ドラゴンクエストI-勇者アレフ伝説   作:びく太

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第18話:『竜王』

「……お前が竜王か――」

「いかにも。して、人間がワシに何用だ?」

背筋に一粒の汗が流れる。

 

僕は迷宮を潜り抜け、とうとう竜王の城地下にある神殿、その玉座までたどり着いた。

アレフガルドの反逆者、破壊の申し子、魔を統べる者などなど。様々な言われようから、もっと巨大で凶暴なモンスターをイメージしていたが、来て見れば意外にも小柄で、その大きさは大柄な人間と同じ程度。

そして凶暴などとは程遠い、知的で繊細さを覚える程の、青白く冷たい炎のような男だった。

しかし魔力故か、どこか近寄りがたく、また切れ長の鋭い目の奥にある瞳は、これ以上なく澄んでいて、どこか吸い込まれてしまいそうな……そんな不思議な輝きを放っていた。

 

「ん? 後ろに居る人間はローラ姫か」

竜王が僕の背後の人影に気付き、その声に過剰に反応したローラ姫は、ビクリと身体を震わせ、僕の後ろへと隠れて縮こまる。

「……そうか。なればお前が勇者ロトの子孫とか言う人間か」

竜王はどこか疲れたような言い草をし、そして一息吐いた。

 

「勇者ロトの子孫よ、今一度問おう。ワシに何用だ。まさかワシのところにローラ姫を連れてきてくれたわけでもあるまい」

「あっ、あたり前だ! 僕達はお前が奪った光の玉を返してもらいに来た!」

「なるほど……光の玉か――」

やはりどこか面倒くさそうに一息吐く竜王……これがアレフガルドを恐怖で支配しようとしている魔王なのか?

確かに近寄りがたい雰囲気はあるけれども、僕に敵意があるようにも見えないし、芝居をしているわけでも無ように見える。

 

「残念だが、あの玉は渡せぬ。あの玉は元々我が一族のもの。勇者ロトの時代、一時的に人間に貸し与えていたに過ぎん。それを今、ワシが必要になったから返してもらっただけだ」

「必要になったとは何だ? アレフガルドを魔物の世界にするためか? それとも人間を滅ぼす為か? どちらにしても承服など出来ない!」

「ワシにアレフガルドをどうこうしようなどと言う野望などありはせん。ワシはワシの目的の為に光の玉の封印を解いただけだ……ま、結果的に人間から見れば、お前の言う事と大した違いは無いだろうがな」

さも関心無さそうに僕から目を離し、まぶたを閉じてさらに一息。

 

「ちょ――ちょっと待ってください! もともと光の玉は、勇者ロトが神山の頂上にそびえる城に住まう神さまから譲り受けられたものであると、伝説には記されています。そもそも闇を封じる光の玉が、貴方の――闇に属する者の物であるハズがありません!」

僕の背中からローラ姫が顔を出したかと思ったら、竜王に光の玉の伝説を言い放った。

 

「闇に属する者……か。確かにワシは闇に属する者……しかし光の玉の正統なる継承者はワシ以外に無い。よって無論、人間共に渡すつもりは無いし、そんな義理も無い。ワシは別にアレフガルドをどうこうしようなどとは思っていないが、それによって人間がどうなろうとワシの知ったことではない」

「ふざけるな! それではお前は一体何の目的で光の玉を奪ったんだ! 平和なアレフガルドを乱してまでお前がやろうとしていることは何だ!」

僕は怒気を強めて竜王に言い放つ――が、竜王はやはり面倒くさそうに答える。

 

「そのようなことをお前に言う義理は無い。光の玉は元々ワシの物。それをどう使おうと人間のお前に口出しされる事ではない」

くっ――なしのつぶてか。

凶暴なモンスターではない、この知的な竜王であれば何とか戦わずに解決できるかと、希望を持ったのが間違いなのか……この男には野心は無いが、同時に情も無い。これでは意味が無い。

 

「仕方が無い……交渉の余地が無いのならば、コレしかないのか……」

僕は剣の柄を握り、刃を鞘から出さないまま竜王に向かって構えた。

「まぁ待て。光の玉は返せないが、別の交渉で人間共が納得するならば、それでも構わん。お前は勇者ロトの子孫。見ればその遺産も受け継いでいるようだ。戦えばこちらも要らぬ痛手を被るかも知れぬ」

うっ……なんなんだコイツ。

光の玉を奪いモンスターでアレフガルドを混乱させているかと思えば、凄まじい魔力を持っているにも関わらず戦いを避けようとする。

どうも策謀とは思えないし、怖気づいているようにも見えない。

ただ……ただ合理性から僕との戦いの回避を模索しているとしか思えない。

なんなんだコイツは……凄いんだか、凄くないんだか全然分からない。

 

「べっ――別の交渉とは、どのようなことでしょうか」

混乱する僕の後ろから、またローラ姫が顔を出し、僕の代わりに話を進める。

「勇者ロトの子孫よ……お前に世界の半分をやろう」

 

『――なっ!?』

その言葉に、僕とローラ姫は天地がひっくり返ったような衝撃を受けた。

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