ドラゴンクエストI-勇者アレフ伝説   作:びく太

25 / 31
第24話:『最後の賭け』

「うわっ……と!」

僕は片足で横に飛びのいた。

 

ズドォォン……

 

目の痛みに暴れる竜王の尾が、真上から今さっきまで僕が居た場所に落ちる。

まだ足は完璧じゃない。ひとまず骨は回復したけど、痛みがあまり引いていない。

根性で立つことは出来るけど、痛みで飛んだり跳ねたりは出来ない。

 

「ベホイミ!」

竜王から離れ、僕は再び回復呪文をとなえる。

もう魔力の残りもそう多くは無い……余計なダメージを受けたり、攻撃呪文の無駄撃ちも出来ない。

今ここで竜王を倒さなければ、次のチャンスは無いだろう。

もしここで逃げ帰ってしまえば、竜王は城の守備を固めてしまい、また竜王を倒しにこの部屋へ来る頃には、戦う前から僕の方が力尽きてしまう。

 

しかし未だ竜王に決定的なダメージを与えていないことも事実だ。

なんとかたいまつで一矢報いたが、それも単発で終わってしまえば意味が無い。

しかしこの足では、また玉座を使って竜王を上から攻撃するのは無理だ。

それに同じ攻撃では、またさっきの二の舞になる可能性だってある。

 

上から攻めると言う発想は悪く無いハズ。なぜなら下半身よりは攻めるべき弱い箇所が多い。

だけど空の飛べない人間ではやはり飛べる高さにも限界がある。

せめてもっと上から……竜王の頭を越える高さから攻撃が出来れば。

なんとか瞬間的に竜王の頭の上まで跳べる方法は無いものか。

 

「アレフさま!」

「……っとぉ!」

ローラ姫の声に気付き、僕は竜王の攻撃を回避した。

見れば片目はつぶれたものの、痛みを越えた竜王の怒りの眼差しが、僕を捕らえていた。

「ガァァァァァァ!!!」

 

ゴォォォォォォ!!!

 

怒りの咆哮と共に、火炎の息が放たれた。

しかし足もおおよそ回復している。僕はその炎の帯から竜王の周りを回るように走って逃げた。

足は回復した……しかしどうする。竜王にダメージを与えられないと倒すことはできない。

もう魔力も少ない。呪文の無駄撃ちや余計なダメージは受けられない。

それに出来ればリレミトとルーラ分の魔力くらいは残しておきたい……それを考えると呪文を使える回数も残り僅かだ。

 

「……そうか!」

僕はひとつの方法を思いついた……竜王の頭の上から攻撃する方法を。

しかし問題は竜王が上を向いてしまうと、また咥え込まれる可能性がある。

「ガァァァァァ!!!」

「うわっ!」

竜王の怒りの瞳が、僕を睨みつけていると思ったら、いきなり側面から尾の攻撃が飛んできた。

しかし僕は地に伏せて、なんとかその攻撃から逃れる。

 

ゴォォォォォ!!!

 

「どわぁぁぁぁぁ!!!」

上を向けば今度は目の前には炎が迫っていて、僕は伏せたまま横に転がり炎をなんとかやり過ごす。

ぐぅ……下かと思えば上か。しかもいきなり目の前に炎ってのは焦る。形が無い分、防御不能だし。

 

「ええぃ! 迷ってても仕方ない!」

僕は最後の詰めの部分の解決策を思いつかないまま、思いついた方法の実行を決意する。

これが失敗したら、もう僕に手は無い。残りの魔力を考えても、これが最後の賭けだ。

 

「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

奇声を上げて、僕は竜王の懐へと飛び込んだ。

しかしまたもや側面から尾の攻撃が来たが、僕はそれを尻から滑り込むことで頭の上へとやり過ごす。

尾の攻撃をやり過ごして、僕は竜王の足をかいくぐり股下へと到達。そこからさらに竜王の背後へと進んで――

 

「ルーラ!」

 

僕の身体は上から引っ張られるようにして一気に舞い上がり……

 

ガンッ!!!

 

思いっきり天井に頭を打ち、目の前に星が飛んだ。

しかしこれで僕の身体は竜王の真上。

さらに背後から見えないように飛んだから、竜王は僕の姿を見失っている。

もちろん今の頭を打った音で気付かれるだろう……問題はその後だ。

竜王が早いか、僕が早いか――

 

僕は体を入れ替え、天井を蹴ることで勢いをつけつつ、剣を逆手に構えながら竜王へと落下する。

「――うっ!?」

しかし竜王が気付くのが思ったよりも早い。

そしてそのアギトは再び僕を食らおうと、大きく口を開けようとしていた。

「アレフさま!」

ローラ姫の叫びが聞こえる。このままではまたさっきと同じ轍を踏むことに。

もう体を入れ替える時間は無い……なんとか竜王をひるませる方法を――

 

「レミーラ!」

 

僕は咄嗟の思いつきで、魔力を込め光の呪文を解き放った。

「―――!?」

その光はロトの鎧と思いも寄らぬ相互干渉を起こし、僕を輝く小さな太陽へと変えた。

竜王は、そのあまりの眩しさに目を向けている事が出来ず、本能的に目をそらして下を向いてしまう。

そして僕の目に映ったものは、無防備な脳天をさらけ出した千載一遇の決定的チャンス。

 

「竜王ぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

僕は逆手に持ったロトの剣を大きく振り上げ、そして落下する勢いそのままに、渾身の力を込めて竜王の後頭部を深々と突き刺した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。