「うわっ……と!」
僕は片足で横に飛びのいた。
ズドォォン……
目の痛みに暴れる竜王の尾が、真上から今さっきまで僕が居た場所に落ちる。
まだ足は完璧じゃない。ひとまず骨は回復したけど、痛みがあまり引いていない。
根性で立つことは出来るけど、痛みで飛んだり跳ねたりは出来ない。
「ベホイミ!」
竜王から離れ、僕は再び回復呪文をとなえる。
もう魔力の残りもそう多くは無い……余計なダメージを受けたり、攻撃呪文の無駄撃ちも出来ない。
今ここで竜王を倒さなければ、次のチャンスは無いだろう。
もしここで逃げ帰ってしまえば、竜王は城の守備を固めてしまい、また竜王を倒しにこの部屋へ来る頃には、戦う前から僕の方が力尽きてしまう。
しかし未だ竜王に決定的なダメージを与えていないことも事実だ。
なんとかたいまつで一矢報いたが、それも単発で終わってしまえば意味が無い。
しかしこの足では、また玉座を使って竜王を上から攻撃するのは無理だ。
それに同じ攻撃では、またさっきの二の舞になる可能性だってある。
上から攻めると言う発想は悪く無いハズ。なぜなら下半身よりは攻めるべき弱い箇所が多い。
だけど空の飛べない人間ではやはり飛べる高さにも限界がある。
せめてもっと上から……竜王の頭を越える高さから攻撃が出来れば。
なんとか瞬間的に竜王の頭の上まで跳べる方法は無いものか。
「アレフさま!」
「……っとぉ!」
ローラ姫の声に気付き、僕は竜王の攻撃を回避した。
見れば片目はつぶれたものの、痛みを越えた竜王の怒りの眼差しが、僕を捕らえていた。
「ガァァァァァァ!!!」
ゴォォォォォォ!!!
怒りの咆哮と共に、火炎の息が放たれた。
しかし足もおおよそ回復している。僕はその炎の帯から竜王の周りを回るように走って逃げた。
足は回復した……しかしどうする。竜王にダメージを与えられないと倒すことはできない。
もう魔力も少ない。呪文の無駄撃ちや余計なダメージは受けられない。
それに出来ればリレミトとルーラ分の魔力くらいは残しておきたい……それを考えると呪文を使える回数も残り僅かだ。
「……そうか!」
僕はひとつの方法を思いついた……竜王の頭の上から攻撃する方法を。
しかし問題は竜王が上を向いてしまうと、また咥え込まれる可能性がある。
「ガァァァァァ!!!」
「うわっ!」
竜王の怒りの瞳が、僕を睨みつけていると思ったら、いきなり側面から尾の攻撃が飛んできた。
しかし僕は地に伏せて、なんとかその攻撃から逃れる。
ゴォォォォォ!!!
「どわぁぁぁぁぁ!!!」
上を向けば今度は目の前には炎が迫っていて、僕は伏せたまま横に転がり炎をなんとかやり過ごす。
ぐぅ……下かと思えば上か。しかもいきなり目の前に炎ってのは焦る。形が無い分、防御不能だし。
「ええぃ! 迷ってても仕方ない!」
僕は最後の詰めの部分の解決策を思いつかないまま、思いついた方法の実行を決意する。
これが失敗したら、もう僕に手は無い。残りの魔力を考えても、これが最後の賭けだ。
「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
奇声を上げて、僕は竜王の懐へと飛び込んだ。
しかしまたもや側面から尾の攻撃が来たが、僕はそれを尻から滑り込むことで頭の上へとやり過ごす。
尾の攻撃をやり過ごして、僕は竜王の足をかいくぐり股下へと到達。そこからさらに竜王の背後へと進んで――
「ルーラ!」
僕の身体は上から引っ張られるようにして一気に舞い上がり……
ガンッ!!!
思いっきり天井に頭を打ち、目の前に星が飛んだ。
しかしこれで僕の身体は竜王の真上。
さらに背後から見えないように飛んだから、竜王は僕の姿を見失っている。
もちろん今の頭を打った音で気付かれるだろう……問題はその後だ。
竜王が早いか、僕が早いか――
僕は体を入れ替え、天井を蹴ることで勢いをつけつつ、剣を逆手に構えながら竜王へと落下する。
「――うっ!?」
しかし竜王が気付くのが思ったよりも早い。
そしてそのアギトは再び僕を食らおうと、大きく口を開けようとしていた。
「アレフさま!」
ローラ姫の叫びが聞こえる。このままではまたさっきと同じ轍を踏むことに。
もう体を入れ替える時間は無い……なんとか竜王をひるませる方法を――
「レミーラ!」
僕は咄嗟の思いつきで、魔力を込め光の呪文を解き放った。
「―――!?」
その光はロトの鎧と思いも寄らぬ相互干渉を起こし、僕を輝く小さな太陽へと変えた。
竜王は、そのあまりの眩しさに目を向けている事が出来ず、本能的に目をそらして下を向いてしまう。
そして僕の目に映ったものは、無防備な脳天をさらけ出した千載一遇の決定的チャンス。
「竜王ぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
僕は逆手に持ったロトの剣を大きく振り上げ、そして落下する勢いそのままに、渾身の力を込めて竜王の後頭部を深々と突き刺した。