「ギラッ!」
ドゥン!
闇を切り裂く炎の輝きが目をくらませ、黒い鎧に炸裂する。
「ぐぬぅ……小癪な」
しかしさして効いている様子はない。
だがギラの一撃を堪えたせいで足は止まっている。斬りかかるなら今だ――
「うあぁぁぁぁぁ!!!」
僕は両手で剣の柄を握り、大きく振りかぶった。
「ラリホー!」
「――っ!?」
それは唐突に放たれ、僕には回避のしようが無かった。
「うあ……あ……」
ここで寝てしまえば、それは敗北……すなわち僕の『死』を意味する。
マズい……何か、何か――
「マホトーン!」
僕は眠りそうになる頭で必死に答えにたどり着き、その呪文を悪魔の騎士に放つ。
「――っぐ!?」
悪魔の騎士に何らかの衝撃が走った――マホトーンが効いたのだ。
しかし放たれたラリホーの効果は、まだ僕を侵食しようと暴れている。
「おぉぉぉぉぉぉ!!!」
そんな僕を見て状況を悟ったのか、悪魔の騎士は渾身の力で斧を斬り落とした。
バァァァァァン!!!
「あああああっ!!!」
僕はその一撃で、あの光る木まで吹っ飛ばされ、そのまま背と頭を打った。
「どうだ!」
「ぐっ……よ……鎧が」
今の一撃で、買ったばかりの魔法の鎧が左肩から右脇腹にかけて砕かれてしまった。
逆に言えば魔法の鎧じゃなかったら、今の一撃で僕は終わっていただろう。
これを運が良いと言うべきか、悪いというべきか……
「ま、まだだ……」
僕は痛む身体を押して立ち上がる。
まだ右腕は動く。左手は……無理か。盾を持っていられず、すでに左手には感覚が無い。
何とかあと一撃くらいの力は残っている……だけどそのタイミングを作れるほど動けない。
「まだそれだけの力があるとは見上げた奴だ……だが、それもここで終わりだ!」
悪魔の騎士は右腕の斧を振り上げ、夜の空に黒いきらめきが見えた――
「トヘロス!」
「――むおっ!?」
僕は闇を祓う聖なる呪文を渾身の魔力を込めて放った。
無念の想い渦巻く闇のフィールドに慣れた状況で瞬時に放たれた聖なる波動に悪魔の騎士はひるんだ。
「今だっ!」
まだ動く右腕一本で剣を持ち、足りない力は跳躍によって加算する。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ガガガッ!!!
何か耳障りな、にぶい金属音が響く。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
渾身の力で放った最後の一撃は、僕の魔法の鎧と同じように悪魔の騎士を斬り裂いていた。
本当は立っている力すら抜きたい気分だけど、悪魔の騎士を倒したかを確認するまで立っていなくてはならない。
もし今の一撃で倒しきれなければ、まだ戦いは続く。だからまだ倒れるわけにはいかない。
「やった……のか……?」
「――いや、まだだな」
「うがぁっ!」
声がした瞬間、僕は悪魔の騎士が振り払った左腕が直撃し、半壊の鎧は見事なほど砕け散った。
「惜しかったな……俺たち甲冑族は、竜王さまの魔力で動いている。この俺の身体を形成している鎧そのものを真っ二つにでもしない限り倒れることはない」
大きく斬り裂いた。確かに大きく斬り裂いたが……ヤツを両断するには足りなかった。
くっ、さっきの攻撃で力を使い果たした上に、今の一撃でもう身体が動かない。
魔法力も使い果たしたし、薬草を使おうにも身体が動かなければ取ることも出来ない。
万事……休すか。
「殺すには惜しい男だが……勇者ロトの子孫ならばやむを得まい」
僕はあの光る木の根元で倒れていた……僕の目的はたぶんこの下……文字通り僕の真下だ。
こんなに近くに……こんな目の前にあるのに……僕はここで死ぬのか。
悪魔の騎士は斧を振り上げた。