サモンナイト ー生贄の花嫁ー   作:ハヤクラ派

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少し遅れましたけど私は元気です。
活動報告にも書いたけど祝日は仕事日でちょっと睡眠優先でゴメンね。

中々の難産でした。
書き方とか色々と模索してますのでよろしくね。


第28話 本当の敵

 

「………ボクは」

 

目を開けると見たことのない天井だった。北スラムでも無色の派閥の天井でもなかった。

どうしてボクがここで寝ているのか、それが思い出せない…。何かあった気がするのだけど…。

 

「……そうだ、ボクはハヤトさん達と戦って」

 

負けた。思い出した、意識がソルさんの召喚術で支配させられて彼に対して殺意を持って攻撃してしまった事を…。

はっきり覚えてる、ハヤトさん達がボロボロになりながらボクを助けようと戦って勝った事を…。

ボクは終わらせられなかったんだ……。

それにボクを助けてくれた人たちになんていう事を…。

 

カノンは悲観するが彼が起きたのに合わせたかのように扉が開いた。

カノンがそちらの方を見るとハヤトとクラレットが姿を現したのだった。

 

「起きたんだな、カノン」

「大丈夫ですか?」

「ハヤトさん、それにお姉さんも…」

「無事みたいでよかったよ。盛大に吹っ飛ばしちゃったからさ…」

「あはは…、ハヤトさんの拳結構痛かったですよ?」

 

カノンのそんな言葉を聞いて、ハヤトは少し驚いた。まさかあの状態で意識があったなんて…。

 

「カノンもしかして意識があったのか?」

「はい。戦ってる最中にドンドン飲み込まれていく感じでした、自分の体が別のモノに磨り潰されて無くなりそうな感じで……、でもギリギリのところで踏みとどまれたんです」

「……たぶんカノンさんはシルターンの召喚術と相性が良かったおかげですね。これが何も力がない状態だったらそのまま死んでたと思います」

「だとしたらこの体に感謝しないといけませんね……あっ、そっかもうないんですね」

 

手を挙げようとしたカノンは自分の利き腕がない事に気づいた。

なくなった自分の腕を見てどこか諦めた表情をしていた。

 

「その…、ごめんカノン。俺、お前の手をさ」

「いいんですよ。ハヤトさん達はボクを助けようとしてくれたんでしょ? なら腕の一本ぐらい大丈夫ですよ」

「…ごめん」

「だからいいですって」

 

互いに互いが申し訳ない会話が続き、このままでは先に進めないと思ったクラレットが言葉を発した。

 

「ところでカノンさん、どうして南スラムを襲ったんですか?」

「………頼まれたからです」

「頼まれた?」

 

カノンが重苦しそうにそのことを俺達に伝えた。

頼まれたってつまり無色の派閥に俺達を倒して来いって言われたってことだよな…。

悪魔たちを率いていたってことは召喚師に召喚してもらったはずだし…。

 

「ソルさんに頼まれたんです。あいつらを倒して来いって…、でも自信が無くてそれで相談したら何かを…、あまり覚えてないんですけど」

「たぶんその時に召喚呪詛を仕掛けられたんだと思います」

「…そっか」

 

どうにも納得がいかない…、ソルの奴がカノンを道具みたいに使う可能性はわかるけど、

カノンほどの力を持つ奴を捨て駒に使うのか…?

助けるのを諦めて戦えばソルぐらいの奴なら俺達がカノンを倒せるってわかってるはずだ。

じゃあなんでソルは…。

 

「あの…」

「ん?」

「確かに暴走させられたのは事実です。でも戦うって決めたのはボクなんです。だからソルさんだけを責めないであげてください」

「責めないでって…、カノン。お前はソルに利用されたんだぞ!? 道具のように扱われてそれで片腕を失うことになったんだぞ!?」

「そうですけど…、ソルさんはバノッサさんの事をわかってあげられる唯一の肉親なんです…、だから…」

「え…?」

 

カノンの一言でクラレットの様子が変わる、驚いているような。納得したような。

そんな表情を顔に表していた。そうだった、バノッサの事、クラレットに教えてなかったんだよな。

 

「バノッサさんは…、私の…、お兄さんなんですか?」

「…そうです。バノッサさんはお姉さんのお兄さんになるんです」

「……やっぱり」

「やっぱりってもしかしてクラレットはわかってたのか?」

 

俺の質問にクラレットは少し俯いて悩みながら答えてくれた。

 

「確証はなかったんですけど…、他人の感じがしなくて、それに魔力の質も少し似てたような気がするんです。外法を用いて生まれた子の魔力は少し歪ですから」

「……」

 

バノッサの母は狂い死んだって聞いたけど、それも外法ってやつのせいなのか…。

 

「カノンさん。カノンさんはどうしたいですか?」

「え?」

「カノンさんが何を望んでいるのか、私たちに教えてもらえませんか?」

「ボクは……、バノッサさんのやる事をやり遂げさせてあげたいんです。でもボクは負けました、それでもボクはバノッサさんを裏切りたくないんです。もうあの人には……居場所なんてないんですから…」

「カノン…」

 

バノッサのやった事を考えればもうサイジェントに居場所なんてないだろう、

利用されてたかもしれないとはいえ、北スラムの連中を屍兵に変えたんだ。

俺はバノッサを助けてくれって頼まれたって断るつもりだった、助けたくないってのが本音だからな。

 

「私たちは、バノッサさんを殺してしまうかもしれませんよ?」

「その時は…、その時なのかもしれません。ボクらがやった事を考えればそれも仕方のないことですし。ボクは負けた身ですから…」

 

カノンが自分の首に手をやる、誓約をギブソンさんに刻まれており。

俺達に害を成そうとした時に魂に苦痛を伴いようだ。それはカノンの敗北の証であった。

 

「……ハヤトさん、お姉さん。これだけは伝えておきます。あの人は危険です」

「え?」

「ソルさんとバノッサさんの父親です。なんというか、言葉には出せないんですけど、とても危険なんです」

「二人の父親…」

 

それはつまり、クラレットの…。

 

「…来ているんですか?このサイジェントに」

「はい、実際に会いました。見ただけでわかります、この人は普通じゃないんだって…」

「…そうですか」

 

俺達はカノンの会話を終わらせて部屋の外に出た、

カノンはなくなった自分の腕を見て溜息を吐きつつ天井を見て呟いた。

 

「どうして生き残ったんだろう…」

 

あそこでハヤトさんの手にかかり死んでいた方がもしかしたら幸せだったのかもしれない。

バノッサさんやソルさんの結末を知らずに終える事が出来るのだから。

無様に生き残ってあの人たちの最後を知ってしまう可能性を得てしまった。

 

「ボクらに居場所なんてないのに…」

 

自分たちの居場所を自分たちで壊した、それを承知で自分もバノッサさんに着いていったんだ。

だからボクはこんなところに居ちゃいけない、だけどカノンはこう思った。

 

「どうせ生き残ったんだから…、もう少しだけ…」

 

彼はほんの少しだけ生きる決意をした、

それがどれだけ惨めで他人に迷惑をかけるものだと理解していたが、

それでもなぜか彼はもう少しだけ生き恥をさらそうと思ったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一時間ほど経ち、ギブソンさん達はカノンの尋問を終えたようだ。

尋問と言っても普通に話を聞いただけらしく、あまり酷いことはしなかったようだ。

 

「残念だが、彼から重要な情報は得られなかったよ。元々そういう立ち位置だったらしい」

 

ギブソンさんの話では殆ど外に出ておらず、今回の侵攻は影の転移術で外に出されてから行われたものだそうだ。

それはつまりカノンは殆ど鉄砲玉の様に利用されていたことを現していた。

 

「嘘を付いていたようにも見えないしね。それにどこか諦めてるように無気力だったわ」

「…カノンにも色々ありますから」

「そこら辺の事は気にしないでおこう、まずはなぜ彼がここに攻撃してきたか、という事からだ」

 

ギブソンさんのそんな言葉に俺やクラレットを含む、フラットのメンバーは頷いた。

カノンは確かに強かったけど、それでも今のフラットの戦力全員を相手にするのは不可能だ。

ソルだって今のクラレットや俺と戦って実力をよく知ってるはずだ、だったらどうしてカノンを捨て駒の様に使ったのかが気になる。

アイツは非道だが自分たちの戦力を無駄に削るような男じゃなかったはずだ…。

 

「もしかして囮とかそういうのじゃない?」

「!?」

 

アカネが口を開くと全員驚いた、確かにカノンを囮に使ってるならその考えは理解できる。

戦力が無駄に集中してるフラットを囮にして別の拠点を落とすっていうなら…。

 

「アカネ、もしかして…」

「あくまで予想だけどさ。普通に考えてカノンって人一人じゃここを落とすのは無理でしょ? だからもしかして別の所を落とすのが目的って訳じゃないかな?」

「ここ以外に狙う場所……」

「上流階級区もしくは、ガレフの森?」

「そこでなんで森が出てくるの?」

 

ミモザさんが俺の言葉に口出しをする、確かにここで森を出すのはおかしいかもしれないがあの森は少し特別だ。

 

「あの森にはメリオールが住んでるんです。トードスっていう召喚獣も無色の派閥に召喚されていたようですし」

「トードスねぇ…、なんとも面倒な召喚獣を召喚してるわね」

「ハヤト、たぶんですけどメリオールは今回関係ないと思います」

「関係ない…?」

「確かにあそこにはメリオールと扉があります。でも今現在無色の派閥がそれを狙う理由は無いはずです」

「確かに…」

 

あの扉とメリオールは希少だが、今の状態でそれを狙う意味は薄い。

あいつらの目的は魔王召喚のはずだ、じゃあ他の狙いは…。

 

「大変、大変ですのぉ~!!」

「きゅっー!!」

「モナティ!? どういたんだ!」

 

外の片づけを手伝っていたモナティが転がり込む様に広間に入ってくる。

とても焦った表情でモナティは自身のマスターに近寄り大変なことを伝えた。

 

「お城が…、お城が燃えているんですのぉーー!!」

「な、なんだってっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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孤児院の外に出た俺達は城の方を見ると黒い煙が上がってるのを見た。

暴動は既に起きる事はほぼあり得ない、他の国が攻めてくるという話も聞いていない。

つまりあの煙の原因は…。

 

「無色の派閥、まさか領主の城を攻め落とす気なのか!?」

「……まさか」

「クラレット…?」

 

何かに気づいたかのように、顔を青ざめる。

同じようにギブソンさんも何かに気づいた様だ。

 

「ギブソンさん、もしかして…」

「奴らめ、そういう事か!」

「なんだよ、俺達にも説明しろよ!」

 

ガゼルがクラレットたちに気づいたことの説明を求める。

クラレットは落ち着きながら、俺達にその事を説明し始めた。

 

「この街は円状に城壁が設置られてます。それを陣に見立てて巨大な召喚陣を形成しようとしてるんじゃないかと…」

「だから町の中心にある城を狙ったのか!?」

「それだけではない、城はこの街のどこからでも見えるはずだ。つまり人々の不安を仰いでしまう。それは悪魔たちの餌となる負の感情を呼び起こす原因になってしまうはずだ。恐らく無色の派閥は街の人々の不安すらエネルギーに変えようとしているはずだ」

 

城にはイリアスさん達の騎士団やキムラン達が居るはずだけど、

それでも無色の派閥の召喚師や暗殺者、無限に悪魔を召喚できる魅魔の宝玉がある。

分が悪すぎる……、直ぐに向かわないと!

 

「みんな!すぐに城に行こう!!」

 

俺の一言で全員頷いで出発の準備を始めた。

俺もさっきの武器の調子を見て、直ぐに出発をしようとしたがそれを止める人物がいた。

 

「待ってくださいですの!マスター!」

「モナティ?」

「嫌な……嫌な予感がするんですの…。マスターがいなくなっちゃうような…」

「ちょっとレビット!何バカなこと言ってるのよ。あの時とは違うのよ。今のこいつの力を考えればやられたりしないわよ!」

「そんなことわかってますのぉ!」

「ちょ、ちょっと…、アンタ大丈夫?」

 

普段ならただ凹むはずのモナティがエルカに反論した。

普段とは違うモナティの様子に俺は少し戸惑ったがモナティの顔をしっかりと見直した。

 

「マスターが強くなったことはモナティでもわかりますの。でも、それでも嫌な予感がするんですの…。あの時の様な…前のマスターが死んじゃった時の様な…」

「モナティ…」

「でも、マスターが行かないとこの街が大変なんですよね。だからモナティは…」

 

裾をギュッと握りしめて俯くモナティ、

俺はそんなモナティの帽子を取り頭をゴシゴシと撫でた。

 

「にゅ、にゅぅっ!? マスター何するんですの!ボサボサになっちゃいますの!」

「はは、大丈夫だよ。俺は負けない、ギブソンさん達もいるし、クラレットと一緒ならソルとだって渡り合えるぐらいなんだ。だからいつも通り信じて待っていてくれないか? モナティ?」

「………にゅう」

「……ふう」

「ハヤト」

 

ギブソンさん達の何かを話していたクラレットが近づいてくる。

クラレットの手には緑色のサモナイト石が握られていた。

 

「クラレット? どうしたんだ?」

「モナティ」

「なんですの? クラレットさん」

「ハヤトと誓約を交わしましょうか?」

「「え?」」

 

誓約…、そっか俺ってモナティと誓約を交わしてなかったんだよな。

俺の護衛獣の一人って思ってたけど誓約を交わしてないから分類上ははぐれのままだったな。

 

「ハヤト、石を」

「ああ、モナティも一緒に」

「は、はいですの!」

「きゅーっ!!」

「ガウムもか…? エルカはどうするー?」

「ぜっったい!イヤ!」

 

まだまだ信頼が足りないのかな…、エルカと一緒に戦ったんだけどなぁ。

そう思いながら俺はメイトルパの魔力をサモナイト石に送ってゆく。

 

「そういえば一つのサモナイト石で二体も誓約を交わして平気なのか?」

「平気ですよ? 召喚するときにある程度意識すれば。ほらシロトトとかトライクルセイズとかいますから」

「その二つ知ららないけど、大丈夫ならいいか、じゃあ行くぞモナティ」

「おねがいしますの!」

「きゅーっ!」

 

確か、真の名を言葉に出して魔力を注げばよかったんだよな?

誓約なんてもうずいぶんとしてないからわからないけど、そんな感じだったはずだ。

 

「モナティ、俺の護衛獣になってくれるか?」

「はい、モナティはマスターの護衛獣です。ガウムも一緒ですよね?」

「きゅーっ!」

 

そう告げた瞬間、モナティと俺の間で何かがカチリとハマった、

今までなかった繋がりのようなものを感じる、クロよりも結構はっきり感じるな…。

 

「結構存在感あるな、クロよりもだいぶ」

「レビット自身の魔力量が高いですからね。ハヤトの魔力を感知できる能力も合って結構はっきり感じられるんですよ」

「へぇ…」

「そうなんですかぁ~」

 

改めて手にあるサモナイト石を見ると確かにモナティの力のようなものを感じる。

まあ、召喚してモナティが何をできるかってのは全然わからないんだけどな…。

 

「これでハヤトに何かあったときはモナティも気づく事が出来ますから、大丈夫ですよ?」

「ホントですの?」

「はい、これで安心できますよね?」

「……分かりましたですの。モナティは待っていますから、マスター、絶対に帰ってきてくださいですの!」

「ああ、じゃあ行って来るよ。子供たちの事、頼んだぞモナティ」

「はいですの!」

 

モナティが笑顔になってくれて一安心だ、みんなのほうを見るとガゼルが近づいてきた。

 

「こっちの準備は大丈夫だぜ」

「行こうか。ハヤト」

「ああ、みんな城に行こう!!」

 

俺達が全員城に向かい走ってゆく、それを子供たちやモナティは見送ってくれた。

これが最後の戦いになる筈だ、必ず終わりにするんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「行っちゃいましたねぇ…」

「うん…」

「リプレさん、どうかしたんですの?」

「嫌な予感がしてね…なんだか…わからないんだけど」

 

リプレが不安そうに城の方を見る、モクモクと黒い煙が出続けていた。

視線の先には南スラムの住人も何人か見えて全員が不安そうな表情をしていた。

 

「モナティと同じですの?」

「毎回不安なのは同じなんだけどね。今回はなんだか特に嫌な予感がして」

「おにいちゃん…だいじょうぶ?」

「平気よ。あのソルって奴だってお兄ちゃん一度倒してるのよ。お姉ちゃんもいるし負けるわけないわよ!」

「そうだよ、リプレ母さん。みんな大丈夫だよ!」

 

子供たちが彼らを信じてリプレを励ましていた。

子供たちが信じてるのに自分が信じていなくてどうするんだと、リプレは思って嫌な気持ちを端っこに追いやった。

 

「じゃあ、みんなが帰って来た時に備えて夕ご飯の準備しましょうか。エルカも手伝いなさい」

「なんで私まで…」

「エルカさんも一緒ですの♪」

「きゅーっ!」

「あー!引っ付くんじゃないわよ、馬鹿レビット!!」

 

城から視線を外して家の中へとリプレは戻っていった、

だけどもし、無理にでも彼らを止めればもしかしたら何か変わったのかも知れない…。

少なくともあんな思いはしなかった、そう思わずにはいられなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ヒュアーッハッハ!! 噂程の力じゃねェな、マーン三兄弟ってのも」

 

城ではすでに戦いは佳境へと入っていた周りには幾多の兵士が倒れており、その中心にはバノッサの姿があった。

彼の持つ魅魔の宝玉の力で悪魔たちが無制限に召喚されており、騎士団や三兄弟の力では到底太刀打ちできなかった。

 

「くっ…、力の差があり過ぎる」

「あきらめるんじゃねぇ、カムランっ!!」

「平民が…、にわか仕込みの召喚術で我々に勝てると思っているのか!?」

 

イムランがバノッサに怒声を浴びせるが、それを涼しい顔でバノッサは受け流す。

 

「その平民様を相手に、さっきから手こずってるのはどなた様だよ?」

「きぃぃぃっ…!」

「くたば……ッ!!」

 

悪魔の群れに指示を出そうとするが、それを防ぐように矢が飛んでくる。

バノッサはその攻撃を回避して攻撃があった方を見るとそこには二人の騎士がいた。

 

「これ以上の狼藉は自分が許さない!!」

「勇ましいことだなァ…、騎士団長様よォ!!」

「くっ!?」

「イリアス様!?貴様っ!」

「邪魔だァ!」

 

イリアスに突っ込むバノッサ、その攻撃を受け流そうとするが、

それすらできないほどの剛剣がイリアスの槍を切断する!

そのまま蹴りを食らわせてイリアスをバノッサは吹き飛ばして召喚術を使うとするが、

それを遮るように再び矢をサイサリスは撃つが、バノッサはそんなサイサリスの事を疎ましく思い周りの悪魔たちに指示を出した。

 

「あの女を殺せ、悪魔ども!」

「くっ!?」

「サイサリス!!」

 

悪魔たちに矢を放つがサイサリス一人の力では悪魔たちを退かせることが出来ず攻められてしまう。

そして悪魔の凶刃がサイサリスに振り下ろされる瞬間、悪魔が斜め切りにされて送還されていった。

瞬く間に悪魔たちを切り崩し、サイサリスを守った人物、赤い鎧を纏い大剣を構えた騎士の姿があった。

 

「無事の様だな」

「貴方は…!」

「ラムダ先輩!!」

 

サイサリスは自分を助けた人物があのラムダだと知って驚いた。

イリアスも驚いたが自分たちを助けに来てくれたことに喜びを抱いている、

そしてラムダは無事の二人を確認するとバノッサの方へと視線を移した。

 

「あの時の騎士崩れか、俺様の邪魔をするって意味が分かってるのかァ?」

「この街は変わりつつある、貴様にこれ以上混乱を起こさせるわけにはいかない!」

「だったらよォ、力でひれ伏させてみろよ、それが手前ェらのやり方だろ!!」

 

バノッサがラムダに斬りかかるが、それを正面からラムダは受け止めた。

そのままバノッサは力任せにラムダを押し込もうとするが、それをラムダは受け流して反撃する。

その剣をバノッサはもう一本の剣で受けとめた。

剣を切り結びながら徐々にバノッサが押され始めたので後ろに飛び退いた。

 

「ただの騎士の分際でやるじャねェかよ?」

「貴様程度の男にやられん!これで終わりにする!」

 

バノッサに向けて猛進するラムダをバノッサは魅魔の宝玉を掲げて召喚に入る。

ラムダが剛剣を振り降ろすその瞬間に、バノッサとラムダの間に悪魔が召喚された!

 

「なにっ!?」

「クククッ、掛かったな! オラァッ!!」

 

召喚されたのはメルヒ・ダリオという汚泥と腐肉で構成された悪魔、

それを斬り裂いたラムダは余りの腐臭と猛毒の激痛に犯されて一歩引き下がった。

そこにバノッサが妖霊を召喚して漆黒の炎がラムダを包み込む、そのあまりの威力にラムダは堪らず膝を付いた。

 

「グウッ!?」

「ラムダ先輩!」

「無駄なんだよッ!たかが騎士風情が召喚師の俺様に勝てるかよ! これで終わりだァッ!!」

 

苦しむラムダに更なる追撃をバノッサは仕掛ける、

魅魔の宝玉を再び掲げた、そこから現れたのは赤銅色の悪魔、

その巨大なハンマーを高く掲げてラムダへと振り降ろす。

誰もがラムダの死を覚悟したその瞬間、ラムダの目の前にゲートが出現する!

そこから現れたのは巨大な盾を構えた守護天使、それがハンマーを防ぐ。

そして次は光り輝く光将の武具が飛んできて悪魔を攻撃して送還させた。

 

「プラーマ、ラムダさんを!」

 

ラムダの目の前に聖母プラーマが召喚され癒しの奇跡により、

妖霊で奪われた体力と猛毒を治療する、回復したのかラムダは立ち上がり声のあった方を見た。

 

「来やがったな、はぐれ野郎!」

「バノッサ!!」

 

先ほどラムダを守り、悪魔を迎撃したのはハヤト達だった、

それだけではない、元アキュートの面々や城の異変に気付き、加勢しに来たスウォンやユエル、ガレフ達もその場に来ていた。

サイジェントの危機と知り、今まで街の為に戦ってきた人たちが全員集まって来たのだ。

 

「無事かイリアス!」

「レイド先輩、貴方達まで…!」

「苦労を掛けたな、イリアスたちは領主を連れて逃げるんだ。ここは私達で何とかする!」

「…! いえ騎士団の一員として貴方たちに…」

「サイサリス、今は領主を守るのが先だ、ここは先輩たちに任せるんだ」

「…はい、イリアス様」

 

イリアスさんとサイサリスが領主らしき人と生き残った騎士たちを連れてこの場から去っていく。

 

「兄上、我々は…」

「う、うむっ…」

「兄貴とカムランは騎士団長たちに付いていってくれや、ここは俺が何とかするからよ」

「キムラン、わかった。言っておくが蒼の派閥の連中に後れを取るなよ!」

 

そうイムランがキムランに言うとイリアスさん達と一緒に領主を連れて下がっていく、

キムランは武器を構えてバノッサと悪魔の軍勢に目を向ける。

同じように全員が武器を構えてバノッサを睨むが、バノッサはまるで余裕であるかのようだった。

 

「クククッ、役者は揃った見てェだな?」

「バノッサ……、カノンは倒したぞ」

「…ああ、そうかよ。手前ェらの事だ、どうせ強くなったカノンに手加減して苦戦したってところだろ? 手前ェ見てえな甘ちャんがカノンを殺せるはずがねェからな?」

「確かにカノンは生きてる、だけどソルの手でボロボロにされたんだぞ! 片腕を失う事になったんだぞ!」

「………」

「それなのに、お前はまだアイツらに力を貸すのか! お前の義兄弟を道具の様に扱ったんだぞ!」

「うるせェ!はぐれ野郎!!」

「!?」

 

バノッサの怒声に少し怯むが直ぐにバノッサを睨む、

バノッサは腕に力を入れて俺に怒鳴って来た。

 

「そんなこと知らねェと思っていたのか? 俺様が騙されてると思っているのか? ハッ、全部知ってるに決まってるだろ」

「知ってて…知っててあんなことさせたのか!」

「カノンの奴が自分で望んだことだ。俺様が言っても聞かないからな。それで潰れるならそこまでだって事だ。だろ?」

「お前ェ!!」

 

許せない、カノンがバノッサの為に戦ったのにそれを理解もしないなんて!

俺はバノッサを倒すために剣を握りしめてクラレットに目をやる。

だが、クラレットはまるでバノッサに怒りの表情を浮かべず何かを考えてるようだった。

 

「……逃がすため」

「あァ?」

「私達の中に居れば安全ですからね」

「なんだと?」

「バノッサ……さんはカノンさんを私達の陣営に保護させる為にわざと見送ったんですよね? 無色の派閥にいればどんな仕打ちをされるかなんて予想できます。カノンさんは響界種、召喚師の人たちでは理解されない存在ですから」

 

クラレットの言葉を聞いたバノッサの顔に苛立ちが浮かぶ。

クラレットはそんなバノッサの事を気にしないで言葉を繋げた。

 

「貴方はカノンさんを助ける為に私達の下にカノンさんを送ったんです。どんな状態でも私達なら何とかできると思って、そうじゃないんですか!?」

「手前ェ…何度俺様の気の触る事を言えば気が済むんだよ!!」

「だって、貴方は私の…!」

 

クラレットが言葉を発しようとすると、ズガァンと城壁の一部が崩れてそこから4,5メートルほどの悪魔が現れる。

太い腕には既に息だえた騎士らしき人物を握っておりそれを投げ捨てるとこちらに向けて咆哮して威圧してきた。

余りの魔力と威圧感でそちらに視線が行くとイライラしつつニヤついたバノッサの顔が目に入る。

あの悪魔もバノッサが召喚した悪魔だっていうのか!?

 

『いけません!あれは近衛悪魔です!!』

「近衛悪魔だと!?」

「それは一体なんだ?」

『私と同じ大悪魔級の連中の一人だ。魔王に仕える悪魔の一角だ。今までとは別格だぞ!!』

 

ガルマザリアとエルエルがそういうと目の前の悪魔を召喚したいたバノッサに目が行った。

すでにそこまで魅魔の宝玉の力を使いこなせるなんて…、もしかしたら魔王とのパスって奴が復活し始めてるんじゃ…。

 

「俺様は城の中に戻る、この城で一番ふさわしい場所で手前ェらを待っているからよ」

「待てっ!バノッサ!!」

「俺様を止めたかったらその悪魔を倒して止めに来ることだな。ヒャーッハッハッハ!!」

 

そういうとバノッサは城門を抜けて城の中に入ってゆく、

城の中から続々と悪魔の群れが出てくるところを見ると、

完全に無色の派閥に城は乗っ取られていると考えてもよかった。

そして大悪魔が動き始めてその強大な魔力と共にこちらに突っ込んできた!

 

「ハヤト、来ます!」

「クソッ、バノッサァ!!」

 

このままじゃバノッサを逃がす、直ぐにでもバノッサを追わないといけないのに…!

そう考えるとラムダが大悪魔の攻撃を食らわせ、すかさずセシルさんが大悪魔の胴体に蹴りを食らわせる。

しかし怯むことはなかったが、今度はキムランの召喚術で足止めされて朱のガレフがその巨体で体当たりをかまして吹き飛ばした!

 

「みんな!」

「ここは、我らに任せろ」

「お前はさっさとあの野郎を追いな、これでもマーン家の召喚師だ。悪魔には特に詳しいんだぜ? あァん?」

「ハヤトさん、ここは僕たちに任せてください、ガレフ達なら城の中より外の方が戦いやすいですから」

「ユエルも頑張るからあの嫌な奴を倒しちゃって!」

 

キムランにアキュートのみんな、スウォンたちがここを何とかすると言ってくれる。

そうだな、今はこんなところで無駄な体力を使うわけにはいかない。

みんななら悪魔の群れや大悪魔にだって引けを取らないはずだ。

 

「わかった、みんな頼んだ!行こうみんな!」

 

そういうと城門を抜けて城の中にみんなで入ってゆく。

大悪魔が後ろから俺達を追おうとするが、それをラムダたちが食い止めてくれる。

そして悪魔の雄叫びが聞こえるのを耳にしながら俺達はバノッサを追いかけて城の中に入っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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城の中は既に悪魔の巣窟と化していた。

無数の悪魔兵たち、妖霊や屍兵などが蔓延っていた。

女子供も関係などない、色々な所に倒れている死体が奴らの容赦の無さを現していた。

苛立つ感情を抑えながら、ギブソンさんやクラレットが悪魔たちの対処法を教えながら、

レイドが案内してくれるおかげでドンドンと俺達は進むことが出来る。

 

「レイド、バノッサがどこにいるのかわかるのかよ?」

「バノッサは一番ふさわしい場所で待っていると言っていた。アイツの言ったことだ、恐らく玉座の間で間違いないだろう」

「ケッ、確かにバノッサらしいじゃねぇか…っよ!」

 

迫りくる、妖霊をナイフで切り裂いてガゼルが悪態をついた。

走っている中、一番後ろを走っているミントの姿が目に付く、少し様子がおかしい…。

 

「大丈夫かミント?」

「え? う、うん、平気だよ」

「ならいいけど、怖いんだったら後ろにいてくれよ? クラレットとかギブソンさん達と違って明確な召喚獣の対抗策持ってないんだろ?」

「う、うん…」

 

ミントはクラレットの幻実防御やギブソンさんのグラヴィエルの様な防御方法を持ってない。

そんなミントが無理に前に出るのはきついかもしれないからな。

そう思ってるとミモザさんが近づいてきてミントの肩に手をかけた。

 

「ミントは私のアシストを専門で大丈夫よ。ギブソンの近くに居れば大体平気だから」

「ミモザ先輩…、わかりました。できる限りの事やってみます」

「その勢よ、その勢♪」

 

ミモザさんの言葉でミントが笑顔になってくれた、

やっぱり長い付き合いの先輩の言葉の方が安心するんだよな。

 

「ハヤトさんもありがとうございます」

「いや、いいよ。とにかく気を付けてくれな?」

「はい」

「ハヤト、悪魔の群れです!」

 

前から聞こえるクラレットの声に反応して前を見ると、悪魔の群れが待ち構えていた。

まずは召喚術で道を切り開く、そして全員で攻撃だ!

 

「来たれ、光将の武具!シャインセイバー!!」

「誓約の名の下にクラレットが望む――! 魔精タケシー。ゲレゲレサンダー!!」

 

光将の武具と魔精の電撃が悪魔の群れを撃ち砕き、その後にフラットの面々が突っ込んでいった。

そして俺達はドンドンと城を突き進んでゆく、今度こそバノッサとの戦いを終わりにしてやる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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城の先に進むとやがて王座の間らしき場所へとたどり着いた。

赤い絨毯と金色に輝く照明台や玉座がある、部屋は密室なのだがとても明るいのは恐らく召喚術を使っているためだろう。

そしてその部屋には無数の悪魔たちが蔓延っているがこちらを確認しても襲ってくることはなかった。

そして玉座には領主ではなく代わりに魅魔の宝玉を膝に乗せたバノッサが座っていたのだった。

 

「以外に早ェじゃねェか? はぐれ野郎」

「バノッサ…! 追い詰めたぞ!」

「追い詰めた…? クククッ」

 

俺の言葉を聞いたバノッサは笑いを抑えるように苦笑していた。

 

「手前ぇ…、何がおかしいんだ。もう逃げる道もねぇじゃねぇか!」

「流石だな、手前ェらの状況も分からねぇのか? ガゼル」

「なんだとっ!」

「こういうことだよ!!」

 

バノッサが魅魔の宝玉を掲げると廊下に多数の悪魔たちが召喚された、

つまり逃げ道を塞いだって事か、だけど…!

 

「だけど、ここでお前を倒せばそれで全部終わりだ、バノッサ」

「そうだな、俺様を倒せればの話だがな」

「本当に…!」

「あァ?」

 

クラレットが俺とバノッサの話に割り込んでくる、

俺は一歩下がってクラレットの横に立った、クラレットは悲痛な表情でバノッサを見ていた。

 

「本当に、戦わないといけないんですか?」

「手前ェ、何言ってやがる?」

「確かに貴方のしたことは許されるものじゃありません、でも貴方の目的と私達の目的は…!」

「確かに同じかも知れェねがな、俺様は決めてるんだよ」

 

バノッサが剣を抜き、それを俺の方へと向けてくる。

殺意の籠った目で俺を睨み付けて来た。

 

「はぐれ野郎はぶっ殺す。俺様はそう決めてるんだ、そいつに勝つのが俺様が望む事なんだよ!!」

「バノッサさん…」

「化け物女、手前ェにそれが認められるのか? そいつを殺す事を許してくれるのか? 出来るわけねぇだろ!」

 

バノッサは魅魔の宝玉を掲げて悪魔たちに魔力を注ぎ込み始めた、

悪魔たちは誓約に従ってサプレスの魔力を滾らせ始めた!

 

「言う事は終わりか? これが最後だ。はぐれ野郎、手前ェを……ぶっ殺してやる!!」

「バノッサさん!」

 

そして悪魔の軍勢が俺達に向けて襲い掛かってくる、他のみんなが悪魔たちに対抗する中、

俺はクラレットに手をやって意識を向けさせた。

 

「クラレット、ここで戦わなければ全部終わる。戦うんだ、バノッサを倒して魅魔の宝玉を取り返すんだ。その後でも…間に合うはずだ!」

「………」

「バノッサを……、兄さんを助けたいんだろ!」

 

クラレットはバノッサと繋がりの様な物を感じていた、

だからこそ、彼の事が気になり色々と口に出してしまうのだ。

そして明確にクラレットの兄だとわかった今、出来れば彼を助けたいと思っているのも事実だった。

 

「確かにそう……、でも私はハヤトを、皆を助けたい。だから相手がたとえ私の兄でも…!」

 

杖を握り魔力をクラレットは高めていく、ハヤトはそんなクラレットの前に立ってバノッサへと剣を向けた。

 

「立ちふさがるなら、倒して見せます! 光の賢者エルエル、ハヤトに力を!!」

「よし、行くぞバノッサ!!」

 

エルエルがハヤトの憑依してハヤトとクラレットに繋がりを作る、

そしてハヤトは魔力で全身を強化してバノッサに攻撃を仕掛けた!

 

「誓約の名の下にクラレットが汝の力を望む――! 地の悪賊。魔臣ガルマザリア!!」

 

クラレットはハヤトをエルエルで強化しつつ、ガルマザリアを召喚して周辺の悪魔に対抗し始めた。

今ここにいるのはガゼルにエドス、レイドとジンガにクロのフラットのメンバーと、

ギブソンにミモザ、ミントの蒼の派閥のメンバーだけで戦力が二分されており、何時もよりも戦力が少なかった、

だからクラレットはハヤトとバノッサの戦いに介入せず、周辺の悪魔を倒す事に意識を向けざるえなかった。

 

「ガルマザリア! 周りの皆を助けてあげてください!」

『よし、任せろ!』

 

ガルマザリアが宙を飛び目につく悪魔に攻撃を仕掛ける、

クラレットも傷ついた仲間やタケシ―などを召喚して悪魔に対抗し始めた。

頭の中で考えるのはバノッサの事だけではなかった。

ソル・セルボルト、もう一人の兄の事、そしてカノンが言っていたあの男の事。

それを頭に入れつつクラレットは召喚術を駆使して悪魔を蹴散らした。

 

「嫌な予感がする…でも今はこの状況を何とかしないと」

 

頭を過ぎる不安を気にしつつ、クラレットはこの状況を打破しようと行動するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ググッ!!」

「なんて力だ…ッ!」

 

ハヤトとバノッサの戦いは拮抗していた、

いや、ほんの僅かだがバノッサの方に傾き始めていた。

ハヤトはこの原因を感づき始めていた、バノッサの魔力が高まってるのである。

魔力が高まるのはそう簡単な話じゃない、基本は魔力運用を覚えて元々もっている魔力で行使していくのが基本だった。

ハヤトはクラレットとパスを繋げてるおかげで普段より魔力を多く使うことが出来る。

つまりバノッサもハヤトと同じ状況ではないかとハヤトは考えていた。

そう考えているとバノッサの蹴りがハヤトの腹部に直撃して吹き飛ばされた、

しかしハヤトは体勢を立て直して召喚術を発動させる。

 

「バノッサ、お前その魔力は!?」

「いい気分だぜェ…、魅魔の宝玉に力を求めれば俺様に力を送ってくれる、宝玉さえあればあんな無様な姿はもう晒すことはねェって訳さ!」

「わかってるのか! 魅魔の宝玉の力を使い過ぎればお前は壊れるかもしれないんだぞ!」

「だったら壊れる前に手前ェをぶっ殺してやるぜ。やっちまえ!!」

 

バノッサが召喚したのはべリアルと呼ばれる大悪魔の一人、

赤く光る矢をハヤトに向けてそれを無情にも撃ち放つ!

ハヤトもそれに対抗するように召喚術の為に高めていた魔力を黒のサモナイト石に送った!

 

「アーマーチャンプ、アストラルバリア!!」

 

現れた鉄巨人は片方の盾を駆動させて電磁障壁を起動させる。

それは光の矢を完全に防いだ。ぶつかった光は完全に四散し鉄巨人もその役目を終えて送還された。

 

「前よりも強くなってるじゃねェか、思っていたとおりだなはぐれ野郎」

「思ってた通り…?」

「手前ェは強くなる。俺様よりもずっとはえぇスピードでな、それは認めてやる。だがな…」

 

バノッサがハヤトの強さを認めると同時にバノッサが魅魔の宝玉を掲げる。

膨大な魔力と共に強大な何かがバノッサの体にとりつき始め、バノッサの姿が変質していゆく。

 

「なっ!? バノッサ!!」

「手前ェが俺様より強くなっていくなら俺様は手前ェよりももっと早く強くなるだけだぜはぐれ野郎。悪魔ども!!俺様に力を寄越しやがれェェェーーー!!!」

 

バノッサの肌の色が黒くなり始め、腕でから泡の様なものが湧き上がり肥大化してゆく、

あれはたしか魂殻だったよな、じゃあバノッサはあの時の俺の様に…!?

 

「待てバノッサ! それ以上したら戻れなくなるぞ!!」

「手前ェの心配は無用だ! 俺様はこの力で手前ェを殺すんだからな。行くぞはぐれ野郎ぉ!!」

 

ズン!っと大きな音を立てて此方に振り下ろされた魂殻で強化された剣を受け止めると、

恐ろしい衝撃と共に足元の床に裂け目が作られる、まずかった。魔力強化を全力でして無かったら消し飛んでた。

 

「二発目はどうかな?」

「ッ!? ガイエン!!」

 

剣を受け止めながら腰にあるサモナイト石に魔力を送りガイエンを召喚する、

大太刀を振りかざしバノッサに攻撃を仕掛けるが、バノッサの剣はそんなガイエンの攻撃を弾いた!

そしてそのまま弾いた剣に魔力を流し込んで衝撃波の様にガイエンにブチ当てるとガイエンはふっ飛ばされて送還される。

 

「うぐぐ…!」

「オラァ! 上ばっか見てると怪我するぜェ!!」

「がぁっ!?」

 

バノッサの蹴りが俺の顔面を蹴り飛ばして宙に舞う、そしてそのまま追撃をかけ剣を振り上げるが、

何とか空中で受け止めてその衝撃で床に叩きつけられた。

 

「ヒャーッハッハッハ!! 圧倒的じゃねェかよ? どんな気分だはぐれ野郎。徹底的に叩きのめされる気分はよ!」

「まだ…、勝負はついてないだろ…!」

「なにっ!?」

 

空中でシャインセイバーを発動させて停止させる、カノンの戦いで使った手だ。

自分の周りにシャインセイバーを作り出してそれと一緒にバノッサに突っ込んだ!

 

「力で敵わないなら手数で勝負だ!」

「舐めてんじゃねェぞ!!」

 

バノッサが魔力を剣に宿して思いっきり振うと衝撃波が作り出される。

それをシャインセイバーを二本自分の前に突き刺して受け止める。

シャインセイバーは粉々に砕けるがすぐに送還されて俺の邪魔にはならなかった。

残り3本のシャインセイバーのうち2本をバノッサに撃ち放ち、もう一本を俺自身が握りしめた。

 

「ッ!?」

「だりゃぁぁぁ!!」

 

バノッサが魔力で2本のシャインセイバーを迎撃する、

だがその瞬間、足に魔力を集中させて一気にバノッサの懐に飛び込んで腕を振り上げる様に切り裂く!

血が噴き出るがすぐにボコボコと魂殻がバノッサの傷を再生し始める、それは読んでる俺の狙いは――!

腰にあるサモナイト石に手をやる、無色のサモナイト石に子の召喚術で決める!

 

「戒めの光輝にて我が敵を封じろ―――!! ヴァインシェード!」

「な、なんだとっ!?」

 

召喚された無数の捕縛の布がバノッサに纏わりつきその動きを制限させる。

よほどの魔力なのかビリビリと布が破ける音が聞こえるがそれでも徐々にバノッサの動きを封じ始めた。

 

「あと…、あと少しで!!」

 

倒しても再生される、だけどバノッサは召喚術にはまだ疎い。

いくら悪魔の力を利用できてもバノッサ自身が召喚術に精通してないはず、

この召喚術を無理やり外すことしか出来ないはずだ!

徐々にバノッサの動きが収まっていくが…。

 

「ハヤト!!」

「なっ!?」

 

クラレットの悲鳴のような声を聞いて周りを見ると、

ほかの皆と戦ってるはずの悪魔が腕を振りかぶっていた、

なすすべなくその攻撃に直撃すると俺は再び吹き飛ばされる!

あと一歩のところだったがそのまま悪魔は俺に追撃をかけることなくバノッサに近づいて捕縛の布を破りバノッサを開放した。

 

「クククッ、残念だったなはぐれ野郎…!」

「くそっ!」

「手前ェのその力は厄介だな…、消させてもらうぜ!」

 

バノッサが魅魔の宝玉を掲げると目の前に現れたのは煙のような何かだった、

それは俺に襲い掛かるが魔力を全開にしてそれを斬り裂く、だがそれこそがバノッサの狙いだったのである。

 

「引っかかったな、はぐれ野郎!」

「なんだと!?」

『くっ! これは!?』

 

倦怠感と一緒に後ろを振り返るとエルエルが煙に纏われる感じで抜き出された。

煙はまるで生きているようにエルエルを捕縛して身動きを取れなくさせている。

 

「そいつはなぁ、天使どもを捕まえるのを生きがいにしてる悪魔だ。手前ェの様に天使の力を宿してる連中から力を奪い取るのを目的にしてるんだよ。つまりなァ……。オラッ!!」

「うわぁっ!?」

 

バノッサの剣をなけなしの魔力で防ぐとまるで防ぐことが出来ずに吹き飛ばされた。

距離を取る為に後ろに飛ぶがバノッサは魅魔の宝玉を掲げてさらに悪魔を召喚しようとする。

 

「女の助けがなければ手前ェなんて敵じゃねぇんだよはぐれ野郎。悪魔どもその女を近づけさせるな!!」

 

召喚された悪魔はクラレットに群がり始める。

 

「ハヤト! 退いて邪魔です!!」

『数が多すぎる! 何をやってる駄天使!』

『そういわれてもこれでは…!!』

 

エルエルが拘束から抜け出そうとするが悪魔の力に完全に封じられていた、

一度霊界に送還ししようと試みるがそれすらも悪魔は封じ込めていたのだ。

ハヤトは剣を握り、バノッサに向かいあう。勝ち目は薄い今のバノッサの実力は恐ろしいほどだと理解していた。

 

「なんだ? まだ戦うつもりか?」

「当たり前だ。エルエルが居なくてもお前を倒すって決めたんだ!」

「中々度胸あるじゃねェかよ? だけどな…」

 

バノッサが剣を振ると衝撃と共に吹き飛ばされかける、直ぐに体勢を立て直して斬りかかるが、簡単に防がれてしまう。

防がれたハヤトの剣を見て余裕の表情を浮かべたバノッサはハヤトに向けて殴りかかった!

 

「うぐっ!?」

「クククッ、いいザマだなはぐれ野郎。手も足も出ねェじゃねぇか!」

 

今度は腹部を思いっきり蹴り飛ばして近くの台座にハヤトを吹き飛ばした、

台座に直撃したハヤトは紫のサモナイト石を取り出して召喚術を行使する。

 

「ぷ、プラーマ…!」

「させるかよ」

「うわぁぁぁっ!?」

 

ハヤトの足元から火焔が吹き上がりハヤトの召喚術は不発に終わってしまう。

バノッサの横には先ほど召喚されたプチデビルがいた。満足したのかバノッサはハヤトに近づいて首元を掴み持ち上げた。

 

「クククッ……ヒヒヒッ……ヒャーッハッハッハ!! 本当に手も足も出ねェじゃねぇかよ。なんだはぐれ野郎、お前は化け物女の手助けが無ければ何もできないっていうのかよ?」

「……さいっ」

「あァ?」

「五月蠅いっ! 悪魔に頼った今のお前よりマシだ!」

「確かにそうかもしれねェがな…。最終的に立っている奴が勝者なんだよ! 手前ェの姿はなんだ? 無様なもんだぜ、それであの女を守るなんてよく言えるもんだな」

「……」

「弱ェ奴は全部奪われる。当たり前の事だろ? だから俺様は奪うんだよ。俺様の目的の為に手前ェらの命をな!!」

「ッ!!」

 

ハヤトは今の一言で頭に血が上った。俺達の命を奪うという事はクラレットも入っているという事だった。

自分の目的の為に妹を殺そうとするその考えをハヤトは理解できるはずがない。

感情に任せて頭に魔力を流してバノッサの額に頭突きを食らわすが…。

 

「………あァ!!!」

「がッ!?」

 

バノッサから頭突きが帰って来てハヤトの意識が奪われそうになる。

バノッサはそのままハヤトを投げ捨てて改めて剣を握りなおしてハヤトに近づき始める。

 

「そういやァ、あの時手前ェを嬲り殺しにするつもりだったな…? 今この場でやってやるぜ!!」

「ぐっ!」

 

バノッサが何度も、何度も何度もハヤトの体を斬りつける、

今のハヤトはろくに召喚術も行使できず、魔力の量に限っては魅魔の宝玉から魔力を引き出すバノッサの足元にも及ばないほどの量しかなかった。

他のメンバーはハヤトを助けよと動こうとするが、

悪魔を倒しても、バノッサはドンドンと悪魔の群れをこの部屋へと招いてゆく。

そのせいで誰もハヤトに近づけなかったのであった。

 

「く…まだだ…!」

「まだ立てるのかァ? いいぜ。精々あがけよ? そうでないと手前ェに味わった苦しみが直ぐに晴れねェからな!!」

「……そこだ!!」

 

バノッサが剣を振り降ろすとなけなしの魔力で全力強化したハヤトはバノッサの剣を受け流す。

そのままバノッサの顔面を斬り裂くように剣をぶつけようとするが。

 

「なっ!? 嘘だろ!」

「言ったはずだろが!! 手前ェじゃ俺様に手も足も出ねェってなァ!!」

 

顔面にぶつけたはずのハヤトの剣はバノッサの顔に少しの切り傷しか付けられなかった。

そのままバノッサがハヤトを殴り倒してそのまま腹を踏みつけて動けなくさせた。

 

「ぐぅ…!」

「今度は止められると思うなよ? 一撃で潰してやるぜ!!」

 

暴力的な魔力がバノッサの手を伝わり剣に宿ってゆく。

魂殻の影響を受けた剣はさらに大きく肥大化してハヤトの目の前で掲げられた。

 

このままじゃ……、負ける。

クラレットの魔力がないと今のバノッサには……、違う!頼るな!

確かにエルエルの力は強力だ。だけどそれに頼ったままじゃダメだ。

今俺に出来ること…、俺が今できる一番の技を…!!

 

「終わりだ。はぐれ野郎ぉぉぉーー!!!」

 

バノッサが剣を振り下ろす。

その光景が悪魔たちと戦いながらクラレットの視線に入っていた。

今の自分ではどうしようもない、ただクラレットは彼の名を叫ぶしかなかった。

 

「ハヤトォーー!!」

 

ハヤトはその声を聞いた瞬間覚悟を決めた。

やらずに後悔するならやって後悔するしかない。

ここで死んだら終わりだ、だから俺は……この力を使う!!

 

ガァン!と大きく壁にぶつかるような音が聞こえる。

 

「な、なんだとっ!?」

『「ぐググウウゥゥゥ!!」』

 

ハヤトの赤いサモナイト石は光を発していた。

それだけではない、彼の左手から真っ赤な魂殻が吹き上がりバノッサの剣を受け止めていたのだ。

抑えきれないのかハヤトのいたる所から魂殻が漏れていた。

 

「ハヤト…それは…!」

『ダメです。それは貴方の命を―――!!』

『「ウオオオオォォォォーーー!!」』

 

雄叫びと共に赤い魂殻を膨れ上がらせてバノッサをハヤトは吹き飛ばす。

そのままハヤトは立ち上がってバノッサと向き合った。

 

「クククッ、そんな隠し玉があるとはなァ? だがよ。 俺様の力はそんなチンケな力で討ち破れると思うなよ!!」

『「来イ!バノッサ!!」』

 

二重に聞こえるハヤトの声が二人の最後の勝負の幕引きにに繋がった。

バノッサは全力の魔力を剣に送りそれを肥大化させてハヤトに振り押した。

ハヤトは剣に鬼神将の魔力を送り込んで剣は赤い極光を輝きを生み出す!

 

「オラァァァーーー!!!」

 

バノッサの剣がハヤトに振り下ろされるが、ハヤトはその剣を正面から防いで見せた!

そして極光を放つ剣を振り切りバノッサの剣を粉々に打ち砕く!

 

「ナ…何にィっ!?」

『「鬼神剛断剣!!!」』

「がアアアァァーーッッ!?」

 

振り下ろす極光の輝きをバノッサに叩き付けるとバノッサは吹き飛ばされて玉座に直撃する。

玉座は粉砕されて埋まるようにバノッサは崩れ落ちた…。

 

『「はあ…はあ…うぐっ!」』

「ハヤト!!」

 

ハヤトから赤い魂殻が四散してハヤトは膝を付いた。

それを見たクラレットは一目散にハヤトの下に駆け寄ろうと走り始める。

悪魔たちはそんなクラレットを捕まえようと動き始めた。

 

「クラレット! ダメだ!」

「クラレット!!」

 

ミントとギブソンが彼女に声をかけるがそれよりもハヤトの下に行きたいと思う少女の耳には届かなかった。

悪魔が彼女に触れようとした瞬間、悪魔たちは送還され始めてドンドンと消えていった。

それはバノッサと魅魔の宝玉の繋がりが途絶え始めたことの証だった。

無事にハヤトの下に辿り着いたクラレットはハヤトを抱きしめた。

 

「どうして…!どうして無茶をするんですか!! あんな無茶して今度したら死ぬかも知れなかったんですよ!?」

「ごめん…」

「無理に一人で戦わないで一度下がって私たちと一緒に戦ったってよかったんです。お願い…もうあんなことしないで…」

「……ごめん」

 

クラレットをハヤトはそっと引き剥がして立ち上がる、

まだ足元がおぼつかないが立ち上がる体力は残っていた。

傷だらけのハヤトを解放されたエルエルは近づいて治療の奇跡を行使し始めた。

彼の体の傷は癒されてとりあえず表面上の傷は回復したはずだ。

 

「本当に大丈夫なんですか?」

「体が少し慣れてたみたいだし。あの時みたいに瀕死ってわけでもないからさ、ずいぶん楽だよ」

「だからってまたあんな事は…」

「……それは時と場合で」

「ハヤト!」

「死ぬよりマシだから、な?」

 

何時もの調子に戻り始めた二人をガルマザリアとエルエルはホッとしてみていた。

 

『しかし、元はと言えば駄天使がドジらなければいい話だったな』

『ぐっ…』

『私が憑依してればこんな事にはならなかったな。やっぱり駄天使は駄天使ということか…』

『こ、この…!』

 

原因を作ったのはハヤトだか自分のせいでこんな状況を作った為、

エルエルはぐうの音も出ない状況だった、次にこんな事が起きた時の為に対抗策を用意しておこうとエルエルは心底思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「うぐ、うおおぉぉ……!!」

「バノッサ!?」

 

玉座で這うようにバノッサが悶えている、

それをエドスは心配して近づくがバノッサ様子が変わり始めていた、

既に体中から現れていた魂殻は四散し、本来のバノッサに戻っており、

魅魔の宝玉は彼の手から離れて近くを転がっている。

 

「なぜだ…」

 

負けるはずがなかった、魅魔の宝玉の力は十全に引き出せたはずだった。

 

「なぜだ…!」

 

はぐれ野郎から力を奪い取った、あの女の手助けが無ければ雑魚同然の筈だった。

 

「なぜ…だ…!!」

 

自分の持てる力を全て出し切れたはずだった、

相手の力は全て奪い取ったはずだった、だがそれでも………、敗れたのだ。

 

「なぜだああああァァァーーーッ!!!」

 

自分が負けた、ただの人間に特別な力を全て奪い取ったはずの男に、

バノッサは納得がいかなかった、いや出来るはずもなかった。

負けたのだ、必ず勝てると確証を持っていた、しかし土壇場に巻き返させられて結果は敗北した。

 

「なぜ俺様が負ける!? はぐれ野郎からあの女の力は奪い取ったはずだ。なのになぜ宝玉の力が通じないんだッ!?」

「バノッサ…」

「エドス……畜生、見るんじゃねェ、そんな目で見るんじゃねェェェ!!」

 

エドスはバノッサを憐れんでいた、エドスだけではない周りの人達全員がそんな目をしてたのだ。

力こそ絶対と信じるバノッサが特別な力を全て奪われたハヤトに負けた。

それは自分の信じていたものを否定された事と同じだったのだ。

 

「おいクラレット、バノッサの奴、どうなったんだ?」

「悪魔に心を蝕まれ過ぎたのだと思います。恐らく今のバノッサさんには戦う意思は残っていないはずです」

「バノッサ…」

 

誰もが今のバノッサを見ていた、憐れんでいた。

敵対している時の敵としての姿は既にない、手に入るものを取りこぼし苦しむ青年がそこにいただけだったのだ。

そんなバノッサに手を差し伸べる人物がいた、エドスだ。

斧を降ろしてエドスはまっすぐバノッサを見つめていた。

 

「バノッサ、もういいだろ?」

「エドス…?」

「バノッサ、お前は確かに間違いを犯した。お前からその石を奪えばお前はこれ以上間違いを犯さないだろうな」

「………」

 

エドスの言葉でバノッサは自身の力を奪われることを確信した。

戦う力が無ければフラットにもう刃向かえないと、だがバノッサの予想を反した答えが返って来た。

 

「でもな、ただバノッサから石を奪い取ってもお前が救われないだろ? 俺はお前を救いたいんだよ。バノッサ。また昔のお前に戻ってほしいんだ」

「エドス…、無理だ。俺様にはもう戻れねェ理由があんだよ」

「バノッサ、だが!?」

「これはお前でも聞けねェ、俺様の宿願みてぇなもんだからな、はぐれ野郎を倒す事と同じぐらい大事なことだ」

「……バノッサ、お前は一体」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「バノッサ、最後の機会は終わりだ。これ以上お前の目的に派閥を動かすことはできない」

「!?」

 

突然メンバーの誰でもない声が広間に響く、その声の人物を探すとバノッサの近くの柱の影から一人の男が姿を現した。

 

「お前は!?」

「ソル・セルボルト!」

 

ミモザとギブソンがソルの名前を叫び、

その危険性を知るフラットのメンバーも武器を握ってソルを睨み付ける。

ソルはそんな事を気にせず、バノッサの近くに歩んでゆき床に転がっている魅魔の宝玉を握った。

 

「俺様は…まだ…!」

「これが最後のチャンスだと話したはずだバノッサ、これ以上この宝玉をお前の独断で使わせる訳にはいかない。貴重な触媒だからな」

「…ッ!」

「お前がバノッサをそそのかしたのかっ!!」

 

反論しようとするが、バノッサの精神は摩耗しておりろくに言葉が出てこなかった。

エドスはそんなソルに武器を構えて怒鳴りつけた。

ソルはエドスに視線を合わせる、興味もなさそうにソルは答えた。

 

「そうだ、それがどうかしたか?」

「お前が…バノッサを――!!」

「エドスさん、やめて!」

「やめるんだエドス! そいつは本当にやばいんだ!!」

「うおおおぉぉぉーー!!!」

 

エドスが斧をソルに振り下ろそうとするとエドスの影が突然エドス自身を縛り上げる。

碌に動けなくなったエドスにソルは召喚術を発動させた。

 

「失せろ」

「ぐあぁっ!?」

「エドス!!」

 

召喚された闇傑の剣ダークブリンガーは一本だけだった。

しかしその一本でも恐ろしい威力を持っておりそれに貫かれたエドスはハヤト達の方へと吹き飛ばされる。

倒れたエドスの胸にはダークブリンガーが突き刺さっており、その剣が送還されて血が吹きだし始めた。

 

「エドスさん!! エルエル!エドスさんを!」

『分かりました!』

 

エルエルがエドスの胸に手をやり治癒の奇跡で傷が塞がり始めるのを確信したハヤトはソルを睨み付ける。

この男が関わっていることは分かっていた、ハヤトは剣を握りしめていつでも攻撃に出られるようにする。

 

「ソル、今度こそ終わりにしてやる!」

「…そうか、安心しろ。もう終わりになる」

「ソル・セルボルト。魅魔の宝玉は返してもらうぞ!」

「ギブソン・ジラール。 少し黙っていてもらおうか」

「なにっ!?」

 

突然、ソルの影が伸び始めてまるで扉の様に大きく変貌してゆく、

そしてその影から以前感じた不快な魔力を感じ始めた。

 

「な、なんだ…!?」

「……嘘」

「クラレット…?」

「………!」

 

俺の腕にしがみ付いてクラレットの顔が恐怖で染め上がっている。

空いている手でクラレットの肩を抱き留めてその影を見つめた。

 

「お前は我らにクラレットを渡さないとほざいていたな。安心しろ、お前の目的はすぐ目の前にいるぞ」

「な!? まさか!」

 

目の前の影から一人の男が姿を現した。腰には剣を下げ手には杖を持っている。

召喚師が羽織るローブを身に纏い、そして何より全身からとても不快な魔力を発していた。

まるで血が滴った衣服を纏っているような感覚だ。こういう時だけ魔力を感知するこの感覚が嫌になる。

 

『あの男は…!』

『やはり生きていたのですか』

 

エルエルとガルマザリアも目の前にいる男の事を知っているようだ。

ただ知っているというわけではない、その目には明らかに憎悪を二人とも秘めていた。

そして、クラレットは男に視線を向けない、痛いほど必死に俺にしがみ付いていた。

 

「…ほう」

「……!?」

 

クラレットが男の声を聞いて震えならがら目をゆっくりと上にあげた。

 

「話には聞いていたが……ツェリーヌに、母によく似ておるな」

「……あ…」

 

男は杖を床に降ろしまるで迎えるように答えた。

悲願であり自身の野望を叶える器、それが帰って来たことに歓喜の心を声に出した。

ソルはそんな男の姿に興味はなく目を瞑っている。

バノッサは男と視線を合わせないよう体を起こして視線を外していた。

そしてハヤトはクラレットを守るように目の前の男を睨み付けていた。

ハヤトの中で一つの予測が生まれる、信じたくないこの男が…この男が…!

そう彼は認めたくないように願うが、現実はそうはいかなかった。

 

「よくぞ我が元へと帰って来た。我が子よ……」

 

その男の一言で周りの空気が一変する。

誰もが信じていた少女の恐るべき出生の最後の一つが今明かされたのだから。

そしてハヤトはそれを認めたくないようにクラレットを見つめるが…。

 

「お…父様…」

 

クラレットのその一言でハヤトは認めた、目の前にいる人物はクラレットの父であると。

そしてその男が恐らく自分にとって一番の敵であると。

そう確信したのだった。

 




ついに外道登場。

Q=勝ち目はあるんですか?
A=ありません。

って感じでピンチっすね。
次回もよろしくお願いします。
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