ギィィィン!!!
とうとう僕が恐れていた事が起きてしまった。
相手は竜王の配下でも親衛隊と言われているストーンマン。その身体の堅さもまた折り紙付きだ。
その相手に僕は剣を斬りつけ……そして剣が折れた。
幾多の死闘を潜り抜けてきた炎の剣は、その僅かな亀裂がストーンマンの屈強なボディとの衝撃に耐えられず、まるで枯れ枝のようにたやすく折れてしまった。
「ローラ姫、こっちへ!」
僕はローラ姫の手を引いて走る。来た道とは違うが、ひとまずはストーンマンから逃げるのが先決。
背後からはストーンマンの巨体が、その大きな歩幅を駆使して追ってきているが、幸いにも移動スピードそのものは早いわけではない。
ここは剣も折れたし、ストーンマンを振り切ったら一時退却して出直した方が良い。
「ベギラマ!」
振り向きざま、僕はストーンマンの足下……その足場となる地面に呪文を放った。
その呪文の威力で地面が抉れ、そこに足を落としたストーンマンは、僕の目論見どおりバランスを崩して豪快にすっ転んだ。
「勇者さま、こちらへ!」
階段に登りかけているローラ姫が、振り返って僕に手を伸ばす。
僕はその手を握って、一気に階段を駆け上がった。
「――うっ!」
どうやらココは行き止まりのようだ。迷宮の袋小路。
階下ではストーンマンが口惜しそうにこちらを見上げている。
ストーンマンの体重と大きさでは、とても階段を登ることは出来ない……が、これでは僕達も階段を使うことは出来ない。
まだだいぶ魔力に余裕はあるけれど、剣が無ければどうしようもない。
ここで一旦リレミトを使って迷宮を脱出し、炎の剣を求めてメルキドへ行って、再び竜王の城を攻略……では、あまりにも時間がかかりすぎる。
竜王が勇者ロトの子孫――つまり僕を迎え討つ為の万全の体勢を整える時間を与えてしまう。
「くっ……!」
僕は兜を外して頭を抱えた。どっちを選択しても僕にとっては不利に働く。
こんなことなら時間かかっても、もう1本炎の剣を購入してから来るべきだった。
「勇者さまー、こちらに上への階段がありますー!」
「……え?」 袋小路じゃなかったのか。僕はローラ姫に駆け寄った。
「…………かがり火?」
僕は階下からにょっきりと顔を出すと、念入りに周囲を見渡す。
そこには4本のかがり火と、さらに上へと続く階段があった。
「な、なにか仰々しいですわ……」
おびえて僕の腕にしがみついてくるローラ姫。
仰々しい……か。
おそらくローラ姫も僕と同じ事を考えている……この先に竜王がいるのではないか――と。
僕はかがり火の中央に立ち、上へと続く階段を見上げる。
「…………ん?」
キィィンキィィン……
鳴いている……ロトの紋章が、ロトの鎧が。
悲しげな共鳴音を発し、薄く淡い光をぼんやりと脈動させる。
――まさか!?
「あ、勇者さま!」
僕はしがみつくローラ姫の腕を振り切って一気に階段を駆け上がった。
キィィンキィィン……
鳴いている。
暗闇の中でただ薄く淡い光を脈動させている。
「勇者さま、これは――!」
僕を追って階段を上ってきたローラ姫は、その淡く輝く3つの光を見比べた。
それぞれに記されている紋章を。
「これは――」
そう、これこそが勇者ロトが闇を討った秘剣。
この世に斬れぬものは無いという精霊ルビスの加護を得た伝説に語られる聖なる剣……
「ロトの剣――!」