やはりこの素晴らしい世界は間違っている。   作:ALQ

9 / 13
きっと、誰しもに事情がある。

もう既に、深夜を回り午後の26時、俺たちは、アンデットの王であるリッチーと対面していた。

 

「えっと…ウィズ…さん?あんた、こんな墓場で何をしてるんだ?魂を天に還すとか。言ってたけど、アクアじゃないが、リッチーのあなたがやる事じゃないんじゃないのか?」

 

「ちょっと!ハチマン!こんな腐ったみかんみたいのと喋ったら、あなたのその腐った目がさらに腐るわよ!ちょっとそこをどいて、ターンアンデットをかけさせなさい!」

俺の言葉にアクアがいきりたち、ウィズに魔法をかけようとする。どうでもいいが、みんな俺の腐った目についてのコメントが辛辣すぎやしませんかね。

その言葉にウィズが俺の背後に隠れる。

ちか、近い近い近い!柔らかい!いい匂い!リッチーなのにいい匂いがする!

ウィズの匂いにテンパってる俺の後ろでウィズが怯えたような困った顔をしながら、

 

「そ、その…。私は見ての通りリッチー、ノーライフキングなんてやってます。アンデッドの王なんて呼ばれるくらいですから、私には迷える魂の話が聞けるんです。この共同墓地の魂の多くはお金がないためロクに葬式すらしてもらえず、天に還る事なく毎晩墓地を彷徨っています。それで、一応は、アンデッドの王な私としては定期的にここを訪れ、天に還りたがっている子達を送ってあげているんです。」

 

…いい人だ。

アークプリーストを名乗る女神(笑)のアクアよりいい人じゃないかおい、女神お前もこの人を少しは見習えよ…

 

「それは立派な事だし良い行いだと思うんだが、そういうのは町のプリーストに任せれば良いだろう、それが仕事なわけだし」

 

俺の疑問に、ウィズが言いにくそうにアクアをチラチラと見ながら

 

「そ、その…。この町のプリーストさん達は拝金主義…いえば、お金が無い人たちは後回し…と言いますか…」

 

なるほど、一応アークプリーストのアクアがいるから言いにくいのか、その話を聞いたカズマが

 

「つまり、この町のプリーストは、拝金主義で、金の無い奴が埋葬されてる共同墓地になんて供養にこないってことか?」

 

「え…えと、そ、そうです…」

 

しかしそれは、町のプリーストを責めるわけにはいかないな、誰だって金の出ない仕事はやりたくないし、めんどくさい事は他人に押し付けるのが人間だ。上司に仕事を押し付けられて死んだ目をしながらその事を親父が言っていた。やっぱり死んでも働きたく無い…

 

「事情はわかった。でも、それならゾンビを呼び起こすのはどうにかならないか?俺たちがここに来たのって、ゾンビメーカーを討伐してくれってクエストを受けたからなんだが…」

 

俺の言葉にウィズが困ったように

 

「あ…そうでしたか…。その呼び起こしているわけではなく、私がここに来ると私の魔力に反応して勝手に目覚めちゃうんです。その、私としてはこの墓地に埋葬される人たちが、迷わず天に還ってくれさえすれば、ここにくる理由はなくなるんですが…。えっと、どうしましょうか?」

 

なるほど、ある程度の、力があって暇で時間を持て余しているプリーストがここにたまに来て供養してあげればいいわけか…その条件に当てはまりそうなプリーストねぇ…いや待てよ…

 

みんな、同じ事を思ったのか視線がアクアに集まる。

おい…目をそらすな目を…

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

墓地からの帰り道

時刻は、そろそろ空に白みがかかってくる時間帯

 

「納得いかないわ!」

 

と墓地にアクアの怒り声が聞こえる。その声にカズマがめんどくさそうに

 

「しょうがないだろ。つか、あんな良い人討伐する気になれないだろうに」

 

俺たちは、ウィズと名乗るリッチーを見逃す事にした。

そして、これからは毎日暇を持て余しているアクアが、定期的にあの墓場への浄化しにいく事で折り合いがついた。そこの部分はやはり女神、アンデッドや迷える魂の浄化は自分の仕事だと理解しているのか、睡眠時間が減ると文句を言いながらも引き受けた。しかし、リッチーを逃すという事に今でも納得いかないのかこのように怒っているわけだ。

 

俺は先ほどウィズから貰った一枚の紙切れを眺めながら呟く

 

「しかし、リッチーが街に普通に住んでるとはなぁ…」

 

そこには、ウィズの住んでいる住所が書かれており、しかもそこはウィズの魔法具店という名前のマジックアイテムの店らしい。俺の中では、リッチーってアンデッドの王って、言うぐらいだからダンジョンの奥深くに住んでいるイメージがあったんだが、ウィズは生活が不便なダンジョンにわざわざ住む必要はありませんよと、笑いながら言われた。まぁ、言ってる事はわかるんだがなんだろう…この、遊園地などの着ぐるみの中身は実はおっさんなんだよとか、サンタの正体は実は親父なんだぜって言われた時のなんとも言えない失望感が俺を襲ってくる。

 

「でも、穏便に済んで良かったですね。いくらアクアがいると言っても相手はリッチーですから、魔力切れをしている私やハチマン、それにカズマはもし戦闘になったらなす術もなく死んでいましたよ。」

 

と、何気なくいうめぐみんの言葉に俺とカズマが驚く。そしてカズマが

 

「げ、リッチーってそんなに危険なモンスターなのか?ひょっとしてやばかった?」

 

「ヤバイなんてものじゃないですよ、リッチーは強力な魔法防御、そして魔法のかかった武器以外の攻撃の無効化。相手に触れるだけでさまざまな状態異常を引き起こし、その魔力や生命力を吸収する伝説級のアンデッドモンスターです。ハチマンやカズマが普通に話しているときですら、私は怖くて…ごほん、武者震いで足が震えていましたよ。」

 

そんなにヤバイモンスターだったのか、あの見かけだし、やってる事は良い人そうだったから全く気にしてなかったが、よく考えたらアンデッドモンスターの元締めだもんな…、俺とカズマにリッチーのスキルを教えてくれるという事だから名刺をもらったが、スキルを習いに行くときは一応アクアを連れて行こう。

 

「ねぇ、ハチマンその貰った名刺、渡しなさいよ。今からあの女より先に家に行って家の周りに神聖な結界を張って涙目にしてくるから」

 

うん、やっぱり連れて行くのはやめよう。

 

そんな事を考えていると、ギルドが見えてきた。

はぁ、クエストも終わったしあとは報酬を貰って寝るだけだな、昨日から全然寝てないし馬小屋でも良いから早く寝たい…と思っているとダクネスが

 

「そういえば、ゾンビメーカーの討伐ってことだったが、ゾンビは倒したがゾンビメーカーを倒していない場合はどうなるのだ?」

 

とポツリと言うとめぐみんが、

 

「それは、ゾンビメーカーを倒していないから、クエスト失敗になるの…で…は」

 

「「「「あっ」」」」

 

こうして俺たちのゾンビメーカー討伐は睡眠時間だけが削れられ、クエスト失敗という結果になった。

 

 

 




ドラマCD版ではウィズの声優さんは、はやみんだったのですが、アニメ版では変わるそうですね。少し残念です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。