「くっ――!?」
早い!
「ベギラマ!」
振り返るのが先か、呪文が放たれるのが先か――
振り返った僕の目に入ったのは、竜王の杖が発光した、まさにその時だった。
僕は無理な体勢から強引に飛びのくと、僕が今居た場所を呪文が通り抜けた。
「――ぅくっ!?」
着地した瞬間、僕は足を押さえて転げ回った。無理な体勢から強引に動いたせいで足が攣ったのだ。
「勇者さま!」
ローラ姫が声を上げる。
彼女は戦闘前に竜王から促され、玉座の後ろに身を隠しながら観戦していた。
「大丈夫です。ローラ姫は身を隠していてください。いつ流れ弾が来るやも知れません」
さすがに情けなくて足の事は話題を摩り替えて誤魔化したが、どうせロトの鎧の回復能力ですぐに動けるようになる。
だけど僕の言っている事も本当のことだ。
当たり前だけど竜王は今まで戦ったどのモンスターよりも圧倒的に強い。
正直、ローラ姫に注意を向けている余裕なんて全く無い。竜王から一瞬でも目を離せば、気付いたら死にかけてたなんて事にもなりかねない。
「どうしたロトの子孫よ。よもやこれしきで音を上げるわけではあるまいな?」
「誰が――!」
僕は挑発を逆に自分の力へと変え、竜王の側面から背後へと回り込むように動きながら攻撃のタイミングを計る。
呪文は一直線に向かってくる敵には当てやすいけど、こうやって回り込んで動かれると的を外しやすくなる。
竜王の使う閃熱呪文は直線的に伸びるタイプのものだ。足を止めてても、直線的に攻めても呪文の的にされてしまう。
呪文の的を絞らせないように動きながら、時々ギラでけん制する。
「ギラッ!」
「むぅん!」
僕の放った呪文を竜王は手に持っている杖で打ち払う。どうやらあの杖は普通の杖ではないらしい。
「むぅ……こしゃくな!」
作戦が功を奏したのか竜王の呪文は僕を捕らえきれず、たまに鎧の一部に当たる程度。
あとは僕の横をすり抜け壁に黒い焼け跡を残すのみ。
もちろん竜王も僕の動くタイミングを読んだ攻撃も仕掛けてきているけど、僕だってただ単純に回っているわけじゃない。
ある時はタイミングを外し、またある時は円を崩して竜王に斬りかかるそぶりを見せている。
だが、まだ実際に竜王へ斬り込める程の決定的なタイミングは訪れていない。
「はぁぁぁぁぁっ!」
しかし僕は思い切って竜王に飛び掛った。
おそらく竜王は自分からスキを作ることは無いと思ったからだ。
ギィィン!
「むぅん!」
しかし竜王の杖によって剣撃は弾かれ、僕は斬り込んだ勢いのまま竜王の背後を取る。
そして先ほどの僕の捨て身の攻撃は、竜王にダメージは与えてはいないものの、竜王のバランスを崩すことに成功している。
次が本命――!
剣を水平に構え、僕はこの千載一遇のチャンスに奇声を上げて突っ込んだ。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
「――――!?」
振り向いた竜王の目が大きく見開く。
どむっ!
「ぐっ……はっ……!?」
僕の剣は振り向こうとした竜王の脇腹から突き刺さり、そして腹部中央からその剣先が突き出ていた。
竜王は苦痛に顔をゆがめながら、僕を振り払おうと僕に杖を向ける。
「がぁぁぁぁぁぁぁ!?」
しかし僕は竜王を貫いている剣を上下に動かし、身体の中を攻撃することで攻撃を逃れる。
この剣を抜けば、竜王はベホイミで回復してしまう。そして次のチャンスが来る保証なんか無い。
そして間違いなく同じ手は通用しない……だから僕も必死だ。
「あぁぁぁぁぁぁ!!!」
竜王の絶叫がこだまする。今ここで手を離してしまえば終わりな気がした。
僕は突き刺した剣を無我夢中で動かした……もがき苦しむ竜王の声も耳に届かないほどに。
ビチャビチャ……
竜王が血を吐き、身体を支える力を失ってその場に崩れた。
そして僕は剣を抜き竜王から間を取る。
「ぶはー、ぶはー……」
傷口を押さえ荒く息を吐き立ち上がる竜王だが、もはや呪文を使えるような状態ではない。
これで勝負はついたか――