やはり俺が軽音部なのはまちがっている。   作:キリマンジャロウ

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ご感想をくださった皆様。ありがとうございます。
いくつか質問があった部分を答えます。

・比企谷八幡と軽音部は同級生です。
・物語の都合上共学という設定に変更しております。ちなみに千葉県総武高校が舞台です。
・ほかの俺ガイルキャラを登場させるかどうかはまだ決めていません。あ、でも小町は絶対出します。

以上のことを踏まえて、どうぞ!


②当然の如く比企谷八幡は誰にも知られていない。

「あれぇ~さわちゃん先生、その人誰~?」

 

あの後、俺がこの教室に入っても誰も俺に気づいてはくれなかった。しかもそのままティータイムに突入する始末。

影が薄いのは自覚していたが、まさかここまで気づかれないとは…。幻の6人目なの?安西先生…やっぱりバスケが、したいです…!別のバスケ漫画じゃん。

もう帰ろうかな…と考えていると、セミロングで茶髪の前髪をヘアピンでとめた女子がようやく俺に気づいたようで、山中先生に説明を求める。

 

「ん?あ、あぁ!ごめんごめん、忘れてたわ~」

 

「おい、連れてきたのアンタだろ。若年性認知症かよ」

 

「若年性…やだもー!褒めたって何も出ないゾ☆」

 

いや皮肉のつもりで言ったんですけど…。都合のいい言葉しか耳に入らないフィルターでもあるのかよ。何それほしい。

春日部の5歳児並みのポジティブさだなこの人。

てかアンタキャラブレ過ぎだろ。おしとやかな山中先生はどこへ行ったんですか。

 

「ひっ、ひぃっ!」

 

ガタタッ、と音がする。そちらに目をむけると、流れる黒髪で前髪を姫カットにした女子がこちらを怯えながら見ていた。

ふむ、なかなか胸が大きい…。その豊満な胸に不思議と目が吸い寄せられてしまう。

これが万乳引力の法則か。ちがうか。ちがうな。

どうやら急に立ち上がり椅子を倒してしまったようだ。

初対面で怯えられるって俺どんだけ目つき悪いの?とくせい【いかく】なの?攻撃力1下がっちゃうの?

 

「お、男の人…」

 

ふむ、どうやら男が苦手なだけらしい。よかった。危うく泣いちゃうとこだったぜ。

 

「おーい澪、だいじょぶか」

 

黒髪姫カットを宥めるように話しかけたのは、茶髪のショートカットで、黄色いカチューシャをしておでこを出している女子。

シャツをスカートからだし、がに股で椅子に座っている。ボーイッシュな雰囲気だな。

ほう、なかなかいいデコだ…。って、何考えてんだ。デコフェチじゃないぞ俺は。

まぁアイマスの伊織や中二病の凸守、織田信奈の野望の明智は好きだが…。

あれ?俺ってデコフェチじゃね?

 

「澪ちゃん、ハーブティーよ。これ飲んで落ち着きましょう?」

 

そう声をかけたのは、半円状の太い眉毛が特徴的で金髪のウェーブのかかったロングヘアの女子だった。

肌の色も白い。ハーフ、もしくはクォーターなのかもしれない。どこか気品があり、お嬢様を連想させる外見の女子だった。

てかあの眉毛マジで太いな、色も相まってたくあんに見えるわ。

 

「う、うん、ありがとう…ムギ」

 

金髪ウェーブの出したお茶で落ち着きを取り戻したようだ。

しかし…驚いたな。

ここにいる女子全員、一般的に美少女と呼ばれる容姿を持っている。

類は友を呼ぶというが、呼び過ぎだろ…。

類が友を呼ぶなら何故俺はいつまでもぼっちなんだろう。呼べる友がいないだけか。なるほどな。ものすごく納得した。

 

「そんでさわちゃん、そのぬぼーっとした男子、誰?」

 

茶髪デコがそう山中先生に尋ねる。ちら、と彼女の少し警戒した目が俺を捉えた。

ぬぼーっとした奴とは失礼だな。そう来るなら俺だってお前のことデコって呼ぶぞ。

まぁすでに心の中で呼んでいるが。

 

「えーコホン…、彼はあなたたちと同じ二年生の比企谷君。入部希望者よ。」

 

「どーも、2年F組の比企谷八幡です。っておい、入部希望者って何ですか、聞いてないんすけど」

 

「そりゃ、言ってないもの」

 

さも当たり前のように、いったい何を言っているんだこの教師。

 

「俺、ここが何部かさえ知らないんですけど」

 

「ここは軽音部よ。みんな、今日から彼のことよろしくね」

 

勝手に話が進んでしまっている。止めなければ。

それに、軽音部?軽音部ってあれだろ。モテたいと思って入ったチャラチャラした奴らが、適当に練習して、文化祭とかそういうときだけ主役ぶる、リア充(笑)集団のことだろう。

俺とは真反対の位置にいる存在だ。

そんな奴らの集団に俺が入れるわけがない。

 

「「「「入部希望者!?」」」」

 

そんなことを考えてる俺を無視し、その言葉に目を輝かせる4人。どうやらよほど新入部員が欲しかったらしい。

だがすぐ、俺に目をむけて輝きを失う2人。お前らのことだぞ、黒髪姫カットに茶髪デコ。

勝手に期待して勝手に失望する。やはり俺とは相いれない存在だ。

なぜなら俺は期待をしない。故に失望もしない。それだけで人生がスムーズに進む。みんなもやればいいのに。

っと、こんな人生観語ってる場合じゃなかったわ。

 

「あの、俺の意思はどこにあるんですか」

「ないわ」

 

ないのかよ。いやそれはおかしい。

どれくらいおかしいかというと『輪るピングドラム』のストーリー展開くらいおかしい。

いやーあれ最後まで観たけど結局理解しきれなかったわ。最終話なんかいい感じに終わったけど。

 

「異論反論抗議口答えは受け付けません」

 

「ぐっ…、そんな横暴許されるわけ」

 

「私、他の先生方からはおしとやかな美人で通ってるもん♪社会的信用度、信頼度は私のほうが上よ」

 

クラスではおとなしい美人で通っている。つまり逆説的に先生は腐女子…ってそんな馬鹿なこと考えてる場合じゃない。

てか、もん♪じゃねーよ。年齢考えろ。

 

「いやいやほんと無理ですって、俺楽器とかできませんし。つーかここ女子だけじゃないですか、その中に一人だけ男子がいるっていうのは恥ずかしいですよ」

 

「異論は受け付けないといったはずよ。もし断るようなら、音楽の評価が最低になるだけだけど。大学受験の時苦労するわねぇ…」

 

大人って汚い!!

これが大人というなら俺は大人になんかなりたくない。早くネバーランドへ連れていってくれピーター・パン。

むしろ俺がピーター・パンになるまである。

 

「というわけで、みんな後はよろしくね!あ~、顧問らしい仕事したぁ~」

 

そういい残し山中先生は音楽準備室、もとい軽音部を去っていく。

あの人の中で顧問らしい仕事とは善良な一般生徒を強制的に部活に入部させることなのか。

 

「ちょ、待てよ」

 

バタン、と大きな音を立てて扉が閉まる。

そしてラブジェネレーションのキムタクの如く声をあげ、ぽつんと残された俺ガイル。

狙って言ったわけじゃないけど、なんか恥ずかしい!

 

ほかの軽音部員たちもぽかんとしているようで、カチ、カチと時計の音だけがこの教室を支配していた。

おいおいマジかよ。なんだよこの状況。

美少女4人で部活ってどこの深夜萌えアニメだろうか。タイトルをつけるなら流行りの4文字タイトルで「けいおん!」とかか?なにそれ売れなさそう。

いや今流行りなのは長文タイトルだったな。

「俺が軽音部に入部することになってしまった件について」

…絶対売れないな。

 

そんな現実逃避を頭の中で展開させていると、パン!と手の叩く音がする。

 

「じゃ、じゃあとりあえず、自己紹介でもする…か?」

 

椅子から立ち上がり、張り詰めた空気を破壊する如くそう発言したのは茶髪デコだった。

空気を和ませようとしているのが健気だ。が、俺としてはそんなことどうでもい。

 

ぼく おうち かえる!

 

「いや、俺は―――」

 

そうなんとかここから立ち去る言い訳を捻り出そうとすると、扉が開いて山中先生が顔をのぞかせた。まだ何かあるのか。

 

「比企谷君、今帰ったらO☆SHI☆O☆KIよ」

 

そう言い捨て、また去っていった。

……怖え、なんなのあの人?エスパーなの?むし、ゴースト、あくが弱点なの?

むしろあの人こそ悪だろ…。

 

「…じゃあ、自己紹介するか」

 

渋々、ということを全面的にアピールしながら俺はそう言った。

これアピールしとかないと「何あいつ張り切ってんの?キモ(笑)」と言われるんだよ。

しかしこのアピールをすることによって「何あいつカッコつけてんの?キモ(侮蔑)」となる。

あれ?どっちも同じじゃね?

 

「じゃ、じゃあまずあたしから…」

 

そう切り出したのは先ほどの茶髪デコだ。

こいつ、空気読むの上手いんだろうな。俺と違って。

 

「えーコホン、あたしはこの軽音部の部長…いや隊長…いや、支配者の田井中律だァァァ!ハーッハッハッハッハ!」

 

前言撤回だ。何こいつ。超メンドくせぇ。

パコン!と黒髪姫カットが茶髪デコ、改め田井中を殴る。ほう、どうやらツッコミタイプらしい。

 

「あでっ!」

 

「真面目にしろっ!」

 

「う~わぁったよ…。ドーモ、2年B組。田井中律デス。部長。パートはドラム。よろしく」

 

「お、おう、よろしく。田井中=サン」

 

つられて片言になってしまった。どこのニンジャスレイヤーだよ。

 

「なんで片言になってんだ…」

 

「あたしに真面目なのは似合わないの~。そこまで言うなら次は澪だかんな!」

 

「わ、私…?」

 

チラ、と俺の顔を見る黒髪姫カット。

 

「わ、私は、2年F組の秋山澪って言います…。ベース担当、です。よろしくお願いします」

 

ペコリ、と黒髪姫カット改め秋山が頭を下げた。

田井中への話し方とはまるで違う、どうやら人見知りする性格らしいな。

まぁ、俺が男っていうのもあるんだろうが。

それにどうやら同じクラスだったようだ。こんな美人クラスにいたっけと思ったが

俺は常日頃から下を見て生きているから気づかないのも無理はない。

…改めて自分の生活を鑑みると本当卑屈だなぁ…。

 

「なんだ、お前ら同じクラスなのかよ。なら自己紹介しなくてよかったじゃん」

 

「あっ、そうか…。あっ、えっ?同じクラス?」

 

秋山に「あれ?この人クラスにいたっけ?」という目をむけられた。

別に構いはしない、俺だって知らなかったし。ただちょっと目が滲むだけ。

何も問題ない…グスッ。

 

「お、俺はあんまり目立たない位置にいる奴だからな。それにまだクラス替えがあったばかりだ。まぁ、無理はない」

 

「あ~、確かにそんな感じするわ~」

 

田井中がそう言う。おい、それって立派な暴言ですからね?

リア充は往々にしてぼっちを下に見る。本人たちは自覚していないのだろうが

彼、彼女らは自然と蔑み、馬鹿にしている。マジ訴えたら勝てるレベル。

なのに訴えない俺超優しい。こんな優しいのに何でみんな俺のこと知らねーんだよ。

 

「ご、ごめんね…、私、人見知りで、あんまり人の顔よく見れてなくて…」

 

「いやいい、気にするな。俺もアンタのこと覚えてなかったし」

 

「あ、うん…」

 

なんだろう、すごくシンパシーを感じるな。この秋山って女子。

 

「…」

 

「…」

 

無言で見つめあう俺たち。見つめあうと素直にお喋りできないのではなく、ただ単に二人ともコミュ障なだけだった。

 

「あーもう!次、唯!」

 

見かねた田井中が最初に俺に気づいた茶髪ヘアピンに促す。茶髪ヘアピンがそれを聞き、

勢いよく椅子から立ち上がる。

 

「はいっりっちゃん隊長!2年B組の、平沢唯であります!ギタリストです!よろしくね、ひき…ひき…ヒッキーくんっ!」

 

「おいやめろ、そのあだ名は俺に効く。主に心に」

 

ナチュラルに引きこもり認定とか茶髪ヘアピン改め平沢、小動物みたいな顔してとんでもない毒舌だなこいつ。いや、というよりただ天然なだけかもしれない。

どこかしら妹の小町と同じ匂いを感じる。アホの子的な意味で。

 

「え~、かわいいのに~」

 

「かわっ…かわいくない、やめろ」

 

女子はこうやってすぐ男子にかわいいという。別に本当にかわいいとおもっているわけではない。「かわいいって言ってる私かわいいでしょ」というアピールだ。

この言葉は多くの男子の心を惑わせる。まぁ俺くらいになると女子のかわいいなんかに一々反応はしないがな。

しかし今日は暑いな。まだ春だっていうのに、顔が熱い。

 

「ぶぅ~」

 

平沢は拗ねた様子で口を尖らせながら、椅子に座る。

しかしこの平沢にそういうアピールはないような気がしてしまう。

なんというか、警戒心を解いてしまう容姿と言動だ。危ない危ない。中学生の頃の俺なら確実に惚れていた。

 

「じゃあ最後に、ムギ!」

 

田井中が進行する。お次は金髪ウェーブである。平沢に倣うように椅子から立ち上がる。

 

「はいっ、2年B組の琴吹紬と申します。キーボードを担当しております。よろしくお願いします。比企谷さん」

 

そう言い、金髪ウェーブ改め琴吹がニコリと微笑み、お辞儀をする。

おそらくこれ以上綺麗なお辞儀はないのではないだろうか、というくらい綺麗で不覚にも見惚れてしまった。座る所作さえ見事だ。

 

「以上4人が、軽音部のメンバーだ!」

 

進行役の田井中がそう締める。

 

「そうか、じゃあ俺帰るわ」

 

「おう!じゃあな!…っておい!」

 

「なんだよ…帰らせてくれよ…。もう自己紹介終わっただろ。それで十分だろ」

 

ホントもう早く帰らせてください。これ以上ここにいると息がつまってしまいそうだ。

リア充の巣はぼっちにとって腐海の森と同じくらい有毒なんだぞ。

 

「お前、新入部員なんだろ?だったら部の説明とかさ」

 

…どうやらこの部長さんは、もう俺を軽音部に入れた気になっているらしい。

 

「いや、お前らはいいのかよ。山中先生が適当に俺押し付けたようなもんだぞ。嫌なら嫌ってはっきり言ってくれ。俺が山中先生に入部断られたって言っとくから」

 

彼女たちからすれば、自分たちのパーソナルスペースにいきなり他人が入り込んだのだ。

そう、はいそうですかと受け入れられるようなものでもないだろう。

 

「ううん、大歓迎だよー!!」

 

って、え?

平沢が急に椅子から立ち上がり声をあげる。

 

「よかったー、新入部員入ってきてくれて。私たち、ずっと勧誘してたんだけど。誰も入ってくれなくてさー…。着ぐるみきてビラ配りとかしたけど全然効果なくて」

 

着ぐるみってもしかしてそこの床に転がっている妙にリアルな動物の着ぐるみだろうか。

もしそうなら効果がないのも当然だろうと頷ける。

いや、その前に平沢の認識を改めなくてはいけない。おそらく平沢は純粋な子なのだろう。

少し話しただけで俺がそう感じられるほどに。故に俺みたいな男が来ても素直に喜べる。

だが、ほかの部員たちは違う。

 

「いや、平沢が良くてもさ…ほかの部員が…」

 

「えーダメなの?りっちゃん、澪ちゃん、ムギちゃん」

 

小動物のような眼を潤ませ、他の部員に尋ねる平沢。

 

「は~い。私も、新入部員が増えてうれしいで~す」

 

手をあげて最初にそう言ったのは琴吹だ。おいおい…。

 

「まぁ、あたしも別に構わないぜ」

 

続けて田井中。

 

「おい、言っておくが別に俺は楽器なんて引けないぞ、よくてリコーダーくらいだ」

 

「だいじょーぶ!私だって去年までギター弾けなかったんだ~。一緒に練習しよ?」

 

「いや、俺は2年生だ。お前には3年というアドバンテージがあるかもしれないが、俺にはあと2年しかないだろ。つまり経験値に開きが…」

 

「あ、あどばんてーじ…?」

 

やはり平沢はアホの子であるようだった。くそっ説得失敗だ。

しかしなぜこいつらはこうも簡単に俺のような部外者の加入を認めるのだろうか。危機管理能力が足りないぞ。

おいまるで俺が危険人物のようではないか。ぷるぷる、ぼく、悪いぼっちじゃないよ。

自分で言って自分でツッコんでしまった。

だが、まだ秋山が残っている。男が苦手なようだし、秋山が断れば俺も―――。

 

「ねぇ~澪ちゃん。いいでしょ~?」

 

子供が母親にお菓子をねだるかのような口調。甘えるのがうまいなこいつ。

平沢は末っ子タイプだろうな。絶対。

 

「う…み、みんなが、…いいなら…」

 

「やったぁ!」

 

ボソボソとそういう秋山。おい、どう見てもその口ぶり歓迎してないだろ。

俺別に怒らないから、怒らないから自分の気持ちはっきりといってごらん?

まぁ、怒らないからといって怒らなかった人を俺はいまだかつて見たことがないのだが。

いや、俺が最初の一人になってみせよう。

っと、また現実逃避してしまった。

 

…しかし、もう他に逃げ道が思いつかない。

 

「……わかった、降参だ」

 

こんなんどうしようもないじゃん。

すると平沢がパアアッと顔をほころばせる。

 

「うん!ようこそ軽音部へ!ヒッキー!」

 

そう歓迎の言葉を言い、平沢は俺にクッキーとお茶を進めてきた。

そしてそれをにこやかに見ている琴吹。

大丈夫か?という目で見ている田井中。

ビクビクと怯えた目で俺を見ている秋山。

本当に大丈夫なのだろうか、この部に入部して。

だがまぁ、勧められて断るのも何なのでありがたく頂くとしよう。

 

あと、ヒッキーはやめろ。




自己紹介の話でした。
やはり八幡の心理描写難しいな。
主にネタを考えるのが。

渡航先生ってやっぱりすごい、改めてそう思った。
改まり過ぎだろ。

感想、質問、ご意見、指摘、なんでも受け付けております。
ぜひどうぞ。
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