サモンナイト ー生贄の花嫁ー   作:ハヤクラ派

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※注意『初めて(二人が)見た笑顔』

ネタが殆どないのですよ…。
お題が家のハヤクラに合ってない不具合。


初めて見た笑顔

 

額に汗が滴る、みーんみーんとセミが喧しく鳴いている。

勇人たちが通う那岐宮中央高校の近くの公園に三人の人影があった。

制服を着て汗を流す新堂勇人、制服ではなく涼しそうな私服を着ているクラレット。

そして……。

 

「……(もぐ…もぐ…」

 

勇人の腰ほどの大きさしかない幼い少女がそこに居た。

銀髪で銀の瞳をし、大げさな眼帯を付けている幼い少女が。

不服そうな顔であんパンを食らう少女、どうやら好みに合わなかったようだった。

 

「な、なあどうする?」

「どうしましょう…?」

「…?」

 

彼らと銀髪の少女デュウ、その邂逅を説明するには少し時間を遡らなければならない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「暑っつ…」

「このまま10年後には40℃超えるんじゃないんですか…?」

 

喧しいセミが鳴き喚き打ち水をしている人が勇人たちの前に見える。

だがアスファルトに打ち水したところでジュっと蒸発するだけだった。

 

「知ってますか…?」

「なにを?」

「打ち水ってアスファルトじゃなくて地面にするもんなんですよ?アスファルトにしても意味がないんです」

「まさに焼け石に水って事か…」

「うまいですね」

「考える気力もわかねぇ…」

 

夏の真っただ中の日曜日、なぜ二人が外を出歩いているのかと言うと補習である。

リィンバウムに二か月以上離れていた二人はどう考えても出席日数が足りずに留年確定であったのだが、

色々な事情でこの一年、ほぼ補習に費やせば何とか進級させて貰えるそうだった。

とは言ってもクラレットはサクサク終わらせるのだが勇人に至ってはやはり時間が掛かってしまう、元々勉強は不得意だったのだ。

 

「だから午後じゃなくて午前中に行けば楽だったじゃないですか、なんで午後を選んだんですか」

「の…のんびりしたくてさ…」

「はぁ…付き合う私の身にもなってください」

「付き合うって、クラレットも補習だろ?」

「私は勇人の五倍の速さで終わらせるんですけど?」

「頭の出来が違う…」

 

やはり天才、そう確信した勇人はやがて見えてくる那岐宮中央高校に足を進める。

そんな必死で歩く姿を涼しそうな服装をした夏美が家の二階の窓から眺めていた。

 

「夏ねぇ~、まあ私はのんびり出来るからいいんだけど…!」

「夏美ー!宿題やったのー!」

「………やったー!」

「嘘おっしゃい!」

「あはは…、今やりまーす!…はあ」

 

まだ半月もあるんだから別にいいじゃんと夏美は思う、

だがやる時やらなければ勇人以下だ、流石に勉学で負けたくはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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補習が終わった。

既に空は夕方に近づき始め暗くなり始めている。

現在の時間は午後4時、3時間も勇人は補習を受けていた。

そのくせにセミが鳴き喚き、いまだに熱い。

 

(結局クラレットの奴先に帰ったのか)

 

なんか用事を思い出したのかクラレットが先に帰ってしまった事を勇人は気にしている。

まあ、補習をすんなり終えなかった勇人が悪いのだがそこは実力の問題だった。

そんなことを考えながら勇人が道を歩いていると不意に魔力を感じ取る。

 

(……サプレスの魔力?)

 

霊界サプレス、リィンバウムを中心に4つある異界の一つ。

その魔力を感じ、すぐに思いついたのがサプレスのエルゴの力を持つクラレットだったが、

クラレットは魔力を完全に制御化に置いてる為、魔力を漏らす事はないはずだ。

戦いで魔力を使わなければならないのかと勇人は思ったが…。

 

(荒々しくない…、単純に漏れているって感じだ…)

 

例えば蛇口が少し空いている、そんな感じで漏れている魔力、

そんな事を考えながら勇人は学校近くの公園へ足を進めた。

 

(まさかサプレスの悪魔か天使が来たってわけじゃないよな…)

 

召喚獣がこの世界に来たのならそれはそれで問題だ。

異界と繋がり合った事もあるが、一番は天使と悪魔が精神生命体だからだ。

こんな魔力が殆どない世界ならそのまま消滅してしまう危険性があった。

 

 

(その時はクラレットに伝えてすぐに保護しないとな……ん?)

 

勇人は見た…強大な悪魔の姿を、赤黒い魔力を抑え込もうと小さな幼子が目を抑えてる姿を。

勇人にはそれが悪魔の様にしか見えなかった、そしてその悪魔の姿を勇人は幻視したのだ。

 

「ば、バルレル!?」

 

魔王バルレル、勇人ではなくモナティとアカネが戦ったサプレスの悪魔王の一角。

なぜか勇人にはそのバルレルの姿に見えた、

そして僅かに敵意を勇人が発した時、少女が反応した。

 

「!!!」

「くっ!?」

 

赤い閃光が勇人を貫こうと迫る、躱そうと一瞬思ったがここは学校の傍、

もし迂闊に躱して一般人に被害が出ればそれこそ目が当てられない。

勇人は魔力を集中させてその手にシャインセイバーを生み出して攻撃を防いだ。

 

「うわぁぁぁぁーーーっっ!!!」

「やっば…!?」

 

防ぐまでは良かった、だがこちらが行動できない、

魔力の少なく、リィンバウムとの繋がりが薄い那岐宮では勇人は誓約者としての力はほぼ使えない。

目の前の魔王の力を振るう少女に対し対抗するには力不足だった。

だが、勇人はリィンバウムにおいて数多くの戦いを潜り抜けた戦士だ。

目の前の力を振るうだけの少女にやられるほど弱くはない。

 

「シャインセイバー!」

「うぅっ!?」

「ヴァインシェード!!」

「!?」

 

光将の剣影が少女の足元に突き刺さると爆発して動きを制限させる。

その瞬間を勇人は逃さない、すかさず白亜の縛布召喚して少女を雁字搦めにしてしまう。

その際、顔の向きを空へと向けておく、光線は目から出されてた。

つまり顔を空に向ければ攻撃は自分には当たらないという事だ。

 

「聞かせてもらうぞ、お前は何なんだ?なんでバルレルの魔力を持っている、どうして俺を攻撃して来た!?」

「………あ」

「答えてもらうぞ!」

「なにしてるんですか?」

 

ぞくりと悪寒が勇人を貫いた、後ろにゆっくりと振り向くと…。

そこにはクラレットの姿があった、怒っている、間違いなく怒っている…。

 

「い、いや俺は別に何も…」

「……なんで幼い子を縛り上げて押し倒してるんですか?」

 

アウトだ、完全にアウトだった、どう考えても召喚術を悪用した犯行現場だった。

こんな時、勇人が取れる唯一の方法は一つだけだった…。

 

「す」

「す?」

「すいませんでしたーー!!」

 

それは土下座、素直に謝る、それが最善の道だと勇人は信じて疑わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「大丈夫?平気?怖いお兄さんは反省したから許してあげて?」

「怖いって…」

「黙っててください」

「…はい」

 

女の子はクラレットの手を握り立ち上がる。

だが何かに気が付いたのか膝に手を付いた。

そして勇人の方を見ると口を開いた。

 

「絶対に許さない」

「え!?」

「勇人……諦めてください」

「えぇ!?なぜ!?」

 

デュウの膝を勇人が見ると、僅かに血が滲んでいた。

恐らくシャインセイバーの攻撃が彼女の体を傷つけてしまったのだ。

いくら悪魔の力を持つ少女とはいえ肉体は生身の人間だ、石に当たれば怪我をするし刃物で刺せは死んでしまう。

 

「わ、悪い……ぷらー…ぁ」

 

プラーマで治療しようと思った勇人だったが、残念ながら召喚術は使えない。

異界の住人をこの世界に呼ぶほど世界の穴は大きくできないのだ。

無理に呼び出そうとすればそれだけで世界が壊れやすくなるのを勇人は何となく理解できた。

呼び出せるのはシャインセイバーのような幻影だけに限られた。

チラリと勇人はクラレットに視線を向けるとクラレットが溜息を吐きながら少女へと屈む。

 

「今回だけですよ?」

「本当にゴメン…」

「………おぉ!?」

 

クラレットが少女の傷口に手を添えると淡い光が傷口を包み込む、

すると瞬く間に少女の傷が癒えてゆく、これはサプレスの天使が使う癒しの奇跡だ。

サプレスの雷撃と同じように仕組みを理解したクラレットはある程度の傷なら自力で治せる力を得ていた。

彼女の話によればその気になれば肉体の欠損すら修復できるというほどのモノらしい。

 

「はい、治りましたよ」

「……(パシパシ」

 

治した傷を叩き少女は本当に治った事を確認する。

 

「…ありがとう」

「どういたしまして♪」

「まあ、治ってよかったな」

「……何もしてないのに調子付くな」

「口悪ぅ!?」

 

可愛い見た目に合わない口の悪さに勇人は驚くが、

そんな事よりクラレットは何か気になったのか魔力が漏れている少女の片目を触っていた。

赤くそして黒いまるで血液のような目、クラレットはそれに何度か触れてその正体に気づく。

 

「勇人、これ魔眼です」

「魔眼?それってエルカのと同じか?」

「まあ、名前は同じですけどメトラルの魔眼とは似ても似つかないモノです。これは悪魔の魔眼、一部の悪魔が持つ力の源と言えるモノですよ。バルレルの額に付いてた魔眼を知ってますよね?あれと同じ……というかあれですよ。魔力もほぼ同じですしそれがなんで……」

 

クラレットが考察を始めるがハヤトにとってそれはどうでもいい事だ。

とにかくこの少女がなんでこの公園に居たのかを勇人は知りたかった。

 

「なあ、君は何て名前なんだ?」

「……言いたくない」

「え?」

「人に名前を聞く時は自分から名乗れってハルが言ってた」

「あ、あぁ~、悪い本当に悪い、今日謝ってばっかだな。俺は新堂勇人、こっちは新堂クラレットで俺の家族だ。さあ名乗ったぜ、教えてくれないか」

「ハヤト嫌いだから教えない」

 

プイとそっぽを向いた少女に勇人は何も流石に我慢の限界が近かった。

近づいたら突然ビームを撃ってきたのだ、もし当たってたらこっちが死んでたのに何でここまで言われなきゃいけないのだと。

 

「まあまあ、勇人。相手は女の子なんですから無理に聞かなくていいじゃないですか?」

「そ、そうか?いきなりビーム撃ってきたんだぞこいつ」

「ハヤがデュウを殺そうとしてきたから攻撃しただけ」

「殺!?いやそんなつもりはないって!お前の魔力が昔戦った敵に似てたから勘違いしただけなんだって」

「言い訳とか男らしくない」

「まあ、迂闊に近づいた勇人が悪いですよね」

「えぇ!?俺が悪いのか!?」

 

凹んだ勇人を置いといてクラレットはデュウの頭を撫でる。

 

「貴女ははデュウって名前なんですね」

「うん」

「私はクラレットって言うんですよ」

「知ってる」

「デュウはどこから来たんですか?」

「あっち」

 

デュウが指さす、その先には那岐宮スカイブレードに向かっていた。

つまりデュウは北町から歩いてここまで来たのだ。

 

「どうしてここまで来たんですか?結構な距離があると思いますけど」

「……ハルがここら辺に住んでるって言ってただから会いに来たけど見つからなかった」

「ハルさん…、デュウの友達?」

「(こくり」

「クラレット、聞いたことあるか?」

「私は聞いたことないですけど…ハルさんって女の子なんですか?」

「うん、チュウガッコーに行ってるって言ってた」

「中学…」

「ここら辺の中学は那岐宮中学だけですよね?」

「中学かぁ、中学生なら…」

 

二人の脳裏に春奈の姿が浮かぶ、学校生徒全て覚えていると言っていた事があった。

実際には覚えてないかもしれないが何かヒントを知ってるかもしれないと思った。

 

「じゃあさっそく連絡…連絡…?あれ?」

 

ポケットに手をやるとスカスカしてて貫通していた。

いやな予感がする、勇人は後ろを見るとそこにはデュウのビームで無残な姿になった携帯がそこにあった。

 

「お、俺の携帯がぁー!リィンバウムに忘れて来たから二代目だったのにぃ!!」

「全く、ポケットじゃなくてカバンに入れないからそうなるんですよ。私携帯はっと………電池切れてる」

 

カバンに入れっぱなしで充電し忘れた事にクラレットはがくりとへこむ。

そしてデュウの攻撃を防御した余波で携帯を破壊されてがくりと膝を付く勇人。

二人の姿を見たデュウは勇人にゆっくり近づいてポンと肩に手をやった。

 

「どんまい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ん~?」

「どうだクラレット?」

「治せそうですけど……まあ、やっぱり家じゃないと無理ですね」

「もぐ…もぐ…」

 

二人はとりあえず新堂の家に向かって歩いていた。

デュウの目にクラレットは手をやりその魔眼を封じている。

そして勇人の手に握られているデュウの眼帯を見ていた。

そう、デュウの眼帯が破損していたのだ。クラレット曰く膨れ上がる魔力を制御できずに壊れてしまったと言っていた。

 

「家にサプレスのサモナイト石が幾つかありますからそれを粉末にして加工すれば多分…」

「持ってきてたんだ。サモナイト石」

「思い出というか、役に立つかは分からないんですけど一応」

 

そんな事を話ながら道を歩く、そして新堂の家が見えてくる頃、家の前に誰かが居た。

よーし!出発ー!と叫びながら飛び出す春奈の姿だ。

それに気づいたデュウがクラレットの手から抜け出て飛び出してゆく。

 

「ハル―!」

「ん?おお!デュウだ!出発して1秒もしないのに見つけられるなんて流石私!」

「ハルって…」

「春奈の事だったのか…」

 

ハル=春奈、普通に考えれば気づきそうだがなぜ気づかなかったと二人は妙にどんよりしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------------------

 

「小学校の旧校舎でね…」

「そうそう、肝試ししててね。そこに寝泊まりしてたデュウを見つけたんだ」

「しかしアレだろ?ビーム出してきたリ色々とやばいだろ、よく命のおじさんは受け入れたよな」

「んー、なんか知り合いみたいだよ?デュウは覚えてないっぽいんだけど、最近まで変な言葉で話してたし」

「そうなのか?」

「うん、ねえデュウ、ちょっとその言葉で喋ってみてよ」

「……■■■■、■■■■■■■■■」

「…なんて言ってるんだ?」

「さあ?」

 

何処かで聞いたことある言葉だったが勇人は聞き取れなかった。

するとすり鉢でゴリゴリした粉末を使いデュウの眼帯を改良してるクラレットが冷たい視線をして答えた。

 

「今さっき、ハヤに押し倒されたって言ってるんですよ」

「え……お兄ちゃんデュウを押し倒したの?」

「いやいやいや!アレは不可抗力で!」

「血が出た」

「え!?押し倒して血を流させたの……ちょっと警察に」

「血が出たの膝だからな!?やましい事何もないからな!?」

 

デュウの一言で大混乱する新堂家、

そんな混乱をBGMにクラレットは黙々と作業を続けていた。

そしてようやく終わったのか、眼帯を片手にデュウへと近づいた。

 

「じゃあ、付けますからね?ジッとしててくださいね」

「ん」

「よいしょっと」

 

眼帯をつけると、デュウの魔眼がある方へと掌を押し付けて魔力を押し込む。

すると眼帯全体が淡く光を放ち、しばらくしてその光が落ち着くとデュウがペタペタと眼帯を触って驚愕する。

 

「クラ、凄い!」

「どういたしまして」

「ねぇねぇ、どう凄いのデュウ?」

「ピタってくっ付いて全然苦しくなくなった!ハヤは何も出来ないのにクラは色んなことが出来て凄い!」

「な、何もできないって…」

「いや正直勇人は戦い以外で出来る事ほとんどないですよね」

「あはは!お兄ちゃん何もできなーい♪」

「…なんか身に付けた方がいいのかなぁ」

 

そんな風に勇人が悩み始めているとピンポーンとチャイムが鳴り、

春奈が玄関へと顔を出しに行く、そして「命、お疲れさん」という声が聞こえて来た…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------------------

 

「本当に先輩方には迷惑をかけました」

「いえいえ、何もありませんでしたし気にしなくていいですよ」

「俺の携帯はご臨終したけどな…」

「アレはハヤのせい、デュウ悪くない」

「えぇ…」

「こら、壊したんだから謝った方がいいぞ」

「……………………ごめんなさい」

(ものすごい不服そうに謝ったな…)

 

確かに携帯が無くて不便になるが、普段からクラレットと一緒にいるから何とかはなる。

それにあまり携帯を多用してなかった勇人は特に気にしてはいなかった。

まあ、それでも親の説教を受けるのは確定だったのだが…。

 

「デュウ、おみやげ」

「おみやげ…?」

「パンが好きみたいだからね。今日は初めてデュウが家に来てくれた日だから」

 

クラレットから包みを渡されてデュウはそれを受け取る。

中身をデュウが覗くとそこには沢山のパンが入っていた。

 

「おぉー!」

「それって一昨日、私とクラ姉で作ったパンだよね?」

「調子に乗って作りすぎちゃったからね…」

「先輩、すいません」

「いいよ望月君、デュウとはこれから長い付き合いになりそうだしね」

「そうですか、じゃあ遠慮なく、ほらデュウ、お前もお礼を言った方がいいぞ」

 

モグモグとメロンパンを食べるデュウ、その姿を見ていた。

その表情を見てハヤトとクラレットはある事に気づく。

 

「クラ、それにハヤ、ありがとう…!」

 

満面の笑みを浮かべるデュウ、どうやら目の前の少女は食べ物に弱かったようだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------------------

 

「今日はちょっとした事件だったなぁ…」

「そうですねぇ…」

 

深夜10時、リビングでくつろぐ二人、明日も補習なのだが明日は朝からという事にしてある。

流石に昼はきつ過ぎたので朝に学校に行く予定だ。まあ帰る時はまた地獄なのだが…。

 

「ところでハヤト、気が付きました?」

「……ん?何のことだ?」

「はぁ…全く、デュウの事ですよ」

 

サプレスの魔王の魔眼を持つデュウ、あまりに普通なら持っていない力のはずだった。

旧校舎に寝泊まりしていて本人も何をしていたかよくわかっていない、記憶喪失というものだ。

 

「まるでクラレットだな…過激だけど」

「………」

「あ、別にクラレットが過激って言ったわけじゃなくてだな」

「別にその事を気にしてるわけじゃありません、あの時デュウが言っていた言語、覚えてます?」

「え?俺は聞き取れなかったけど」

「アレはリィンバウムの言葉です」

 

真面目な顔をして答えるクラレット、つまりデュウはリィンバウムから来たという事を意味している。

 

「魔眼を人間に移植、そして召喚術の暴走による記憶の欠如と異界移動……」

「…無色の派閥か?」

「分かりません、外道の召喚師…それに無色以外のもっと大きい組織による者かもしれませんし、とにかく暫くはデュウに気にかけておく方がいいかもしれません」

「どうしてだ?デュウ一人だけなんだろ?」

「……望月君はおじさんがデュウの知り合いだって言ってました。それがどっちを意味しているのかは分かりません、だけど用心しとかなければ危険です」

 

つまりデュウをあのようにしたのは命のおじさんだとクラレットは考えていることになる。

ハヤトは考えた、本当にそうなのか?あの親切そうなおじさんが無色の派閥の一員なのか?と。

 

「とにかく今は用心するだけでいいです。向こうだって今の私達の存在に気付いているはずです」

「用心だな?」

「そう、用心するだけでいいです。今の私達にそんな余裕はないんですから」

「……うん」

 

ハヤトは軽くうなずく、今はそれだけでいい、そう今はそれだけで…。

だが物語は進む、より多くの人々をそのうねりに巻き込んでさらに世界は広がっていくのだった……。

 




モチベーションというか、お題編の内容があまり思いつかないので続きを書きます。
とりあえず、那岐宮編を書いて、サイジェント復興編を書き、本編に入る予定。
お題編はまあ、そのうち書いていくという事で…。


※ハヤトの携帯。
 デュウによって破壊されるが一応弁償された。
 ただ親にはとても怒られたそうだ。

※癒しの奇跡
 クラレットがサプレスの魔力によって行使出来る技法。
 サプレスのエルゴを保持するクラレットのみ使用できる技である。
 破損した魂殻を修復して肉体もそれに惹かれる形で修復されるという流れだ。
 ただ体力を消耗する為、瀕死の相手に使うと死なせてしまう可能性がある。

※デュウの魔眼
 望月デュウの所持する魔眼、サプレスの魔王バルレルの持つ魔眼である。
 ちなみにバルレルから継承したのではなく、奪い取っている。
 大抵はビームを出せるだけなのだが、実は使いこなす生き物の様に魔力を操ることが出来る。
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