前回の続きであり、二人のその後、さっくりと終わらせます。
無色の派閥の関わったあの事件からおよそ3日ほどの日にちが過ぎた時、
平和なフラットの朝頃、広間にはガゼルとリプレがいた。
現在フラットのメンバーの大半は療養中だった、訓練も仕事も休み、
傷を癒すべくゆっくりしてるところだ、
それだけではなく無色の派閥の襲撃にも備えていた。
そんな中、今まで開くことのなかった部屋が開く、
そこから現れた人物は誰もが待ち望んだ人物だった。
「リプレ、それにガゼルおはよう」
「な、お前平気なのか!?」
「ハヤトッ! ……それにクラレット」
「どうして私に話しかけるときだけ引くんですか…、ちょっとショックですよ。リプレ」
部屋から出てきたのはハヤトだった、まだ調子が戻り切ってないのか、
少しダルそうな表情をしている、そしてその横にはクラレットがいつもの様に立っている。
最後に見た彼女とは違い、どうやら何時もの彼女の様でリプレは安心した。
「もう大丈夫だよ。まだ安静にって言われてるけど、普通に生活する分なら問題がないってクラレットがさ」
「ええ、ある程度は平気だと思いますよ」
「いや、そうじゃなくてよ。お前三日間全然姿現さなかったじゃねぇか、何があったんだ?」
「うん、私もそれが気になって」
リプレとガゼルはあの日、
まるで全てを飲み込むような眼をしたクラレットがハヤトの部屋に入った事は分かっていた。
しかし、どうあがいても扉を開ける事は出来ず、窓を壊すことは出来なかった。
わざわざキムラン達を呼び調べさせたら恐ろしく頑丈な結界が張られているとの事だった。
並みの召喚術は勿論、物理的な攻撃も一切シャットアウトされているらしく、
三兄弟の名を懸けても解除は不可能と言わしめた結界だったそうだ。
しかし、ここにいるクラレットもハヤトもまるでそんな事があったのかすら把握してなかった。
「三日間ですか…? 私はずっっっとハヤトの看病をしてただけですし…」
「……そう、うんならいいけど」
「三日間…、三日…え?…三日前…あれ…? なんで俺、こんなに震えてるんだ?」
ハヤトの体は震えて大量の汗をかき始めた、本人はどうしてこんなことが起こるのか分からないようだ。
「なんで俺こんなに汗が…、三日前…、なにが起き…黒、何が…? ミニスが…あれ?」
「聞いた俺達が悪かった、気にするなハヤト!」
「そ、そうよ! ずっと寝てただけよ?ね!」
汗をダラダラと流してガタガタ震えるハヤトに二人は大混乱だった。
まるで記憶の奥底に封じたナニカが呼び起こされるのに
拒否反応を体が示すように危険信号を出しまくっている。
それを察したガゼル達はすぐに訂正して、ハヤトの意識をそらせようとした。
「大丈夫ですよ。ハヤト」
「クラレット、俺…」
クラレットは震えるハヤトの手を握り、自分の胸にやる、
怖がるハヤトを安心させるように優しい言葉をかけた。
「私が付いてますから、ずっと…。だから気にしなくてもいいんですよ?」
「そうだな…、ありがとうクラレット、落ち着いたよ」
「いえ、ハヤトの為ですから」
二人の雰囲気がいつもと違う、何が違うのか分からないがとにかく違うと二人は感じ取った。
「…お、俺はみんなにハヤトの事を伝えてくるからよ、リプレは飯でも用意してやってくれ」
「そうね、約束通り、美味しいモノいっぱい作ってあげるわよ」
「本当か!? いやぁ、流石にずっと寝てるとお腹がすいちゃってさ…、ははは」
「リプレ、私も手伝いますよ?」
「ううん、クラレットはハヤトのそばにいてあげて? 二人分のご飯位私一人でも平気だから、ね?」
「そうですか…、ならお言葉に甘えさせてもらいますね?」
ガゼルから何とかあくまで自然な流れでその場から逃げることに成功した、
それだけではない、全員に三日前の事を伝えないように言って回らなければならない。
もし、気づかされたらそれこそ今のハヤトがどうなるかわからないからだ。
リプレも同じように自然な流れで二人から離れていった。
ガゼルの位置からでは気づかなかったが、リプレは気づいてしまった。
未だクラレットの目に暗闇が宿りかけている事に、あの時、ミニスの発言で出た雰囲気を待っている事に・・・。
さっさと安心させてあげて欲しいとリプレは心の中でハヤトに訴えるのだった。
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食事を終え、フラットの会える全員をあいさつしたハヤトは少しぼーっとしていた。
庭に置いてある椅子に座って、のんびりしながら手を握っては放してを繰り返して、
何かを確かめるようにしていた。
「んー」
気になることを確かめる為に、ハヤトは立ち上がり立てかけてある訓練用の剣を握る。
流石に自粛されてる為、魔力も一切籠めてなく、ただ持ってるだけだった、
ゆっくりと剣を振るってみると、その違和感が確実なものになったことに気づいた。
「やっぱりだ、全然違う」
ハヤトが確信したのは自然な剣の型だった、無駄な力を省き、自然な動作で型通りの一撃を撃つ。
これが頭で理解してるよりもずっと難しく、彼はこれがどうしてもできなかったのだ。
それを魔力などで無理やり補って戦ってるのがいつものハヤトの戦い方だった。
だが、今剣を振るって気づいた、今までできなかったことが自然にできる、
その理由を頭の中で考える、死にかけて覚醒したとかそんな都合のいい事は無いだろう。
「んーっ…あ、そっかガイエンか」
鬼神将ガイエン、あの激戦でハヤトが降した鬼神の一角だった。
本来降ろせるはずもない鬼神。それを無理やり降ろして力を行使した影響だった。
ガイエンの魂殻がハヤトの魂殻と一部融和してしまった影響だった。
「これで……あ、いやいやまたやったら今度こそ本気で怒られるよな。変な事考えないようにしないと」
実はガイエンを憑依したことはクラレットも知っているのだ。
それに付いて本気で怒られた、もし普通の召喚獣だったら魂ごと食いつぶされていたかも知れないという事だ。
ガイエンが手加減をしてなければ間違いなくハヤトは魂を壊され乗っ取られていたはずだった。
彼がそうはならなかったのは今まで一度も私利私欲で召喚術を使わなかったからだ。
それ以上に召喚獣を守ろうとする行動まで起こしたからこそガイエンはハヤトを共に戦う仲間として認めたのだ。
「ガイエンに感謝しなきゃなぁ…、それに…」
ハヤトが取り出したのは千切れた紐と沢山のビーズだった。
誕生日にあげたミサンガ、どうやら胸騒ぎと一緒に千切れてしまったそうだ。
もし千切れていなければ俺は死んでたかもしれないなと思った。
食事の後、リプレがクラレットに渡してくれと手渡したのだった。
ミサンガの御呪いの事をリプレは知らない、
だから作った本人から再び渡して欲しいと思いハヤトに手渡したのだった。
「クラレットの願いが叶う様に編んだら自分の危機に千切れてくれるなんて…、なんというか」
ミサンガはこれを作った人物の願いを叶えるという、
ハヤトはクラレットの願いが叶うように思いながらこれを編んだのだ。
それのせいなのかハヤトを心配するクラレットを救う様にこれが千切れたのだった。
「次は……、そうだな。一度千切れたのに二度やっていいのか分からないけど、俺の事で使えなくなるなんて勿体ないしな…、次は…」
クラレットと自分が離ればなれになりませんように、そうハヤトは願いながらミサンガを編み始めるのだった。
まだ、体の調子が戻らないその手で、ゆっくりと確実に編んでいった…。
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「………ハヤト」
表面上は心配かけないように気にしてる風に
見せなかったがクラレットはとても心配だった。
原因は何より、ハヤトのガイエンを体に憑依したこと、
アレの悪影響をクラレットは深く感じ取っていたのだ…。
「間違いなく、ハヤトの魂殻は深く傷ついたはず…。それを治すのにきっと魂を多く摩耗したはず…」
魂殻とは肉体を構成する物質、簡単にいうと肉体の骨組みのようなものだ。
一般の召喚師には浸透してないが、サプレスの住人は基本この魂殻で肉体を構成している。
また召喚術を発動させてこちらに呼び出されたばかりの召喚獣はこの魂のみ呼び出され、
魂殻で肉体を再構築して出現するという法則を取っているのである。
そして魂殻は魂から生まれるのだが、基本魂殻が傷ついてもこれを魂が消耗して治したりはしない。
骨組みまで傷つくことはないからだ、だけど今回のハヤトは大きく違った。
その骨組みの魂殻に別の魂殻を乗せる、それは大きく負担をかけて魂殻をヒビを入らせる結果になった。
「エルエルやガルマザリアを憑依したとき…、違和感があったんですよね?」
『ああ、肉体的ではなく、まるで穴だらけのような感じがした』
『確かに、彼には非常に強い適性があったけど、それ以前にあれは可笑しかった気がしますね』
杖とペンダントから聞こえる二つの声、ガルマザリアとエルエルに話しかけてクラレットは考えていた。
魂は消耗品だ、あんな戦い方を続ければ、寿命を擦り減らし、そして最後には…。
「ハヤトは…、どのくらい減ったと思いますか?」
『それは……』
『さあな、大体40年ぐらいか?』
『ッ!ガルマザリア!!』
『隠しても仕方がないだろ、それに感付いてる時点で言ってやった方がクラレットの為だろう?駄天使』
『それはそうですが…、あと駄天使ではないです』
40年…、普通の人間なら半分に近い寿命をあれで削ってしまった…。
「きっと…、ハヤトにそれを伝えても、あそこで死ぬよりはいいよとか言うんでしょうね…」
『そうだな…』
「でも、ハヤトをあそこに連れて来た原因を作ったのは…」
自分だった。自分だけが悪いんじゃないそう言われてもどうしても責任を感じてしまう。
私は結局の所、ハヤトを傷つけているだけなのかもしれない…、だけど…。
「でも、私はハヤトと一緒に居たい、一緒に居続けたい…」
彼が言ってくれた、ずっと傍に居るって…、
とても嬉しくて愛おしくて、暖かかった、だから私は…。
「後悔したくない…、ううん。後悔なんてもうできないんですね」
ここに彼を呼んだ時から決まっている、後悔なんてしたら彼は苦しむ、
それにもう私は弱い私じゃない、私の中にあるこの力を使ってきっとハヤトと一緒に戦える。
…でも、少しだけ、ほんの少しだけ心配だった…。
次はきっと全力で来る、私達でみんなを…、守れるのか確証はない。
「………」
服の裏に仕舞ってある一つのお守りを取り出す、
人身御供と書かれたシルターンのお守りだ、かつて自分を心配してメイメイさんがくれたものだった。
そして視線を私はハヤトの服へと向けた、傷だらけでボロボロの衣服、
魔力を流しながら編みなおすとリプレに言って受けた取ったのだった。
「もしもに備えてですけど……、何も起きなきゃいいんですが」
クラレットはお守りを持ちながら服に近づいた、
ハヤトの無事を祈って、自分なりに今できることを…。
そして互いを想う少年少女はお互いに今できる事をする、
全ては互いの無事を願うがゆえに……。
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私は昼ご飯は食べずに晩御飯を食べていた。
食べてると私とハヤトは平気なのだが、何やら雰囲気が変なような気がしました。
「えっと…、皆さん何か隠してませんか?」
「ううん、ナニモ隠してないよ?」
「おう、そうだぜ?」
「おお、ちょっとお前さんたちと久々に飯が食えていつもと違うふうに感じてるだけさ」
それならいいんですが…、そう思いながらご飯を食べてゆく、
そういえば…、ラミちゃんと一回も今日話してない気がしますね?
「ラミちゃん、美味しい?」
「…うぅ!」
「えっ?」
「あぁー! ラミはさ、兄ちゃんが倒れてからずっとこんな感じなんだよ?な、フィズ」
「そ、そうなの、ミニスの見送りの時は無理してただけなのよ!」
「そうですか、それならいいんだけど…」
なんか釈然としないんですけど…、とりあえず妙に余所余所しいこの食事を終わらせないと…。
そして私は妙に気遣われる食事を終わらせて、刺繍道具を借りて部屋へと籠ったのだった。
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既に月が真上に達するとき、私の手がゆっくりと下りた。
「すぅぅーー、終わったぁ…」
息を大きく吸い、吐き出すように私は終わりを告げた。
目の前には新品とは言えないが、十分に直ったハヤトの服があった。
自身のサプレスの魔力を糸に付加させ、編み上げた至高の一品だった。
こんな事、普通の召喚師は絶対にしないので、かなり有効的な防具だろう。
「セルボルト家は霊界サプレスを扱う属性、きっと役立つはず」
敵対する無色の派閥、セルボルト派はサプレスの属性を多用する一族だ、
この服ならサプレス系の力をかなり防ぐことが出来る、それに…。
「ガルマザリアたちの憑依召喚の影響を少しでも抑えられるはずですし…」
憑依召喚のデメリットがどのくらいあるのか分からないが、
この服を着ればスムーズに憑依できるはず。
色々な意味で規格外だ、それにキルカの衣服は防刃耐性にも優れてる為、近距離でも十分だ。
とりあえず、ハヤトに見せてから寝ないとと思いハヤトを探すが。
「どこに行ったんでしょうか…、あ」
部屋を出て少しだけ明かりが見える、トイレの前に、子供たちが集まっていた。
クラレットは怖がらせないように足音を少しだけ大きめに立てて歩いた。
それに気づいたのか、子供たちはこちらに顔を向けてくれた。
「あ、お姉ちゃん」
「フィズ。起きていたんですね?」
「うん、お姉ちゃんは?」
「私はこれをハヤトに見せようと思って」
クラレットは腕にかけていた、ハヤトの上着を広げ、それを子供たちに見せる。
「兄ちゃんの服、あんなにボロボロだったのに直ったんだ!」
「あんまり馴れてなくて不慣れでしたけど、なんとかやり遂げました」
小さくガッツポーズをする、クラレットを見て子供たちは安心した、
あれが怖すぎてたけど、一時的な物だと言われていたが本当にそうであってよかったと思った。
「おにいちゃんなら…、おくじょうにいるよ?」
「本当ですか?」
「…(こくん」
「ありがとう、ラミ」
「ん…」
ラミの頭を優しくなでてクラレットは屋上に向かった、
屋根裏の部屋にゆくと、窓が開いてるのを確認して、気づかれないようにそっと近づく。
「いた…」
小声で確認を取るクラレット、そこには月を見てボーっとしてるハヤトが居た、
クラレットはハヤトに気づかれないようにそっと近づくが…。
「…ん?クラレット?」
「あ、気づかれちゃいました?」
「ん、まあ何となくな」
クラレットが屋上に出るのと同時にハヤトはクラレットの方を見て存在に気づいた、
何となくと言っているが、実際は気配を無意識に感じ取っただけだ。
そんな事を気にせずクラレットはハヤトの横に座り、同じように月を眺める。
「「・・・・・・・・・」」
何もせず、何も語らず、ただ横に座っている。
それだけで、二人はとても満足だった、だがハヤトはクラレットに聞いておきたいことがあった、
聞くのが怖かったがそれでもこれからの為に聞かなきゃいけなかったのだ。
「クラレット…、あのさ」
「はい、なんですか?」
「…その、ソルって昔どんな奴だったんだ?」
「……ソル兄様ですか」
ハヤトがクラレットの方に顔を向けると、彼女はまるで昔を懐かしむようにしていた、
それは今までハヤトが見たことのない儚そうな…、いや一度だけ見たことがあった。
あの日、クラレットが消えてゆく、リィンバウムに召喚された日に見た表情だった。
「ソル兄様は…、優しい方でした。人に優しくて、口は少し悪かったですけど、それでも兄妹を、家族を大事にしてるからです。召喚師には少し向かない方でしたからね」
「それって…」
「ハヤトに少しばかり似てたんだと思います。だから私はハヤトとすぐに分かり合えたんだと思います」
「……」
無意識にハヤトを兄と重ねていた。
記憶の無いクラレットが自分の名前を思い出し、
そして兄と似てる雰囲気を持つ俺に懐いたのにはそういう理由があったのか…。
「なあ、他にも家族はいたのか?」
「お母様は……、分かりません。生まれてすぐに死んでしまいました、他の兄様や姉様とは無関心だったのであまり関わってなくて…」
「…ごめんな、何度も聞いて。その、カシスやキールって…」
「私に気をかけてくれた…、大切な、姉様と兄様です。元気で優しかったカシス姉さまに、穏やかで私の事を大切に思ってくれたキール兄様…、ソル兄様の話が本当ならもう…、もう…!」
もう会えない、二人はもういない、自分が原因で更なる実験に利用され、
二人とも消えてしまったとソル兄様は言っていた、それが真実なのか確かめるすべはないが、
それでもあの人ならやりかねないと思っていた。
つらくて、涙がこぼれ始める、ハヤトの事ばかり気にしていて、
自分の事を忘れようとしていたクラレットは気づかされ苦しんだ。
「…クラレット」
「あ…」
俺はクラレットの手を握り、クラレットを見つめる。
俺には家族を想うクラレットの気持ちを本当の意味で理解することは、
無理に理解しようとしてもきっと何か間違いを起こすと思う、だから…。
「俺は……、ソルを倒す」
「ッ…ハヤト」
「ソルは…、もうクラレットの知ってるソルじゃない、そうだろ?」
「…でも、私は」
「だから俺が倒すんだ、クラレットを…その…、自分のだなんて言い切ったし」
「あ…」
あの時、クラレットを取られたくない一心で俺はとんでもないことを口走った、
誰も気にして無かったけど、みんな気づいていると思うし…。
「自分のモノをあいつらに取られたくないんだ、俺さ…、そのクラレットと一緒に居たいし」
「……ハヤトは」
少し、頬を染め上げながら俯いた顔を上にあげて上目でハヤトを見つめた、
そして今まで聞いていなかったことを怖くて、それでも今だったらきっと聞けると思い、
勇気を振り絞って、クラレットはハヤトに問いかけたのだ。
「私の事、好きなんですか?」
「クラレット…?」
「お願いします、教えてください……お願い、ハヤト」
ハヤトは口を閉じて答えに悩んだ、本当に答えていいのだろうか。
「俺は…」
大切に思ってるし、大事な人だ、愛しい人だ、
その想いに嘘偽りなんて一切ない、だからここまでして守ろうとしてるんだ。
「……ッ」
だけど、いざ実際に決断を迫られると足が竦んでしまった、
もし…、もしここでクラレットに想いを伝えて、その後、俺が死んだら、
クラレットは本当に一人になってしまう…、本当に世界で一人に…。
「ハヤト…、もしかして怖いんですか?」
「……」
「大丈夫ですよ」
クラレットはハヤトが想い苦しんでるのを察し、
ハヤトの想いを取りぞくべく、ゆっくりと彼の顔に手をやった。
「貴方が本当に今思ってることを答えてください、どんな答えでも決して後悔なんてしません」
その言葉を聞いた瞬間、ハヤトもゆっくりとクラレットの顔に手をやる、
そしてクラレットはゆっくりと目を瞑りハヤトを待つ、
やがてハヤトの手に力が入り始め、彼の熱が近づき始めるのを感じた。
「クラレット俺は…」
「ん…」
月明かりに照らされるクラレットにハヤトの顔は近づいてゆき…。
クラレットの額に口づけがされた。
「あ…」
自分の望んだ結末と違い、少し戸惑ったクラレットだったが、
目を開けると赤面してるハヤトがクラレットの肩に手をやって口を開いた。
「もう少しだけ、もう少しだけ待っててくれないか。たぶんクラレットと俺の思ってることは同じだと思う…、でも勇気がまだ湧かないんだ、わがままだと思う、根性なしって思ってくれてもいい、だから…」
「待ってます」
「クラレット…」
「ハヤトが私の事を…、自分自身を受け入れてくれる日を待ってます。だから…」
クラレットは全てを受け入れるような優しい笑顔をハヤトに向けた。
「だから、私の事をずっと見ていてください、これからもずっと…」
「うん……、ずっと見ているよ。クラレット」
「必ず…、帰りましょう。私達の居場所に」
「ああ…、約束だクラレット」
クラレットはハヤトの腕の中に体を預けた、
しばらくこのままで居させてくださいと彼女は言ってハヤトに身を預けた。
ハヤトもクラレットを両腕で抱きしめて、うんと一言伝えた。
クラレットを抱きしめたままハヤトは思った、
言葉にしなくても想いは繋がる、だけど言葉にしないときっと不安が残るのだろうな…。
俺は臆病者だ、自分の想いを伝える勇気さえないんだから、だけど…。
だけどそんな俺もでもこの腕の中にいる少女は守りたいと思う、命に懸けても必ず……。
今回は説明会でしたかね。
ハヤトの寿命が擦り減ったという設定ですが、U:X第5巻の45Pで
寿命には二つがあり、肉体の死と魂の死の二つがあるそうです。
肉体は魂殻で構成される外装の部分であり、魂は動力であるというのが私の考えです。
つまりガイエンを憑依したおかげで外装がかなり消耗したため、
それを安定と融和するために、魂がかなり消耗したという事です。
ちなみにもし消耗しつくされてしまえば、廃人になるでしょう。
簡単にいえば間桐の蟲です。アイツと同じで腐ってしまいます。
修練を重ねれば魂の寿命も大きく上昇しますけど、ハヤトは普通の少年ですからね。今は