「グルゥゥゥゥゥゥ……」
のそりと影が動く。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
僕はその巨大な姿に驚いて、その場にひっくり返った。
今居るのは北アレフガルドとリムルダール大陸をつなぐ沼地の洞窟。
僕は特に強いモンスターが多いと言うメルキド方面へ行く前に、装備を整えようとリムルダールへ行った帰りのことだった。
勇者として旅に出てから数ヶ月……装備も整ったし、僕自身もかなり強くなったと自負している。
もう北アレフガルドのモンスターは、ほぼ相手にならない。しかし南アレフガルドは違う。
かなり強くなったと思っていても、リムルダール周辺のモンスターはやっぱり強いし、装備が整ってようやく五分に渡り合えるようになったばかりだ。
さらに南になるメルキド周辺には、もっと強力なモンスターが居る。だから万全を期して行くつもりだ。
そう思ってリムルダールで装備を整え、あとは北アレフガルドに戻るだけと言うところだ。
しかしそろそろ余裕も出てきたし、沼地の洞窟をくまなく調べてみようと歩き回ってたら……
「なっ――なんでこんなところにドラゴンがっ!」
目の前にドラゴンが現れた。
竜王の率いるモンスターの中でも、甲冑族、鉱石族に並んで3本の指に入る力を持つ種族。
ゴオオオオ!!!
「うわわわわっ!」
ドラゴンはおもむろにあぎとを開き、そこから炎を吐いてきた。
ビックリしたのが功を奏し、かろうじてその攻撃をかわせた。
「くっそおおおお!!!」
もう何でこんな所にドラゴンが居るかなんてどうでも良い。今必要なのは、どうやってコイツを倒すかだ。
僕は剣を構え、ドラゴンの喉元めがけ半ばヤケクソに突進していく。
ドガシャン!
気が付けば僕は壁まで吹っ飛ばされ、叩きつけられていた。
どうやら側面から尻尾の一撃を食らったらしい……鋼鉄の鎧を買っといて良かった。
鉄の鎧だったら、今の一撃で鎧がひしゃげてしまっていただろう。
全身鎧なだけにかぶとも付いてたのがさらに良かった。壁に頭をぶつけてたら即死の危険もある。
「ホイミ!」
僕は自分に回復呪文をかけつつ、一撃必殺の場所とタイミングを探す。
ドラゴンの弱点である心臓は、首の付け根にあると言うのは伝説で聞いてはいる。
しかし強靭な爪と、口からの炎でなかなか懐に入り込めない。
何かドラゴンの注意を引くものは……僕は頭の中で自分の持ち物を思い出す。
そうだ! これなら――
僕は鞘をドラゴンの頭上に投げ――そしてそれを呪文で狙い打つ。
「ギラッ!」
手から放たれた閃熱は、ドラゴンの頭上を飛んでいる鞘に命中し――同時に炸裂した。
自分の頭の真上で起きた爆発にドラゴンがひるんだ。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
僕はこのチャンスを逃すまいと、剣を構えて思い切り突進した。
そしてその勢いと渾身の力を込めてドラゴンの首の付け根をえぐるように突き上げた。
「ギュガァァァァァ!!!」
ドラゴンは大きな断末魔を上げ、ズシンと言う重い音と共にその大きな身体を倒した。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
精神力を使い果たした僕はその場にへたり込み、乱れた呼吸を整え、放心状態のままその様を見届けることしか出来なかった。
ドラゴンを倒した。