「来たな……」
――!?
あまりの驚きに息が詰まった。
僕は暗闇のドムドーラを見つかりにくいよう、裏道を通って目的の場所へとたどり着いた。
そして角を曲がり、その先に見える暗闇の中から聞き覚えのある低い声が静かに迎えた。
その声の主は立ち上がり、甲冑の関節部がガシャリと音を鳴らす。
悪魔の騎士。
竜王の率いるモンスターの中でも、ひときわ秀でた能力をバランス良く持つ甲冑族。
その巨体にそぐわないスピードと、大振の斧を軽々と振り回す圧倒的なパワー。
そしてその身体を成す強固な闇の甲冑と、呪文まで操る知能……まさに攻守においてつけ入る隙が無い。
「なぜ……僕がここに来ると?」
暗闇の中にそびえたつ黒い巨体……しかし気後れはしていない。僕は以前の僕じゃない。
「なぁに、好きでお前を待っていたわけじゃない。俺は竜王さま直々に、この場所の守護を命じられたのさ。どうやらその理由の説明は必要無さそうだな。おそらくお前も気付いたから来たんだろう? ……ロトの子孫よ」
静かに……静かに悪魔の騎士の中で、黒い闘志が燃え上がっていくのが分かる。
「その事にいつから気付いていた」
「お前を仕留めそこなった、あの時からさ……」
そうか……
僕が気付いたのは、ついこの間『ロトのしるし』を見つけた時だ。
ロトのしるしを見つけた時、何かひどく懐かしいものを感じた。それは勇者ロトからの血脈云々と言うような古い感覚ではなく、もっとごく最近……そんな何年も前じゃない、もっと新しい感覚。
そう、ドムドーラで悪魔の騎士にやられそうになった時に起こった光……あの感覚に似ていると。
そこからドムドーラに勇者ロトの遺産があるのではと言う推論に至るのは早かった。
そして僕が小さい頃に聞いたゆきのふ爺さんの言葉を思い出した……『ワシはある方から大切な宝物を預かったんじゃ』と言う言葉を。
僕は知っている――ゆきのふ爺さんは大切なものを必ず裏庭の木の下に埋めるんだ。
そう、以前に僕が悪魔の騎士によって倒されそうになった時に光った、あの木の下に……
「他に聞くことはあるか?」
悪魔の騎士の言葉に僕は首を左右に振った。
「ならば俺からひとつだけ聞いておきたいことがある」
「……なんだ」
「お前の名だ。あの時の小僧のままなら聞く必要はないが……今は違うのだろう?」
悪魔の騎士は腰を落とし、静かに構えた。
そして僕も鏡で合わせたように同じく腰を落とし、剣を構える。
「僕はドムドーラの貿易商人フィリフと、その妻アイラの間に生まれた勇者ロトの子孫……」
「アレフだ!」
その瞬間、僕は地を蹴って闇の中に立つ巨体に踊りかかった。