サモンナイト ー生贄の花嫁ー   作:ハヤクラ派

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今回は今までで一番短いです。
前回の話と一緒にしたかったけど分けちゃいました。
区切りもよかったですしね。


第33話 繋がる絆

「失礼します」

 

パンと頬に痛みが走り、周りの風景が消えてゆく。

そして虚ろな目をしたハヤトは目の前を見た。

 

「………」

 

そこにいた人物は黒紫の髪、藤納戸と呼ばれる髪の少女がいた。

同じ瞳の色をした少女は軽蔑した目でこちらを見ていた。

 

「目は覚めましたか?」

「…えっと」

「自己満足の世界に浸かって幸せでしたか?」

「自己…満足…?」

 

何が自己満足なんだ…?

俺はあの世界で…あの幸福な世界に居ただけなのに…。

 

「現実から目を背けて、心の底まで否定したんですか?」

「現実…?」

「……」

 

少女が俺の額に手を当てると徐々に意識がはっきりし始めた。

やがて自分に起こっていた事を自覚し、同時に恐ろしく感じた。

 

「あれが幻だったって言うのか? だってあんなに…」

「理想的な世界だった…ですか?」

「あ…」

「それはそうでしょうね。あの世界はハヤトにとって不都合な存在を廃した世界、驕り高ぶった一部の召喚師も付け狙う悪人も……そしてその原因となった人も全部を廃した世界なんですから」

「俺が…自分から忘れたって事なのか? そんなこと…!」

「だったら私の事を覚えてますか? 誰よりも貴方の傍に居た、私の事を」

 

その少女をじっと見る、藤納戸の髪、

柔らかくそうで豆の出来ている手、形の整った胸。

どこかで見たことある少女のような気がするだけど…。

 

「………」

「思い出せなくて当然です。私が居たから貴方は命を落としかけた、そんな貴方が私の存在を否定したっておかしくはないんです」

 

きっとこの少女は俺にとって大切な人か何かだったんだろう。

だけど思い出せない…なんで思い出せないんだ…。

 

「…ごめん」

「私の事はいいんです。せめて家族の事を思い出してください、貴方が家族と呼ぶ一人一人の名前を…その心に刻まれている真の名を!」

 

真の名…確かエルゴって呼ばれるモノだよな。

思い出さなきゃ…あの世界でみんなは居たんだ、じゃあきっと名前だって思い出せるはずだ…!

思い出すんだ…!みんなの…家族の名前を!!

 

「……くっ!」

「無理なんですね」

「……待ってくれ、きっと思い出す。だから」

「いいえ、もういいです」

「えっ?」

 

少女は杖を虚空から取り出してこちらに向ける。

 

「なっ!?」

「貴方は思い出せないんじゃないんです。思い出さないんです。思い出せば同じように辛い記憶を思い出すことに繋がる、もう一度あの試練に挑み、仲間を失うかもしれない恐怖から逃げてるだけなんです……それなら」

 

少女は魔力を滾らせて胸に付けているペンダントと杖に魔力を流して召喚術を発動させる!

 

「うわっ!?」

 

召喚された余波で降り飛ばされた俺は少女の周りを見る。

黒き鎧を身に纏った悪魔と同じ様に白き鎧を纏う天使が少女に付き従っていた。

 

「天使に…悪魔…」

「……こんなことになるなんて本当に残念です」

 

少女が手を上げると天使と悪魔が魔力を収束させてこちらにそれを向けてくる。

俺はそれをただじっと見てるだけだった…。

俺にはその攻撃を否定する事は出来ない、そう思ってしまった。

 

「さようなら」

「え…?」

 

少女がその言葉を口にしたとき。

 

――……さようなら

 

苦しそうにしている少女が脳裏を過った。

そして悪魔と天使の魔力の奔流が俺を飲み込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------------------

 

恐怖で体が動かなく俺は覚悟するしかなかった。

痛みと衝撃を覚悟するが、それは来ない、

その代わり暖かい温もりを感じていた。

 

「…あ」

 

ゆっくりと目を開くと誰かが俺を抱きしめてくれている。

目の前で俺を抱きしめてくれる赤毛の少女。

そしてその向こうで手を広げて魔力を防いでいる3人の子供たちの姿があった。

 

――大丈夫、私たちが守ってあげるから

――兄ちゃん、諦めないで!

――…がんばって

――こんな所で挫けちゃダメよ!

 

「リプレ…アルバ…ラミ…フィズ……!!」

 

思い出した…この世界に来て、俺の事を支えてくれた大切な家族…!

 

――お前には世話になったからな

――負けるんじゃないぞ。ハヤト!

 

「ガゼル…!エドス…!」

 

俺の事を支え一緒に戦ってくれた仲間の事も思い出す。

二人の光の粒子は一つの戦士になって天使と悪魔に突き進む!

 

「エルエル、バニッシュレイド!!」

 

エルエルと呼ばれた天使は剣を二本に分裂させ、光り輝かせながら二人に剣を振るう。

バニッシュレイドと呼ばれる天兵の奥義が振り下ろされるが、

それを戦士は防いで逆にエルエルを弾き飛ばし、追撃で手傷を負わせた!

 

「まさかっ!? くっ、タケシー!ゲレゲレサンダー!!」

 

召喚された霊界の魔精が電撃の柱を俺に向かって撃ち放った!

既にリプレ達もガゼル達も攻撃を終え消えてしまっている、俺は身構えるが…。

 

――アタシ、あんたの事、割と頼りにしてるし、期待してるんだから…躓くんじゃないわよ!

――マスター、頑張ってくださいですの!

――きゅーっ!!

 

目の前に現れたのは二人の少女と犬のような動物。

だけどそれが誰なのか俺には分かっている。

 

「エルカ…モナティ…ガウム!!」

 

彼らはその身を光の粒子に変えて俺を守ってくれる。

その粒子が電撃の柱を完全に防ぎきってしまった。

 

「そんな…!?」

 

――ハヤトさん、貴方のお陰で僕は大切なものを失わずにすんだ気がするんです

――ユエルもハヤトのお陰でみんなに会えたんだよ!

――ガルルル!!

 

狩人と狼の亜人に赤い巨狼が表れる。

それが巨大な狩人の変化して狼の姿をした巨大な矢を悪魔に撃ち放つ!

 

「スウォン、ユエルにガレフ!!」

 

狼の姿をした矢は悪魔に直撃して大きなダメージを与える。

それを従える少女もまた、そのダメージの余波を受けて膝をつく。

 

「押し負けた・・・!?」

 

――アニキ、俺っちな、まだ答えは出せてないけど、アニキ達の家族を守りたいって気持ちは本当だぜ!

 

「ジンガ…お前…!」

 

粒子が巨大な拳士に変化して傷を負った悪魔を殴り飛ばして更なるダメージを与える。

だが、少女もさらに反撃を繰り出そうと天使に指示を飛ばす。

 

「エルエル、クピトアロー!!」

 

エルエルが剣を弓と矢に変化させて天に向けて撃ち放った。

天高く飛んだ矢は分裂して俺に向かって光の矢の雨が降り注ぐ!

 

――ハヤト、君には大切な事を教わった気がする

――我らに騎士の本文、それを改めて気づかせてくれた

 

新たに表れた粒子は巨大な青き盾と赤き盾に変化して俺を矢から守ってくれた。

俺は知っている、とても悩んでいたが自分の道を見出した二人の騎士を…!

 

「ありがとう、レイド、ラムダ」

 

――あたしは分かってるよ。ハヤトならきっと大丈夫ってね♪

 

「…アカネ」

 

粒子が黒き装束を身に纏う影に変化して少女の後ろに回り込む。

そして少女の首に手刀を食らわせようとする。

 

「なっ!?」

 

不意打ちの攻撃を少女は防ぐが手が空かなくなり、

召喚獣たちの指示を飛ばせなくなってしまう。

 

――この私が好きになったんだから…、こんな所で諦めないでよね!

 

「…わかってるよ、ミニス!」

 

光の粒子が薄っすらと笑っている感じがすると、

それは天高く上り大きな竜へと変化する、

白銀に輝く竜は口から爆炎を噴き出して悪魔と天使を包み込んだ!

 

「ぐうっ…! まだです!ガルマザリア、デヴィルクエイク!!」

 

爆炎から飛び出したガルマザリアと呼ばれる悪魔は膨大な魔力を槍に送り込む。

そしてそれを地面へと撃ち放ち俺を中心に強大な魔力の奔流を生み出し吹き飛ばそうとする!

 

――私はずっと貴方を見てました…、だからこれからも貴方の事を信じ続けます

 

水色の輝く妖精が何十にも張り巡らされた積層結界を展開する。

さしも強大な大悪魔の必殺技といえどその結界を打ち破るには力不足だった。

やがてデヴィルクエイクは収まり、妖精も笑顔を浮かべて消えてゆく。

 

「メリオール…」

 

――ムイムゥー!!

 

「ああ、お前の事を忘れる訳がないよな。クロ!!」

 

光の粒子が何十体ものクロに変化してそれが一斉にガルマザリアとエルエルに群がる。

だが、二人は互いに背を向けてその全てのクロを叩き切り、全て凌いだ!

 

「なら……これならどうですか!反逆の射手イスカリオス!!」

 

少女の指示で天使と悪魔が手を取り合い光と闇が混じり合う強大な魔力の矢を生み出した。

それは並みの力では到底防ぎきれないものだとすぐに判断できる。

だけど、みんなが俺に力を貸してくれたんだ…、こんな所で負けられない!

そう願い、目の前に現状に打ち勝とうと強く意思を持つ。そして…。

 

――お兄ちゃん、私信じてるから…きっと帰ってくるって。

 

「え…?」

 

――勇人!これ以上妹を泣かせるんじゃないわよ!

――新堂、最後まであきらめるなよ!

――新堂君、きっと一緒に帰ってきてくれるって信じてるから!

――せんぱい、もう一度うちの定食食べてくださいね。

――新堂先輩、俺。まだあなたに教わりたい事あるんです。だから!

――新堂先輩、俺ばっかりに妹を押し付けないで下さいよ

 

この声は……そうだよな。

ここは俺の心の中なんだ、だったらいるよな、みんなが…!

 

向こうで共に過ごした仲間が粒子に変わり巨大な竜に変貌する。

長い蛇のような体を持った竜はガルマザリアとエルエルに相対した。

確かにあの矢は恐ろしく強大なものであると感じられる、

だけどこの竜も決して引けを取るモノじゃない、そう理解出来た。

 

『………』

「!?」

 

俺は後ろに突然気配を感じた…後ろを振り向くと前の試練で打ち勝った俺の負の部分が居た…。

…いや違う、これは俺の負の部分じゃない、これは俺の…。

 

「……お前は」

『戦うのが嫌だった、でも戦わないで誰かを失う方がもっと怖かった。皆を守る為に一人で前に進むのが怖かった。だけど俺が進まないと皆が居なくなるかも知れない…一人にはなりたくないんだ…どんな理由があったとしても、見捨てられたくないんだ!』

「………ああ」

 

その言葉を俺はかつて否定して切り伏せた、

だけど今は違う、自分も一度理解出来た、失い見捨てられた。

だから…わかるんだ。

 

「そうだよな…!」

 

竜は膨大な魔力を宿すブレスを撃ち放とうと口を開く、

ガルマザリアとエルエルも巨大な矢を引き打てるように弦を引く。

互いの持つ最強の一撃の放つ準備が整った。

 

「これで…最後です!!」

「みんな…頼んだぞ!!」

 

光と闇の矢と輝く竜の息吹がぶつかり合い周囲を吹き飛ばす!

そのとてつもない衝撃が俺たちを襲った!

 

「ぐっぐぅぅ!!」

「きゃぁっ!」

 

吹き飛ばされながらも俺は必死に体を起こす、

そして目の前に居たもう一人の自分に目をやった。

苦しそうで辛そうで悲しそうな自分を見つめた。

 

『ずっと皆と一緒に居たかった…』

「……」

『例えそれが自分の心が作り出した幻でも構わない、命の危険がある世界になんてもう…戻りたくない…みんなと一緒に居ればそれで…それでいい』

 

その悲痛な想いを聞いて俺は自分自身を見つめなおした。

そうだよな…。辛かったよな、分かるさ。

あいつがいなかったらとっくのとうに逃げ出してたから…。

それを思うと頬に涙が流れてくる、こんなにも俺は自分が辛かったと理解出来た。

やせ我慢なんてレベルじゃない、俺が気づいてなかったんだ。

こんなにも苦しんでる俺を…。

 

「ああ、戦いなんてしたくなかった。ただ…ただみんながいればそれでよかった、幻でもみんながいればそれで…そう思った」

 

体を起こして泣きながら俺は自分自身を見る。

その想いも理解できる、だけど…。

 

「それじゃ、ダメなんだよな?」

 

俺が欲しいのは幻なんかじゃない…、

俺が欲しいのは…。

 

『皆と一緒がいい…一緒がいいんだ…』

「ああ、行こう。一緒に…!」

『…うん』

 

もう一人の俺が光の粒子に変化して一回り大きい俺に姿を変える。

意識がそれに移り剣を抜き放ち、ガルマザリアとエルエルに向けて飛んだ!

 

「俺はもう…」

 

やっと気づいたんだ…、きっと俺は一緒に戦うの意味をずっと間違えてた。

どんなに一人で辛い戦いをしようと俺の心の中にみんながいる限り俺は…。

 

「一人じゃない!!」

 

そして俺の剣はガルマザリアとエルエルを切り裂き二人を送還させた。

送還の瞬間、二人は笑顔になりながら消えるのを俺は気づいた。

そして……やっと思い出したんだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------------------

 

「たとえ、全てを失っても…貴方の心に、もう孤独が訪れる事はない…ですよね?」

「うん」

 

少女は手を差し伸べる、俺はその手を掴み握手をした。

 

「その事を決して忘れないでください」

「分かってる、もう忘れないよ」

 

すると、手の中に何かがあるのを感じた、

少女が手を離すと俺の手の中で虹色に光り輝く光の塊のようなものが輝いてた。

 

「これは…?」

「これは共界線から生まれた私たちを繋ぐ縁のようなモノです」

「クリプス…?」

「繋がり…人から他の人へと繋がる絆と言えるモノです。きっと私たちの繋がりが貴方をまやかしから解き放ってくれるはずです」

 

俺達の絆から生まれた力…とても暖かくて強い想いを感じる。

これがあればきっと俺はもう道を外すことはない、そう確信できた。

俺は目の前に…誰よりも俺の事を助けてくれた少女にお礼を伝えた。

 

「ありがとう……クラレット」

 

――頑張って、ハヤト

 

そう心に伝わせるとクラレットの姿は薄れて消えてしまった。

…ありがとうクラレット、君がいなかったら前に進む勇気を持てなかった。

 

「…行こう、もう一度あの場所に!」

 

俺は胸に虹色の光を付けて願う、もう一度あの場所に…。

そしてもう二度と道を踏み外さないと誓って。

それに応えたのか虹色の光は俺を包み込んで、再び試練の場へ誘ったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------------------

 

目を開けるとそこは黒い淀みが周囲にあふれる空間だった。

目の前には巨大な黒い至竜、リィンバウムのエルゴが見える。

黒く脈動する至竜…これが本当の姿なのか…。

 

「それがお前の本当の姿なのか」

 

―――なぜ、戻って来たのです

 

「気づいたからな…俺が一人じゃないってことに」

 

―――そうですか、ですが無意味です。再び泥が貴方の全てを飲み込むのですから

 

ハヤトはエルゴに向かって歩み始める。

そして黒い淀みがハヤトを取り込もうとするが、

それは彼に触れることもなくすり抜けていく。

 

―――何? ありえない、この泥を受け付けないというのか

 

エルゴは直接排除するために竜の大口を開き雷のブレスを放つ。

ハヤトは腰に手をやり黒いサモナイト石に願った。

 

「アーマーチャンプ…!くうっ!」

 

召喚された鉄巨人は電磁力場の盾を展開してその雷を防ぐ、

衝撃でバラバラに消し飛ぶがその攻撃はハヤトに届くことはなかった。

 

―――なぜ…なぜ前に進める?

 

エルゴには理解できなかった、彼が操る泥は冥土と呼ばれる存在を摸している

人の心に深く入り込み、真の名を支配できるものだった。

だが、目の前の少年にはそれが効かない、なんの特別な力を持たない少年がだ。

 

―――この世界の中で見たいものだけを見て、望んだ世界に浸るほうが幸せだというのに…

 

「何が幸福か…それを決めるのは他人なんかじゃないんだ。幸せは人から与えられるモノじゃないんだ」

 

今度は多種多様なブレスが一気に放たれる。

ハヤトは緑のサモナイト石を取り出し願う!

 

「メリオール!!」

 

現れた睡蓮花の古妖精は天使長より継承した積層結界を展開し、

エルゴの強力な攻撃を防ぐ、しかし積層結界と言えど防ぎきれずハヤトは膝を付く。

 

―――もう、貴方の戻るべき場所はないのですよ? 一人で全てを解決出来ると思っているのですか?

 

「お前は勘違いをしている」

 

―――どういうことですか?

 

「俺は…一人なんかじゃないって事だ!」

 

放たれた攻撃に耐え切れず結界は崩壊してメリオールが送還される、

その衝撃でメリオールのサモナイト石が壊れてしまい召喚できなくなった。

 

―――そんなしがらみに頼る人間が、何を出来るというのです!

 

「……なら見せてやる、俺達の絆を…!!」

 

ハヤトは用いる全てのサモナイト石を投げ捨てる、

そして手を虚空にかざして願う、今までともに在った仲間を!

 

―――これは!?

 

「繋がりは…絆は最初から俺の中にあったんだ、この絆があればサモナイト石は必要ない! みんな行こう!」

 

サモナイト石は元々この世界と繋がりたいと思うしがらみから生まれた物。

それを無意識で悟り、ハヤトは自身の中にその繋がりがある事を理解した。

共界線と呼ばれる全てのエルゴに繋がる想いを彼は感じ取りそして友を呼ぶ。

今までともに戦ってくれた召喚獣たちがハヤトと共にあり続けるために召喚された!

 

サプレスからはタケシーにリプシー、プラーマとガルマザリアにエルエル。

メイトルパからはメリオールを筆頭にペトラミアとクロにモナティとガウム

ロレイラルはアーマーチャンプにフレイムナイト。

シルターンからはムジナとガイエン。

異界の友が召喚されて、それらは光の粒子に変わりハヤトの手に集まってくる。

 

―――異界の者たちがその姿を変えるというのか!?

 

ハヤトの手に現れたのは一本の剣だった。

だがその剣は虹色に輝く魔剣、全ての召喚獣たちの想いが詰まった願い。

 

―――共界線を支配して、エルゴにでもなったつもりか!

 

エルゴの力で生まれた魔力の暴風雨がハヤトを襲うが、

剣が光り輝きハヤトを守る結界を展開する、そしてエルゴの攻撃はハヤトには届かなかった。

ハヤトは攻撃が止むと同時に剣を振る、そこから生まれる斬撃がエルゴの翼を斬り裂いた!

 

―――なんだと、なんだその力は…

 

「この力は決して特別な物じゃない、目を開いて前を向けば誰だって気づけるものなんだ」

 

彼自身特別な人間ではない、だからこの力に気づけた。

異界の友と繋がる絆がどれだけ強い想いを持つという事に、

それを自覚した今、彼は誰よりも友の力を引き出せる者へと至ったのだ。

 

「それに気づくことのないこの世界は俺達が変えて見せる!」

 

だからこそ彼はクラレットを助ける以外の目的を見出せた。

こんな素晴らしい想いを知らないこの世界を変えていきたいと!

 

「その先にある、全ての者たちが分かり合える理想郷を信じて!!」

 

剣から放たれる攻撃とは違う強い想いが共界線を通してエルゴに伝わる。

それはエルゴの黒き至竜の体を溶かし、エルゴの体は消えてゆく。

 

―――ふふふ、全ての者が分かり合える理想郷ですか。そうでしたね、私もかつて誓約者と共にそれを信じていました。再び彼と同じように信じるに足りる想いを持つ者に出会えるとは思いませんでした。

 

「エルゴ…」

 

―――貴方は彼とはまた違う道を進むでしょう。いいでしょう認めましょう。貴方達が作り出すその理想郷、それがどのようなものであるか、高見より見物させてもらいましょう。

 

「ああ、見ていてくれ。きっとやり遂げてみせる」

 

エルゴは光り輝き、ハヤトの中に何かが入り込んでくる。

それはハヤトとこの世界を繋ぐ大いなる想い、新たなるリィンバウムのエルゴであった。

ハヤトはリィンバウムのエルゴそのものに認められ誓約者に至ったのだ。

 

―――新たなる誓約者とそれに力を貸す異界の友に…祝福あれ!

 

そして世界は光り輝き、ハヤトもその光に溶けてゆく。

こうしてハヤトのエルゴの試練は終わりを告げたのだった…。

 

 

 




色々と言いたいことはあると思われますが、私は満足です。

何やかんやあったけど、ハヤトなりに召喚術ってこういうものなんだって結論、
個人的に召喚術は絆の力だと思う、つまり誓約者はそれを形にする存在。
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