「姫、大丈夫ですか?」
「ええ、私なら……大丈夫です」
参ったな……僕はどうするべきだろう。
洞窟のドラゴンを倒すと奥に部屋があり、そこには竜王によって連れ去られたローラ姫が居た。
こんな人の利用が多い洞窟の中に横道があり、しかもかくまえるような場所があるとは、まさに灯台下暗しだ。
そして僕は偶然にも囚われていたローラ姫を発見し、おそらく竜王に命令されて番をしていたであろうドラゴンを倒して、姫を救出することに成功した。
しかし。
「…………え?」
「ですから……ローラも勇者さまと共に旅をしとうございます」
ローラ姫は僕の目をまっすぐに見つめ、その意志を示した。
僕はローラ姫が何を言っているのか、すぐには理解できなかった。
「……………………え?」
そこから一呼吸。
「えぇぇぇぇぇぇっ!!!?」
ようやく姫の意図を理解した僕は必死に断った……もう本当に必死で断った。
思いつくありとあらゆる理由を付けて、何とか思いとどまらせようと頑張ったんだけど……
残念ながら断りきれなかった。
結果、仕方なく姫を連れ歩くことになり、今は廃墟となったドムドーラを越えて丘陵を南に進んでいるところだ。
本当はドムドーラにも寄りたかったけれど、ローラ姫が居ては、魔物の巣窟となっている町に寄るわけにも行かない。
一刻も早くメルキドに到着し、そこでローラ姫が思い直してくれれば、ルーラでラダトームへと送り返すことも出来る。
僕はもう旅慣れてきているから山道なんか大したこと無いけれど、さすがにローラ姫はそうもいかない。
おぼつかない足取りで頑張ってはいるものの、やはり高いヒールの靴で山道は無謀すぎる。
……仕方ない。
「姫、失礼します」
「え?」
僕はローラ姫の横で膝を折り、足と背を抱き上げた。
「あっ……」
ローラ姫はビックリして目を丸くし、パチクリとまばたき。
「姫、しばらく御辛抱願います」
ローラ姫を歩かせるよりは、僕が疲れるけれどこちらの方が足取りも早い。
「あの……はい……」
姫は何かを言いかけたが、納得したのか素直な返事が返ってきた。
「あの……大丈夫ですか?」
「ははっ、大丈夫ですよ。鍛えてますから」
僕はローラ姫を抱きかかえて山道を一日歩き通し。
いくらローラ姫が軽いと言っても、抱きかかえて一日中歩いて平気な軽さなわけじゃない。
さすがに腕が疲れたけれど、それを言えばローラ姫が自分で歩くと言いそうな気もするから強がっておいた。
たぶん明日にはメルキドに着けるだろう。