やはり俺が軽音部なのはまちがっている。 作:キリマンジャロウ
【合唱コンクールを終えて】
2年F組 比企谷八幡
合唱コンクールとは嘘であり、悪である。
我が校の合唱コンクールの理念は「合唱により生徒同士の交流を深める」とある。
しかしそれはとんだお門違いである。
往々にして、合唱コンクールという行事はやる気のある者、ない者がはっきりと分別される。
やる気のある者はやる気のない者を注意し、叱咤する。
そしてやる気のない者は、反発し益々やる気をなくす。
正にイタチごっこ。交流など図れるはずがない。
むしろこれを切っ掛けとし、クラスの仲が険悪となり最終的には学級崩壊に繋がるのだ。
ではなぜ、このような悪しき行事を学校側は強制するのか。
それは全日本合唱コンクールに出場させるためである。
そこであわよくば金賞を獲ることができれば、学校の宣伝になる。
つまりは学校の欲である。そしてその欲を満たすために生徒たちを犠牲にする。
交流など嘘だ。合唱コンクールに真実などないのである。
見たこともないヨーロッパの川の賛美を歌うように。
どう聴いてもバラードではないアップビートなバラードを歌うように。
全てが嘘なのだ。嘘も欺瞞を秘密も詐欺も、糾弾されるべきものだ。
なら、合唱コンクールは悪であるほかない。
結論を言おう。
合唱コンクールは廃止にしたほうがいいと思いました。まる。
× × ×
音楽教師の山中さわ子先生が体をワナワナと震えさせながら、俺の作文を大声で読み上げた。
え、なにこれ嫌がらせ?
作文というものはテンションが上がると時々恥ずかしいことを書いてしまう。
夜中に書いたラブレターを翌朝読み返すと、とても読めたものじゃないというあれと一緒だ。
書いているときはノリノリで書き上げたが、こうして読み返されるとなかなか恥ずかしい。
放課後の職員室はほかにも教師がたくさんいるというのにのに何故こんな場所で読み返すのか。
いや嫌がらせなのだから当然か、と自己解決。
ふと、中学の頃の甘酸っぱい思い出が蘇る。
夜中にテンションが上がって書き上げたラブレターを、翌日の朝好きなあの子の下駄箱に投函し、昼休みにそのラブレターが黒板に張り出されているという地獄を。ホント翌朝読み返せばよかった。
つーか全然甘酸っぱくねぇじゃん。辛い(からい)思い出だわ。むしろ辛い(つらい)。
なるほど、だから「からい」と「つらい」は同じ漢字なのかとひそかに感動していると、山中先生が口を開いた。
「比企谷君、私が授業で出した課題は何だったかしら?」
「…はぁ、合唱コンクールを終えた感想というテーマの作文でしたが」
「そうよね。それでなぜ君は学校の経営に異を唱える作文を提出しているのかしら?」
美人で物腰が柔らかいため、男子生徒からも女子生徒からも絶大な人気を誇る山中先生が、ニコリと俺に笑いかける。彼女のファンの男子生徒からしたら羨ましい光景だろうが、目の前の俺からしたら冷や汗ものである。
メガ ワラッテ ナイデスヨ?
「い、いやぁ、俺は別にそんなつもりで書いてはいなかったんでしゅけど。先生がそう捉えてしまったということは、先生自身がきょの学校の経営に不満があるんじゃないでしゅかっ?!」
噛みまくりだった。人と話すだけでも緊張するのに、それが美人で年上の女性ならなおさらだ。
するとどこからかピキッという音が聞こえる。
氷水とかからたまに聞こえるよね。アレ。しかしここに氷水はない。
どうやら山中先生のほうから聞こえてきたようだ。つまり逆説的に山中先生は氷水だったのか…。
なんて馬鹿なことを考える。
「おいガキ…屁理屈言ってんじゃねぇぞ…」
あれれ~?美人で物腰が柔らかい山中先生のはずだよなこの人。
なんで後ろにゴゴゴゴって感じの効果音が付きそうなのん?
「ガキって…。いやたしかに俺は先生の年齢からしたら俺はガ「あ゛あ゛?」すいませんでした。書き直します」
草食動物が身の危険をいち早く察するように、ぼっちもまた自分の危険には聡いのだ。
あのまま言い続けたら確実に死んでいた…。俺でなきゃ見逃しちゃうね。
「いえ、書き直しは結構よ」
「え、いいんですか」
なら何故俺はここに呼ばれたのだろう。…まさか本当に嫌がらせですか?
さっきは冗談気味にそう思っていたが、ついに教師にまで嫌われてしまったのか俺は…。
「ええ、たしかにこの作文の内容はふざけているけど、どうせ私しか見ない作文だし、とやかく言うつもりはないわ」
一々書き直しなんてさせてたら仕事が増えるじゃない、と付け加える。
見た目は真面目な人だけど、案外適当なんだな。まぁ見た目で人を判断するなんて愚の骨頂だが。
俺だって目が腐っているけど性格も腐ってるしなー。腐ってるのかよ。
…言っておくがBLのほうじゃないからな?断じて。BLのほうじゃないからな?大事なことなので二回言いました。
またもやそんな馬鹿なことを考えている俺を尻目に、山中先生が続けて喋る。
「その代りに、あなたに手伝ってほしいことがあるの」
「はい?」
× × ×
いつの間にか俺は特別棟の階段を上っていた。これなんてキンググリムゾン?
いやむしろ、ザ・ワールドか?
あ…ありのまま、今、起こったことを話すぜ!
「俺は職員室にいたと思ったらいつの間にか階段を上っていた」
何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何が起こったのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…。催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
作者の「さっさとこの件終わらせて次の展開に進みたい」という意思の片鱗が見えたぜ…!
特別棟には生物室や音楽室、図書室などがある。山中先生が音楽教師という点から考えると、大方音楽室で資料の整理というところだろうか。もしくは楽器の移動…力仕事かもしれない。
あぁ…めんどくせぇなぁ…。専業主夫を目指す俺としてはそんな社蓄紛いの行為お断りしたい。せっかくのアフター5が残業で潰されるなど、あってはならない。
ので予防線を張っておく。
「先生、俺実は腰を痛めていまして…ヘル…ヘル…ヘルペス?」
「
先ほどの職員室とは打って変わって穏やかな表情でそう返してくる山中先生。
いや内容は全然穏やかじゃないんですけどね。しかし俺は諦めない。
諦めたらそこで試合終了だ。安西先生…!何も、したくないです…!
「あの…実は俺、教室に入ると死んでしまう病が」
「どこの勇敢な海の戦士よ。まぁ嘘吐きなのは一緒ね」
生徒を嘘吐き呼ばわりなんて、なんて教師だ。ヤンクミ先生を見習ってほしい。生徒を信じることが教師の務めなんです。
やはりこの学校の経営は間違っているな…。まぁ嘘だけどねっ☆てへぺろ!
…オエエッ。自分でやって気持ち悪くなってしまった。
でもこの人も口調からどことなくごくせんの香りがする…メガネだし。
おっと、また人を見た目で判断してしまった。八幡ウッカリ。
「着いたわよ」
山中先生が立ち止まったのは、音楽準備室の前だった。
準備室、ということはデスクワークか。まぁ力仕事よりは幾分ましだ。一人でコツコツやる作業は嫌いじゃないしな。
山中先生がガチャリと扉を開ける。
「みんな~、お邪魔するわよ~」
…ん?みんな?
「おっ、さわちゃん。今日は来たのか?」
「さわちゃん先生、最近来てなかったね~」
「吹奏楽部が忙しくてね、新入部員多いから」
「うっ、羨ましい…」
「
その教室は本当に学校の中と疑うくらい異質だった。
ドアの左手側には、ドラムセット、ギター、ベース、キーボードが並んでおり、スタジオか?とも思ったが
奥を見ると机とお高そうなティーセットが並んでおり、喫茶店にも見えた。
そのほかにも私物が溢れかえっており、黒板には落書きだらけだ。
「武道館ライブをする!」と中央にでかでかと書かれており、思わず鼻で笑いそうになる。
「まぁまぁ。みんな、お茶が入りましたよ」
「「「わ~い」」」
「おいっ!新勧ライブに向けてちゃんと練習を…!」
だがそんなことより、もっと異質な存在がいる。むしろこちらのほうが重要である。
そこには4人の少女達がいた。
とりあえずここまでです。軽音部との絡みは次回書こうと思います。
いつ書きあがるかは…わかりません。
感想とかあったらモチベーションめっちゃ上がるので書いてほしいです。