「うわっ!」
どぉぉん!
地響きを立て、目の前の巨大なモンスターの攻撃が地に突き刺さる。
僕とローラ姫はメルキドに到着したが、その門前に立つ巨大な石人形に襲われた。
そう言えばメルキドが難攻不落の城塞都市として名を広めているのは、人工のモンスターが門番として町を守護しているという話を聞いたことがある。
これがその噂の人工モンスター『ゴーレム』か。
ギィン!
「――くっ!」
攻撃を放った僕の腕が逆にビリビリとしびれる……堅い。
僕の攻撃は、その強固な鉱石の肉体に簡単に弾かれてしまった。
僕達はメルキドに害を及ぼしに来たわけじゃないけど、この襲ってくる門番を何とかしないとこっちの命が危ない。
街中の人にこのモンスターを止めて欲しいけど、僕だけならともかく、ローラ姫が居てはゴーレムが邪魔でとても街中へは行けそうに無い。
だからと言ってローラ姫を置いて僕だけ街中に行くわけにもいかない。
ガァァン!
「くぅっ!」
ゴーレムの攻撃を盾でかろうじて受けたが、僕の身体ごと吹っ飛ばされてしまった。
「勇者さま!」
「危ないから姫は下がっててください。こいつは……僕が何とかします」
吹っ飛ばされた僕に駆け寄ったローラ姫を下がらせると、僕は再びゴーレムに突っ込んでいった。
ハッキリ言ってマズい。このゴーレムは身体が堅く、剣でも魔法でも大きなダメージを与えれない。
こいつを何とかする方法は――ん?
そう言えばマイラの村で、メルキド出身の男が笛で眠るモンスターがどうかとか言ってたな。
そしてそのマイラの村で僕は笛を拾った……まさかあの笛でってことは無いよな。
チャキン。
僕は剣を鞘に納め、道具袋から笛を取り出し口元に構える。
すぅ……
ピュピー!
僕は文字通り思いっきり笛を吹いた。
そしてゴーレムがどうなったかを確認する――が。
「があっ!?」
次の瞬間、それを確認できるか否かの間に、僕の身体は宙を飛んでいた。
笛は失敗だった……もしかしたら笛で何かの曲を吹かなければいけなかったのかもしれない。
……だったら無理だ。僕は笛が大の苦手なんだ。
今のゴーレムの一撃はかなり効いた……かなりマズい状態だ。
身体がしびれてすぐに動けない。しかし背後にはゴーレムが迫っている。
その時、俺の目の前に転がる笛を拾う者が居た……ローラ姫だ。
姫はおもむろに笛を構え、自ら吹き始めた。
ピ~ピロロ ピッピッピ ピ~ピロロロ~♪
「あ……あら?」
しかし何故かそれ以上の音が流れない事に戸惑うローラ姫だったが、どうやら効果は充分だったようだ。
背後で僕を狙っていたゴーレムの動きが止まった。
おそらくこの笛の音がゴーレムの停止合図か何かだったのだろう。
そしてこの笛の持ち主は、マイラで笛で眠るモンスターの事を教えてくれたメルキド出身の男であることが、これで明らかになったと言える。
「勇者さま!」
「ローラ姫ありがとうございます、助かりました」
ローラ姫はまだ身体がしびれて動かない僕を何とか起こそうとする。
「いえ、私が受けた恩義に比べれば大したことありませんわ」
意外に肝が据わっている姫の姿を見て、何か頼もしく思った。
「ふふっ、僕も笛くらいは吹けないとダメですかね……」
「勇者さまの笛があそこまで下手だとは思いませんでしたわ」
「えー、そこまで言いますか……」
「ふふふ、今度わたくしが基礎からミッチリと教えて差し上げますわ」
「ははは、その時はお手柔らかにお願いします」
冗談を言い合いながら、僕たちは城塞都市メルキドに入ることに成功した。