サモンナイト ー生贄の花嫁ー   作:ハヤクラ派

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今回も被害者は日比野絵美です。
自分の中では泣き虫の友達思いの女の子という設定です。
しかしクラレットの性格がいまいち落ち着かない…。


那岐宮怪綺談2

 

 

『鏡』

 

 

 鏡は人を写すものである。

 だが古来より鏡には別の意味を持つ伝承が伝わっている。

 曰く、鏡は冥界に繋がっている。曰く、鏡は人の心を写す。

 曰く、鏡は異界へと繋がる門である、そして鏡には何かが潜んでいる……。

 

 ここは人の通らない十字路、電車の音が聞こえるが少し入り込まないと通れない路地裏。

 そこの一つのカーブミラーが存在した。汚れいつ使われるかもわからない鏡がそこに存在した。

 その鏡に一つのナニカが映り始める、血のように赤い姿をした人影が写っていた。

 だが、その鏡が映す場所には誰も居なかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 コツコツと十字路で響いていた。遠くからは車の音が聞こえている。

 

「今日は部活きつかったですよー」

「お疲れ様、絵美ちゃん」

 

 歩いているのはクラレットと日比野絵美の二人だった。

 季節は8月二人は夏休みの最中だった、にも拘らず二人が学校に行っている理由、

 それはクラレットは補修で絵美は部活だったのだ。

 

「そういえば絵美ちゃんって何の部活に入ったんですか?」

 

 クラレットはふと気になった、絵美が何の部活に入ったの聞いてなかったからだ。

 

「最初はお料理部とかあればよかったんですけど無くて、体動かすのも苦手で…」

「運動得意じゃないもんね。絵美ちゃんは」

「うぅ~、それでここ最近怖い事続いたんで耐性を付けようと思ってオカルト同好会を作ったんです!」

「……そう」

「はい!望月君に春奈と克也に入ってもらってるんですよ」

「あれ?西郷君はバスケ部じゃなかったでしたっけ?」

「えっと…掛け持ちで…」

「それならまあいいですけど…、それでどうしてオカルト同好会?」

「私怖がりだから、その…少しでも改善したくて…」

(気持ちはわかるけど、どう考えても逆効果のような気がすんですよねぇ)

 

 絵美は生粋の怖がりだ。憶病で些細なことで驚いてしまったりする。

 そんな絵美がオカルト同好会なんてもの作ってもさらに怖がってしまうのは確実だとクラレットは考えていた。

 

(でも絵美ちゃんがやる気を出してるなら気にしないでおこ)

 

 だがあえて放っておく、それもまた優しさだ。

 

「そういえば、先輩は部活とか入らないんですか?前にあみぐるみ部作るとか言ってたじゃないですか」

「懐かしい話を、そうですね。補習もあるしやる事も多いですからね。今年は出来そうにないですよ」

「そうなんですか、そういえば勇人先輩も部活してないですよね?」

「勇人は所属はしてるんですよ。でも問題があって…」

「問題…?」

「強すぎて…」

「あぁ~」

 

 強すぎる問題、単純に死線を潜り抜けてきた勇人はバスケでは強くなり過ぎたのだ。

 勿論補習の時間もないが、それでもバスケが強くなりすぎるのは問題だと自身で判断した。

 今では時折、手伝いなどをしてるぐらいだ。試合には自分から出ていなかった。

 

「なんか色々と大変ですね」

「でも…毎日が楽しいですよ?」

「それは良かったです♪」

「……ずっと続けばいいのになぁ」

 

 ずっと平和な日々が続けばいい、そう思うがきっとそうはいかないのだろう。

 那岐宮の異変ももちろんあるが、いずれリィンバウムのゲートは開かれる。

 その時自分達が何をするかはまだ考えてはいないが、きっとここを離れるのは明白だった。

 

「先輩…」

 

 穏やかだが遠い目をしているクラレットを絵美は見ていた。

 またあの日の様に消えてしまうような気がした。

 それは怖かったが、それが必要な事と絵美は理解しようとした、そして…。

 

 ――――――

 

「?」

 

 絵美は誰かに呼ばれたような気がした。

 足を止めてきょろきょろと周りを見る絵美。

 周りを見ているとふとカーブミラーが目に留まり赤い何かが映ってる気がした。

 しかしもう一度確認するとそこには何も映っていない。

 映っていると思える場所を自身の目で確認してもそこには何も映っていはいなかった。

 

「気のせいかな…?」

「絵美ちゃん?どうしたんですか?」

「あ、先輩。誰かに呼ばれたような気がしたんですけど、気のせいだったみたいで」

「疲れてない?大丈夫?」

「はい、大丈夫です!行きましょう」

 

 絵美がクラレットの手を握り歩き始める。

 先輩に自身の勘違いで迷惑をかけてはいけないと絵美は思っていた。だから気づかなかった。

 

「…………」

 

 クラレットが冷たい視線で後ろに映るカーブミラーを睨み付けている事を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「怖かった…怖かったよぉ…」

 

 帰り道の十字路付近を歩いている絵美、絵美は怯えていた。

 

「あんなフリーゲームやるんじゃなかった…」

 

 オカルト同好会の活動の一環でホラーフリーゲームを全員でプレイしたのだ。

 無論ちゃんとした部活動としてどう恐怖したのかをレポートに纏めてたりした。

 

「なんで春奈は面白がって、望月君は興味深いなんて言うのかなぁ」

 

 結局怖がったのは絵美だけだった。もちろんこれには理由がある。

 命は普段から幽霊やらを毎日のように見てる為、ホラーに恐怖は湧かない、むしろ興味深いと感じるのだ。

 ちなみに春奈は単純に怖いという考えかたが人と違っているだけだった。

 つまりホラーゲームをやって怖がるのは絵美だけだった。

 

「どうしようかなぁ、解散…ダメダメ!頑張って耐性を付けるって決めたんだから!!」

 

 怖がりを直す、その為にグッと両手を握って絵美は力を籠める。

 せっかく命や春奈が力を貸してくれているのだからそれに報いなければと。

 しかし当の二人は治るはずがないと思っているのを絵美は知らなかった。

 

「でも今日も暑いなぁ、景色が歪んで見えるよ」

 

 道が歪んで見えてくる、今日は暑かった。暑いのだが……寒い。

 背筋が凍りそうな視線を絵美は感じていた、ホラーゲームをやった影響?いやそれとは別に…。

 

「…?誰かいるの…?」

 

 周囲を探る絵美、どこからか視線を感じる。

 絵美は恐怖する、目に映らない視線に恐怖していた。

 何とか必死でそれを探り当てようとする、そして見つけた…。

 

「なに…あの人…」

 

 カーブミラーの後ろ、ビルの駐車場の入り口付近で誰かがこちらを覗き込んでいた。

 ぼさぼざの黒い髪、そして血の様に赤いワンピース。

 普通ではない、普通の恰好ではない、絵美は一目で理解した。

 

 ――あれは危険だ。

 

「!!!」

 

 絵美は走り出した。持っているかばんを落としてしまったがそんな事に意識を向けられなかった。

 すぐにクラレット先輩の下へと行かなければマズイ、そう絵美は直感で理解した。

 走る、走る、走る、絵美は走り続ける、とにかくここから逃げないとと思い走る続ける。

 

「はあ!はあ!はあ!ああああぁぁぁーーー!!」

 

 足がすくむ恐怖を叫び声をあげて無理矢理押さえつける。

 勘違いならいい、気のせいならいい、おかしいのは自分だけならいい、そう思う。

 それならそれで全部終わりだ、おかしい人間が一人いただけで終わりだ。

 そんなことを考えながら絵美は走り続け、何かに足を引っかけて転んだ。

 

「痛った!?つぅぅ~~~!」

 

 膝をすりむき痛みが走る、自分は何を蹴飛ばしたのか、視線を向ける。

 

「………え?」

 

 自分が蹴飛ばしたのは自分が落としたカバンだったのだ。つまり自分はいる場所は…。

 

「戻ってきた…?」

 

 ありえない、ありえるはずがない、自分は真っすぐ走る続けた。元の場所に戻るわけがなかった。

 だが現に自分はここに居る、自分の落としたカバンが自分のいる場所の証拠だった。

 

「ひっ」

 

 カバン付近に足が見える、傷だらけの素足だった。

 赤い血が滴り、つい先ほどから出血したかのように血が出ている。

 視線を上げたその先に赤い女が立っていた。

 

「!?」

 

 体を起こして絵美がその場から逃げようとするが、それをすぐに意味をなくす。

 絵美の目の前に赤い女が立っていたのだ、左を見る赤い女が、右を見るこっちにも赤い女が。

 

「あ、あぁ…!?」

 

 徐々に赤い女が近づいてくる、絵美は携帯の入っているかばんに手を伸ばしたいがそれは女の後ろにあった。

 やがて女たちは絵美に覆いかぶさるように押さえつけている、そして絵美は…。

 

「やだ、やだぁぁぁぁーーー!!!!」

 

 女たちから黒い靄が絵美を包み込み、絵美の発していた悲鳴は消えてゆく。

 そしてその十字路にはカバン一つしか残ってはいなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ------------------------------

 

「……こ…こ…どこ?」

 

 絵美は何もない黒い部屋にいた。

 暗くはない、ただ黒いのだ。

 そこにいる自分は何も感じない、まるで時が止まっているように感じていた。

 

「でなくちゃ、ここからでなくちゃ…」

 

 とにかくここから出よう、目の前に鏡のようなものから向こうの光景が映っている。

 そこに飛び込めば出れる、なぜだかそんなことを理解した。しかし…。

 

「え!?動かない!体が動かない!誰か助けて!克也!先輩!お父さん!お母さん!」

 

 必死に助けを求める絵美だが誰もその声は届かない。

 

「誰か、誰か助けてよぉー!」

 

 絵美が必死に叫ぶが誰も絵美の声は届かない…。

 黒い部屋の中で何も出来ずに絵美は泣き叫ぶ事しか出来ない…。

 そしてそれを見てニタリと笑う影が彼女を覗いていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「もうお昼かなぁ…」

 

 あれから丸一日経ったと絵美は思った。

 時間が止まったように絵美の体には変化がなかった、お腹も減らないしトイレにも行かなくていい。

 だけど指一本動かす事が出来ず動かせるのは顔のみであった。

 ずっと目の前の光景を見てて絵美はある事に気づいた。

 

「ここってやっぱりカーブミラーの中なのかな…」

 

 自分の見ている光景があのカーブミラーと正反対だったのだ。

 鏡故に正反対になっている事を考えると自分が鏡の中にいるから正面に見えると理解できた。

 

「入れ替わり…なのかな、鏡の中の自分と入れ替わってそれで…」

 

 どこかの怪談で読んだ鏡の中の自分と入れ替わる話、

 最初は言う事を何でも聞く鏡の中の自分だったが、どんどん自由になる鏡の中の自分に成り代わられてしまうという結末。

 もしかして外の世界には自分の偽物が居るのかもしれない、誰も私を助けてくれないのかもしれない。

 そんな恐怖が絵美の心を削ってゆく、再びガクガクと口が痙攣し始めて涙がこぼれてくる。

 

「やだよぉ……やだよぉーー!!帰りたいよ!皆の所に!出してよ!ここから出してよぉー!!」

 

 叫び始める絵美だったが現実は非常だった、指一本動けずにずっとここに居るのではないかと思ってしまう。

 そして絵美にさらなる絶望が襲い始めるのだった。

 

「……ぁ、あ!先輩!クラレット先輩!!」

 

 鏡の中にクラレットの姿が映されたのだ。

 絵美のカバンを持ちながらキョロキョロ何かを捜し歩いている姿が見える。

 絵美は気づいてもらいたい一心で叫び始めた。

 

「先輩!私ここです!ここに居るんです!先輩!先輩ぃぃ!」

 

 クラレットは何かに気づいたように鏡を覗く、ジッと鏡を見つめていた。

 

「先輩!クラレット先輩!」

 

 気づいてくれる、あの人なら気づいてくれる、自分を見つけ出してくれる。

 そう絵美は信じていた、信じ切っていただからこそ……。

 

「……え、先輩?」

 

 そこから去ろうとするクラレットの姿を信じられなかった。

 

「先輩…?どこ行くんですか?私ここに居るんですよ?」

 

 鏡から見切れるように歩き始めるクラレット。

 

「先輩!待ってください!お願い先輩待って!?」

 

 そしてクラレットの姿が鏡に映されなくなる…。

 絵美の心はヒビが入り始める…。

 

「嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ!!こんな所に居たくない!お父さんの料理手伝いたい!お母さん会いたい!克也に春奈に望月君に…皆に皆に会いたいよぉぉぉぉーーー!!出してよ!ねえ出してよ!!うわあぁぁぁーーーーん!!」

 

 幼子の様に泣き叫ぶ絵美、もう自分は助からないと思ってしまった。

 そしてそれを待っているモノが絵美へと近づいてくる…。

 

「ひっぐ…えっぐ……ぇ?」

 

 鏡にあの赤い女が立っていた、ヒィと絵美が息をわずかに吐き出して飲み込んだ。

 ゆっくりと…ゆっくりと…こちらに歩いてくる…。

 

「来ないで…来ないでぇ…!」

 

 もう絶望しかない、希望は潰えた。

 目の前の恐怖の化身に自分は何も出来ずの終わりを迎えられてしまうと確信する。

 

「……何持ってるの?」

 

 赤い女は手に大きな石を持っていた、歩きながらそれが大きく上げられる。

 何をするのか、絵美は理解した。自分のちっぽけな希望を粉々にしようとしているのだと。

 

「やめて!!」

 

 ガシャーン!とガラスの割れる音が響き渡る。

 目の前のカーブミラーが粉々に壊されたのだ。

 

「ぁ……ぁぁ……」

 

 自分のいた世界を絵美はもう見えなくなった。

 自分を繋ぎとめていた心はもう無くなってしまった。

 自分の顔に絵美は手をやり頭を抱え込んだ……。

 

「え?」

 

 動ける、動けるようになっている。

 嬉しいはずのそれがなぜ今になって動けるようになったのか絵美は考えた。

 考えて気づいた、動けないのは自分だけではない、この部屋のもの全てが動けなくなっていたのだと…。

 

 ――――――

 

「ぁ…嫌ぁ…」

 

 息遣いが聞こえる、何かが自分の後ろにいる。

 振り向いてはいけない、振り向いたら終わってしまう、そう理解してるはずなのに…。

 絵美の体が自分の意思とは別に動き出す、そして絵美は見てしまった。

 

「やだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!」

 

 それを見た時、理解し恐怖し絶望した、もう帰れなくなったと。

 もうあの日々は帰ってこないのだと。そう解ってしまった。

 絵美は永遠の暗闇に捕らわれるのだろう、これからもずっと…ずっと………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた…」

 

 絵美を襲っていた化け物の肩に何者かの手が置かれる。

 ギロリと首を動かしてそちらを見ると化け物の動きが止まった。

 そこには紫色の電撃を左手から発しながらその目に冷たい視線を浮かべたクラレットが居たのだ。

 

「私の後輩に何してるんですか?」

 

 それが化け物の最後の意識だった。

 バチィ!と破裂する音と共に化け物の意識は永遠の暗闇に落ちていったのだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ------------------------------

 

「先輩!!先輩!!うわぁ~~~ん!ありがどうございます~~!!」

 

 ボロボロと大粒の涙を止めどなく出しながら絵美はクラレットのしがみ付いて泣いていた。

 そんな絵美をクラレットも抱きしめて背中を擦ってあげていたのだがどこか複雑な表情を浮かべていた。

 

「私、先輩が居なかったらあの化け物に……ぅぅ!」

「……絵美ちゃん」

 

 泣きつく絵美を剥がしてクラレットは絵美と顔を合わせる。

 

「先輩?」

「私……絵美ちゃんにお礼を言われる資格はないんです」

「え?だって先輩は私を助けてくれたじゃないですか!」

「違うんです。私は………絵美ちゃんを囮に使ったんです」

「囮…?」

 

 こくりと頷くクラレットに絵美は何か思う事はなかった。

 友人の為にどこまでも頑張ってくれるこの先輩にやる事にきっと意味があったんだろうと絵美は考える。

 

「この前、ここを一緒に通った時に私は実は気づいてたんです」

「この前って……もしかしてつい先日の!?」

「はい。あの時、何かが絵美ちゃんを狙っている事には気づいてました。だけど巧妙に隠れていて此方から襲う事は出来なきなかったんです。もし逃せば予想もつかない場所に隠れられる気がして、それで狙われている絵美ちゃんを囮に使う事を思いついたんです……ホントろくでもない人ですよね」

 

 自傷気味に笑うクラレット、彼女は自分の思いついた考えは正しいと理解はしていた。

 だがそれが人としてどうなのか、きっと人としては大きく間違っているだろうとわかっている。

 こんな考えを否定しながらも実行してしまった自分はやはり普通の中で生活する事なんて……。

 

「私は天秤に絵美ちゃんを賭けて効率を選んでしまった。もしかしたらという可能性があったにも関わらずそれを勝手に否定して絵美ちゃんを囮に使ったんです。本当に…本当にごめんなさい!」

「………せんぱい」

 

 頭を下げるクラレットに絵美はぽつりと呟く。

 クラレットのやった行いは正しい、しかしそれは正しいだけだった。

 9を取り1を捨てる、自分はその1に選ばれたんだと理解した。

 絵美はクラレットを罵倒する権利がある、クラレットを否定することが出来る、だけど…。

 

「先輩、顔を上げてください」

「……絵美ちゃん」

「ありがとうございます」

「…え?」

「先輩は私を助けてくれたじゃないですか。それに少し怖かったですけど、あの時化け物相手に本気で怒ってくれたんですよね?先輩は私の事を想って怒ってくれたなら許します」

「でも、でももしかしたら絵美ちゃん死んでたかもしれないんですよ!?」

「あの道、前からずっと通ってましたし。先輩が気づかなかったらきっと私殺されていたと思うんです。なら先輩のおかげで助かったじゃないですか!」

 

 涙腺を浮かべながら笑みを浮かべる絵美、

 クラレットが不安になっているのを必死に和らげようとしていた。

 

「先輩は確かに変わったかもしれないけど、それでもクラレット先輩はクラレット先輩です!私や克也の命の恩人なんです」

「絵美ちゃん……うん」

 

 クラレットは変わった。

 だけど今まで付き合って来たクラレットと別人になったというわけではない。

 それを知ってるから絵美は今のクラレットを受け入れる事が出来た。

 クラレットはそんな絵美の想いに救われていた。自分のしたことは間違っているかもしれないだけど許してもらえた。

 

「ありがとう絵美ちゃん」

「先輩も助けてくれてありがとうございます」

 

 互いに許し合い、二人は再びわかり合えた。

 これでこの悪夢は終わりを迎えるだろう、そうこのまま終われば…。

 

「……」

「先輩…?」

 

 クラレットの表情が強張る、再び化け物と対峙しているときの雰囲気を発していた。

 普段彼女が決して見せたりしないその姿に絵美は僅かばかりの恐怖を感じる。

 そして立ち上がり後ろを振り向くとクラレットは答えた。

 

「いい加減苛立っているんですよ。ずっと私を監視してたみたいですけどそれに気づかないと思っていたんですか?絵美ちゃんを囮に使えば動くかと思っていましたけど何の反応も示さないのは少し以外でした」

 

 落胆するように語るクラレット、彼女の先ほどの説明で絵美は発言に対して何も思わなかった。

 コツコツと物陰から人が出てくる、その服装から絵美は彼が那岐宮中央高校の学生だと理解する。

 

「新しい担任や保険医と一緒に妙に監視してくる事情は理解できます。この街の突然の異常、そして突然力を付けた私や勇人、関係がないとは断言できない」

「――――」

 

 男は腰に下げた鞘から刀を抜き始める、それを見た絵美はぞくりと恐怖する。

 

「そしてその考えは正解です。私達は関係してます………いえ、私達がこの異変の元凶です」

「え?」

 

 絵美は今クラレットが言ったことを理解できなかった。

 

(先輩達が今まで起こった事件の元凶?だったらなんで…)

 

 なんで自分達で事件を解決しようとしてるのか、そこに疑問が湧く。

 だがそれ以上に今は目の前の人物に驚いていた。

 

「さあ、あなた方が知りたがっている事は答えました。今度はこちらから聞きます。貴方は何者なんですか―――籐矢!」

「……君達を不快にさせてたなら謝ろう、だが気づいていたからには放置は出来ない、一緒に来てもらう」

「出来ないと言ったなら?」

「それは分かってて聞いているのか?」

 

 刀が僅かに煌めく、クラレットはその物腰から目の前の人物が今まで接していた籐矢とは別人だと理解する。

 自分と同じ、裏の顔を持つ人物。自分とは違いそれは洗練されている人物。

 無意識に指と指の間に電気が迸る、クラレットは確信した。この場で戦う事になるだろうと。

 そしてそれが新しい戦いの幕開けになる、そう彼女は思っていた…、しかし。

 

 ―――ぶ~~!ぶ~~!

 

 クラレットの鞄の中からバイブ音が鳴り始める。

 それはクラレットの携帯だった、なる人物は限られている彼女の友人だ。

 

「………絵美ちゃん、電話に出てくれませんか?」

「え?」

「お願いします」

「は、はい!」

 

 もし勇人なら、この状況を打破できるはず。クラレットはそう考えた。

 目の前の籐矢もそうだ。今この場で戦うのは正直な話望んではいなかった。

 そして携帯を取り出した絵美がボタンを押して携帯に出た。

 

『クラレットか!?今どこにいるんだ!』

「せ、先輩!?どうしたんですか!?」

『その声絵美か?なんでクラレットの携帯を持ってるんだ?』

「クラレット先輩なら私の隣にえっと………今手が離せないみたいで」

 

 もしこの場で籐矢と対峙していると答えたら勇人は混乱する、

 そう配慮した絵美はそこをぼかして勇人に伝えた。

 勇人は絵美にスピーカーにしてくれと頼んで絵美はスピーカーのボタンを押した。

 

『クラレット聞こえるか!?』

「聞こえていますよ」

 

 焦ったように話す勇人、クラレットは冷静にそれに応えた。

 とりあえず自分の状況よりもひどくはないだろうと考えている。

 だが、それはすぐに裏切られた。

 

『今街で化け物が集団で暴れてるんだ!もう何人も殺されてる!すぐに来てくれ!!』

 

「「「!?」」」

 

 それは彼らの物語が再び書き出される兆しだった。

 まさに番外編と呼ばれる物語が動き始めたのである……。

 




ホラーとか恐怖話とか自分は苦手であんまり読み漁ったりしないんですよねぇ。
まあもう夏なのでそういうイベントも多くなってきますかな。
ちなみに気が付いている人はいると思いますけど、
今回の話は日常浸食系ホラーゲーム『つぐのひ』の二話です。前回は一話。
バットエンドの話だったんですけど、まあぶっ壊そうと思い執筆してました。
やり直してましたけど何回もやるのが辛かった…。
では次回をよろしくお願いします。


※十字路の悪霊

元々は鏡好きの女性だったが手鏡を持ちながら歩いていたら十字路で引かれて死亡。
その後、カーブミラーの中でそこを歩く女生徒を恨めしく見てる毎日だったがサプレスのエルゴの影響で活性化した。
最初に絵美を狙ったがそれが運の尽きだった。
最初の段階でクラレットの感づかれ、あと一歩のところで葬られた。
ちなみに籐矢は三日目から気づいていたが、クラレットの事を調べる為、監視だけしていた。
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