由比ヶ浜悠斗を含め、奉仕部員はなにかと問題を抱えている。   作:オロナイン斎藤。

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由比ヶ浜悠斗はいつだってお節介を焼いている。

 

 

「わたし...どうしよう...」

 

 

愛しの妹から笑顔が消えた。

 

そういうときこそ兄として、しっかりと支えてやらないといけないーーーのだが、

 

 

「どどどどどどどうした!?落ち着け!お腹痛いのか!?病院か!?いろは!消防車って何番だっけか!?」

 

「まずは先輩が落ち着いてください...」

 

 

不測の事態すぎて俺が動揺していた。

 

 

 

 

場所は変わって木組みで高い天井のある落ち着いた雰囲気の某珈琲店。シ○ノワールとかいう毒にしかならなそうな高カロリーのバケモンが有名なあのお店に訪れていた。

 

あんなもの食後に食べたらデブ一直線なのにも関わらず、女の子は「デザートは別腹です」とか言いだすのだから恐ろしい。もしかして胃が4つとかあるんじゃないのん?

 

...まぁ、いつも通り思考が明後日の方向へ流れたわけだが、今はそれどころではない。妹が落ち込んでいる非常事態だ。早急に解決策を練らなければならない。

 

俺は意識を切り替えて神妙な面持ちを保ちつつーーー

 

「それで結衣、どうしたんだ?なにがあったんだ?」

 

「せんぱい、コーヒーこぼれてます...あー、すいませーん!」

 

...と、言ったつもりだったのだが、どうやら違うところでボロが出ていたらしい。気づくと手にしていたはずのマグカップが平衡感覚を失って物理的に香りが零れ出していた。

 

この状況はいつもの結衣ならここで俺以上に慌てているはずなのだが、依然として結衣は俯いたままだ。これは重症ですね...俺も含めて。

 

「こんな世話のかかるお兄さんだと結衣ちゃんも大変だよね~」

 

そんなことを言いながら台拭きを手にした いろはがテーブルを拭き始める。どうやら店員さんから受け取ったらしい。

 

やたらと動揺してさらに彼女にこんなことまでさせてしまって素直に申し訳ないという気持ちでいっぱいです...それと、なんか、こう、介護されてる気分です...。

 

「悪い...」

 

「ほんとですよ。まったく、先輩は手癖が悪すぎです。あと結衣ちゃん関係の話になると弱すぎです」

 

「言い返す言葉もございません...」

 

常に平常心!フェアプレイ!をモットーとしている(してない)はずの俺なのだが、昔から話に結衣が絡んでくるとめっぽう弱い。さらにそれが落ち込んでいるとなるともう完全に詰み。

 

そんなわけなのでお兄ちゃんは一歩どころか二十歩くらい引いて自分の彼女におまかせします。情けなさすぎる。

 

「それで結衣ちゃん、なにがあったの?」

 

一仕事を終えたいろはが改まって問いかける。

 

一応ここで補足しておくと彼女は結衣に対して学校など公的な場で話すときは敬語だったり先輩呼びをしているが、こういった私的な場では基本的にタメ口で接している。

 

なんでも結衣曰く「いろはちゃんは私の妹だから全然タメ口でいいよ!」とのこと。

 

小さい頃に「妹か弟が欲しい!」と言っていたので、その名残というか妹分的な存在ができて嬉しかったのだろう。

 

...最初はお姉ちゃんって呼ばせようとしてたらしいけど、さすがに俺が却下した。理由は聞かないでください。

 

それにしても公的な場とプライベートで言葉を使い分けられるって、女の子ってほんとそういうの得意ですよね...。

 

「......ど」

 

いろはの言葉に反応した結衣が俯きながらも微かに言葉を紡いだ。

 

「「ど?」」

 

思わず俺といろはは顔を見合わせる。

 

―――そして、意を決したように結衣が伏せていた顔を勢いよく上げた。

 

よく見ると結衣の頬にはうっすらと赤みが差して......赤み?

 

 

「どどどどどどどどどどうしよう!あ、あたしヒッキーに告白しちゃった!」

 

 

「...はい?」

 

 

妹がなにを言っているのかよくわからなかった。

 

 

 

 

 

「......なるほど」

 

 

結衣は一通り話し終えると、よほど堪えたのか顔を真っ赤にしてテーブルに突っ伏した。

 

なんか情報量が多すぎるので今の精神状態ではそれらを処理するのに時間がかかりますね...。

 

えーと、なんだ......てことはうちのサブレを助けたのは比企谷で、サブレがうちの家の犬だと知らなかった比企谷は何かしらの...おそらく小町ちゃんからその話を聞いて結衣に...となると、小町ちゃんは比企谷の妹で......そういや小町ちゃんの名字って比企谷だったな...なんで気づかなかったんだろ...あかん、こんがらがってきた...。

 

「えーと...とりあえずヒキガヤ?って先輩がなんかいろいろとこじらせてて、結衣ちゃんとの関係をリセットしようとしたんだけど、結衣ちゃんは同情でその人と接してるわけじゃないのにその人に『同情する必要はない』みたいなことを言われちゃって、でももちろんそんなわけないから勢いで告白しちゃった......みたいな感じかな?」

 

「......うん、そんな感じ」

 

「おお...」

 

絶賛キャパオーバー中の俺に代わって、やけに落ち着いた雰囲気のいろはが結衣の話をいい感じにまとめてくれたので思わず感心してしまった。

 

できる彼女がいてくれて先輩は鼻が高く

 

 

「そ、それで返事はどうだったの!?」

 

 

......なりそうだったのだが、いろはの表情は一変して目をキラキラさせながら前のめりになって完全にエキサイトしていた。こいつ楽しんでるわ。前言撤回。いつもの一色さんでした。

 

「ううん、勢いでいろいろ言っちゃって何も聞かずに逃げちゃった...」

 

「あちゃー...」

 

「言い逃げしたのか...」

 

実際どんな状況だったのか詳しくはわからないが、言い逃げされて呆然と立ち尽くす比企谷の姿は容易に想像できた。

 

「明日どうしよう...ちゃんとヒッキーとお話できるかな...」

 

「ヒッキー?」

 

「あー、比企谷のあだ名みたいなもんだ」

 

「え、結衣ちゃん引きこもりが好きなんですか?」

 

「引きこもりというよりヒキガエルだな」

 

「先輩は先輩でなにいってるんですか...」

 

「ごめん俺もよくわかんない」

 

なんかもう精神的に疲れてくるとよくわからないこと口に出しちゃうよね。おっぱいとかおっぱいとかおっぱいとかね......あぁ、我ながら頭の中ピンクかよ。

 

「お兄ちゃん、あたし、どうすればいいかな...」

 

結衣が潤んだ瞳で俺を見る。どうにかしてやりたいのはマウンテンマウンテンなのだが、妹の恋愛沙汰だ。しかも相手は比企谷で、さらには様々な事情が絡んでいる。

 

......あー、結衣ちゃんに彼氏ができたらとか想像しただけでしんどいので、正直言って作らないで欲しいし、なんなら俺が一生養っちゃうまであるんだけど、そういうわけにもいかないんだろうなぁ...。

 

それに兄として、妹に頼られた以上は応えてやりたい。しかしながらどうにも俺の私情が絡んできてしまうジレンマ。

 

 

だからーーー

 

 

「...とりあえず一週間。今週は奉仕部休んでいいぞ」

 

 

俺は奉仕部部長として応えることにした。

 

 

「で、でも」

 

「いやー、どうせ依頼なんて来ないしな。あ、わかってるとは思うけど別に結衣が必要ないってわけじゃないからな」

 

結衣は狼狽えていたが、俺はそれを茶化してから言葉を続ける。

 

「それに明日にでも解消できるような問題でもないだろ。さすがにお兄ちゃんでもすぐには思いつかないよ」

 

早急に解決策なんて思いつくはずがない。なにしろ結衣自身の問題だ。ただ与えるだけでは意味がない。本人の意思で動かなければ意味がない。

 

「それに問題は『どうすればいいか』じゃない。結衣が『どうしたいか』だよ」

 

「わたしが...どうしたいか...」

 

「だから一週間。比企谷との向き合い方を考えな。答え合わせはそれから」

 

 

答え合わせ、なんて言ったが人の気持ちが関わる事柄に正解なんてものはない。ベターやベストが存在しても正解なんてものは存在しないのだ。

 

だから「男は〇〇だ」とか「女は××でなければならない」なんて決めつけてると視野が狭めるだけであって、さらに己の品格を下げるだけだ。

 

ただ「俺の妹は可愛い」というのは紛れもない事実であり、真実であり、この世の真理なので、そこは勘違いしないでほしい。

 

......と、話が逸れたが、なんにせよ答えなんて出なくていいし、出さなくていいのだ。

 

「わかった」

 

俺の言葉に結衣が真剣な表情で頷く。

 

「それと、最後にお兄ちゃんからひとつ」

 

そしてこれは奉仕部部長としてではなく、兄としての言葉。

 

なんだかんだ言って俺は結衣を全力で後押しせざるを得ないのだ。

 

「......もし、仮に、結衣がその先を望むのなら逃げるんじゃなくて踏み込んでいかないと駄目だ。なんせ相手はあの比企谷だからな。なにかと理由を付けて逃げようとするに決まってる。この際なんなら空気なんて読まなくていい。あいつに考える隙を与えるな

 

―――待たないで、こっちから行くんだよ」

 

 

「待たないでこっちから…そっか…そうだよね…うん!わかった!お兄ちゃんありがと!」

 

 

ようやく笑顔が咲き誇る。久しぶりに見たそれはとても輝いて見えた。

 

やはり由比ヶ浜家の元気印は笑っているのが一番である。

 

 

 

 





そんなわけで多分21話目くらいです。しれっと今更ながら2017年初投稿です。
おはこんばんようにちわ。斎藤です。


そんなわけで今年から社会人になってしまった私は1年目からブチのめされてます。

いやまぁ1年目なんてブチのめされるためにあるんでしょうけどね。
エブリデイしんどい。そんな感じです。


仕事で固い日本語ばかり使っているのでこうして本編やら後書きで、
よくわからない砕けた日本語を使うのがストレス発散になる今日この頃。

最近はポプテピピック第3弾LINEスタンプを買いました。クソどうでもいい。


はてさて、本編に触れていきますけれどもね、急展開でしたね、えぇ。

結衣ちゃんどうしてそうなったって感じですかね。
まぁ行間ですっとばした結衣と八幡の回想は追々ということでご容赦ください…。
回想は大方の内容はまとまってるけど、書き起こす元気がないのは秘密。

なんかこの小説いろんなものを後回しにしてる気がする。気のせい……じゃないなこれ。

悠斗も悠斗で奉仕部部長として徹することにで逃げておいて、
結局兄として言っちゃってるあたり、うーん、なんだかなぁって感じよね。
悠斗くんが一番めんどくさいと思うの。だがそこがいい。

まぁそんなことはさておき、次回はみんなの愛犬サブレが登場するのでお楽しみに。



最後に、たくさんのお気に入り登録と感想ありがとうございます。
沢山のご縁に感謝です。

半年くらい更新していなかったのにお気に入りが増えてて非常に驚いております。
メッセージもありがとうございます。更新は……できるだけ頑張ります。

感想いただけたら、
心を込めてお返事いたします(気分で)

そんなわけで今回はこれくらいで。

以上、来世は童貞を殺す服になりたい斎藤でした。

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