ホイミを覚えた。
旅に出る前に魔法は一通り習ってたけど、それがついさっきようやく使えるようになった。
回復の呪文を覚えた僕は、ラダトーム近くにあるロトの洞窟へと向かう。
前々から行くつもりだったけれど、駆け出し勇者の自分の力量では今まで行く自信が無かったんだ。
ボッ…
たいまつに火をつけ、洞窟の中を照らす。
「暗いなぁ……」
壁や床は人工的に作られている。おそらく勇者ゆかりの地と言うことで、普段から整備されているのだろうか。
聞いたところによれば、この洞窟には勇者ロトが残した石版があるみたいだけど、特別な文字なのか、解読が出来ないらしい。
だからロトの子孫である僕なら、石版に残された意味を説けるかもしれないと言う話だ。
また勇者ロトの加護なのか、はたまた精霊ルビスの加護なのか、モンスターが居る気配がしない。
僕は誰も居ない洞窟を突き進み、その最奥において、それらしき石版を見つけた。
――ロトの紋章
大きな石版……と言うか、どちらかと言えば石碑に近い。
そしてその中央には伝説の不死鳥をかたどったと言う勇者ロトの紋章。
他は見たことも無い文字が並んでいて読むことが出来ない。
その時、形見のネックレス……正確にはその先に付いている赤い宝石が小さく光った。
そして僕の頭に誰かが語り始める。
『わたしの名はロト。わたしの血を引きし者よ。ラダトームから見える魔の島に渡るには3つの物が必要だった。わたしはそれらを集め魔の島へ渡り魔王を倒した。そして今その3つの神秘なる物を3人の賢者に託す。かれらの子孫がそれらを守っていくだろう。再び魔の島に悪が蘇った時、それらを集め戦うがよい。3人の賢者はこの地のどこかでそなたの来るのを待っていることだろう。ゆけ! わたしの血を引きし者よ!』
いや……『ゆけ!』とか言われてもなぁ。
これってつまり僕の人生をご先祖様が勝手に決めちゃってるって事だよね。
確かに僕が戦うことで世界が平和になるんだったら良いけどさ……なんだかなぁ。
全て決められた道の上を、僕はただロトの子孫と言うだけで、その道を歩かなきゃ行けない。
何でロトの子孫じゃないとダメなんだろ。
兵舎には僕よりも強い兵士の人達がたくさん居たのに、何でロトの子孫ってだけで僕が?
「ふぅ……」
僕は大きく息を吐いて、ロトの石版を見上げる。
「分かったよ御先祖様。やれば良いんでしょ、やれば。僕の人生勝手に決められてるみたいで何か釈然としないけど、平和を願う気持ちだけはあるからね。別に御先祖様の為に戦う気は無いけど、お世話になった兵舎のみんなや、さらわれたお姫様も探さないと行けないからね……」
ま、とりあえずやれるだけやってみるさ……次はガライの町にでも行ってみようかね。