ゴゴゴゴゴ……
玉座の飾りに隠し部屋への階段を呼び出すカラクリが仕掛けてあった。
この城は玉座の下に隠し階段を作る風習でもあるのか……また玉座の下だ。
などと下らない事を考えつつ、僕はローラ姫と共に地下への階段を降りた。
「あ、あれですわ!」
ローラ姫が僕の横から顔を出し、手を伸ばして指差す。
地下の隠し部屋は光が差す窓も無いのに不思議と明るく、また結構な広さがあった。
しかし歩ける場所は、人が10人くらい横並びで同時に歩ける程度の広さの道がまっすぐ伸びているだけだ。
そしてその道の先には……祭壇の上で煌々と淡い輝きを放つ玉が大事そうに置かれていた。
光の玉だ。
どこかロトの鎧に似た光を発しながら、それは静かに佇んでいた。
僕はその輝きを見て、どことなく光の玉と竜王をダブらせた。
闇の中で一人孤独に光を抱えていた竜王……その苦悩は察して余りある。
「……アレフさま?」
光の玉を見て呆けている僕を、不思議そうに見つめるローラ姫。
「あっ……!」
そしてその視線に、ようやく我を取り戻す。
そうだ……僕はこの光の玉でアレフガルドに平和をもたらす為にここまで来たんだ。
竜王への感傷で、本来の目的を忘れるわけにはいかない。
僕は祭壇に向かって歩き出す……
伝説に曰く、『勇者ロト、三人の仲間と共に闇の本拠地へと乗り込み、暗き闇の祭壇にて闇と対峙す。闇の力、ロトによって打ち滅ぼされし者の怨念を呼び起こし、3体の怪物を配置す。勇者ロトと三人の仲間、これを打ち倒し、闇と対決す。ロト、光の玉を掲げて闇の衣を剥ぎ取り、これを滅ぼす。』とある。
僕は今、その勇者ロトが怨念によって生み出された3体の怪物と戦い、闇を打ち滅ぼした……その道を歩いている。
御先祖様は、かつてこの場所で闇との壮絶な戦いを繰り広げ、そして打ち倒したのか。
「伝説への道……ですわね。そしてこの道を歩くアレフさまもまた、伝説となるのでしょうね」
ローラ姫も同じくロトの伝説を知っているらしい。
そう、確認されたことはないけれども、ロトの伝説の最後を飾ったこの道は『伝説への道』と呼ばれている。
「えー、僕が伝説ですか。でも、もしかしたらローラ姫が伝説になるかも知れませんよ」
ローラ姫も今、こうして僕と共に伝説への道を歩いている。
「えっ――!? そ、それは困ります。伝説に"勇猛果敢な姫"と書かれてしまうかもしれませんわ」
「あはは、そうなったら後にローラ姫が剣を持ってモンスターに挑む絵とかを描かれたりするかもしれませんね」
「まあ、笑い事じゃありませんわ。これは是非ともアレフさまが伝説になっていただかなければ!」
良かった。ローラ姫もだいぶ元気が戻ってきた。
実は、さっきの竜王との戦いの時と、戦闘後の竜王の話を聞いたせいか、ローラ姫に元気が無かったのを心配してたんだ。
僕の冗談に上手く乗ってくれているあたり、ローラ姫の精神状態に余裕が出てきている証拠だ。
「…………」
僕は足を止めた。そして同時にローラ姫の足も止まる。
祭壇へとたどり着いた僕達の視線は、目の前の光の玉に注がれた。
「勇者ロトは……この場所で、この光の玉を使い、そして闇を討ち滅ぼしたんですね」
誰に言うでもなく口に出した言葉に、ローラ姫は無言でうなずく。
僕は手を伸ばした。
「……っ」
勇者ロトの伝説に出てくるアイテムの中でも至宝とも言えるアイテム。神より委ねられし至高の神器……光の玉。
その玉に込められし伝説を思うと、手に触れることすらはばかられてしまう。
僕は手を伸ばすも、緊張に手が震え、その手が玉に触れるには至らない。
「――!」
震える手にやわらかい感触が重なる。
「アレフさま」
僕とローラ姫は、その視線で全てを会話し、最後にローラ姫は小さくうなずいた。
そのうなずきに同じくうなずきで答え、今度は2人重ねた手で光の玉へ手を伸ばし……それに触れる。
光の玉を手に入れた。
僕達の手の中で光の玉が、静かに暖かい光を発している。
「アレフさま」
ローラ姫の言葉にうなずき、僕達は2人で光の玉を天に掲げ、叫んだ。
『光よ――!』
僕達が叫んだ瞬間、それは目も眩むようなまばゆい輝きを放ち、全ての闇を飲み込んだ。