何度か見直してしっくり来てたら変えてみます。
アンケートとか出来ればいいんだけど無いみたいですね。
――俺ってバカだな。
状況は悪化し続けていた、ハヤトの体はボロボロでエルエルの治癒で治り始めているが、それもゆっくりしたものだろう。そんな中ハヤトは考えていた。
前に誰かが言っていたな、動揺した人物が痛みを感じると更に焦るか、もしくは意識がはっきりとしてくるって。どうやら俺は後者だったみたいだ。
目の前に居るカノンをハヤトはじっと見つめる、狂気と殺意をその目に宿して一歩また一歩とこちらに近づいてきた。ハヤトも体をゆっくりと起き上がらせて相手をジッと睨む、そしてある結論に達したのだった。
――本当にあれはカノンなのか?
カノンから変じたのならカノンであることには間違いがないはずだ。だけどそれをカノンだと俺は思えなかった。あんなに優しく相手にだって気遣うカノンがこうして俺に殺意をぶつけるなんてありえないんだから、じゃああれは一体…。
「エルエル、さっきカノンが召喚呪詛にかけられているって言ってたよな」
『はい、確かに言いました』
「召喚呪詛って何なんだ?」
『召喚術を用いた呪いの様な物です。永続的な憑依召喚に近いでしょう、カノンは恐らく自身を触媒とした憑依召喚をかけられ鬼神を降ろされて誓約で操られているはずです』
カノン自身を触媒にして誓約で操られている…、じゃあカノンに憑依されてる鬼神ってまさか…。
「カノンに憑依されている鬼神って…」
『間違いなく、彼の父親でしょう。荒ぶる鬼神、恐らくその系譜だと思われます』
「そっか…」
恐らくカノンの力を引き出すのと操るのに一番適していると思われて利用されたんだな…。そしてそれをやった人物に心当たりがある。アイツはシルターンの召喚術も使えていた。ならカノンに召喚呪詛ってのを仕掛けることも出来るはずだ。
「ソル…、あの野郎」
ハヤトはソルに対して怒りを口に出した。響界種を道具の様に扱う男を、一瞬だけだったがカノンを化け物に思わせる原因を作った男をハヤトは許さなかった。そう考えて剣をしっかりと握りカノンに剣を向ける。さっきの様な焦りは一切なく心に怒りを貯めてハヤトはカノンの動きを思い出していた。
「カノンを戻すには気絶させるか呪いを取り除ければいいんだよな?」
『ええ、あとは呪詛を仕掛けた本人を倒す事ですが…』
「それは無理だよな…、エルエル。力を貸してくれ!」
『ええそうですね。行きますよハヤト!』
「ぐガアアアアアァァーーーー!!!」
既に人語を話す事もなくなったカノンはハヤトに向けて突っ込んでくる。ハヤトはまるでその行動が分かっているように攻撃を回避した。足に魔力を溜めて一気に飛ぶ形で避けたのだ、彼の居た場所はカノンの攻撃で爆音と一緒にクレーターが形成される。ハヤトはその様子を確認すると手を上にあげて召喚術を発動させた。
「シャインセイバー!!」
放たれた光将の武具は一直線にカノンに突っ込んでゆく、カノンはその攻撃をかわすことはなく肥大化した片手で防ぐが剣が突き刺さり血潮が吹き上がった。それを見たハヤトは確信する。
「シルターンの抵抗力は異常に高いけど他の召喚術ならいける!」
今度はタケシーを召喚して電撃を撃ち放った。その電撃が一直線にカノンに向かってゆき、そして直撃したカノンは電撃の痛みから膝を付いた。だがカノンもただやられているわけじゃない。電撃に耐えながら再びハヤトに向けて突っ込んできた。だがハヤトはその攻撃を避けはせずに召喚術シャインセイバーを発動させる、ハヤトの後方に待機した光将の武具はそれぞれタイミングを合わせて空中に留まった。
「……ぐっ!今だぁっ!!」
「ガアァッ!?」
拳が振り下ろされる瞬間、ハヤトはシャインセイバーを自身のいた場所に仕掛ける。思った通りカノンはその場所を殴りつけて拳にシャインセイバーが突き刺さり痛みだ悶えた。その好機を逃さずハヤトは剣に魔力を籠めてカノンの手を斬りさく、先ほど弾かれた剣は今度は深く突き刺さり更に血が吹き出た。それだけではない!ハヤトは今度はフレイムナイトを召喚する。だが召喚されたフレイムナイトは憑依ではなく固定化がされていたそして火炎放射機を稼働させてカノンに炎を叩きつけたのだった!
「ぐウウゥゥゥ…」
「よし、このまま!」
「ぐオオオオオオオオッッッ!!!!」
「グッ!?」
カノンが怒声ともいえる雄叫びを上げ魔力の流れを不安定にする。クラレットからの魔力を受けてハヤトは召喚術を使ってる為、フレイムナイトへの魔力供給が乱れ炎が中断される。その瞬間を逃さずカノンはフレイムナイトを殴りつけてバラバラに砕いた。そのままハヤトに向けて突っ込んでくるのを確認してハヤトは冷静に次の行動を考える。
元はカノンなんだ、同じ召喚術は効かないはずだ。ならシャインセイバーの罠はもう効かない。ギャンブルヒットは? ダメだあれは運が大きすぎる失敗すれば問答無用でこっちがやられる。アイツの攻撃を防げれば…どうすれば…。そうだあの召喚術なら! 俺は使った事がないけどアイツが使えるならきっと!
「来てくれ、アーマーチャンプ!!!」
『それでは先ほどと!』
エルエルがさっきと同じ行動を取るハヤトを咎めようとするがカノンは止まらない。その拳は先ほどの通常の攻撃と違いシルターンの魔力を多量に含んでいる。そして暴力的な威力と共に再びその技が発動した!
―――怒剛!鬼神撃ッッ!!!
「アーマーチャンプ【アストラルバリア】!!!」
ハヤトがカノンの奥義に対抗するべくクラレットの魔力をロレイラルの魔力に変換してアーマーチャンプに送り続ける。だがアーマーチャンプは動きを見せずにそのまま盾を構えるだけだった。
「頼む、アーマーチャンプ!力を貸してくれぇぇ!!」
ハヤトの願いと叫びに反応したのかアーマーチャンプの片方の盾が稼働した!六つに割れて電磁力場を展開してカノンの攻撃を正面から防いだのである!やがてカノンが動きを止めるとバチバチと音を立てながら送還されていく。
「ありがとう、アーマーチャンプ」
意思を持たないはずの鉄巨人のアーマーチャンプにハヤトは礼を言って次の石を取り出した、それはかつて翼竜すら封じた白亜の縛布。
「戒めの光輝にて我が敵を封じろ―――!!ヴァインシェード!」
「ぐウッ!?」
無数の捕縛の布が召喚されてカノンを封じようと縛り上げてゆく。クラレットの魔力を含む強力な布はたとえシルターンの荒ぶる鬼神であろうともそうそう千切れはしなかった。徐々に封じられてゆくカノンは暴れ狂うがやがて身動き一つ取れなくなり完全に封じられてしまった。
「あとは……はぁ…はぁ…」
カノンを救う可能性を持つ召喚術を使おうとするがハヤトは多数の召喚術を行使したせいで膝をついていた。それだけではなく現在もヴァインシェードを持続させるために魔力を送っているのだ。そのせいで決め手となる召喚術を発動させることが出来なかったのである。膝をついたまま時間だけが流れてゆく、ヴァインシェードの魔力を途切れさせればそこでカノンが解放されるだろう、そうなればこのチャンスもなかったことになる。さっき考えた通り同じ手は効かなくなるだろう。そう考えながら時間だけが流れてゆくが、希望はハヤトの方に舞い込んできた。
「ハヤト!!」
「クラレット…!」
孤児院の方からクラレットが走ってくる、クラレットはハヤトに魔力を送り続けてる為か、表情がやや厳しくなっていたがそれでも十分なほどの力を感じられた。
「シンドウの名の下にクラレットが命じる――!バラライカバインド!!」
「ぎュゥゥゥゥッッ!!」
クラレットはメイトルパより蔓草を召喚してヴァインシェードの上からカノンを雁字搦めに封じ込める。今回は本気の召喚術だ。普段は相手の事を気遣ってなのかバラライカバインドのメインとも言える麻痺毒を発動させてないのだが今回はそれを発動させた。縛られるカノンは麻痺毒の影響なのか段々とその勢いが弱まっていく、それに気づいたハヤトはヴァインシェードを止めて緑色のサモナイト石を取り出した。
「クラレット、しばらく頼む!」
「は…い! 任せてください!」
「カノンを助けたいんだ…、力を貸してくれ…!」
緑色のサモナイト石から蒼い光が迸る、その光は段々と集まってゆきゲートが形成されてゆく、そしてハヤトはこの状況を打破できる召喚獣を呼び出した!
「来てくれ…、メリオール!!」
召喚されたのは蒼い姿をした少女、ガレフの森の奥底、聖域に住む古の妖精の召喚獣だ。彼女はあらゆる呪いと病を浄化できると自負していた。彼女ならきっとカノンを助けられると信じてハヤトは召喚したのだ。それに応えるようにメリオールは頷いて両手をカノンの方に向ける、そしてその手から黄金に輝く澄んだ水を生み出した。
『金色の慈水よ!全ての不浄を清めたまえ!!』
メリオールの手から黄金に輝く水がカノンを包み込むように迫ってくる。ハヤトとクラレットはその光景を見て確信した、カノンを助けられる、と。
「ぐルルルル…!!」
だが既に荒ぶる鬼神と化したカノンは迫り来る水を見て理解した、自分がかの水に触れれば敗れてしまうと、そして思い出したのだ。自分にかけられた誓約を…。
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カノンはこの戦いに出る前にソルの下へと来ていた。この作戦が成功すれば、どうしようもない結果につながってしまう。だけど負けてしまえばそれで終わりだ。バノッサは再び復讐に手が届かなくなってしまう、そして一度でも届きそうだった彼はきっと苦しむだろう。そう思ったカノンは何とかならないかとソルの下へとやって来ていたのだ。
「それで、お前は俺に何を望むんだ」
「ボクは……」
戦う力が欲しい戦う覚悟が欲しい、優しすぎる自分はきっとこの最後の戦いに足手まといになってしまう、バノッサさんに付いて行こうと決めたんだ。だから自分はどうしても相手を傷つける事に恐怖して目的を達成できない。そんなわけにはいかなかった。
「ボクは勝ちたいんです。バノッサさんがこれ以上ハヤトさん達と戦えばきっと壊れてしまう。だからボクの手で終わりにしたいんです」
「それはバノッサの望まない事だぞ? それにお前の役目を忘れたのか」
「それは分かってますけど…、それでも…!」
「……」
ソルは静かに席を立つ、今回の件で別にカノンの作戦は成功でも失敗でもどっちでも構わないのだ。だがカノンの手であの男を殺せるのならばそれで十分だ。そうソルは思い赤いサモナイト石を取り出した。
「腕を出せ、利き腕だ」
「?」
カノンが指示通り利き腕を出す。そしてソルはその腕にサモナイト石を埋め込んだ!
「グッ?!」
「今からお前に鬼神を降ろす。そして誓約をかける、あの男を始末すること、そしてフラットを壊滅させることをな」
「ち、違います。ボクは!!」
「終わりにするとはどちらかが滅ぶことを意味している。最早馴れ合いでもないだろ、いいかカノン。いや響界種! お前は誰のために戦う?」
「ボクが誰のために…」
カノンの戦う理由を聞き出す、なぜここまで来てまで彼が戦うのか、それを突くという事は精神の隙を突くという事と同義だ。ソルは悩めるカノンを気にもかけず誓約をかけてゆく。鬼神を用いた召喚呪詛、目的が満たす機会が来れば時限式で鬼神化する呪いをカノンに仕掛けてゆく。
「全てこうなったのはあの男の仕業だ」
「あの…男…?」
「奴がバノッサを変えた、奴さえ居なければバノッサはここまで来ることはなかった」
「ハヤトさんが居なければ…」
「殺せ、あの男を。お前たちの居場所を奪ったあの男を…」
「ボクは…ハヤトさんを…!」
洗脳の様に二重で仕掛ける誓約、カノンの中の鬼神とカノン自身に誓約を仕込んでゆく。それはカノンを壊すものであったがソルにとっては痛手でも何でもいない、所詮響界種はこの世界にとっての異分子、死ぬならそこで終わりだ。
「お前の役目は…」
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――あの男を殺す事だ!!
「ぐガアアアアァァァァァァーーー!!!」
「バインドが…!?」
ぶちぶちと引き裂かれるバラライカバインド、必死にクラレットがそれを食い止めようとするが既にちぎれ始めた蔓草は止まらない。やがて完全に千切れて迫り来る黄金の水を回避したカノンはそれを放った古妖精に襲い掛かる! 暴力的な拳がメリオールの腹部を貫いて苦痛の表情と共にメリオールの姿が透けてゆく。
「メリオール!!」
『すいませんハヤト…、今一歩』
そういうとメリオールの姿が消滅して送還されてしまった。ハヤトはカノンを再びヴァインシェードで封じ込めるために召喚術を発動させようとするが、カノンの剛腕がハヤトを襲う、ハヤトはその攻撃を受け止めるがあまりの力に弾き飛ばされてしまった。
「がはっ!」
地面に叩き付けられて息をすべて吐き出してしまったハヤトはこっちに向かってくるカノンを凝視する。エルエルの回復があるが、それでも間に合わず地面に倒れてる形で防御しようとするが…。
「ガルマザリア!!」
『くそっ、間に合え!!』
無詠唱でガルマザリアを召喚したクラレットはカノンに攻撃を仕掛けるが、それに気づいたカノンはガルマザリアの攻撃を回避し、ガルマザリアを攻撃せずクラレットに飛びかかる!
「クラレット、逃げろ!!」
「あぐっ!?」
ドゴンッ!と振動と共にクラレットの居た部分にクレーターが出来る。クラレットは何とか回避したがその衝撃と瓦礫をもろに食らい壁に叩き付けられて気絶してしまった。そしてそれはハヤト達にとって致命傷だったのだ。
『くっ、体が!』
『ハヤト、すいません…!』
「エルエル!? ガルマザリア!!」
クラレットが気絶したことでガルマザリアとエルエルは存在が維持できずに送還されてしまった。クラレットは死んだわけでなく気絶だったため、ゆっくりと弱まる形でパスが閉まっていき二人に供給される魔力が減っていってしまったのだ。二人とも強力な分高い魔力を必要になる召喚獣だ。その為、さほど時間をかけずにすぐさま送還されてしまったのだ。それはつまりハヤトは一人でこのカノンと戦う事を意味していた。
「二人とも送還されたのか……はっ!?」
「ぐオオオオオッッッ!!!」
誓約に従いハヤトを殺すためにカノンが迫ってくる、一瞬だけ意識がカノンから離れてしまったハヤトはその攻撃を防ぐには僅かに時間が足りなかった。だがしかし。
「!!」
「く、クロ!?」
高速で近づいてきたのはクロだった。飛び出すようにハヤトを掴むとその攻撃を回避する。
「悪い、クラレットが気絶してエルエルが…」
「ムイムゥー!!」
「あだっ!」
ゴンッ!っと頭を叩かれて、クラレットに頼るなとクロが俺を叱咤する。…そうだったな、エルエルたちがあまりに優秀だっただけで少し前までこの体一つで戦ってきたんだよな。人間直ぐに楽なのに頼ろうとする悪い癖があるよな…、よし!
「クロ行くぞ!」
「!!」
俺とクロが攻撃をカノンに攻撃を仕掛ける。シャインセイバーの威力はもはやカノンには効かないだろう。だけどクロならあるいは…、それに賭けて俺はクロにフレイムナイトを憑依させる。
「フレイムナイト!」
「!」
フレイムナイトを憑依させたクロはカノンの攻撃をかわして、足を思いっきり殴りつける。堪らず膝をついたカノンの顔面にチャージをかけた頭突きを食らわせて宙へと浮かせて今度はその腹部にその拳を叩き込んで殴り飛ばした! やっぱりクロは俺と違って圧倒的に戦いなれてる、特に召喚獣の様な人と違う形の相手とはかなり戦い上手だ。今のカノンは人と言うより召喚獣に近い、だからクロも十分に戦えるんだな。
「ぐウゥゥッッ」
「…!」
「そうそう、上手くいかないか…」
クロの攻撃を受けても少しばかり怯んだだけでカノンは平気だった、それだけじゃない。よく見ると先ほどまでの傷が再生し始めているのだ。恐らく憑依した鬼神とカノン自身の響界種としての能力だと判断する。クラレットが起きなければメリオールを召喚することは多分できない。何とかしないと…。
「ハヤト!」
「ごめんなさい、遅れたわ!」
後ろを振り向くとギブソンさん達が来てくれた。恐らく悪魔たちとの戦いは一段落付いたのだろう。
「あれは…いったいなんだ?」
「カノンって言って響界種なんです」
「響界種…、響界種ですって!?」
ミモザさんがカノンの事で驚く、クラレットの話じゃ響界種はあまり召喚師たちが認めたくない存在だって話だからな…。とにかく今はカノンを止めないと。
「カノンは召喚呪詛で操られているんです! あと一歩だったんですけどクラレットが気絶して」
「ムイ!」
クロの声を聞いて意識をカノンに戻すとカノンはこっちに突っ込んできた。それを回避してシャインセイバーを撃ち放つがそれはカノンの体に突き刺さることはなく弾かれてしまう。クロはシャインセイバーに交じって攻撃を仕掛けるが、二度目は効果が薄いのか完全に防御されてしまいその剛腕に掴まれてしまう!
「!?」
「クロっ!? させるか!!」
クロが握りつぶされる前にクロの召喚石を握りしめて召喚を実行する。次第にクロの体が薄れて俺の目の前に召喚される。召喚獣限定だが召喚を利用した回避方法だ。偵察にも使えるんじゃないかと話していたが思った通り単純な力の拘束からなら脱出できるんだな。
「ポックル!」
突然、カノンに大きな木の実がぶつけられて少し揺れるが全く効果がないようだ。それを放ったのはミントだ。震えながらなんとか力になろうと召喚術を使ったのだろうが今のカノン相手では効果がほとんどない。カノンはミントの、ギブソンさん達の方を見て攻撃を仕掛けてくる!
「くっ!誓約の名の下にギブソンが汝の力を望む―――、グラヴィエル!!」
「ぐガァァァッッーーー!!」
大盾を構えた守護天使が召喚されるが、カノンの剛腕がその天使の盾すら砕いてギブソンさん達を吹き飛ばす。妖怪変化の超常の力を操る今のカノン相手に並みの召喚術による防御はほぼ無意味に近いのだろう。更に追撃をかけようとするカノンだが、それを遮るように上空から何体もの爆弾が降って来た!
「爆裂大家族!!」
ミモザさんがそう叫ぶとカノンを中心に大爆発を起こす!暴風と衝撃で視界が遮られるがこの意力ならあるいは…。
「ぜぇーぜぇー、流石にこの召喚術は消耗が激しいわね…」
「Sランクですから当然ですよ。それよりカノンさんという人は…」
「……とんでもない化け物だな」
ギブソンがそう呟くと二人が爆心地の方を見る、そこには傷ついた体が再生し始めているカノンの姿が見えた。その姿はカノン完全に人ではなくなる一歩手前だったと言ってもいいだろう。ハヤトは焦り始めたこのまま時間をかければ間違いなくカノンは人に戻れなくなる。
カノンの魔力はあの大きくなった手から感じる。アレを中心に誓約がカノンを縛っているのなら、あれを斬りおとせばカノンを助けられるはずだ。腕一本で助けられるのは十分だ!
「ギブソンさん!ガルマザリアとエルエルを召喚してください!俺が何とか食い止めます!」
「なっ!? しかし!」
「クロ行くぞ!」
「!!」
ハヤトとクロがカノンをけん制するように動き回る、結局二人ではカノンを倒すことはできないのだ。ミモザの爆裂大家族はギブソン達の中では最大火力の召喚術だった。それも効かない今、倒せる可能性を持ったのはクラレットの持つガルマザリアとエルエルのみだった。
「お願いします。ギブソン先輩、ハヤトさん達を…」
「行くわよギブソン!あの子たちに任せっきりにするわけにもいかないでしょ?」
「……やるしかないか、よし行くぞ!」
三人がクラレットの下へと近づいてクラレットをまずは起こそうとするが、打ち所が悪かったのかクラレットは全く起きなかった。召喚術で簡単な治療を施した後、ギブソンはクラレットのペンダントと杖に手をやる。他人の誓約の掛かったサモナイト石は色々と手順を踏まなければ召喚できないが、クラレットのサモナイト石は普通とは違う、ガルマザリアやエルエルの力である程度干渉できるのだ、つまり必要分の魔力さえ手に入れば二人は召喚可能だった。それに気づいたギブソンは魔力を籠め続けるが発動が中々せずに汗をかき始めた。
「何という魔力を必要とする召喚獣だ、これを二体も彼女は操っていたのか!」
見ただけでも恐ろしい強さを持つ悪魔と天使、そしてそれを召喚する魔力も通常の召喚師では不可能なほどの魔力量を必要としていた。クラレットは元々サプレスとの融和性が異常に高く、そして現在に至ってはサプレスのエルゴを宿す身である。彼女の無尽蔵に近い魔力量が原因だったのだ。だがギブソンも蒼の派閥、三賢人と謳われる一人の師事を受ける召喚師だ。同じサプレスの召喚師としてここで引き下がるわけにはいかない。そこで彼はある手段を思いつく、クラレットの手を握り、クラレット経由でサモナイト石に干渉する事にした。クラレットの魔力を半場無理やりサモナイト石に吸わせることにより強制的に召喚術の暴発を誘発させることにしたのだ。幸い召喚されるのはあの二体、そのまま暴走の危険性は薄い、そう判断したギブソンはそれを実行に移した。
「ん…んぅ…!」
「よし、繋がった!」
クラレットが反応を示し、サモナイト石が輝き始めると二つの光がハヤトに向かって飛んでいった!その光をハヤトが受けると彼の様子が変わり、攻撃してくるカノンを逆に斬り飛ばす!そしてハヤトは自身に何が起こったのか確認した。
「これって…」
『上手くギブソンが召喚してくれたようだな』
『型破りな所はありましたけど、中々の召喚師です』
「エルエルにガルマザリアなのか!?」
『クラレットが目覚めないせいで固定化が上手くいかなかったのでな、そのまま憑依させてもらったぞ』
そうガルマザリアが答えると剣に魔力が流れて膨大な力を感じられる。
『不服ですが、我々二人と憑依した今なら彼に対抗できるはずです。行きなさい!』
「あぁ!!」
エルエルの力も全身に漲り、俺はカノンへと攻撃を仕掛ける!先ほどとは別人の動きでカノンを一瞬翻弄し、隙をついてカノンの腕を切り裂いた!悲鳴と共にカノンがこちらを向き攻撃を仕掛けるが。
「俺ばっかり見てたら足元を救われるぜ」
「!!」
カノンの懐に入り込んだクロがカノンの顔面に再び頭突きを食らわせる!ハヤトに集中していたカノンはそれに対応できずにまともに直撃を受けてしまいふらつく、そのチャンスを逃すまいとハヤトも攻撃を仕掛けてカノンの斬り飛ばす! 数歩後ろに下がりながらカノンが再びこちらをにらめ付けて鈍い声を唸らせる。
「ぐウウゥゥゥ…!!」
「今、戻してやるからなカノン…」
メリオールのサモナイト石を握りしめると『もう一度だけなら何とかできます』とメリオールが知らせてくれた、一度倒された召喚獣は回復に少し時間がかかるのだが、場合が場合なのか無理をしているのだろうと理解した。何とかそのチャンスを作り出そうと剣を握りしめてカノンに攻撃しようとするが。
「がアァァーーッッ!!!」
「なっ!?」
「?!」
地面を思いっきり殴りつけて俺達を弾き飛ばしたカノンはそのままギブソンさん達の方を見る、気づかれてた!カノンはギブソンさん達を攻撃する気だ。それに気づくが遅く既にカノンはギブソンさん達に向かって走り始めた!このままじゃクラレットまでと思った俺も走るが距離があり過ぎるせいで間に合わない!いや、させない!!
「シャインセイバー!!」
「ポックル、ナッツアタック!!」
「行きなさい、ミミエット!!」
俺を含めた手が空いてる召喚師が召喚術でカノンを攻撃する、シャインセイバーは既に何度も受けてるせいなのか弾かれ、ミントの召喚術も効かないが、ミモザさんの召喚術は別物だった。召喚されたのは兎亜人の召喚獣だが凄まじい魔力を滾らせてカノンを殴りつける。そのまま手にエネルギーを集中させて何度もカノンに撃ちつける姿を見て唖然としたが、カノンはそれに耐え抜いてミミエットを攻撃して送還させた。だがギリギリ間に合い俺はクラレットとカノンの間に入り込んだ!
「ぐガアアァァァァァーーーッッ!!!」
カノンの腕に膨大な魔力が集中し始める、あれはカノンの必殺技だ。またあの攻撃を受けたら今度こそマズいかも知れない。だけど引き下がるわけにはいかない、今度こそ受け止めて見せる!!
「エルエル!ガルマザリア!力を貸してくれ!!」
『無茶をしないでください!』
『よし、やるぞハヤト!貴様もいい加減諦めろ駄天使!!』
二人の声が聞こえ、俺では到底制御できない魔力が体中にあふれる!それに決して流されずに俺はその力を剣と左手に送ってカノンに向けて突っ込んだ!
――怒剛ッ!鬼神撃ッッ!!
放たれた物理法則すら捻じ曲げるその威力の前に恐怖を感じるが、それ以上にここを絶対譲らないという覚悟が全身に滾らせる。俺の後ろにはクラレットが居るんだ。こんな攻撃に負けるわけにはいかない!!
「うおおおおおおぉぉぉーーーッッ!!」
『スペルバリアァ!!!』
エルエルの力を込めた左手を前に突き出してカノンの攻撃を受け止める! だがカノンの攻撃の前に徐々に押されはじめ吹き飛ばされそうになるが必死に足に力を入れて耐え抜こうとする。だがあまりの力に全身が吹き飛ばれるのを必死に耐えるがこのままではいけないと思ったその時。
「うぐぅぅ!! えっ!?」
突然受け止めている左手の魔力が操作され始めカノンの威力を受け流し始める、シルターンの超常の力は魔力操作で受け流されてあとは純粋なカノンの腕力だけだ。俺はカノンの手をしっかりの握ってその動きに制限をかけた。
「今です。ハヤト!!」
「クラレット!?」
ミモザさんに支えられながらクラレットは杖をこちらに向けていた。恐らくクラレットが魔力を操作してカノンの力を受け流してくれたのだろう、俺はガルマザリアの力が宿った右手に全魔力を流し込んで剣が紫色に発光し始める。
『傷つける事を恐れるな!この剣を奴の腕に突き立てろ、ハヤト!』
「行くぞ、カノン!!」
ガルマザリアの力を乗せた剣をカノンの腕に突きさす! そしてガルマザリアの技を敵に直接叩き込む形でその魔力をカノンに押し込んだ!!
『「ドゥームインパクト!!」』
「ぐギャアアァァァーー!?」
あの威力を持つガルマザリアの必殺技を腕に集中させて爆発させればたとえ鬼神の腕でもその威力に耐え抜くことはできない。思った通りカノンの腕はその威力に耐え切ることが出来ず。爆発するように千切れ飛んだ、その光景に目を瞑りたくなるがエルエルの力が残っている手でカノンを思いっきり殴り飛ばして距離を取る。腕が吹き飛ばされたせいで意識が朦朧としてるのかカノンはまともに攻撃を受けて地面に倒れおちた。すぐさまハヤトは緑のサモナイト石を掲げて召喚術を発動させた!
「もう一度、力を貸してくれ!メリオール!!」
『はい、今度こそやり遂げます!!』
再び姿を現した古妖精メリオール、その両手をカノンに向けて彼女は黄金の慈水生み出して放った!
『金色の慈水よ!今優しきものに宿りし不浄を清めたまえ!!』
「あ…がぁぁぁ……」
カノンが黄金の慈水に包まれると黒い水か大量に出てきて水に溶けて消えてゆく、少し経つとカノンの姿は元に戻っていた。一つだけ違う点があるとすればカノンの右腕がなくなっている事だった。流石の古妖精の力でも腕を治すことは出来ないのか…。視線を吹き飛んだ腕に向けると腕の中にサモナイト石が確認できる。恐らくあれがカノンを縛っていた召喚呪詛の核なのだろう、腕を吹き飛ばしたことに間違いはなかったみたいだな…。
『…ふぅ』
「お疲れ、メリオール」
『戻らせてもらいますね。またいつでもお呼びください』
そういうとメリオールが送還されてゆく、随分と疲れてたところを見るとやっぱり連続で召喚されるのは向こう側にも随分と負担がかかるみたいだな。俺はカノンに近づいて様子を見る、メリオールの力で傷はほぼないようで安心した。流石に疲れたので膝を付いて俺もその場に座り込んだ。
「ハヤトさん、平気?」
「ああ、うん。平気だよミント」
「ねえ、ハヤト。ちょっと聞きたい事あるんだけど」
「なんですかミモザさん?」
ミモザさんが妙に目をキラキラさせながら俺に話しかけてくる。なんか俺したかなって思ったが、メリオール召喚したんだった…。クロにだってあんなに興味抱いてたんだ、更に珍しいと思う古妖精なんて引っ張り出したらそりゃ知りたがるよなぁ…。
「あれってもしかして古の妖精じゃないの?」
「はい、少し昔に助けてもらって、それから召喚獣になってくれたんですよ」
「凄いじゃない! 古の妖精って言ったらそりゃ数がほとんどいないって言われてるのよ?そんな妖精を召喚獣として持ってるなんて派閥でも人っ子一人いないわよ。ねえその子って…」
「ミモザ、それぐらいにするんだ」
ギブソンさんが暴走しがちなミモザさんをなだめてくれた、この知りたがりな所が無ければミモザさんも結構いい人なんだけどなぁ…。
「でもギブソン…」
「彼に古妖精の話を聞くのは全てが終わってからでも遅くはないだろ? 今はあの少年の身柄を拘束するのが先決だ」
「…そうね、じゃあ全部終わったら教えてもらうわよ?」
「まあ、そこら辺は本人に聞いてください。流石に助けてもらってる俺の口からじゃ…ね?」
『私に押し付けないでくださいよ…』
なんかメリオールの声が聞こえるけど今は無視しよう、それよりカノンの事が先決だ。大抵の傷は既に負っていないが呪詛とは別にカノン自身が俺達に攻撃を仕掛けてくる危険があるからな。ギブソンさんは懐から一つの首輪を取り出してカノンに取りつける。それを見ていたミモザさんが少し嫌そうな顔をしていた。
「ギブソンさん、何をしたんですか?」
「彼は召喚獣の力を使っていた。本当は敵対するはぐれ召喚獣に使うモノなのだが、誓約の首輪を付けさせてもらった」
「……そうですか」
「そう悲しむな、この事件が終われば誓約はきちんと外すさ、私が無事だったらの話だがね」
カノンの力は非常に危険だ、流石に何の保険も無しに普通の拘束なんてできない、響界種がどこまで召喚獣なのかは俺は知らないがここら辺は本職の人に任せるのが一番だろうな。でも理解はしていてもやっぱりいい気分になれない、そんな時クラレットが体を起こして俺に近づいてきた。少し歩くのが辛そうだ。俺にパスを繋げてるのもあるから少し魔力を使いすぎたんだなと理解した。
「ハヤト、平気ですか?」
「クラレットこそ」
「カノンさんは…、やっぱり…」
「うん、多分だけどソルの手で召喚呪詛がかけられてたんだ。ほら」
千切れ飛んだ腕に指さしすると赤いサモナイト石が腕に仕込まれてるのをクラレットが確認した、それを見て確信付いたのかまた辛そうな顔をする。
「私の知っている……兄様もういないんですね」
「クラレット…」
「覚悟は出来てます。でも……やっぱり辛いです」
「………」
俺はクラレットの手を無言で握った、クラレットも手を握ると握り返してくれる。終わらせないといけない……、どんな結果になってもこのままじゃいけない、必ず俺がクラレットを守って終わらせないといけない、そう思いながらクラレットを見て、孤児院の方に振り返ると、そこにはだれ一人かけていないフラットのメンバーの姿があった。
「ハヤト、無事か?」
「おめぇ、また無茶したんだろ」
「はは……流石にカノン相手だと無茶しなきゃ勝てないよ」
ガゼルとエドスが声をかけてきてくれて安心した、悪魔たち相手だったらから少し心配だったけど、今の皆だったらある程度は戦えるよな、クラレットたちが俺の援護に来れたことを考えれば安心はしてたけど、こうして見るのが一番安心出来る。
「カノンは……、どうなったんだ?」
「カノンさんは召喚呪詛にかけられたようです。そのせいで鬼神化という現象が起きたみたいで」
「召喚呪詛…じゃあ無色派閥って連中の仕業か」
「……はい」
クラレットが辛そうにしているのを見て、エドスが何かを察したようだ、そのままカノンを孤児院の方に連れて行こうとカノンの元へと歩いてゆく、ガゼルも流石に空気を呼んだのか「動けるようになったら来いよ」と言い、周りの様子を見てる来るといなくなった。俺はしばらくクラレットを見ていたが、クラレットの心が落ち着いたようなのでクラレットの手を握り立ち上がる。
「行こう、クラレット」
「はい、ハヤト」
俺達は何とかカノンが率いる悪魔の軍勢を討ち破った…、だけど俺の中ではどうにも安心が出来なかった。なんでカノンだけで南スラムに攻撃を仕掛けて来たのか。それを知る為にも今はカノンが目覚めるのを待つことしか俺達には出来なかった。俺は更なる戦いの予感を感じて剣を握っている手を握りしめていた…。
ハヤトがかなーり強いなぁ……。ええんやけどね?
クラレットとエルエル経由で繋がってるので魔力切れとかほとんどない状態、
でもロボット物でもあるけど第二形態がやたら短い現象ですぐにこの状態終わるような気がするんだよなぁ。
しかしあれだ、敵が強くなる→自分も強くなる→仲間が置いてかれる→インフレ発生!!
って流れだ、何とかしないと……。
あと今回書き方結構変えてみたので、
どちらがいいかなどを感想なので知らせてくれると嬉しいです。
それでは次回もよろしくお願いします。