…?」

 

喉か渇いたなぁっと思い、水を取る為。重い体を無理に立ち上がらせ、

台所に向かおうとすると、カランと音がした、まるで氷同士がぶつかった音、それに気づく。

 

「なんだ?」

 

振り向くと、机の方にこおり水の入ったガラスのコップが置かれていた。

こんな物、さっきあったのか? そう思いながらそれに手を取ると。

 

 

 

ヒヤッ…

 

 

「!?」

 

首筋に何かが触れ、驚いて後ろを向く。

パリィンとガラスのコップが割れて足に水がかかるが気にならない。

だが、後ろには誰もいなかった、そしてその代わりに…。

 

「……ふふ」

「んく!?」

 

誰かが俺の目の前にいる!? 敵なのか? いやわからない、誰だ誰なんだ!?

口の中に溜まってゆく唾を飲み込み、前を見ようとするが、体が硬直して動かない、

金縛りにあい混乱していると、目の前にいる誰かは後ろを向いた俺の体に手を伸ばす。

グッと俺の体を掴み、恐るべき力でベットへと押し込んだ。

単純な力ではなく不可思議なパワーで対抗できず、俺は恐怖のあまり目を瞑った。

 

「うぅ……!!」

 

誰だ、誰なんだ。いったい誰がこんなことを…。

とりあえず、俺の命を狙ってきたわけじゃないようだ、

俺の体は押さえ付けられたまま時間が過ぎていく…。

 

 

1分?10分?1時間?

分からない、どれだけの時間が過ぎたのか分からなくなってきた…。

俺は恐怖に耐え切れず、ゆっくりと目を開ける、そう開けてしまったのだ…。

 

「あ…あ…」

 

コレハ、ナンダ…?

 

「うわあああああぁぁぁぁあああああぁぁーーーっっ!?!?」

 

その後、ハヤトの姿を見たものはいない、彼のいる部屋は開かなくなってしまったのだ。

窓ガラスも黒く染まり上がってしまい、中を覗くことは出来なかった…。

 

後にメイメイが語った、「あれはねぇ、色んな感情とか呪いとかゴチャゴチャの混ざり合った産物、あの状態の彼女、エルゴより強いかもよ?」と言っていたそうだ。




もう一回あやまります、ごめんなさい。
実はミニスの所は書くのに3日掛かったほど、ドきつかった。
でもクラレットの変貌辺りから1日も掛からずに書いたあたり、
余程テンション上げ上げだったのでしょう。

ちなみにクラレットはギブンの確認に行っただけで尋問はしてないです。
してたら手紙書く時間なんてないっすよ。

次はサブイベになる予定です。それが終わったら……、ついに最終章か…。
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