ポケモン初めて12月になって作業初めてと思った矢先、
仕事が忙しくて忙しくて…やっとこさ書けましたのでよろしくお願いします。
誤字脱字はまあそのうちにでも…。
そこは暗闇だった、ただ空を見れば延々と広がる星空がある。
その星の一つ一つに命が宿っているようで実は宿っては居ない。
だが、そんな星の中にも命が宿っている奇跡が存在する、そんな星の一つに俺たちは居た。
「これは中々の美味しさでござるな。全身に美味しさが染み渡るもの」
「リプレさんのお陰ですの。リプレさんとクラレットさんに教えてもらいましたから」
「俺はモナティが料理が出来る事に驚いてるんだけどな」
「もー!そんなこと言うマスターにはお代わりなしですの!」
「あー待って。それだけは待って、モナティ悪かった!」
「ぷんぷんですの!」
木々の近くで彼らは焚き火を起こし食事をしていた。
その中で違和感があるとすれば2人で出発したはずなのに、なぜか3人になっている所だ。
その男は緑の装束を纏いカタナと呼ばれるシルターンの剣を下げている剣士だった。
「しかし、このような所で出会い、食事まで頂けるとは…、有り難いでござる」
「まあ、放っておくのもなんだからさ、同じ召喚獣のよしみって事でな」
「よしみ、ですの♪ カザミネさん」
カザミネと呼ばれた男はモナティからお代わりを貰いそれを食している。
彼らとの出会いはほんの一時間ほど前の事だった…。
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日が暮れ、周りが暗闇に包まれた後もハヤトとモナティは歩いていた。
明かりを持ちながら暗い夜道を歩き続けている、ふと彼は後ろを振り向く。
「…にゅう…にゅう」
疲れた時や困ったとき驚いた時モナティが出す口癖をテンポよく口ずさんでいた。
早朝からここまで休みなしで歩いてきたせいで随分と疲れているようだ。
ハヤトが移動系の召喚獣、それこそワイバーンのような翼竜を召喚できればよかったが、
彼は今まで一度たりともそういう系列の召喚獣を召喚したことがない、
誓約者は全ての召喚獣を召喚できるらしいが、ハヤトの場合出会った事のない召喚獣は召喚できないのだ。
シルヴァーナ、呼んだら来てくれないかな…。
頭に出たのはシルヴァーナ、ミニスが召喚していた白銀の翼竜だ。
あのシルヴァーナを召喚できれば移動に便利と考えて手をかざすが…。
「……やっぱり無理か」
「どうしたんですの?」
ハヤトはシルヴァーナを召喚しようとするが、誓約が邪魔して上手く召喚できなかった。
別に無理やり誓約を上書きして呼び出すことは出来るだろうが、それはミニスにとても迷惑がかかる。
それにハヤトとミニスならともかく、ハヤトとシルヴァーナは繋がりがない、
召喚しても力を貸してもらえるか分からないのだ。
まあ、シルヴァーナなら貸してもらえるだろうけど、無理に力を借りる事もないと思った。
「モナティ、今日はここで休むか」
「でも、まだまだいけますよ?」
「うーん、俺が疲れたからさ。それに試練に挑む時にヘトヘトだとろくに戦いに勝てないだろ?疲れは残さないようにしないとさ」
「分かりました、マスター!」
元気よく返事をしたモナティは近くの木々に荷物を降ろした、
その表情はふーっと疲れた感じで亜人のモナティも疲労が溜まっている事は良く分かった。
二人で荷物を広げて火を焚き、モナティが料理の準備をし始める。
手伝おうかなと思ったが「任せてくださいですの!」と自信満々に応えるので頼むことに、
流石にやる気があるなら任せるのが大事だよな、心配だけど…。
「これを入れて~♪これを切って~♪」
「手際良いなぁ…」
「リプレさんとクラレットさん直伝ですの!」
「……そっか」
喜ぶモナティの姿を見るとクラレットもどれだけモナティに慕われてるかわかる。
こっちの世界に来てからもしかしたらモナティの方がクラレットと一緒にいるのかもしれない。
具材を入れて灰汁取りをしている姿は妙に様になっているところを見ると随分教え込まれてたんだな。
「もう少しで出来ますの~」
「ん? ああ、準備手伝うよ」
考え事をしてたら何時の間にか料理が出来上がる寸前だった。
鍋の中には色々な具材やお米が一緒に入れてある、俗にいう雑炊だ。
「モナティ、これ雑炊だろ? 米なんて孤児院で出てなかったのにどうして知ってるんだ?」
「モナティ、クラレットさん達と一緒にお料理の勉強してたんですの。お米を使った料理も少し習いました」
「あ~そういえば、リィンバウムの材料で再現するって言ってたよな」
クラレットが俺達の世界の料理をリィンバウムの材料で再現すると意気込んでいたことを思い出す。
器に受け取った雑炊を見ながら、リプレ達の事を考えてた。
今の孤児院の料理は少しクラレットのアレンジが加わってるのかもしれない、
きっと料理を作ってる時、辛い思いをしてるのかと思うと少し悲しくなってくる。
「マスター?」
「うん、何でもない。じゃあ食べようかモナティ」
「はいですの!」
雑炊を口に含むと絶妙な塩加減にかなり驚いた。
モナティがここまで美味しい物を作れるなんて思わなかった。
普段が普段、ドジばっかりな姿を見てたせいで変な偏見を持ってたんだろう、あと試練での夢だな。
「美味しいぞモナティ」
「本当ですの!? 初めて作ったんで心配でしたけど良かったですの♪こういうのを良妻賢母っていうんですよね」
「う~ん…、違うと思う」
相変わらず言っている事が少しズレているモナティの言動に笑ってしまう。
でもモナティが一緒で良かった、多分一人だと余裕がなかったと思うからな。
だけど、モナティが俺についてくる意味を本当に自覚してるのかが問題だ。
だってモナティは今……ッ!?
ハヤトが器をその場に置き、横に置いてあるサモナイトソードに手をやる。
そして何も見えない暗闇に目をやり体に魔力を流し始めた。
体内にあるリィンバウムのエルゴがハヤトの全身に回り始め、魔剣も虹色の輝きを放ち始める。
「マスター、どうしたんですの!?」
「……おい、出てこないならこっちから行くぞ!」
暗闇に向かって声を出すと草を踏みつける音と共に一人の男が出てくる。
緑の装束を纏っており、腰には刀を下げ、足はなぜか服装とあってないブーツを履いている。
今まで出会ったどんな人物とも違う容姿に少しばかり警戒する。
「この距離から警戒されるとは、思った以上に感覚が鋭いのでござるな」
「……ござる?」
今まで聞いたことのない口調に少し戸惑うが、こういう場合は簡単に考えよう。
………召喚獣だな!
「もしかして、シルターンの人ですか?」
「ふむ、確かにシルターンから召喚された身。しかしすぐさま看破するとは流石は召喚師でござるな」
「いや、口調がちょっと特徴的だったもので」
「えっと……あなたは誰なんですの?」
モナティの一言で男は俺達に近づいて腰を下ろす、
殺気や敵意は感じられないから大丈夫だと思う事にした。
「拙者はカザミネ、シルターンの剣客でござるよ。お主たちの所で言うはぐれ召喚獣と呼ばれている身だ」
「マスターと同じなんですね!」
「む? それはどういう事でござるか?」
「ああ、俺も召喚された身でさ。元の世界に戻れないからはぐれ召喚獣になるんだ」
「なんと、そうでござったか」
「カザミネさんはどうしてはぐれさんになったんですの?」
「うむ、拙者を召喚した召喚師が外道な男でな。自分から離れたのだ。ちょうど剣の道を究めようと思っていた所存、あのような男の下ではそれも至れぬと思ったのだ」
「元の世界に戻れなくなるのによかったんですか」
「それなのだ、元の世界に帰れなくなるとは思わなくてな。おかげでこの刀と一張羅のみで放り出されてしまったのでござるよ」
とほほと言った感じでカザミネさんがそう語ってくれた、
そういえばエルカも同じ感じだったよな、大体の召喚獣は元の世界に帰れなくなる事を知らないのかもしれない。
あとブーツを履いてるのは草鞋がボロボロになってしまったらしい、まあ草鞋だからなぁ…。
「そういえば挨拶がまだでしたよね。俺はハヤト、新堂勇人」
「モナティは、モナティですの」
「新堂勇人…。ハヤト殿は同郷の者だったのでござるか」
「あ、いや。俺はシルターンの住人じゃなくて…」
カザミネさんに俺たちの世界の事を話す、
驚いてたようだがどうやら些細な事だったらしく直ぐに気にしなくなってくれた。
「ところで…実は頼みがあるのでござるが…」
「頼みですか?」
「拙者、実は路銀を切らしてしまい、満足に飯も食べれるの所存。少しばかりでいいのだが、分けてもらえぬでござらぬか…?」
「……」
「どうしたんですの? マスター」
「は、はははは! いや深刻そうな顔で何言うかと思ったらお腹が空いたと思わなくて、いいですよ。ある分だけ食べてくれて、みんなで食べる方が美味しいからさ」
「どうぞですの♪」
モナティから渡された器を「かたじけないでござる~!」
と涙を流しながら受け取ったガザミネさんは、美味しそうにそれを食し始めた。
その姿を見てると、やっぱり他の世界の住人もこの世界と変わらないんだなっと思ってしまった。
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そして今に至るという訳である。
食事を終えてモナティが食事の片づけを始めている時に俺はカザミネさんに話を聞くことにした。
「カザミネさんはどうして旅をしてるんですか?」
「うむ、拙者は剣の道を究めようとしてシルターンを旅していたのでござる。しかしこの世界に召喚されて帰れぬ身となった今、この世界で剣を究めようと世界を回っていたのでござるよ」
「それで、お金が無くなったと…」
「この世界は召喚獣の扱いがどうにも…拙者も一応は召喚獣の身、時たま職にありつけぬ事があり、この様でござるよ」
「街の外でも結構同じなのか…」
サイジェントだけではなく、外の世界でも召喚獣に職は内容だ。
力仕事だけなら基本問題ないがやはり気づく人は気づくのだろう、
幸いなことにカザミネさんの容姿はこの世界の住人とほぼ変わらないためある程度は職に就けるが、
旅をしてる身としてはやはり一定の場所に留まる事は出来ないのだろう。
「それで、ハヤト殿。お主はこの幼子と共になぜこんな所に?」
「……うん」
カザミネさんに話すべきか…、少しばかり話した感じじゃ悪い人とは思えないけど、
異界の住人をこの世界に閉じ込める原因を作った誓約者と知れば態度が変わるかもしれないし…。
ハヤトが悩んでいると食事の片づけを終えたモナティがハヤトの横に座りそれに応えた。
「マスターは誓約者としてエルゴの試練に挑む最中なんですの!!」
「げ…」
「りんかー?でござるか?」
「エルゴさんに認められた……えっと、すっごい召喚師さんなんですの!」
「………」
ふふーん!と胸を張って偉そうにするモナティの頭の上に手を移動させる、
そして拳を握ってそれをモナティの頭に振り下ろした。
「にゅうっ!?」
「ポロポロと秘密をばらすんじゃない、モナティ」
「にゅぅ~~…痛いですのぉ。何をするんですのマスター!」
「なあモナティ、そういうのは秘密にしようって昨日約束したよな?」
「え、えっと~」
シラーっと言った感じで目をそらすモナティの姿を見て、溜息交じりに追求した。
「まさか、忘れたんじゃないよな?」
「あの…その…」
「モナティー?」
「ご、ごめんなさいですのぉ!!」
涙目で謝るモナティはとりあえず放って置いて。
俺はカザミネさんに視線を戻した、当のカザミネさんは何か考えてる様子だったが、
しばらくすると視線をこっちに戻して口を開いた。
「りんかーとは何でござるか?」
そこからかぁ…
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カザミネさんに誓約者の事を説明する事にした。
正直話したくはないが、カザミネさんに色々と黙っておくのはなんかよくない感じがしたからだ。
悪い人には見えないし、俺の話も真剣に聞いてくれた。
何より誓約者の意味を解ってないのが助かった、知ってたら知ってたで色々と厄介なことになりそうだったから。
話を終えるとカザミネさんは口を開いた。
「つまり、ハヤト殿はこの世界を救う為に誓約者になったという事でござるか?」
「世界を救う……救うかぁ…」
「マスター?」
「…わからないかな。皆の為とか分かり合える世界を作りたいとか色々あるけど、救うって何から何を救うのかはっきりしてないからさ。俺ってこの世界に来て2ヵ月ぐらいしか経ってないからすぐに決められないんだよ」
この世界に来て二か月少し、ほんの少ししかこの世界にいないのに救うなんて一存で決めれなかった。だけど…。
「大切な人をアイツから救ってやりたいって気持ちはある、その為に俺は誓約者になる為にこの試練を受けようと思ったんだ。誰だって大切な者の為なら必死になれますよね?」
「拙者にはその様な方は居らんが…その気持ちは理解出来るでござる」
「モナティもマスターの為なら出来ますの!」
「そういう事ですよ。カザミネさん」
納得してくれたように笑顔で応えてくれた、悪い感じもしないしやっぱりいい人だ。
「それで、この近くにえるご…と言った面妖な物があるのでござるな?」
「面妖って…」
「世界の意思と言われても拙者には良く分からんでござるよ」
「モナティも…良く分からないですの…」
「う~ん…まあ何というか…この世界そのものが生き物って事なのかな…こういうのクラレット専門だから俺も良く分からないなぁ」
やっぱり頭脳派が居なくなったせいで色々と問題が出てるな…。
結局エルゴとかの詳しい事、言葉にしにくいんだよなぁ。
「それで、ハヤト殿はこの近くにある、エルゴと呼ばれるものを探しに来たのでござるな?」
「この近くにメイトルパのエルゴを感じられるんだよ。たぶんあっちの方」
俺が暗闇に指を向けるとカザミネさんは怪訝な表情を浮かべた。
「やはり…あっちでござるか」
「カザミネさんは何か知っているんですの?」
「うむ、恐らくハヤト殿の求める物は剣竜の峰にあるはず」
「けんりゅう…ですの?」
「拙者もこの世界に来て聞いた話でござるが、剣の奥義を極めし竜、彼の地にて眠る 幾多の剣士挑むもいまだ帰らず…」
「剣の奥義を…?」
「もしかして剣を使う竜さんなんですの?」
剣を使う竜…? メイメイさんみたいな竜人なのか…?
「使うのでござるよ、剣竜はその不思議な力で、触れることなく剣を操るのでござる」
「触れる事のない…シャインセイバーとかそういう術か」
召喚術シャインセイバー、あれと同じ原理なら剣を自在に操る事が可能なはずだ。
「カザミネさんはその剣竜さんと戦ったんですの?」
「挑んだが…拙者の腕をもってしても、剣竜には勝てなかったのでござる。近づく事すらままならずそのまま敗退した所存。拙者もまだまだ未熟と痛感させられたでござる」
「じゃあ、試練の内容はその剣竜を倒せって事なのかもしれないな」
「しかし、剣竜の強さは尋常ではないでござる。残念だがお主たちの実力では…」
「そんなことないですのー! マスターはすっごく強いんですから剣竜さんだって倒せるはずですの!」
「だが…」
「どの道、剣竜とは戦わなくちゃダメなんだし、覚悟は決めてるよ。俺は勝つ、さっきも言ったように大切な人達を守りたいからさ」
「マスター♪」
それを聞くとカザミネさんは少し考え始めて答えてくれた。
「決意は硬いでござるか。ならば、明日の明朝にでも案内しよう、剣竜の下へ」
「本当ですの!?」
「ただし拙者も剣竜との戦いに加えてもらうのが条件でござる、剣竜は拙者が目標としてきた相手だ。本当なら一人で挑みたいところでござるが…そうも言っては居られない状況でござるからな」
「こっちも助かります。カザミネさん」
「よろしく頼むでござるよ」
カザミネさんが力を貸してくれる事になった、
カザミネさんの話じゃ剣竜との戦いは剣士としての目標だそうだ。
確かにこの試練を乗り越えれば剣竜は居なくなるかも知れない、そう考えればカザミネさんが力を貸してくれるのも頷けた。
とりあえず、明日だな。明日俺たちは剣竜の試練へと挑むことになるはずだ。直ぐに休まないとな……。
と、思っていたがこの後、食べ物の話題で少し夜更かしをしてしまったのだ…。
そして明朝ではなく昼頃に出発する羽目になってしまった…。
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「ここが…」
「うむ、ここが剣竜の峰でござる」
「険しい山ですの~」
俺達はカザミネさんに案内されて剣竜の峰へとやって来た、
剣の様に突き出てる岩山が並ぶ険しい山、人など寄り付かない不毛の山に俺たちは居た。
「モナティはここで待っていて……くれないよな」
「当然ですの!モナティは何処までもマスターのお供をします!」
「じゃあ、せめて荷物は置いてきてくれな?その荷物抱えたままじゃ、流石に危ないしさ」
「分かったですの、 にゅっう!?」
荷物を置こうとしてモナティが転んでそのまま傾斜を転がってゆく、
そして大岩にぶつかって頭を抱えていた。
「痛いですの~」
「……あのたぬき娘は大丈夫でござるか?」
「たぶん、大丈夫……うんたぶん」
「モナティはたぬきじゃないんですの!!」
ぷんぷんと怒るモナティをあしらいながら俺達は岩山を登り始めた。
傾斜がきつかったがそれと同時にメイトルパの力も大きく感じ始める、
間違いなくこの先にあるはずだ、メイトルパのエルゴが…。
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「な、なんあんですの。地面に一杯剣が刺さってるんですの!?」
俺達の眼前には恐ろしい数の剣が突き刺さっていた、もしかしてこれが…。
「剣竜に挑み、敗れた者たちのものでござる」
「風化してるのもある…、いったいどれだけの時間、剣竜は戦い続けたんだ」
突き刺さっている錆びた剣だけではなく、すでに風化してしまっている剣もあった。
かなり長い時代、この場所で剣竜はエルゴを守り続けていたって事なのか…。
すると奥の方に膨大なメイトルパのエルゴの魔力を感じて俺が剣に手をかける。
「ハヤト殿…感じてるでござるか?」
「ああ、ものすごい魔力だ…あれが!」
「にゅうぅぅ…」
「モナティ!直ぐに俺達から離れるんだ!」
「は、はいですのー!」
モナティが駆けてゆき岩陰に身を隠す、これが試練ならモナティには手出ししてこないはずだ。
そう思いながら俺は目の前の魔力を感じられる方向に意識を向ける。
やがて、山の頂から膨大な魔力を纏った竜が姿を現した。
「あれが剣竜でござる」
「この感じ…まさか!?」
シルヴァーナのような翼竜とは違う、途轍もなく威圧感の感じる魔力がその存在を表していた。
間違いなくあれは至竜、全ての生物が至ると言われる全ての世界の最高位の召喚獣…!
「剣竜は至竜だったのか…」
「至竜…? つまり龍神と言う事でござるか?」
「シルターンではそういう呼び方なんですね。それで間違いないはずです」
「まさか、剣竜が龍神だったとは…」
これは不味いかもしれない…今の俺でも至竜には敵わないかもしれない…。
だけどやるしかないんだ、最初の試練で躓く訳には行かない!!
ハヤトは全身から魔力を膨れ上がらせる、その魔力量にカザミネが驚くが、
直ぐにハヤトから意識を外して剣竜を睨む、そして二人は戦う準備が終わると事が動いたのだ。
『よくここまで来てくれました』
「!?」
「しゃ、喋ったでござる!?」
『我が名はゲルニカ。メイトルパの至竜、剣竜ゲルニカ。この地にてメイトルパのエルゴを守護するものであり、時の剣士達に試練を与え続ける者』
「ゲルニカ…、それがお前の名前なのか」
『メイメイより話は聞いています。新たなる誓約者、それに至れる者なのか見定めろとその為に試練を受けさせろと』
澄んだ女性のような声でゲルニカは俺達に語り掛ける、だがその声に慈悲は感じられない。
試練を統べる裁定者としての威圧感を感が感じ取れる。
「一応確認しておくけど、試練を受けなきゃメイトルパのエルゴは貰えないのか?」
『この力は我らが王より受け継いだ王の意思そのもの、その志を受け継ぐに相応しいもの以外に渡す訳には行かないのです』
「…どうしてもダメなのか?」
『貴方達の都合は理解してます。この世界の危機もよく、しかしそれでも無闇にこの力を渡す事は許されない、これを守りそして見定める事こそ我らがエルゴの守護者たる役目なのですから』
説得をしようとハヤトは試みるが強い意志を感じさせる言葉を投げ掛けられて拒否される。
ハヤトも半分無理だなと思いながらの要求だった為か、ショックはなかった。
そしてサモナイトソードを握りしめて魔力を滾らせてゲルニカに目をやった。
「だったら…さっさと試練を突破しないとな!カザミネさん!!」
「元より、その為に拙者はここに来たのでござる。さあ剣竜よ、今度こそ打倒させてもらうぞ!!」
カザミネさんが刀に手をやって時代劇とかで見る居合という構えを取る。
やっぱり侍なんだなと思っていると俺達に合わせたのかゲルニカも動き始めた。
『メイトルパのエルゴの守護者、剣竜ゲルニカ。我が試練を乗り越えて見せよ!』
「なっ!?」
ゲルニカが翼を広げると魔力の粒が周辺にばら撒かれる、
すると朽ち果てた剣にそれらが取り込まれていく。
「今のは…?」
『剣に宿りし担い手の意思、それを打ち破って見せろ!」
「ハヤト殿、来るでござるよ!!」
朽ち果てた剣が地面から離れて浮かび上がる、
そしてこちらに刃を向けるとまるで誰かに握られているように剣が迫って来た!
「サモナイトソード!」
サモナイトソードの名を呼ぶ、それにサモナイトソードが応えて虹色の輝きを放ちながら振るわれた。
誓約者の魔力を内包したサモナイトソードの一撃に耐え切れずに朽ち果てた剣は粉々に打ち砕かれた。
「流石でござるな、だがまだまだ来るでござるよ!」
「ここには剣が沢山ありますからね」
同じ様に周囲の剣が浮かび上がりこちらへと迫ってくる!
俺とカザミネさんはそれぞれ背中合わせに目の前の剣を打ち砕いて行った。
「キエエェェェッッイ!!!」
鞘から放たれた居合の一撃は剣を人たちで両断する。
俺の魔力を込めた力任せの一撃とは違う技量がものを言う技だ。
俺も負けずに召喚術で周辺の剣を薙ぎ払おうとしたが…。
「シャインセイバー!! なっ!?」
放たれたシャインセイバーは今までと魔力が圧倒的に違い過ぎた。
今までと同じように全力で魔力を込めると恐るべき魔力を内包した剣が生み出されたのだ。
それらは剣に当たる事はなかったが大地にぶつかりその衝撃で剣が吹き飛ばされていく。
「な、何という召喚術! これら誓約者の召喚術でござるか」
「上手く使いこなせない…シャインセイバーのような召喚術は逆に危険だ…!」
シャインセイバーの様な無機物を操る召喚術が扱いきれないと考えた俺は剣に願う。
剣を通して心の中で繋がる仲間の召喚を願った!
「来てくれ…ペトラミア!!」
召喚されたのはペトラミア、今までと違い膨大な魔力を纏ったペトラミアは石化の魔眼を放つ!
その魔眼の光に包まれた剣たちは石となり地面に倒れこんでゆく、だが再び起き上がりこちらに向かってきた。
ハヤトは先ほどよりも脆くなった剣にサモナイトソードを振るい砕いてゆく、その中で違和感を感じ取った。
石にして気づいた、なんかもやの様なモノが剣に纏わりついてる、なんなんだ…?
「やはり数が…!」
カザミネが剣のあまりの数に押され始めて行くのをハヤトは見た。
それに焦り始めて召喚術を使用しようとしたが躊躇ってしまう。
この状況を打破するには召喚術しかない、だけど一気に敵を蹴散らせる召喚術を俺は持ってない。
ハヤトの持つ召喚術はその殆どが単体用、集団を一気に蹴散らせる召喚術を持っていなかった。
唯一シャインセイバーが一気に攻撃できるが、それは先ほど使用したように安定性を持っていない。
戦いながら彼は悩んでしまう、だがそんな彼に声が聞こえてきた。
『自身の力に恐れを抱いてはいけません』
「この声…ゲルニカ!?」
『その力がどれ程までに強大な力とはいえ貴方の力なのです。信じて使えば必ず応えてくれるはずです』
「………よし!」
ゲルニカの声を信じて俺は召喚術を発動させる、サモナイトソードを天に掲げ魔力を高めていった。
そして剣影が一本、また一本とサモナイトソードの周りを廻りながら出現しはじめる。
先ほどは一気に魔力を込め過ぎた、自然に…そして確実に一本一本出現させる。
やがてその数が20を超えた辺りで俺は朽ち果てた剣の違和感を確信する。
これは魔力なんだ、ゲルニカが剣に魔力を送って操っている、だがら直接それを見ずにその魔力めがけて放てば…!
「シャインセイバー」
そう呟き、一斉に剣影は朽ち果てた剣に向かっていく、目で見ずとも気配を感じ取りそれを穿つ。
確実に剣を打ち砕いていくなか、俺は先ほどとは違う違和感を感じ取る。
剣の魔力と同じだが、他の魔力のように攻撃的ではない…まるでお餅のように柔らかい…!?
「まずっ!?」
「にゅうっ!?」
シャインセイバーの軌道を無理やり変えて剣は大岩付近に直撃する、
その岩に隠れていたのはモナティだった、ハヤトはメイトルパの魔力を感じ取る中、
同じメイトルパの魔力を持つモナティを誤認してしまったのだ。
「モナティ!大丈夫か!!」
「だ、大丈夫ですの~」
びっくりしたモナティは涙目になりながら声をかけてくれた。
危なかった…、魔力を感じ取るときは味方と間違えない様にしないといけないな…。
『見事。ですがまだまだ残っていますよ』
「よし、ドンドン来い!」
そう叫ぶと地面に埋まっていたらしい朽ち果てた剣が現れる、
剣だけではない槍や斧も含まれており、それぞれが敗れ去った戦士たちの抜け殻だった。
その抜け殻に魔力を送り、担い手の技を再現するのがこの試練なんだ。
「動きがよくなったでござるよ!」
「わかってる、召喚術で一気に行く、カザミネさんは時間を稼いでくれ!」
「承知!!」
カザミネさんが戦うがその攻撃は盾に防がれる、短剣や弓矢まで出てきて攻撃してきた。
やっぱりだ、ゲルニカは武器の持っている所有者の記憶を再現させるんだ。
だからさっきよりも精密な攻撃が出来る、中途半端な攻撃をしてもダメだ、ここは…。
「一気に攻める!!」
ハヤトはサモナイトソードを天に掲げて空を斬る。
剣先から光が迸り、それは何もない空にゲートを作り出した。
ロックマテリアル、ガイアマテリアルと呼ばれる隕石群を召喚する召喚術その最高位の術。
「メテオライトフォール!!!」
「す、凄いですの!?」
「おぉ…おおぉぉー!?」
驚きの声を上げる二人の反応は当然だった。
今までの召喚術とは比較にならない巨大隕石が出現し、武器たちを一斉に押しつぶしたのだ。
地面に激突すると同時に隕石は破裂して周辺の武器たちまで吹き飛ばした。
しかし、それでも無事なモノたちも存在する、ハヤトはそれを逃すつもりはなかった。
「シャインセイバー!」
放たれた剣影は的確に武器たちを射抜いた、魔力を感じ取る攻撃の為、
隕石の墜ちた影響で土煙が辺りを包んでいるが関係はない、全ての武器を打ち砕き、
やがて彼らの前に朽ち果てた武器はなくなっていった。
「何という、これが誓約者の力でござるか…」
「はぁ…はぁ…」
「ハヤト殿、大丈夫でござるか?」
「だ、大丈夫。慣れない事したせいで少し疲れただけだから…」
「うむ、そうでござるか。だが後は…」
「ああ、後は…」
剣竜だけ。そう理解して俺はゲルニカを見た。
ゲルニカの行動は剣を操るだけで他にやった事は俺にアドバイスをする位だった。
だけど、どうしてゲルニカは俺に力を貸したんだ?
この試練はメイトルパのエルゴを守る為の試練なのに…。
もしかしてこの試練には別の意味があるのかもしれない、今は知る必要がないけど。
そう思いながら俺は体を起こして剣を構える、だけど後ろから悲鳴のような声が聞こえて来た。
「なんですの…これ、なんですの…?」
「モナティ?」
「逃げて…逃げてくださいですの!マスター!! 何かが…何かがゲルニカさんに入って来てるんですの!!」
「それは一体!?」
「ゲルニカ!!」
俺が再度ゲルニカの方向を向くと、苦しみもがく剣竜の姿がそこにあった。
「この感じ…嘘だろ…?」
剣竜の体を通して操ろうとする存在を感じ取った、
それはかつて俺が出会ったものに酷似している、一つの世界に必ず存在する意思。
「エルゴ…なのか…」
剣竜ゲルニカの体から感じ取れたのは界の意思そのモノだった。
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異変の感じられる少し前、ゲルニカはただこう思っていた。
見事な物ですね…。
メイメイからある程度話を聞いてはいたが、彼の資質は大きい。
剣の才能は非凡なものを秘めており、魔力の扱いも純粋なのかすんなりと受け入れる。
しかし、それはあくまでもまだ開花はしていない状況、このまま力を受け入れれば振り回されるのは必須。
だからこその試練、エルゴの試練とは力を手に入れる試練なのだ。
それは何も単純な力だけではなく、それに相応しい能力を手に入れる試練という事にも繋がっていた。
だからこそ、ゲルニカは最初に手加減をした。
わざと剣だけを操って彼らを追い込むように仕向けた。
しかし意外に小心者なのか召喚術に驚いてたりしていたが、
一度吹っ切れれば後は早かった、正確無比な剣影を撃ち放ち、巨大な隕石を落とす。
まさしく誓約者に相応しき実力を彼は得た。
これならば我が力を渡しても構いませんね。
かつてメイメイより預かった、我らが主の持つ力。
メイトルパのエルゴ、その欠片。これ一つでも世界を左右する力を持っている。
メイメイの言った通り少年はこの力を悪用するような人物ではなかった。
そしてそれに振り回される事もない、そう確信出来た。
しかし…惜しいモノです。
そんな事を考えるゲルニカの目線の先には岩陰に隠れている一匹の亜人の姿があった。
ゲルニカの見立てではかなりの力を秘めているにもののそれを扱う心が出来ていなかった。
惜しい、勇気さえ持てればその力は必ず誓約者の役に立つというのに…。
そう考えるが、ゲルニカはその考えを一笑し。その体を動かす。
剣はすべて倒した、最後に戦うのは自分だと決意新たに体を動かすが……。
――絶やすのだ
『なっ!? これはいったい!』
ゲルニカは何かが自分の体に干渉し始めるのに気づいた。
すぐさまそれに対抗しようと力を籠めるが、圧倒的な力で抑え込まれてしまう。
――誓約者を滅ぼし、結界を破壊するのだ
『まさか…我が身を使い干渉しようというのか!』
――元より我が世界に生まれしものは全て我の庇護下、それは至竜であろうと逃れられぬ
ゲルニカの意識が黒く塗りつぶされてゆく、
せめてこの力だけでもとエルゴの欠片に結界を張り、
それに干渉されないようにするのが精一杯だった。
紅く輝く美しい鱗は黒く滲み始め赤黒い鱗に変化する、
完全に意識が塗りつぶされる前にゲルニカはハヤトに言葉を届けた。
『逃げるのです。誓約者―――すぐにでもここから離れるのです!』
必死の声も空しくそれはハヤトに届くことはなかった。
そして、ゲルニカの器にメイトルパの全てを支配する意思。
メイトルパのエルゴが乗り移ったのだ。
――偽りの楽園を存続させる者よ。滅ぶべし。絶えるべし。消え去るべし!!!
既にそこには偉大なる試練を与える剣竜の姿はなかった。
そこにいるのは全ての楔を破壊しようとする怒れし界の意思がいたのだった。
------------------------------
「にゅうぅぅ……!にゅぅぅーー!!」
モナティのうめき声が聞こえる、俺だって素足で逃げ出したい気分だった。
目の前のゲルニカは既にゲルニカじゃなくなっているのは分かる、これは…。
「メイトルパのエルゴ…、ゲルニカの体を使ってるのか?」
「メイトルパのエルゴでござるか?」
「多分ゲルニカの体を依代にして俺達を殺すつもりなんだ」
「なぜ拙者らが!?」
「俺が…誓約者だからだな…」
このまま放っておけばリィンバウムの結界が消える、
それを直せるのは誓約者になった俺だけだ。
エルゴはそれを防ぐためにゲルニカの体を利用してるって所か…。
本当なら逃げるべきだけど…、メイトルパのエルゴを得なくちゃいけない。
じっとゲルニカを見るとゲルニカの魔力がメイトルパのエルゴの魔力に抵抗してるのを感じられる、
同じ属性だが、それぞれが反発しあっていた。
今この場で何とかしなければどうしようも無くなると覚悟したハヤトは魔力を滾らせる!
「やるしかない…!今この場でゲルニカを倒す!カザミネさんは…」
「無論、拙者も協力するでござるよ」
「カザミネさん!?」
「あのように苦しむ剣竜を放ってはおけないでござる。それに一宿一飯の恩義、忘れないでござるよ」
「それが…命をかける事になっても?」
「当然でござる」
カザミネの覚悟を聞いてはハヤトはそれに頷いた。
少し前の自分では恐らく戸惑ってしまっていたかもしれないが、
今のハヤトはその気持ちを汲むことが出来る、
何より目の前の至竜相手に余裕がなかった、だからこそそれを許した。
「分かった…カザミネさん!行こう!!」
「承知!!」
戦いは始まりハヤトは魔力をサモナイトソードに収束させる。
そして天に向かって魔力を解き放ち召喚術を発動させた!
「メテオライトフォール!!」
膨大な魔力を纏う岩塊を呼び出し、一直線に剣竜へと向かってゆく。
そして剣竜に隕石は直撃し破砕音と共に衝撃と土煙が巻き起こった。
「凄まじい一撃でござる…、これなら」
「………まじかよ」
悪態つくハヤトの呟きを聞きカザミネは目を疑った、
土煙が晴れた先にいた剣竜には傷一つついてなかったのだ。
――滅ぶべし、誓約者!!
「くっ!? アーマーチャンプ!ガイエン!!」
召喚された盾の鉄巨人と鬼神将がハヤトの願いに応える。
アストラルバリアを展開し、ガイエンは真・鬼神斬で剣竜を迎え撃った。
だが、その攻撃は剣竜の鱗を砕くことは出来ず、ガキィンと言う弾かれた音が響くだけだった。
「攻撃が通ってないでござる!」
「ガイエンでもダメなのか…なら次は…!?」
剣竜がその顎を開き途轍もない魔力と共に爆炎と衝撃がハヤト達を襲った。
アーマーチャンプはその一撃で打ち砕かれハヤト達は吹き飛ばされてしまう。
「キエエエェェェイイッッ!!」
攻撃が入ったと思われた瞬間、カザミネは駆け出し剣竜に迫ってゆく。
そして居合の太刀で剣竜の顔面を切り裂こうとするがガイエンと同じ様に弾かれた。
「ムッ!? ならばこれなら!!」
額、鼻先、目元、眼球、手当たり次第に攻撃を仕掛けるがそれは通らない。
まさか眼球まで攻撃を弾かれると思わなかったカザミネは防御を甘くしてしまった。
――邪魔だ、異界の者よ
「ぬっ!ヌゥゥゥッッ!?」
火がまるで生き物のように操られカザミネを包み込もうとする、
あまりの高温に息をすることすら出来なくなったカザミネはなすすべがなかったが。
諦めそうになった瞬間、白い布がカザミネを包み込んで引っ張り上げられる。
「カザミネさん、大丈夫か!」
「ハヤト殿、済まぬ」
ハヤトのヴァインシェードで引っ張り上げられたカザミネはすぐにプラーマの治療を受ける。
傷の治りが遅い事を感じたハヤトは普通の攻撃ではないことを理解した。
あの炎自体、とんでもない魔力を宿した攻撃なのだと、まともに食らえば恐らく無事ではすまない。
「……カザミネさん、同時に攻めよう。アイツの狙いは俺だ。俺は上からカザミネさんは下から」
「しかし拙者の攻撃では…」
「大丈夫、フレイムナイト!!」
ハヤトが異界の友の助力を願うとすぐさまフレイムナイトが召喚された、
その体を粒子に変化させてカザミネに宿ると膨大な魔力がカザミネに流れ始める。
「これが誓約者の力でござるか!?」
「と言っても、フレイムナイト経由だと限界があるんだけどな。だけどアイツを倒すぐらいなら出来るはずだ!」
「よし!」
再び二人は立ち上がり剣竜とにらみ合う、そして二人は駆けだした。
ハヤトは飛び上がり上空から攻める!
「だりゃぁっ!!」
虹色の極光を放ちながらサモナイトソードは剣竜の額に直撃した。
バキィン!と言った破砕音が聞こえるが額には割れた後のような傷跡しか残っておらず、
その頑強さを表していた、しかし手ごたえを感じたハヤトは再び剣を振り上げて振り下ろそうとする。
「もう一発…!!」
――羽虫が…潰れるがいい!
「うおっ!?」
「にゅぅぅっ!?」
剣竜が動き始めるとモナティのいる大岩に向かって剣竜が進撃する、
そのまま自身の顔面ごと大岩に体当たりしハヤトを潰そうとするが、ハヤトはギリギリで脱出できた。
ハヤトはそのまま目の前で倒れてたモナティを抱き上げてその場から離れた。
「モナティ!大丈夫か?」
「大丈夫ですの、でもモナティのせいで…」
「大丈夫だ、もう俺の役目は終わってる。カザミネさん!!」
「承知!!」
大岩を砕き生まれた土煙に混じりカザミネが高速で剣竜の腹部に迫る。
どんなに頑強な鱗を持とうと腹の部分にはそれはない、それに気づいたハヤトは自身を囮にして意識を遠ざけたのだ。
剣竜が気づいた時にはすでに遅かった、カザミネの銀色の輝きを放つ刀が放たれたのだ。
「キエエエェェェイイッッ!!!」
ズバッと言う音が聴こえ、剣竜の腹部が切り裂かれる。
そしてフレイムナイトの魔力の影響なのか腹部から炎が巻き上がりさらに剣竜にダメージを与えた。
――グオオォォォォーーーッッ!!
剣竜のうめき声を聞き、二人は確信した。
攻撃が通っている、勝てるかもしれないと。
「ハヤト殿!」
「ああ、いけるぞ!!」
「すごい…すごいですの。マスター!カザミネさん!」
喜ぶ三人とは別に攻撃を受けた剣竜は怒り狂う、
目の前の短小な者共に手傷を負わされた事に屈辱を感じた。
――愚かしい、いいだろう。我がエルゴの回収は後だ。滅ぼしてやろう
「ハヤト殿…これは…」
「本気になったみたいだな…」
「にゅ…にゅうぅぅーー!!」
「モナティは早くここから離れるんだ!」
「はいですのっ!!」
モナティが駆けだしてその場から離れるのと同時にハヤトは剣竜を見る。
剣竜の体に炎が纏わりついてゆき、それそのモノが一つの炎と化す。
目で分かるほどの膨大な魔力と熱量に二人の足は一歩下がってしまう。
「これが剣竜の本気でござるか!?」
「今までと違う…これが至竜の…エルゴの力なのか!」
睨み付けられるだけでも心臓を鷲掴みにされるほどの圧力がハヤト達を襲った。
それを振り払うためにハヤトは魔力を剣に流し召喚術を発動させる。
「シャインセイバー!」
放たれたシャインセイバーは全て一直線に剣竜へと迫ってゆく。
しかし、それは剣竜の体に突き刺さることなく炎に呑みこまれて消えて行ってしまった。
それを見たハヤトはやっぱり普通の炎じゃないと確信した。
「なら次はこれだ!メテオライトフォール!!」
強大な魔力をサモナイトソードに流したハヤトは天を割く勢いで魔力を放出する。
空間の切れ目が生まれ、そこから巨大な岩塊が剣竜めがけて降って来た。
――無駄なことを
剣竜の体から炎が沸き上がり岩塊を包み込む、そして岩塊は瞬く間に灰塵と化してしまった。
それを見たハヤトはけた違いのその強さに唇を噛みしめてしまう。
「カザミネさん、今までのように迂闊に近づいたら…」
「うむ。あの剣の様に溶けるという事でござるな」
「召喚術しかない…だけど、ガイエンはさっきやられたばっかりだ。それに今の召喚術が俺の中で一番強力な召喚術のはずだけど…」
「それが効かないという事でござるか?」
「うん、あとは…」
ガルマザリアとエルエル、あの二体なら張り合えるかもしれないが少し問題があった。
あの二体はクラレットの召喚獣なのだ、召喚すれば無色の派閥に感づかれる危険性があった。
その為、ハヤトはメイメイからその二体は召喚しないようにと厳命されていたのだ。
「だけど、今ここでやられるぐらいなら。可能性に賭けるしかないかもしれない」
ハヤトはサモナイトソードに魔力を注ぎ込み願い始める。
多少の危険性はあろうと今この場でやられる訳には行かなかった。
「至原の時を生じて、悠久へと響き渡るこの声を聴け!」
普段詠唱をしないハヤトが口にした言葉、
これは古の時代、先代の誓約者が口にしていた言葉だった。
世界に刻まれたその願い、言霊の軌跡をハヤトは口にしそして召喚という奇跡を起こそうとしているのだ。
「誓約者を目指す、ハヤトが汝の力を……!?」
強力な召喚術を行使しようとするハヤトは剣竜の様子に気づく、剣竜はこちらに意識を向けず別の方向を向いていた。
その方向にはこの場から離れようとする一匹の召喚獣の姿があったのだ。
――我が庇護の下で在りながら誓約者に組するものから始末してくれる。
「まさか!!」
ズンッ!と地面を大きく踏み込みそこから火柱が一直線にある方向に突き進む。
「モナティ!逃げろぉ!!」
「ああああぁぁァァァァーーーッッ!!!?」
悲鳴と共にモナティの足元から爆炎が出現しモナティはそれに取り込まれる。
そして剣竜はモナティに向けて大口を開き突っ込んできた。
――せめてもの慈悲だ。我の中へと還るがいい。
エルゴは離反者を決して許さなかった、自身の世界の住人が苦しめられているにもかかわらず、
そんな世界を存続させようとする者に組する者を決して許そうとはしない。
剣竜がこれから何をするか把握したハヤトは一直線にモナティへと跳んだ。
爆炎で空中に吹き飛ばされたモナティをハヤトは弾き飛ばしたのだった。
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モナティ…死んじゃうんですね。
爆炎に包まれて吹き飛ばされたモナティはそう考えていた。
悲しみも恐怖もなかった、ただ心に残っていたのは。
マスターのお役に立てませんでした…。
自分の敬愛するマスターの力になれなかった、
きっとマスターならこの戦いを潜り抜けてくれる、
だけど自分がここで死んでしまったらきっとマスターは悲しんでしまう、そうモナティは思っていた。
結局モナティは…モナティはマスターに…。
恩返しが出来なかった、そうモナティは思っていた。
助けて貰い、帰る場所を貰い、そして家族を貰った。
だからこそモナティは力になりたかった、どんな形で在れモナティはハヤトの力になりたかった。
だけど、なれなかった。
無理をしてついてきても戦う力になれず、こうして終わってしまったのだ。
竜の顎が迫ってくる、あれをマスターはメイトルパのエルゴと呼んでいた。
あれに食べられれば還るんだろうとモナティは無意識に理解した。
さようなら…マスター…。
「モナティィィーーーッッ!!」
「にゅぅっ!?」
誰かに押されて飛ばされる、そして自分は無事に地面へと倒れ込んだ。
全身が火傷のせいで痛かったが、痛みで閉じでいる瞼を開き剣竜をモナティは見つめた。
「あ…あぁ…!!」
モナティが声を出せずにその光景に驚く、目の前の竜の口の中には今にも食われそうな、
モナティを助けた人物、ハヤトがそこにいたのだった。
「マスタァーッ!!」
「ハヤト殿!!」
――グオオォォォォーーッッ!!
「ぐ、ぐぅぅー!!」
全身を魔力で強化し顎の力に対抗するハヤト、
何とか抜け出そうとするが、剣竜は炎を操りハヤトの体力を奪ってゆく。
「お前なんかに…食われてたまるかぁ!!」
自身を噛み砕こうとする力を押さえ、
飲み込もうとする舌を切り裂きなんとか外にはい出ようとハヤトはするが、
後ろから強い熱を感じ取りすぐさま魔力を防御に回す。
「うおおぉぉぉーーッッ!?」
喉の奥から現れた炎の息吹に包まれてハヤトは抜け出す力が緩んでしまう。
そして彼は剣竜の口の中へと消えていった。
剣竜はその大口を閉じた、そうハヤトは剣竜に食べられてしまったのだった。
「な…な…ハヤト殿…!」
自身の力が何も役に立てずカザミネは声を枯らす。
フレイムナイトの力が消えてしまい、今のカザミネには剣竜を倒すことは不可能だった。
そして…。
「そんな…嘘ですの…マスター…」
目の前で剣竜に食べられたハヤト、モナティはその状況を認めたくなかった。
自身の体を抱きしめてモナティはボロボロと涙を流す。
守るどころか守られて、守りたかった相手は命を落としてしまった。
――誓約から解き放たれた我が世界の者よ。どうするのだ
剣竜――メイトルパのエルゴはモナティに語りかけた。
既にモナティとハヤトの間にある誓約は失われたと語る。
「モナティは…」
――所詮、この世界の人間は召喚獣を道具のようにしか思っていない、それでもお前は助けるというのか?そのひ弱な体で
「………!」
ひ弱な体、それは真実だった。
戦う事も出来ずそのうえ足手まといにまでなってしまう。
そんな事を言われたモナティは唇を噛んでしまう、そしてその目に怒りを宿し始めた。
だが、それは決して自分自身の事を罵倒されたからではなかった。
「貴方は…………何様のつもりですの?」
――なに?
「貴方にマスターの何がわかるんですの。マスターや他の皆さんの何がわかるんですの!みんな…みんなが召喚獣を道具のように扱ってるわけじゃないんですの!」
モナティは知っている、前の死んだマスターだって優しかった。
モナティは知っている、自分と出会った人たちは優しい人だって沢山いた。
「マスターやフラットの皆の事を知らないくせに何でもかんでも知ってるように言わないでほしいですの!!」
モナティは知っている、マスターの仲間は、家族は誰にでも優しくそして暖かい事を…!
「エルゴさんだからって何でもかんでも好きに出来るなんて思わないでほしいですのぉ!!」
恐怖に抵抗しながらモナティは叫んだ、涙をボロボロと流し手も足も震えていた。
だけど嘘でも否定したくなかった、一度でも否定すればきっと自分の中の大切なものが壊れる。
今まで自分たちで暖め続けてきた大切なモノが壊れてしまうと。
「マスターは何時も最後まで諦めなかったんですの…だからモナティも…モナティも…!!」
勇気を奮い起しモナティは剣竜に立ち向かう、
まだ間に合うと信じて、大切なマスターを助けてみせると信じて…!
「絶対に最後まで……最後まで諦めないんですのぉ!!」
声が乾くほどの大声でモナティは叫んだ、
自身の世界を作ったメイトルパのエルゴに、創造主に初めて対抗したのだ。
恐らく特別な力を持たない召喚獣がエルゴに逆らうなど初めての事だっただろう。
剣竜に憑りつくエルゴもその光景を信じられず呆然とするが、再び口を開いた。
――ならば今度こそ、我の中へと還してやろう!
「モナティ殿!」
カザミネの声がモナティの耳に届く、しかし振り返らずモナティは剣竜を見つめた。
恐怖はない、アレほど恐怖し諦めたその存在に目を背けなかった。
屈したくないのだ、自分を抱きしめてくれたこの世界の家族達を否定したくないのだ。
モナティは自分の中の魔力を引き出す、メイメイの言っていた事を信じて。
そしてその想いを力に変えてモナティは走った。
「うにゅぅぅぅーーーーッッ!!」
「速い!?」
自身を食らおうとする大口を避け、懐にモナティは入り込んだ。
攻撃の方法などモナティは持ち合わせていない、
ただ全身から魔力の全てを放出してモナティは剣竜の腹部へ全力の体当たりを繰り出したのだ!
――むっ!?
ドゴンッ!と言った衝撃音が空気を振動させる、そのあまりの衝撃は剣竜の体勢を崩すほどだった。
腹部とはいえ竜の体、モナティもその衝撃で額を切ってしまい血を流し目元も腫れてしまった。
「まだ…ですの…!」
一撃に全ても魔力を込めてフラフラなモナティが再び立ち上がり剣竜を睨む。
対して剣竜はモナティの攻撃を受けてもまるで動じてなかった。
その様子を見てもモナティは決して諦めようとしない、剣竜からハヤトを助け出そうと勇気を振り絞る。
「モナティは……まだですの!」
――なら、今度こそ我が中へと還してくれる!!
再び大口を開けてモナティを食らおうとする剣竜、
それを避けようと足に力を込めるが、ガクンと足に力が入らなくて膝を付く。
「あ…」
唯さえ膨大な魔力を纏った剣竜に直接攻撃を繰り出したモナティは心身共に限界だった。
初めての戦いでこの規模である、モナティにはもう戦う力はほとんど残ってはいなかった。
「マスター…!」
目を瞑り愛するマスターの事を考えてその瞬間に対してモナティは身構えた。
だが、いくら待とうともその瞬間が訪れることはなかった。
「え?」
モナティが目を開けると自分を飲み込む寸前に動きを止める剣竜の姿があった。
――ゴオオォォォ…!?
口から熱風を放ちながら剣竜はまるで痛み苦しむような声を漏らす。
モナティは目を丸くしてその状況を見ていた。
――………ぉぉぉぉおおお!!
「この声…あ、あぁぁ!!!」
口の中から声が聞こえ始める、その声を聞いてモナティの心は喜ぶ。
生きていた、帰ってくる、その気持ちが踊り始め彼女の表情に喜びが溢れてくる。
――ガァァァァ!!
「おらぁぁぁぁーーー!!!」
『出れました!!』
「マスタァー!!」
剣竜の腹部から虹色の剣閃と共に飛び出してきたのはハヤトとメリオールだった。
慈水の大奇跡の黄金の水を身に纏い、剣竜の炎を防ぐ事で生きていたのだった。
「マスター!マスター!!」
モナティが飛び出したハヤトに駆け寄る、既にメリオールの手で治療が始まっているが、
その場に倒れたハヤトの表情は優れず苦しそうな表情を浮かべていた。
「モナティ…ありがとな。モナティが衝撃を与えてくれたお陰で目が覚めたよ」
「…あ」
自身の力の限りを込めた体当たりでハヤトは剣竜の腹の中で目が覚めたのだ。
飲み込まれた瞬間、ハヤトはメリオールを召喚してそのまま気絶してしまった。
幸い、メリオールはずっとハヤトの傍に居たため送還はされなかったがそれでもこのままでは助からなかったのだ。
だが、モナティの体当たりした場所がちょうどハヤトのいる場所だった。
その為、ハヤトは目を覚ましこうして外に脱出することが来たのだ。
「にゅぅ…良かったですの。モナティは…モナティはマスターを守れたんですね…」
自分がマスターを助けられた事を喜ぶモナティ、
しかしその喜びを味わう暇は彼らには残されていなかった。
――忌まわしき、我が地より逃げ出した古妖精よ…!このまま灰塵に返してくれる!
『来ます…!』
傷ついた剣竜は傷を癒そうともせずに炎のブレスをハヤト達に向けてくる。
そして口から炎が打ち放たれる瞬間…。
「そうはさせぬでござる!!」
カザミネが剣竜の足に攻撃を仕掛けて体勢を崩させる、
ブレスは狙いからそれてあらぬ方向へと飛んでいった。
――異界の者よ。まずお前から始末してくれよう
「むっ!?」
「カザミネさん!!」
「……みんな!力を貸してくれ!!!」
ボロボロの体でハヤトは願う、カザミネを守る為に魔力をサモナイトソードに流し召喚術を行使した。
異界のゲートが四種類現れてそこから可能な限り召喚できる全ての召喚獣が出現して剣竜に群がる。
恐らく時間稼ぎにしかならないだろう、それでもやらないよりはマシだろうと彼は思った。
「時間…稼ぎにしかならない…俺が動ければ…!」
「メリオールさん、マスターは大丈夫なんですの?」
『傷自体は大丈夫です。でもメイトルパのエルゴに飲み込まれていたせいで魔力の逆流が起きているようで直ぐに戦うのは恐らく…』
「そんな…」
万事休すだった、今までで剣竜に手傷を負わせたのはハヤトのサモナイトソードだけだった。
カザミネの居合もモナティの体当たりも傷は負わせてもダメージにはならない。
一番固いであろう額を削ったハヤトの魔剣だけが剣竜を倒せる可能性を持っていた。
「モナティ…」
「にゅう…?」
ハヤトは苦しそうな顔をしながらモナティにサモナイトソードを差し出した。
「お前がやるんだ」
「…え?」
「お前がやるしかないんだ、モナティ」
差し出されたサモナイトソードをモナティは拒否する。
「無理ですの…」
「モナティ…!」
「モナティじゃ…モナティなんかじゃ無理ですの!」
「そんな事ない…俺の事を助けてくれたじゃないか」
「でも…でも…!」
「モナティは…」
ハヤトがモナティに押し付けるようにサモナイトソードを手渡そうとする。
それにはハヤトの渡せるすべての魔力と想いが込められていた。
そしてハヤトはモナティに最後の言葉を投げ掛けた。
「俺の…誓約者の護衛獣だろ…!」
「!?」
モナティは…マスターの護衛獣?
――だからモナティには俺の支えになってほしい、後ろで俺の力になってほしいんだ
モナティの脳裏をよぎるのは嘗ての誓い。
――当たり前だろ、モナティは誓約者になった俺の護衛獣の一人なんだからさ
自身がどれだけハヤトに信頼されているか、頼りにされているか。
それにモナティは気づいた。
そしてモナティはハヤトの想いを汲もうと勇気を振り絞り始める。
「マスター…モナティは」
「ゲルニカは苦しんでる…俺達を守る為に必死にエルゴに対抗しているんだ」
「ゲルニカさんが…?」
『至竜がその身をエルゴに預ければ私達など敵ではありません。今この場で私たちが生きていることがゲルニカがメイトルパのエルゴに対抗している何よりの証拠なのです』
メリオールがそう言い、モナティは再び震えていた手の震えが止まる。
目の前にある虹色の輝きを放つ魔剣、サモナイトソード。
想いを力に変える究極の魔剣が光り輝いていた。
「モナティ…頼む」
ボロボロのハヤト。
その姿を見て自分はまだ動けると理解する。
そしてモナティは……。
------------------------------
「ぬぅっ!?」
目の前でハヤトの召喚した最後の召喚獣がカザミネを守り送還される。
カザミネも全身いたる所に火傷を負わされて満身創痍だった。
二人を守る為とはいえ無謀の試みに少しばかり後悔しながら溶け掛けた刀を手に握る。
「ぜえ…ぜえ…このような刀ではもう無理でござるな」
諦めかけていたその時、ハヤトのいる方に人影が姿を現した。
ボロボロの衣服だがその目には決意を露わにした少女がいた。
彼女の手には虹色に輝く魔剣が握られている、そうハヤトの護衛獣のモナティだった。
「モナティ殿!?」
――再び戻って来たか愚か者よ
「………!!」
無言のままモナティはかける、彼女の中にある魔力が爆発的に膨れ上がり肉体を強化する。
そのスピードはあのクロと同レベルの速度だった。
「なんという速さ!?」
カザミネが驚くが所詮はレビットの浅知恵、そう理解している剣竜は炎を操りモナティを襲う。
もっと速く、もっと強く、もっと…もっと…もっとですの!!
モナティは強く願った、それに呼応するようにサモナイトソードは光り輝く。
その光はモナティの体を包みさらにスピードを上げた、そして迫り来る炎をその光は弾く!
――こざかしい!
剣竜は大口を開き爆炎のブレスをモナティに撃ち放った。
それを見てモナティはさらにスピードを上げる!
ここ…!ですの!!
爆炎がモナティを襲う瞬間モナティはその脚力で跳び上がる。
そしてブレスを撃ったばかりで無防備な剣竜の首に剣を振り下ろした!
「にゅぅぅぅぅぅぅぅーーーッッッ!!!」
バキィン!と大きな音が鳴り響く!
しかしモナティの一撃は剣竜の首に傷をつけるしか至らなかった。
そしてモナティを襲う様に炎が剣竜の周りから生まれ一斉にモナティに群がってくる。
「モナティは…モナティは…」
諦められない、自分が終わるまで諦められない。
命よりも大切な者の為に、自分の全てを賭けたいと願う人の為に。
モナティは願う、その想いをその拳に込めて振り上げた!
「マスターハヤトの護衛獣なんですのぉぉぉぉぉっっ!!!!」
光り輝く魔剣にモナティは拳を叩き込む、その衝撃で魔剣が光り輝き何も見えなかった。
その次にドサリという音が聞こえ光がなくなった後、モナティは地面に倒れていた。
「おおぉぉ…!」
カザミネが驚きの声を漏らし始める、ズズズッと剣竜の首がズレていくのを見ていた。
――おのれ…あと一歩のところを…この、愚か者どもめ…
その言葉を最後に剣竜から巨大な意思が消えてゆくのを誰もが感じ取る。
そしてズゥンという音を立てて剣竜が倒れてその場に倒れたのだった。
「剣竜を…剣竜を倒したでござるぅぅぅ!!!」
カザミネが歓喜の悲鳴を上げて大の字にその場に倒れた。
カザミネ本人も既に限界を通り越していたのだ。
「やった…やったですの…マスター…」
力尽きたモナティも緊張が途切れたのか泣きながら倒れ込む。
こうしてメイトルパのエルゴとの戦いは終わりを告げたのだった。
------------------------------
「にゅっく…!ひっく…!ごめんなさい…ごめんなさいですの…」
「モナティ…」
動けるようになった俺達の目の前にはゲルニカの亡骸があった。
そしてモナティはそれを見るとボロボロと涙を流して悲しんでいた。
当然の事だ、モナティはゲルニカを助ける為にゲルニカの命を奪ったのだ。
「モナティ、俺のせいだ。俺がモナティに頼んだから…」
「違うんですの。マスターは何も悪くないんですの。モナティがモナティが…!」
俺にしがみ付いて泣きじゃくるモナティを撫でることしか出来なかった。
決意している俺と違ってモナティは優しすぎた、他者の命を奪うことなど出来ないのだ。
俺はそんなモナティを戦わせてしまった「ゲルニカを助けるため」と言い殺させてしまったのだ。
「にゅっく…!ごめんなさい…です…の」
『気にすることはありませんよ』
「…え?」
「ゲルニカが…光ってる!?」
ゲルニカの亡骸が光り始め粒子に変わり始める。それは送還の光に少し似ていた。
泣いていたモナティもその光に気づいて泣き止みゲルニカを見つめていた。
「ゲルニカさん…ですの?」
『そうです、小さき同郷の者よ』
「ごめんさいですの…。モナティ、ゲルニカさんの事を…」
悲しんでいるモナティをあやすように紅い粒子がモナティを包む。
それは力強くとても優しい輝きだった。
『安心しなさい、我は死したわけではありません』
「え…?」
「それってこのゲルニカは死んでないって事なのか?」
『これはメイトルパのエルゴ、その欠片により作った我が分身。本体はメイトルパにいます』
「本当…本当ですの!?」
それを聞いたモナティが今までの悲しみの表情をやめ喜びに顔を変化させる。
俺もモナティの手を汚させなくてよかったと安堵した。
そして俺はゲルニカに聞きたい事を聞くことにした。
「ゲルニカ…教えてくれないか。あの剣竜に乗り移ったあれはもしかして…」
『新たなる誓約者、貴方の思っている通り我の体を取り込もうとしたあれは幻獣界の意思、そのものです』
「……やっぱりそうだったのか」
メイトルパのエルゴ…、前にメイメイさんが言っていた四界のエルゴが敵意を持っているって話だったよな。
結界にヒビが入ってるせいで剣竜に介入して俺達を倒そうとしたのか…。
『誓約者よ。貴方も考えているでしょうが、エルゴの目的は貴方を排除する事。誓約者さえ消せば結界を修復することは出来ません』
「じゃあ、他のエルゴの守護者たちの所にも…?」
『それは分かりません、ただ他のエルゴの介入は既に行われているはずです』
「他のエルゴの介入…?」
『我が眷属の目を借りて見たあの男の持つ至竜、あれはロレイラルのエルゴより渡されたもので間違い無いでしょう』
「あの男…?」
――界の意思より使命を授かりし…
脳裏をよぎったのはゼルゼノンを召喚したソルの姿、
つまりソルが得たゼルゼノンはロレイラルのエルゴから授かったという事だ。
ソル・セルボルトの目的は…。
「結界の破壊…?だけどソルは魔王召喚が目的のはずなのになんで…」
『そのソルと言う男が何を企んでいるのかは我には分かりません。しかし目的は間違いなく結界の破壊に繋がるでしょう』
ハヤトはその答えにこくりと頷く、
ソルの目的が魔王召喚なのか結界の破壊が目的なのか、
どちらにしてもこのまま放っておけば結界は壊れる。
そしてクラレットの命も…。
「どちらにしても俺はクラレットを守らなきゃいけないんだ、相手がエルゴだって…!」
『それは慢心です。誓約者よ。貴方一人の力ではどうあがいてもエルゴには打ち勝てません、今回も多くの召喚獣、そして…』
「マスター…」
『貴方を守ろうとした小さな勇気の事を忘れないでください』
「そう……だよな。モナティやカザミネさんに召喚獣の皆のお陰だだよな」
「それだけじゃないですの、ゲルニカさんも協力してくれたんですの!」
「…だな」
ゲルニカがメイトルパのエルゴを押さえててくれたことで何とか勝つことが出来た。
そうだよな、ここにいる皆のお陰で今回の戦いに勝てたんだ。
「皆で力を合わせればエルゴにだって勝つことが出来る…そういう事だよな」
『その絆を忘れないでください、では我が試練を乗り越えし誓約者にその証を渡しましょう』
ゲルニカの体から緑の粒子がハヤトの体に入り込んでゆく、
そしてハヤトの胸の中で暖かい何かが燃え上がるのを感じるとった。
「これが…メイトルパのエルゴ…」
『幻獣界メイトルパのエルゴ、その欠片です。今の貴方ならその力に振り回されないでしょう』
「剣竜殿、ハヤト殿は操られたりしないでござるか?」
『それなら心配はありません、彼の体の中のリィンバウムのエルゴが彼を守ってくれるでしょう』
「よかったですのー」
緑の粒子がハヤトの体に全て入り込んだ後、
ゲルニカの亡骸はいまだ残っていた、
紅い粒子がゲルニカの亡骸から出てきて今度はモナティの周りに集まり始める。
『モナティ』
「は、はいですの!」
『よく勇気を出して我が身を止めてくれました、礼を言います』
「そんな事ないですの、モナティはただマスターを助けたかっただけなんですの」
『その願いの為に命を懸ける者はそうそういません、それが出来た貴方は立派な誓約者の護衛獣でしょう』
その言葉にモナティは感傷深くとても嬉しく感じていた。
自分の振り絞った勇気、それが偉大な至竜に認められたことが嬉しかったのだ。
自分は立派な誓約者の護衛獣、そう改めて認められる事がとても満ち足りていた。
『そんな勇気を振り絞った貴方に頼みがあるのです』
「モナティに…ですの?」
『我が身は直にメイトルパへと還らなければなりません。モナティ、貴女には私の代わりにメイトルパのエルゴの守護者として誓約者を支えてほしいのです』
「モナティが…メイトルパのエルゴの守護者に!? そ、そんなの無理ですの!」
「無理なんかじゃないよ。モナティ」
「その通りでござる、モナティ殿は十分にその資格があるでござるよ」
「マスター…カザミネさん…」
『モナティ、我が頼み、聞いてもらえますか?』
エルゴの守護者、それがどれだけ重いモノかモナティでもわかる。
その重圧に自分は耐えられるのか、それをモナティは考えていた。
そんなモナティの頭に手が乗せられて撫でられる、ハヤトだ。
「あんまり難しく考えなくていいんだぞ?」
「マスター、そうですよね…。そうですよね!」
モナティが一歩ゲルニカの前に歩き手を広げる。
「ゲルニカさん、モナティ。マスターの為にエルゴの守護者になりたいんですの!」
『……』
「モナティは世界を守るとか守護するとか良く分かりませんですの。でもマスターの為に力が欲しいんですの!」
『分かりました。モナティ、貴女には我が力を受け継ぐにエルゴの守護者として認めましょう。さあこの力を受け取りなさい』
その言葉共にゲルニカの亡骸が粒子に変化してモナティの中に入り込む。
紅い粒子をその身に宿したモナティは全身から紅いオーラを纏い始めた。
「す…凄いですの。これがゲルニカさんの力なんですの!?」
『今はまだ全てを扱えるほどの力を貴方は持っていません、しかし今でも十分に誓約者の力になれるはずです。レビットのモナティ、新たなるメイトルパのエルゴの守護者として誓約者を支えるのです』
「はいですの!モナティ精一杯頑張りますの!」
『期待していますよ。我が力、必要な時は何時でも呼ぶのです。我が真の名はゲルニカ、剣竜ゲルニカ。我が力も必ず貴方達の力となるでしょう』
そう告げるとゲルニカの存在が消えるのを感じ取った。
だが代わりに俺達の心にはゲルニカの真の名が刻まれているのを感じ取る。
新しい力とゲルニカはきっと頼もしいモノであると理解出来た。
「マスター」
「ん?」
「まだまだ未熟な守護者ですけど、よろしくお願いしますの!」
「ああ、こっちこそよろしくな、モナティ」
「はいですの!」
こうして予想外の介入があったものの、メイトルパのエルゴの試練は終わりを告げたのだった…。
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翌日、俺達は次なる試練の場へ向かう事にした。
まだ体の疲労がかなり残っていたが、それでも時間は残っていない為、無理を押した。
そして、それはカザミネさんとの別れを意味してもいた。
「カザミネさん、本当にありがとうございました。カザミネさんが居なかったらきっとエルゴに俺たちはやられてたよ」
「短い間でしたけどありがとうですの。カザミネさん」
「………」
「カザミネさん?」
「ハヤト殿、実は頼みがあるのでござる」
「頼みですか?」
神妙なおもむきでカザミネはハヤト達を見据えている。
「ハヤト殿たちの戦いに拙者も加えてほしいのでござる」
「カザミネさんも一緒に来るんですの!?」
「それは頼もしいけど…だけど分かっているんですか」
「無論、剣竜の言っていた事が真実ならこの世界の危機なのでござろう?」
「それはそうですけど…でも、大きい目で見ればシルターンには関係ないことで。それにカザミネさんだって、元の世界に帰れるようになるかも知れないんですよ?」
「それは拙者にお主達を見捨てろと言う事でござるか?」
「!?」
目つきが鋭くなったカザミネはハヤトを睨んでいる。
「それは侮辱でござるよ。確かに同郷の者たちが元の世界に帰れる機会を奪うという事に繋がるのは少し気が引けるでござるが、それがお主達を見捨てるという事には繋がらないでござる。ハヤト殿がこの世界を守ろうとしているのは良く分かっているでござる。この世界に守りたいものが沢山いるのでござろう?」
「……はい」
「なら拙者もその力になりたいのでござるよ。これも縁でござるよ」
「それが命懸けだとしてもですか?」
「無論」
笑いながらだがカザミネさんのその決意に揺るぎない意志を感じ取った。
俺はそんなカザミネさんに手を差し伸べる、そしてカザミネさんも手を出して握手をした。
「カザミネさん…ううん、カザミネ。きつい戦いになると思うけど力を貸してくれ」
「当然でござるよ。拙者たちは仲間なのでござるからな」
「よろしくお願いしますの!カザミネさん!!」
俺達は再び歩き出した、先ほどよりも疲労は薄れている感じがする。
多分気のせいなのかもしれないが、新しい仲間が出来たことが嬉しかったのだろう。
シルターンの侍、カザミネ。きっと俺達の力になってくれると確信できた。
そして俺は一番近いエルゴの気配を感じ取る、その方向へと歩き始めたのだった…。
モナティがエルゴの守護者になるのは最初から決まってました。
2では妙に弱いですけど、1だとPT屈指の火力キャラなんですよね。
追加のエルゴの守護者もきちんと考えてありますので期待しててください。
まあ、たぶん予測は皆さんついてると思いますけど…。
とりあえず今年はこれで投稿は終わる予定ですかね。来年もよろしくお願いします!
(実は一年かからずに終わると思ってたけど以外に長くなってしまった…。ミニス編削れば…ないな)