サモンナイト ー生贄の花嫁ー   作:ハヤクラ派

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書いてて文字数がガンガン増えて行って、
最終的に分けてよかった^^って感じでした。
戦闘パート悩んで悩んで時間かかったわ、展開とノリが重なると良くかけるんだけどなぁ。


第24話 魅魔の宝玉

 

男性を追いかけて街道沿いを隠れながらクラレットたちは歩いていた。

しかしクラレットは何か目力が入っていて怖そうな顔をしている。

 

「………」

「ど、どうしたのクラレット?」

「いえ別に…」

 

恐らくムスッとしてるであろう自分を見てユエルは怖がってるんですよね。

でも気にしなくていいんです、なんか急に苛立っただけなんですから。

…ハヤトがまた何かしたんですかね。

 

「そんな怖い顔したら気づかれるぜ?」

「大丈夫ですよ、そんな事で気づかれるわけないじゃないですか」

「いやその…変な感じがするからよ…」

「そうですか…?」

 

実際クラレットの機嫌が(ハヤト関係)で悪くなると周りの空気が重くなる、

何というかとにかく苦しくなる感じがするのだ。

それを察したのかつけてる男が周りをキョロキョロと見渡したりしていた。

 

「……ウゥ」

「どうしたんですか、ユエル」

「なんか嫌な臭いがする…、アイツらみたいな」

「それって暗殺者の連中ってことか?」

「うん、でもあの人じゃないよ」

 

ユエルの言葉で少し考える、確かに血の匂いとかすればユエルは結構気づくのが早いはずだ。

でもあの人からそのような匂いをユエルは嗅いでいないようだ。

つまりあの人は…。

 

「しかしよ、あの野郎どこへ行くつもりなんだ?」

「もしかして…、このまま街から出るつもりじゃないんでしょうか?」

 

北スラムから街の外へ行く、もしかしたら自分たちのアジトに向かうのかもしれない。

そう考えるとこのままつけるのはちょっとまずいかも知れない…

 

「冗談じゃねぇぜ、だったら出ていく前にとっちめないとな!」

「ちょっとガゼルさん、まだあの人が無色の派閥と決まったわけじゃ…」

「さてと…」

 

ガゼルさんが出ようとするとその男性は足を止めて後ろを振り返った。

もしかして…、気づかれていた?

 

「いい加減にして、姿を見せたらどうです?」

「…!?」

「もしかして、気づかれてたの?」

「みたいですね…」

「人の後ろをこそこそと付け狙って、それほど私が邪魔ですか?」

 

最初から気づかれていた、という事は誘い込まれたのは私達かも知れません、

ここは今、人気のない所、今逃げたとしても追いかけてくる危険もありますし。

 

「ガゼルさん…」

「ケッ、仕方ねえな、こうなっちまったらよ」

 

ガゼルさんを筆頭に私達が物陰から顔を出し、

男性へと近づいてゆく、それを見た男性は。

 

「……?」

 

怪訝な顔を浮かべて困惑していた…あれ?

 

「出てきてやったぜ、お望み通りな」

「はぁ…?」

「ねえ、何か様子が変じゃない?」

「ええ…」

 

ユエルもやっぱり男性の様子が変なのに気づく、

まるで予想と違っていたみたいな感じというか…。

 

「ええと…、ひょっとして君たちも私をつけていたのか?」

「だからっ、そうだって言ってるだろうがよ!」

「待ってくださいガゼルさん、ちょっと様子が変じゃないですか?」

 

この人は君たちもと言っていた、つまり私達とは違う何かを感づいていたという事、

そしてそれは…。

 

「ウウゥゥゥ……! ガゼル避けて!!」

「はっ?」

「…危ないっ!!」

 

ガゼルさんの背後から突如黒装束の男が武器を持ち攻撃を仕掛けてくる、

ユエルがその攻撃を受け止めて逆に殴り飛ばして距離を取った。

 

「お前たち!嫌な臭いがする!ユエルに酷い事させようとした連中だな!!」

「おい、こいつ等って…」

「赤き手袋…、暗殺者です!!」

 

前に戦った人たちは少し違う、さらに洗練された感じがする。

最初の暗殺者を筆頭にどんどんと物陰から暗殺者が姿を現してゆく。

 

「君たち、早く逃げるんだ!」

「いえ、逃げても無駄です。彼らの狙いは私も入ってるはずですし…」

「やるしかねぇってことかよ」

「クラレットはユエルが守るよ!」

 

それぞれ武器を取り出し、暗殺者相手に構える、

前回の様に私を五体満足で確保しようとしてると考えない方がいい、

四肢を切り取られて連れ去られる覚悟も持ってた方がいいですね。

それに怖くない、ここで…。

 

「迎え撃ちます!!来てください、プ二ム、ポワソ!!」

「召喚術!? 君は召喚師なのか!」

 

現れたのは2体の召喚獣、それぞれが私の周りに召喚される。

 

「ポワソは私の守りを、プ二ムはガゼルさんに付いてください!」

 

それぞれが持ち場に付き、行動を始める、

ガゼルさんも私が召喚術を使う事を理解してるのか守勢で戦う様にいているようだ。

 

「おのれ…、我らの野望に背くだけではなく邪魔をするとは…、多少痛い目を見てもらうぞ!」

「そんなの…、知った事ではありません!」

 

暗殺者の司令塔と思われる召喚師が召喚術を行使する、

ガイアマテリアルと呼ばれる大岩が私達に向かって突っ込んできた!

 

「はぁっ!」

「なにっ!?」

 

突っ込んでくる岩を直撃の瞬間、幻実防御で相殺し吹き飛ばす!

それに敵の召喚師だけではなく近くにいた男性も驚いていた。

 

「凄まじい技量だ…、きみは一体」

「話はあとです。シンドウの名の下にクラレットが命じる――、来て魔臣ガルマザリア!!」

 

胸のペンダントに魔力を通し、ガルマザリアをクラレットは召喚した。

前回の完全武装ではなく、軽装だったがそれでも大悪魔の一角である。

 

「くっ…、何という魔力だ…!?」

『無色の派閥か、だがこの程度で挑んでくるとはな…』

「魔臣ガルマザリア!? なぜ彼女が」

「ガルマザリア、デヴィルクェイクです!」

『任せておけ、おいユエル、邪魔だ!!』

「わわっ!?」

 

ガルマザリアはユエルの首根っこを掴みあげ、空に飛び上がり槍を構える。

魔力を出し地面に投げられた槍は大地に魔力の奔流を生み出して敵を吹き飛ばしていった。

 

「ば、馬鹿な…、手も足も出ないだと…」

『はぁ…、歯ごたえが無いな、私は帰るぞ』

「わぁ~っ!?」

 

ポイっと空から捨てられたユエルは近くの木々に突っ込んでしまうが、

ガルマザリアは別に気にすることもなく、そのまま送還されて行ってしまった。

 

「ユエル、平気ですか?」

「なんとか~!」

「さてと……、どうしますか?」

「く、くそっ!」

 

クラレットが杖を無色の召喚師に向ける、手に持つのはタケシーの石だった。

魔抵抗はそれなりにあるだろうが彼女の実力なら雲泥の差、

一撃で召喚師を吹き飛ばすほどの魔力を持つ、そして攻撃しても簡単に防がれてしまう。

 

「引くぞお前たち!!」

 

暗殺者たちはボロボロの体で立ち上がってそれぞれ別々に散らばって逃げてゆく、

クラレットはそんな暗殺者に隙を見せないようにただじっと見つめていた。

やがて姿が見えなくなったのを確認してプ二ムとポワソも送還した。

 

「おい、追わなくていいのかよ?」

「追っても無駄ですよ、召喚師はともかく暗殺者なんて捕まえても自殺されるのがオチですし」

「チッ、追っても無駄ってことか…」

「はい、彼らにとって自身は道具の一部でしかないですから…」

 

ふうっと一息をついたクラレットが男性の方を見直した、

一応戦う準備はしててくれたようだが、無駄の様だと悟り石をしまい直してくれた。

 

「大丈夫でしたか?」

「ああ、しかし驚いたよ。助けようと思っていたが逆に助けられたようだね」

「余計なお世話でしたか?」

「いや、そんなことはないさ。しかし君は召喚術が使えるだな、失礼だけど、君の師匠は誰だい?」

「マーン家の客分召喚師のクラレット・シンドウです。ちょっと諸々な事情があってサイジェントに居ます」

「マーン…、そうか金の派閥のサプレスの召喚師か…、なるほど道理で凄まじい召喚術を使えるはずだ」

 

金の派閥の召喚師、マーン家はサプレスの召喚師としてはかなりの地位を持つ、

サプレスを主体で使う私にとっていい隠れ蓑になってくれるはずです。

それに客分って言ってますし嘘じゃないですよ?

 

「俺はガゼルだ、こいつの……保護者みたいなもんだな」

「まあ、間違ってないですけど、最近逆じゃないですか?」

「うるせェよ」

 

悪態をつくガゼルさんを見て笑いながら私は返した、

すると、体中に葉っぱを付けているユエルが近づいて来た。

 

「ユエルはオルフルだよ!」

「オルフル…、その首輪は君の召喚獣かい?」

「えっと…、保護をしてるだけです。彼女は元はぐれ召喚獣なんです」

「そうか…」

 

少し考えてるようだけど、ユエルの事はあまり気にしないでくれた、

ユエル自身、私に敵対の意思を持ってないって分かってるみたいですし。

こういう時、純粋無垢な彼女は役に立ってくれますね。

 

「さあ、俺達の事は説明したんだ、次はそっちの番だぜ?」

「ああ、私の名前はギブソン・ジラール【蒼の派閥】の召喚師だよ」

「蒼の派閥…、やっぱりそうだったんですね」

「蒼って何だ? 金じゃねぇのか?」

 

ガゼルさんの言葉を聞いたギブソンさんは声を露わにして否定し始めた。

 

「とんでもない! あんな金の亡者たちと一緒にしないでくれ、蒼の派閥は召喚術を私利私欲で使ったりはしない。むしろ、そういう連中を取り締まるのが役目みたいなもんなんだ」

「あ~~、否定できません。ホントに…」

「今のお前の立ち位置たと色々だな」

「そうか、君は金の派閥だったね」

「いえ、所属してるわけじゃないんですけど…、まあ彼らの行動に呆れて指導中なんですけど……とにかく色々あるんです」

「そうか、助けられた身としてはあまり精索しないでおこう」

「すいません、ありがとうございます」

 

少し硬い感じがしますけど、ある程度はものわかりのいい人みたいですね。

蒼の派閥は色々とキナ臭いって知識がありましたけど、末端まではそうでもないみたい。

 

「で、そんな召喚師様がどうしてこの街に来たんだよ?」

「ある物を探してるのさ」

「ある物ですか?」

「とりあえず、もうすぐ昼頃だ、食事でもしながら説明しよう、助けてもらったお礼だ」

「おごってくれんのか? やりぃっ!!」

 

ガゼルさんは現金ですね…、戦ったの殆ど私なんですけど、

ユエルも体の葉っぱを落としながら喜んでますし、まあいいですけど。

 

「その代わり、心当たりがあったら話を聞かせてもらうよ。あの者たちについてもね」

「…はい、あの暗殺者たちの組織に付いて話しておかないといけませんしね」

 

少しだけ目がきつくなったギブソンさんを見て思った、

基本優しい人だけど、この人はやっぱり真面目な人だ。

迂闊な事を話して敵対しないために、しっかりと話をしておかないと…。

そう思い、ギブソンさんの案内で私達は食事に向かう事になった。

 

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路地裏で不良どもが山を築いてる傍で一人の少女が少年に頭を下げていた。

そんな状況に困って、少年、ハヤトは頭を掻いていた。

 

「ホントに、ホントにすいません!」

「あ~いや大丈夫だからさ、はは」

 

ギリギリ間に合ってよかったよホント…。

もし間に合わなくてショッキングな場面なんて見たら後悔で済まなそうだし。

しかし、変な服を着てるな、一応ローブを着てたみたいだけど破かれちゃったみたいだ。

 

「しかし、アイツらもまだこんな事してたんだな」

「…」

「全く、真面目に生きればいいのにさ…、まあ住みにくい街だけど」

 

実際、オプテュスの残党ってだけでこの街で雇ってくれる人は少ないだろう、

それでも働き手はあるんだ、だったら無理して働けばいいだけだ、

こんな欲を見た出すだけの行為なんてホントに反吐が出る。

 

「あの…」

「ん?」

「できればお礼をさせてもらえないでしょうか? 危ない所を助けてもらいましたし」

「そんな、お礼なんて」

「させてください!お願いします!」

 

少女が頭を下げてお願いしてくる、お礼の為に助けたわけじゃないしな…、

そういえばこの少女、サモナイト石持ってたってことは。

 

「もしかして、召喚師なのか?」

「え…、あ、はい。蒼の派閥の召喚師、ミント・ジュレップです」

「そっか、ミモザさんの知り合いなんだよな」

「どうしてミモザ先輩を…?」

 

俺はミモザさんに会った時の事を話した、

ちょっと気になって繁華街に足を運んだ時にミントがオプテュスの残党に付いて行ってしまったのに気づいて急いだというわけだ。

 

「そうだったんですか、ミモザ先輩が迷惑をかけたみたいで…」

「あはは、そこらへんはクロに言ってやってくれよ」

「クロ…?」

「…」

 

ミントは視線を落としてテテを見る、

あれだけの人数を一方的に叩いたテテだ、

彼がクロという名前であると理解したミントは屈んでクロと目線を合わせた。

 

「ありがとう、クロ。貴方のおかげで助かったわ」

「……ムイ」

「うふふ」

 

ハヤトは照れてるクロを見てニヤニヤと心の中で思ってた、

顔に出すと殴られるから、顔に出さないようにしていた。

 

「そういえば、貴方の名前を聞いてませんでしたね」

「俺の名前はハヤトだ、よろしくな」

「はい、ハヤトさん、改めて助けてくれたお礼をさせてくれませんか?」

 

頭を再び下げるミントに流石にこれ以上断るのも引けると思い受けることにした、

どうやら先輩たちに紹介したいという話だそうだ。

確かにこれで蒼の派閥の人とつながりが持てればアイツらとの戦いも少し楽になるかもしれない…。

悪い組織だし、蒼の派閥の人も一緒に戦ってくれるよな…?

そう思いながら俺はミントと一緒に路地裏を出ていくのだった…、残党は置いていった、邪魔だからな。

 

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「というわけなんです」

「無色の派閥……そうかやはり」

 

市民広場の近くの店で私達は約束通りご飯を頂いていた。

ユエルもガゼルさんも各々が好きな物を食べている、二人とも少し自重してください…。

 

「先日、君達は無色の派閥と戦っていた、だから彼らの正体も看破できたというわけなんだね?」

「正確には赤き手袋ですけど、その道の知り合いがこの街に居てその方から」

 

その道の知り合いはスタウトさんだ、しかしこのギブソンさん、中々のやり手です。

何げない質問の中から私が隠してることを聞き出そうとしてきますし…。

迂闊に本当の事を喋るわけにも行きませんし…。

 

「じゃあ次の質問は我らの野望に背く、そう奴は言っていた。つまり君はかつて彼らの目的を…」

「何か勘違いしてませんか?」

 

それ以上言わせるわけにはいかない、それ以上の事は私一人で話していい事ではないですから。

だから私は少し強引だったが話をすり替えることにした。

 

「私は心当たりを話すことを条件にここに居ます、私の正体については関係ないんじゃないですか?」

「それはそうだが……正直な話、君は怪しいんだ」

「おい、それってクラレットの事疑ってるのかよ!?」

「ああ、そうだ。君は何かを隠している、そうだね?」

「そうですけど」

「!?」

 

素直に私は自分が隠し事をしてる事を答えた、正直隠しきれるわけでもなかったですし、

しかし素直にそれを喋ったことでギブソンさんは驚いているようですね。

 

「私は確かに貴方に隠し事をしてますけど、こればかりは私一人で話せる事じゃないんです」

「君一人で決めれない事という事か?」

「はい…その人と相談してからでもいいでしょうか?」

「…そうか、確かにそうかもしれないな、込み入った事情があるのかもしれない。無理に聞き出そうとして済まなかったよ」

「いえ、実際関わってるの事実ですし、疑われても仕方ないですよ」

 

ある程度理解してくれたギブソンさんは息を大きく吐いた後、

今度は本来の目的の事を話してくれた。

 

「実は私達はある秘宝を取り戻すためにこの街に来たんだ」

「秘宝ですか?」

「ああ、宝玉という物でね。大きなサモナイト石の結晶なんだ」

「どのくらいの大きさなんですか?」

「拳二つ分の大きさかな…」

「そんなに大きいんですか!?」

 

拳二つ分…、サモナイト石が基本親指ぐらいの大きさと考えると、

とても大きいことが分かる、それに結晶という事は研磨されてるはずですから。

 

「そんな価値があるものなのか?」

「純正の物なら小さい街程度なら買えるぐらいの価値はありますよ、ガゼルさん」

「マジかよォ…」

 

でも、そこまで大きいサモナイト石をただ取り戻すために召喚師が動くなんて考えられない…。

もしかしてそのサモナイト石って。

 

「なにか誓約を交わしてるんですか?」

「いや、そういうモノではない、あの宝玉は途轍もなく危険な代物なんだ、それこそ価値を知っていれば世界すら牛耳るほどの…」

「……まさか」

 

宝玉の使い方を話そうとしない、知らないんじゃなくて教えたくないという事、

つまり危険な力を持つ召喚の道具という事になる…。

そういえば…、バノッサさんが召喚術を使う時何かを掲げてたような…。

 

「あのギブソンさん実は…」

「ギブソ~ン!」

 

ギブソンさんにバノッサさんの事を話そうとすると、

タイミング悪く、工場区の方から一人の女性が手を振りながら歩いてきた。

 

「遅いぞミモザ」

「ごめんごめんって…、うわぁ~オルフルじゃない珍しいわね」

「こんにちわ!ユエルはユエルだよ!」

「挨拶出来ていい子ねぇ~」

「えへへー♪」

 

ユエルの頭を撫でるミモザと呼ばれる女性、

私もメイトルパの魔力を持つ身として彼女がメイトルパの召喚師であることは理解できた。

それにしても召喚獣に優しくする召喚師もいるんですね。

 

「今日は特異個体のテテに五大種族のオルフルに出会えるなんてなんていい日なのかしら!」

「特異個体…?」

「あぁ、もしかして南スラム行きました?」

「ええ、行ったわよ。クロっていうテテにあったわ」

 

ミモザさんクロにあったんですね。

ってそういえばフラットってレビットもメトラルもいるから気づかれたら面倒ですね…。

特に絶対古妖精のメリオールの事話さないようにしないと。

 

「さて、あとはミントだけだな」

「ミント? 誰だそりゃ」

「私達の後輩よ。それよりあなた達は?」

「はい、私達は…」

 

ミモザさんに私たちがギブソンさんと一緒に無色の派閥と戦った事を話した。

それを聞いたミモザさんが「面倒なことになってるわね」と言った、全くその通りです。

 

「まあいいわ、私はミモザ・ロランジュ。ミモザでいいわよ」

「俺はガゼルだ、しかしあんた全然召喚師には見えねえな…」

「確かにそうですね、でもかなりの実力があるのは良く分かりますよ」

「まあ、人は見かけで判断しない方がいいって事よね。それであなたは?」

「私はクラレット。クラレット・シンドウです」

「シンドウ…? それって…」

 

ミモザさんが何かを思い出そうとしてると、

繁華街の方から「ミモザ先輩ー!」といった声が聞こえて来た。

目を向けた先には金髪の少女の姿と……なんでハヤトがいるんですか。

 

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俺達は今、繁華街を抜けて、市民公園に隣接してる飲食店に向かっていた。

そういえば以前クラレットに聞きそびれた質問をミントにしてみようと思った。

聞くのが別の人だったらもっと詳しい答えが返ってくるかもしれないし。

 

「そういえばさ…ミントって至竜って知ってるのか?」

「至竜ですか…?ある程度は…」

「至竜ってどういう生き物なんだ?」

 

俺はソルのゼルゼノンについて気になっていた、

人口至竜。つまり人工的に作り出したって言ってたけど至竜自体を俺は知らないんだ。

ミントは少し考えながら質問に答えてくれた。

 

「至竜についてはあまり解明されてないんです。ただ召喚しようとしても誓約を交わすこともままならない存在、通常の召喚獣と一線を超えた存在と言われてます」

「通常の召喚獣の一線を越えた存在…」

「記録によると、このリィンバウムに住む全ての生物は至竜に至れると言い伝えられてますけど…」

「つまり、俺達も至竜になれるって事なのか!?」

「……(はあ」

 

俺の頭に乗っていたクロは溜息をついて、ミントは苦笑いをしている。

 

「あくまでそういう言い伝えがあるだけです。実際に人が至竜になった記録はありませんよ」

「そうなのか…」

 

至竜ってのは普通とは違う召喚獣ってことなのか…、

じゃあどうしてソルの奴はそんな召喚獣を持ってたんだ?

そう考えていると、ミントが何かに気づいたのか俺の手を握って空いてる手で指を指した。

 

「あれが私の先輩たちです。ミモザ先輩ー!!」

「へぇー………え?」

 

引っ張られる形で飲食店に向かう、そこには何故かユエルにガゼル。

そして笑顔のクラレットの姿があった、妙に威圧感あり過ぎるんだが…。

 

「ミモザ先輩、ギブソン先輩、お待たせしました」

「ミント、ローブはどうしたんだ?」

「すいません、その破かれてしまって…」

「でも、なんでさっきの子がいるのよ」

 

ミントが先輩たちと話をしてるが、ガゼルとユエルはこっちを見てスッと視界をそらす、

そして笑顔のクラレットがこっちに近づいてきた。

 

「ハーヤートー?」

「は、はい…」

「破いたんですか?」

「いや、俺じゃないです」

「だったら……、なんで胸に濡れた後があるんですかね?」

 

バッと自分の胸を見ると、確かに濡れた後があった、

それにクラレットが優しく指を指し示す方向を見るとミントに目元が赤かった…。

 

「言い訳…いいかな?」

「ええ、いいですよ?」

 

俺はミントと出会った時の事を話した、オプテュスの残党に襲われていたところをギリギリ間に合う形で助けられたという事を。

それについてはギブソンさんって人が感謝してくれたけど、そしてユエルとガゼルは…。

 

「いつものハヤトだね!」

「おめぇ、変わらねぇよな」

 

変わらないって…お前ら、そして当人はその事を聞いて顔を下げているし、

ミモザさんはなんかニヤニヤしてるし、アカネみたいだ。

何よりクラレットは…。

 

「まあ、大体の事情は分かりました、ところで」

「う、うん」

「何時まで手を握り合ってるんですか?」

「えっ?」

 

二人でお互いの手を見るとさっき引っ張って貰った時から握りっぱなしだったようだ。

ミントが手を手放して俺に謝り、俺も謝る。

そして、俺はクラレットの方を見て更に驚愕した。

 

「さてと…」

「な、なんでクラレットの手がバチバチ言ってるんだ…?」

「ファミィさんにガルマザリア経由で教えてもらったんですよ。色々と便利なんですよ?」

 

電撃をバチバチと手に乗せて俺の方にそれをゆっくり向ける…。

まさかキムランの言っていた…!?

 

「ま、まさかそれを…?」

「動いたらダメですよ?手元が狂ってしまいますから…」

「あ、あの…!?」

「気にしなくていいぜ、何時もの事だしな…それに」

「止められないもんねー」

 

完全に止める気ゼロの二人、特にユエル!恩人なんだから少しは気にしろ!

 

「そうだ、クロ!クロ助けてくれ!!」

「…」

「凄いでしょギブソン、新種よ特異個体よ!」

「これは確かにすごいな、派閥の記録でもこのような個体は記録されてないぞ」

 

捕まってるー!?

完全に死んだ目をしてミモザさんに捕まってるんだけど、

しかも、なんで俺の足が蔓草で雁字搦めに!?

 

「じゃあ、行きますよ? カミナリどっかーん!」

「きにゃぁぁぁーーっっ!!!」

 

電撃が俺の体を直撃して俺は途轍もない衝撃が全身を襲った、

何よりこの電撃の恐ろしさは、これほどの衝撃を受けても気絶しないところだった。

そしてバチバチと体から電気を漏らしつつ、俺はその場に倒れて悶えるのだった。

俺…、何か悪いことしたっけ?

 

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机に突っ張すハヤトにミントが気にかけるが、

クラレットが気にしないでください、と一言かけて気にしない事にしたそうだ。

全員で(ハヤトは食べれない)食事をとりつつミモザが自分の成果を話始めた。

 

「しかしさっき道を教えてくれた事と言い、ミントを助けてくれた事と言い、私達って不思議な縁があるのかな? フフフッ、ね、ボク?

「……ハイ」

「ミモザ先輩、冗談はやめてください、ハヤトさんが困ってるじゃないですか」

「別に困ってなんかいないわよ。何よミント随分彼に御熱心じゃない?」

「そ、そういう事じゃありません!」

「そんな事どうでもいいですから、ミモザさん。早く分かった事答えてください」

 

不貞腐れてるクラレットがさっさと答えろとミモザを急かしてくる。

それを聞いたミモザは少し息を吐きながら答え始めた。

 

「まあ、奥さんのいう事は聞か」

「お、おおお奥さんってなんですか、まだ違いますよ!!」

 

突然の奥さん発言にクラレットが顔を真っ赤にして大焦りした。

 

「あれ?シンドウって名前だから夫婦だと思ったけど、違ったのかなぁ~」

「兄妹です!兄妹!私達義理の兄妹なんです!」

「あら、そうなの。よかったわね、ミント。まだチャンスあるわよ?」

「み、ミモザ先輩!だから私は別に」

 

そして今度はミントにミモザの矛先が向けられ、

ミントは焦りながらそれを否定する、ギブソンはそんなミモザに溜息を吐きながら話を進めるように急かした。

 

「はぁ…、ミモザいい加減、さっさと話しを進めてくれ」

「はぁーい」

 

ハヤトはこの話を聞いていたが電撃で動けなくてよかったと思った。

絶対動けたら色々と面倒なことになっただろう…。

どうやらギブソンは苦労人ポジションなんだなと思い少し気が楽になった。

 

「まあ、遊びはここまでにして…、お姉さんのミモザ先輩はもう手掛かりをつかんだんだから」

「本当か?!」

「貴方に嘘ついたって始まらないでしょギブソン」

「それだったら、君達に手伝ってもらう必要はなくなるな…」

 

元々ハヤトたちは巻き添えで手伝って貰っているのだ。

彼らの目的は無色の派閥との抗争ではない、あくまで宝玉を取り返すことだ。

無理に彼らの協力を得なくてもいいとギブソンは判断した。

 

「ギブソンさん、そうとは限らないかもしれませんよ?」

「どういうことかな?」

「もしかして宝玉って…悪魔を召喚する力があるんじゃないですか?」

「君はどうして!?」

「驚いたわね、正解よクラレット」

 

ギブソンは宝玉の力の一部を看破したクラレットに疑念を抱き、

ミモザは単純にその判断を称賛した。

そして顔を伏していたハヤトが顔を上げて、クラレットに声をかけた。

 

「それって、あのバノッサの水晶の事か?」

「はい、あのバノッサさんの持っていた水晶の事です」

「バノッサ?」

「オプテュス…、以前北スラムで活動していた勢力、そのリーダーです」

 

ハヤトはギブソンに以前、悪魔を操るバノッサに襲われたことを話した。

バノッサが召喚師の血が流れてる事と、そして突然召喚術を使えるようになったことを。

 

「それが本当だとしたら…、マズいかも知れないわ」

「ああ、済まない。君たちにも協力してもらえるか?」

「はい、でも突然なんで?」

「たぶんだけど、私達の手じゃちょっと余りそうな感じになってきたかもしれないからね」

「済まない、君達の実力を期待してるよ」

 

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ミモザさんの情報では、怪しい連中が工場区に出入りしているのという話だそうだ。

サイジェントに住む俺達が工場区へと向かうと、ユエルの様子が早速変わって来た。

 

「うぅ~」

「ユエル、大丈夫ですか?」

「そういえば、工場の匂い。苦手なんだっけ」

「そうだけど…、匂いに交じって嫌な臭いも流れてきてて…」

 

つまりそれは暗殺者たちがここを出入りしているという事だろう、

匂いがきつくてうまく分からないそうだが、それでも確信付いたものがあった。

 

「……なあクラレット?」

「なんですか、ハヤト?」

「すっごく今更なんだけどさ、召喚術ってそんなに使うのが大変なのか?」

「そんなの当たり前じゃない」

 

俺がクラレットに話を聞いてると、ミモザさんが割り込んでくる。

そんな普通の事をどうしてわかってないのかといった顔だ。

 

「私もギブソンも何年もかかって勉強してやっと覚えたのよ?」

「私もです。まだCクラスですけど、覚えるのに苦労しましたし…」

「えっと…、そんなに掛かるもんなのか?」

「掛かりますよ。私達の使ってるのは外法…って言うより普通は禁止されてる感じの召喚術ですし」

「それは一体、どういうことなんだ?」

 

ギブソンさんがクラレットの言葉に気になって声をかけて来た、

外法…、禁止されてるって…何かやってるのか俺。

 

「ハヤトさんの召喚術ってどういう感じなんですか?」

「えっと…、呼んで力を貸してもらって…それだけ」

「………あなた誓約は?」

「え?」

「え?」

「君はそんな危険なことしてるのか!?」

「えっと…、危険なのか?」

「一般的にはとっても」

 

クラレットが当たり前な風に俺にそう告げた、

3人に聞いたが召喚術をする際はこちらに抵抗されないように誓約を交わす必要があるらしい、

強制力みたいなものだそうだ、これをしておかないと元の世界に帰る必要のない悪魔や魔獣、鬼神なのは関係なしに襲ってくる危険性があるそうだ。

 

「そんなに危険なのか…、なんでクラレット教えてくれないんだよ」

「だって、ハヤトは石を増やしたりしないじゃないですか。それに限界以上の力を引き出す為に召喚獣側の協力も不可欠なんですから」

「そりゃそうだけどさ…」

「貴方らしく、召喚術を使って行けばいいんですよ」

「…そっか」

 

まあ、仲間なのに色々規則つけるのもあれだからな、

そんな事を考えていると目的の工場が見えてきて全員物陰に姿を隠した。

しばらく待っていると北スラムの方からバノッサの姿が現れた。

 

「やっぱり、バノッサさん…」

「あの人が貴方達のお知り合い?」

「ケッ!腐れ縁って奴だよ!」

「腐れ縁っていうか、命狙われてるんだけどな…」

「ここで召喚術を習っていたんですね…」

 

ギブソンさんとミモザさんがバノッサが工場に入ると工場へと進んでゆく、

ミントも少し困惑した感じでそれに続いていった。

 

「ギブソンさん!?」

「済まない、話を聞くと彼はその宝玉の力を使っているのは間違いないだろう」

「宝玉の力が解放されれば大変なことになってしまう、悪いけどすぐに行かせてもらうわ」

「ハヤト、行きましょう」

「そうだな、皆行こう!」

 

宝玉の力…、それがどれほど危険な物かは戦っていた俺達がよく知っている、

あの力がさらに強力になればバノッサは恐ろしい存在になってしまう、それだけは止めないと!

 

---------------------------------

 

工場の中に入ると待ち構えるように、バノッサが立っていた、周りには暗殺者や召喚師たちもいる。

俺達の姿を確認すると嘲笑いながらバノッサは声をかけて来た。

 

「へぇ、あいつを追ってきた召喚師ってのは手前ェらのことかよ」

「宝玉を渡すんだ!それは、君の手に負える代物じゃない!!」

「クックック…、聞けねェな、おっさん、こいつは俺様のもんだ。便利な石だよなぁ、念じただけで召喚術が使えるなんてよ……こんな風にな!!」

 

バノッサが宝玉を掲げて魔力を送ると、サプレスのゲートが開き悪魔が召喚される。

そこから現れたのはパラ・ダリオと呼ばれる大悪魔の骸だった。

悪魔は行動を起こそうとするが…。

 

「来てくれ、ガイエン!!」

 

ハヤトが走りながら鬼神将ガイエンを召喚する、

ガイエンはハヤトの意に応え、パラ・ダリオを切り裂いて送還させた。

 

「今のは…、鬼神将ガイエンか!」

「あの子、メイトルパだけじゃなかったのね」

「サプレス以外にも使えるなんて、凄いです」

「彼は三属性の召喚術が使えるのか!?」

 

あまり露わにしたくないハヤトの適正、それを蒼の派閥の人に気づかれるのは避けたかった。

クラレットはそう思ったが今はバノッサの方を見て、杖を構えた。

 

「来やがったな、はぐれ野郎!」

「バノッサ、その宝玉を返してもらうぞ!」

「それはバノッサさんの身に余る代物です。手放してください!」

「うるせェよ、俺はこの魅魔の宝玉の力で全てを手に入れるんだ。この悪魔を自在に召喚し、支配する力を持った宝玉でな!!」

「悪魔を召喚し、自在に支配する!?」

 

そうか、だからバノッサはあれだけの悪魔を召喚して使役できたのか。

 

「見せてやるぜはぐれ野郎…、今度こそ手前ェの最後だ!さあ悪魔ども力を寄越しやがれ!!!」

 

バノッサが宝玉を掲げると周囲にゲートが出現し、多数の悪魔が召喚される、

固有の力は感じ取れないが、それでも脅威に感じる存在だ。

 

「クラレット、あいつらは!」

「サプレスの悪魔兵です。固有の力は持ち合わせてませんけど、単純な強さははぐれ召喚獣とは比べ物になりません!」

「よし、行くぞ!!」

 

俺達が武器を取り出し、攻勢に出る。

少し後にギブソンさん達も戦う為、召喚術を使うタイミングを計るが、ミントだけが少し腰が引けてるようだ。

 

「ミント、貴女は状況に合わせて…、落ち着いていきなさい」

「は、はい!」

「気を付けるんだ、相手は悪魔だぞ!」

 

ギブソンさんが大声でこちらに声をかける、

先頭はクロだ、クロは一気に飛び出して目の前の悪魔を殴り飛ばしてしまう。

そのまま別の悪魔に飛びかかり一気に攻め入ってゆく。

 

「あの子、やっぱりすごいわ!」

「あれほどのテテが居るとなんて…」

「ホントにすごい…」

 

強力な力を持つ悪魔に正面から対抗しようとするクロにミントは見入ってしまう。

小さいのに強い力と目を持った相棒を自分も欲しいと思ってしまう。

 

「おりゃっ!」

「ウオォォォーー!!」

 

ガゼルとユエルは二人掛かりで攻め入ってゆく、悪魔や暗殺者と正面から戦うのは非常に危険だと教えられている。

だから最低二人掛かりで仕留めていくのがベストなのだ。そしてハヤトは…。

 

「はぁっ!!」

「!?」

 

目の前の悪魔の攻撃を防いだハヤトはその腕を切り落とす、

そして、腕を掲げて光り輝く光将の武具を呼び出し振り降ろした。

 

「シャインセイバー!」

「ハヤト!ゲレレサンダー!!」

 

串刺しにされた悪魔は送還されてゆく、

その瞬間ハヤトの背後を狙った暗殺者に気づいたクラレットが、

タケシーを召喚し、電撃で暗殺者を撃ち抜いた。暗殺者はそのまま倒れて気絶してしまう。

 

「悪い、クラレット」

「気を付けて、後ろは私が守ります!」

 

幾多の悪魔が彼らに群がるが、それを二人が正面から退かしてゆく。

敵の召喚師も黙ってなく、そんな二人に召喚術をぶつけるが、

クラレットの結界を打ち破ることも出来ずに召喚術で逆に倒されてしまう。

息の合ったコンビプレイの前に悪魔の群れは徐々に数を減らしていった。

 

---------------------------------

 

「チッ!強くなってやがるな、この程度の悪魔じゃやっぱり無理見てェだな……クックックッ」

 

バノッサは興奮が収まらなかった、目の前の二人が自分の思ってる以上に強い、

だが、まだ倒せない相手じゃない、この魅魔の宝玉の力があれば倒せる!

そうバノッサは確信していた、そしてバノッサは魅魔の宝玉を掲げて魔力を通し始める。

 

「力を貸せ悪魔ども……、あのはぐれ野郎をぶち殺す力を寄越しやがれぇぇぇーーーー!!!」

 

魅魔の宝玉が強く輝き、バノッサの中に何かが降りてくる、

そしてバノッサの力は大きく膨れ上がっていった。

 

ーーーー-----------------------------

 

「バノッサ!?」

 

バノッサの持つ魔力が大きく膨れ上がってゆくのを俺は感じ取った。

恐らく、依然と同じように悪魔を肉体に憑依させたのだろう。

だが、感じる威圧感はあの時以上だった。

 

「行くぜ、はぐれ野郎っ!!」

「くっ!」

 

飛び上がったバノッサは俺に向かって剣を振り降ろす!

ガキィンッ!っと大きな音を立てて俺がそれを防ぐが、

以前よりも圧倒的なパワーに押され膝をついてしまう、

そしてバノッサはもう一本の剣を振り上げて俺に襲い掛かって来た!

 

「当たるかぁ!」

「チッ!」

 

受けている剣を受け流して、振りおそしてきた剣を転がるように回避する。

そのまま、黒いサモナイト石を取り出して、魔力を通す!

 

「フレイムナイト!!」

「クククッ、そう来なくちゃ面白くねェ!!」

 

フレイムナイトを憑依させて、俺はバノッサに正面から挑んだ。

バノッサの剣と俺の剣が何度も切り結ぶが戦いながらバノッサの成長を感じ取った。

 

やっぱりだ、今までと違って魔力運用も剣の使い方も桁が違う!

 

今までのバノッサは力任せな部分が大きかった、そのおかげで勝てて来たのだが今は違う。

魅魔の宝玉の影響もあるのだろうが、それ以上に接近戦は無類の強さを持っていた。

単純な剣の腕だったらブーストがある分、ラムダ以上かもしれない。

 

「強いな…、バノッサ!!」

「当たり前だはぐれ野郎、今までとは違ぇ…、俺様はお前ェを倒すために強くなってきたんだ、オラァッ!!」

「クッ!?」

 

バノッサは膨大な魔力を塊の形で俺にぶつけてふっ飛ばしてくる。

不意打ちにも近い、予想外の攻撃の前に俺は体勢を立て直せなかった。

転がる形で何とかバノッサの方を見るが、バノッサは魅魔の宝玉を掲げて悪魔を呼び出す!

 

「次はコイツだ!【イビルバンカー】!!」

 

召喚されたのはプチデビル、だが今までと違う殺気を纏うプチデビルは五つの槍を一つにし、

巨大な悪魔の蛇矛を生み出して、俺に向かって投擲する!

 

アーマーチャンプ…、ダメだ!間に合わない!飛ぶ形で回避だ!

 

「――誓約の名の下に汝の力を求む…。守護天使よ!戦士の身を守り給え!【グラヴィエル】!!」

「あァッ!?」

 

俺の正面にサプレスのゲートが開き、そこから大盾を構えた天使が召喚される、

盾が強力な力場を形成して、悪魔の蛇矛を防ぎ切った!

 

「ギブソンさんの召喚術…、ありがとう」

『!?……(こくり』

 

俺に感謝されたことに少しだけ驚いたグラヴィエルはこくりと会釈すると送還されていく、

俺は体勢を立て直してバノッサの方を睨み付けた。

 

「我々がいる事も忘れては困るな!」

「今度はこっちの番よ、来なさい!ペンタ君ボム!!」

 

ミモザさんがバノッサの頭上に手を向けるとそこから大きな爆弾が出現する。

纏ってる魔力は以前俺が蹴ったモノよりもかなり高い召喚獣だ。

 

「邪魔すんじゃねェ!!」

 

バノッサが再度魅魔の宝玉を掲げて召喚術を発動させる、

現れた妖霊が漆黒の炎をまき散らしペンタ君を途中で爆散させてしまった。

 

「アフル・マズルか、妖霊すら魅魔の宝玉は召喚できるのか!?」

「これは俺様とはぐれ野郎の戦いだ、邪魔すんじゃねェェェ!!!」

「まさか!? やめてくださいバノッサさん!!」

 

クラレットが何をするのか感付き、バノッサを静止させようとするが、

それに聞く耳を持たないバノッサは暗殺者や倒れた召喚師に悪魔を憑依させる。

 

「あ…ガァァァ!!!」

「な、なにを!?」

 

暗殺者は筋骨隆々の巨大な悪魔に変貌し、召喚師は膨大な魔力を纏ったが悪魔の影響なのか体に変調が現れる。

 

「悪魔憑依!? 外法の術か!」

「手前ェらは役不足見てェだからな、精々その姿で派閥に貢献しな、ヒャァーッハッハッハ!!」

「バノッサ……お前ェ!!!」

 

悪魔と化した暗殺者が俺を除く全員に襲い掛かる、

クロとガゼル、ユエルの三人が一体の悪魔を相手にして、ギブソンさん達がもう一体の悪魔を相手にするがその力の前に徐々に押され始める。

 

「ミント、下がってるんだ!」

「は…はい!」

「マズいわね、これじゃあ」

 

ここまで厄介ごとになるとは思っていなかったギブソン達は前線を支える派閥兵を呼んでいなかった。

召喚術で対抗しようとしてるが、それも目の前の悪魔に対して有効打になってはいない、

何より強力な召喚術を使う為にはそれ相応の詠唱が必要になる、その時間が用意できなかった。

 

「ハヤト、壁になってくれますか?」

「クラレット…、そうか分かった。来てくれ…、アーマーチャンプ!!」

 

ハヤトが召喚する巨大な鉄巨人が敵の召喚師とバノッサが放つ召喚術を防ぎ始める、

ハヤトの魔力が低いせいなのか徐々にアーマーチャンプは崩れ始めてくる。

 

「………今、知識を司る光の賢者と魔を統べる魔臣が一人、地の悪賊の力を―――」

 

クラレットの持つ杖とペンダントに膨大な魔力が集中し始める、

それに気づいたギブソンがクラレットの方を見つめて驚愕した。

 

「まさか…、高位の召喚術を同時に!?」

 

驚きの連続だ、ユニット召喚のような魔力の低い召喚獣や護衛獣の様な完全固定化した召喚獣と違い、

高位の召喚術は同時召喚するのはほぼ不可能だ、それが出来る者は彼が知ってる中でも一人しかいなかった。

 

「シンドウの名の下、クラレットが今ここに望む――、来たれ!我が盟友!!光の賢者エルエル、魔臣ガルマザリア!!」

 

ハヤトのアーマーチャンプが打ち砕かれるのと同時にゲートから光がハヤトの前に飛び出す!

 

『スペルバリア!』

 

展開された光の障壁が迫り来る召喚術を全て受け止めて無効化させた。

そして、残るゲートから黒い光が出てきて形が形成されてゆく。

 

『出番か、相手に取って不足はないな』

「エルエルはハヤトに憑依してください!ガルマザリアはギブソンさん達を!」

『分かりました、ハヤト行きますよ!リカバアンジェ!!』

 

光の粒子に変換されたエルエルがハヤトの中に取り込まれる、

体力の上昇を感じ取れるのと同じようにクラレットから送られる魔力をハヤトは感じ取った。

 

「これなら、行ける! 行くぞバノッサ!!」

 

クラレットとエルエルの助力を受けるハヤトはバノッサに剣を向けて突き進んだ!

 

---------------------------------

 

「す、すごい…、あれがクラレットさんの召喚術…」

 

高位の戦天使と大悪魔を同時召喚し、制御するその姿に私は驚きを隠せなかった。

私と左程変わらない年齢だと思うのに、その魔力も能力も異常に高すぎる。

天使を憑依したハヤトさんと共にバノッサさんという人に挑む姿を見ていると。

 

「なっ!? ミントよそ見しないで!」

「えっ…あっ!」

 

目の前に【ゴマーグ】と呼ばれる蝙蝠の亜人が放った光線が私に向かって突き進んでくる。

何とか防ごうとするが、気づくのが遅れて痛みに耐えるように目を瞑ると。

 

『余所見をするな、ニンゲン!』

 

目の前に突然、さっきクラレットさんが召喚した大悪魔が姿を現して光線を防ぐ、

そして槍から漆黒の光を撃ち放ちゴマーグを貫いて送還させた。

 

『クラレットの戦いは確かに勉強になるかもしれないが、それは後で聞け、死んだら元も子もないぞ』

「あ、はい。すいません」

『よし、援護を頼むぞ。クラレットの助力が無ければあの悪魔も倒すのは一苦労だからな』

 

ポンポンと頭を叩かれて、その大悪魔…ガルマザリアは暗殺者に憑依した悪魔に突っ込んでゆく、

大悪魔級ともなると人間の敵だと派閥で教わっていたせいもあってよく状況が分からない…。

 

「彼女は異端の様な悪魔だ、気にすることはない。それよりも気をしっかり保てミント」

「ギブソン先輩…、分かりました!」

 

杖と石を確り握り、私もガルマザリアを援護するように召喚術を放つ、

助けられっぱなしじゃ、ダメだもの!

 

---------------------------------

 

「はぁぁぁーーっっ!!」

「クッソォ!!」

 

バノッサはエルエルを憑依したハヤトに押され始めて来た、

自分も同じように悪魔を憑依してるはずなのになぜ押され始めてるのか理解できなかった。

それには理由があった、エルエルを召喚してるのはクラレットだ。

エルエルの身体能力の強化と一緒にクラレットがエルエル経由でハヤトに魔力を送っているのだ。

ハヤトはクラレットの魔力を一身に受けてその力でバノッサと戦っていた。

バノッサは事実上二体一という状況を余儀なくされていたのだ。

 

「ググッ!」

「バノッサ、ここでお前は絶対に倒す!この街はやっと変わり始めて来てるんだ、お前や無色の派閥に勝手にはさせない!」

「いい子ちゃんぶるじゃねぇかよはぐれ野郎、街の事なんぞどうでもいいんだろ?手前ェは!」

「!?」

「あの女だけが無事だならそれでいいんだろ、街の事なんざ手前ェにとってはおまけ見てェなもんだろ、素直になりやがれ!」

 

バノッサはハヤトにこの街の事などどうでもいいと問う、

実際何度もハヤトと戦ってきて、彼が仲間や街の為に戦ったのかと聞かれるとバノッサは否定するだろう、

どんな理由があろうと、あいつは街の為に戦った回数なんぞあまりにもないと彼は思っていた。

だからこそ、ハヤトが街を理由にして戦う事を嫌悪していたのだ。

自分がただこの男に勝ちたいと純粋に思っているからこその行為だった。

 

「……ああ、そうだよ。街とクラレットどっちを取れって言われたらクラレットを取るさ」

「そうだ、手前ェは俺様と同じだ、俺様と同じように自分の欲で戦ってるんだよ!」

「確かにそうだ!だけどクラレットが望んでることを俺が否定する訳にはいかないんだ!そう決めたんだ!!」

 

ハヤトが剣を思いっきり振り上げてバノッサの剣を弾き飛ばす、

そのまま空いた手で殴りつけようとするが、バノッサがそれを開いた手で受けてめる!

そして互いに正面から顔面をぶつけて力比べを始めた!

 

「はぐれ野郎…、俺様は手前ェが気に入らねぇ…、俺様が欲しいもん全部持ってる手前ェがな!」

「俺だってバノッサ、お前が嫌いだ、人から奪おうとする事しか選ばないお前が!」

 

そして互いに全身から魔力を噴き上げ正面からぶつけ合った!

 

「「お前(手前ェ)だけは絶対に負けられない(ねェ)!!!」

 

ハヤトが赤いサモナイト石を、バノッサは魅魔の宝玉を取り出して二人で全力の魔力を籠める!

それぞれの持つ最強の召喚術をぶつけ合った。

 

「来てくれ、鬼神将ガイエン!真・鬼神斬!!」

「ぶち砕け!ディアボリックバウンド!!」

 

赤い魔力を身に纏う鬼神の将と巨大な大槌を持つ筋骨隆々の赤銅色悪魔がにらみ合う、

そして全力の魔力を正面からぶつけ合って、工場内を包むほどの衝撃が走ったのだった。

 

---------------------------------

 

憑依悪魔を倒し、召喚師も無力化したギブソン達に凄まじい衝撃が襲ってきた。

膨大な魔力がぶつかり合う衝撃に彼らは吹き飛ばされるが、すぐに態勢立て直して周りも見た。

 

「いったい何が…、二人とも無事か!」

「はい、私は…、ミモザ先輩!?」

 

二人がミモザの姿を探すと…。

 

「あたしはここよぉ~、いやびっくりしたわ」

『無茶をするな、メガネ』

 

ガルマザリアがミモザを抱えながら降りて来た、

一番吹き飛ばされたミモザを空中で捕まえて助けたのだった。

そのまま彼女を降ろすとガルマザリアは衝撃が走った方向を見つめる。

 

『全く、ハヤトの奴。クラレットからの魔力があるせいで加減を忘れてるな、クラレットは…』

 

ガルマザリアがクラレットを探そうと目を凝らすと、

吹き飛ばされたハヤトに治療を施している姿を見つけた。

 

「ハヤト、平気ですか!?」

「な、なんとか…。バノッサは?」

「わかりません、でもあれだけの衝撃だったんです。ただでは済まないだと思いますけど…」

 

二人の召喚術がぶつかった場所をハヤトとクラレットは見つめていた。

粉塵が立ち上り中の様子が良く見えないが、徐々に晴れていくのに気づいていた。

 

「煙が晴れて彼の姿を見せたら一斉に召喚術を仕掛ける、分かったな?」

「ええ、ミントもいいわね」

「はい」

 

ギブソンさん達がバノッサに不意打ちを食らわせるようだ、

あまり賛成したくないが、今のバノッサ相手に正面から戦うのはかなりマズいからな…。

クラレットの方を見ると、ガゼルたちをプラーマで治療してるようだ。

それでもこっちの様子をじっと見つめていた。だけど…。

 

「この感じ…、なんか」

「この匂い、ウゥゥ!!」

 

嫌な感じがする、何度も首筋に剣を突き立てられたような感じが…、

それだけじゃない、ユエルも同じように嫌な気配を感じ取っているようだ。

そしてクラレットも…。

 

「…ハヤト、手を握ってください」

「クラレット?」

「お願いします」

 

手を差し伸べるクラレットの願い通り、俺はクラレットの手を握る、

すがるようにギュッと握られるクラレットの手を握り返して俺はバノッサの居るを見つめていた。

そして見たのだ、煙の中に人影が二つある事に…!

 

「まさか…」

「――誓約の名の下に、魔天兵ベリアル!」

「来なさい、ワイバーン!」

「ジュレップの名の下に…、【ポックル】アタックナッツ!!」

 

それぞれの持つ召喚術が煙の中に居る人物を攻撃するが。

 

「アーマーチャンプ、アストラルバリア!」

 

召喚されたのは魅魔の宝玉の召喚できる悪魔とは違う機界の召喚獣アーマーチャンプ、

盾が六つに割れて電磁力場を発生させて放たれた全ての召喚術を受けてめ送還された。

そしてその衝撃で煙が晴れて召喚した人物が姿を現した。

 

「全く、様子を見に来れば。部下は全滅させ蒼の派閥に宝玉を奪い取られそうになるとはな」

「うるせェ、手前ェ来なくてもこんな奴らぶち殺してるに決まってるだろ」

 

聞き覚えのある声だ、当然だ。あれから一週間しか立ってないんだ、忘れるはずがない。

 

「あれって…まさか」

「ああ、いると思っていた、魅魔の宝玉が此処に在るのだからな」

「じゃあ、あれが先輩たちの言っていた…」

 

ギブソンさん達もあいつの事を知っているのか、

だとすれば同時にあいつの恐ろしさもよく知っているはずだ…。

クラレットが手を握ってと言ったのはアイツの魔力を感じ取ったからなんだな。

 

「まさか、バノッサを倒すとはな、実力がさらに上がったようだな」

「誰かさんのおかげだよ、死にかけたからな」

「ふん」

 

既に傷は完治してるようだ、そして俺とタイミングでギブソンさん達も目の前の人物の名前を呼んだ。

 

「「「ソル・セルボルト」」」

「よく来たな蒼の派閥の召喚師、今ここで始末してやる、お前たちは邪魔だからな」

 

俺は再びソルに対峙した、横にいるクラレットを見ると顔を下げている。

ギュッと手を握り、空いてる剣をソルに向けて俺は誓いを叫んだのだった。

 

「お前たちに…、クラレットは絶対に渡さねぇ!!」

「なら、守って見せろ!」

 

ソルは黒のサモナイト石を取り出し召喚術を発動させる、

そして巨大な機械の手が俺達に襲い掛かって来たのだった。




今回はバノッサ4戦目、原作だと5戦目だけど儀式後の戦いは無かったからな。
少し短い感じもしたけど中々熱い戦いだったでしょう。
二人の実力が拮抗してる感じが書いてて楽しかったわ。

そしてソル襲来、次回はソル4戦目ですけど、
ソルって凄い強いのにもう4回目なのかと思った、さてどう書いてこうかなぁ…。
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