やはり俺が軽音部なのはまちがっている。 作:キリマンジャロウ
他のss作品みて嫉妬の嵐。なぜここまで上手いのか。
八幡になんの楽器をやらせるのかと質問があったのでお答えします。
いつかどの楽器をするかという話を書くのでそれまでお楽しみに!!
答えになってないとかいうのはすいません。
昨日、山中先生に無理やり軽音部に入部させられ、俺は情報を集めていた。
もちろん軽音部の情報である。情報を制する者は世界を制すというこの情報社会で、情報を集めないのは愚行だ。どうでもいいけど情報情報言いすぎだろ俺。
あれは中学一年生の頃だった。
言うまでもなく俺はぼっちだった。言うまでもないのかよ。だがぼっちの俺に優しくしてくれる女子がいた。
当時まだエリートぼっちとして覚醒していなかった俺は、勘違いをしてしまったのだ。
「え、あいつ俺に惚れてんじゃね?」
まぁ俺はその女子に告白して振られてしまったのだが、その話は割愛する。
しかしその女子は当時学年のトップカーストの中のトップにいた男と付き合っていたのだ。
学年中にその事実は知れ渡っていたようだが、ぼっちの俺には関係なかった。
そして告白の翌日から、俺の机はNYの地下鉄の如く落書きのオンパレードとなった…。
要するに、情報を持ってさえいればドジを踏まなかったということだ。
俺は軽音部の彼女たちのことをまだよく知らない。故に、情報を集める必要がある。
だがしかし、俺に気軽に話せる友達なんてものはいない。
そこで使うのがぼっち百八の特技の一つ、聞き耳だ。
うん、ただ耳をすますだけです。
まぁそんなことをしても、都合よく軽音部の話をしている生徒なんてそうそう現れないので、あまり収穫はなかった。
わかったことといえば、
・軽音部はこの学校でアイドル視されているグループである。
ということだけだった。
確かに彼女たちのあのルックスだ。演奏は聞いたことがないのでわからないがファンがいるのも頷ける。
聞いたところによると、ファンクラブなんてのもあるらしい。しかし――
「あんまり欲しい情報は得られなかったな」
とぼそりと呟く。やべ、つい口に出ちゃった。誰にも聞かれてないよな?
俺としては、もっとこう、軽音部の内情が欲しかったわけなのだが。意外と閉じたグループなのかもしれない。
まぁ一日で情報のすべてを集めようなんて言うのは無理だろう。
今日のところはひとまず帰るとしよう。
自分の中で折り合いをつけて、席を立ち教室から出るために扉に向かう。
ガラッ。
「はーい比企谷君、今日も部活に行きましょう」
ガラッ。
…あれれ~?今山中先生がいたような気がしたぞ~?うんまぁ気のせいだろう。
気のせい気のせい。気のせいだろうが反対の扉から出ることにしよう。
ガラッ。
「うふふ~逃がさないわよ~」
はちまん は にげだした! しかし まわりこまれてしまった!
「…なんなんすか、山中先生」
「比企谷君のことだから、とりあえずその場しのぎに入部しといて、徐々にフェードアウトしようとしてるんじゃないかなぁ~、って」
何この人。俺のこと見抜きすぎでしょ。俺に惚れてんじゃね?
「いくわよ」
そういい山中先生が俺の手をつかむ。すべすべ!やわらか!あったかい!
「ちょ、先生…」
「こうしないと、あなた逃げちゃいそうなんだもの」
「逃げないから離してくださいよ。痛いです。いろんな意味で」
前にも言ったがこの先生は生徒から人気があるのだ。そんな人が一生徒の手を握ったりしたら、快く思わないやつもいる。
…周囲の目が痛いんだよ!ぼっちは視線に敏感なんだぞ。
結局山中先生はそのまま手を放してくれず、俺は軽音部に連行された。
× × ×
軽音部の扉の前についた。山中先生は特別棟まで来たらさすがに手を離し、職員室に戻っていった。
まぁ目で「逃げたらどうなるかわかってるだろうな」と言っていたので拘束は解かれたようで解かれてなかった。
ここまで来たらもう逃げる術はないので、観念して軽音部の扉を開ける。
「…うぃーす」
入室の挨拶に軽く迷い、まるでリア充が街で仲間と会った時にする部族の挨拶みたいなものになってしまった。そこで拳をコツンとかわしたらあなたはもうリア充です。
てっきり他の部員が揃っていると思いながら入ったのだが、そこには一人しかいなかった。
肩をビクッと震わせ、椅子に座っている。
黒髪姫カット。秋山澪である。秋山はまるでホラー映画で志村ー!うしろー!という時よくあるように、ゆっくりこちらを振り向く。
「あ…あ…」
「お前はどこぞのカオナシだよ」
もうすでに涙目である。本当に大丈夫なのか、こいつ。
「あ、す、すみみゃせっ…」
あっ噛んだ。秋山は羞恥で顔を茹蛸の様に真っ赤に染める。
やはりこいつとは何かシンパシーを感じる…。
とりあえず、俺は空いている椅子に座ることにした。
位置は秋山の斜め前だ。正面は緊張するし、隣も緊張する。故にここしか俺の座る位置はなかった。
「…他の部員は?」
「あっ、律たちは、委員が決まり切らなくて放課後使って決めるらしいから…遅れると…」
そういえば田井中、平沢、琴吹は同じB組だったな、と思いだす。
「そうか」
「はい…」
「……」
「……」
そして沈黙。しかし俺も秋山も所詮コミュ障なのだからしょうがない。
俺は鞄から文庫本を取り出し、栞が挟まったページを開いた。
どうでもいいけど、栞ってなんかいい名前だよね。清楚っぽいし。
栞という名前の女子がいたら俺が絶対幸せになるのに。するのにじゃないのかよ。
自分でボケて自分でツッコむ。それが少し可笑しくて、フヒ、と笑ってしまう。
ぼっちは常に思考を巡らせるため、よくあることである。そこからキモイと言われるまでがコピペ。
「ひぃっ!」
キモがられるどころか怯えさせてしまった。顔が青くなってるレベル。
てか「ひぃっ!」って、俺の笑った顔ってそんなに恐ろしいの?凶器なのん?
確かに小町とエンタの神様見てた時、大爆笑していた小町が一緒に笑っていた俺の顔見た瞬間クスリとも笑わなくなったけどさぁ。
お兄ちゃんあれは悲しかった。
秋山はまだ怯えている。
「あ、その、…悪い」
笑ってごめんなさいって悲しい謝罪したの生まれて初めてなんだけど。
いやあったわ、小学生のころクラスの男子がオナラをして、クスクスとみんな笑っていたのに、先生から「今笑ったのは誰だ!」と言われ、
「ひ、比企谷くんです」
「比企谷でした」
「比企谷サイテー」
と生贄に捧げられた。なんで普段俺のことなんかアウトオブガンチューなのにこういうときだけみんな俺のこと思いだすんだよ。
そこからはもう「しゃーざーい」コールである。
そして俺は教壇の前に立たされ、「笑ってしまってごめんなさい」と言ったなぁ…。
そんな思い出を思い返していると、今度は秋山のほうから謝ってきた。
「ううん、わ、私こそ、すみません。私、昨日も言ったんですけど、人見知りで…なんていうか…すみません。本当に」
「…お前、男苦手なのか」
「ふぇっ?」
虚を突かれたような顔をする秋山。
「いや、なんとなくそんな感じがしてな。お前が本当に男が苦手なら、無理して俺の入部認めなくてよかったんだぞ。俺は別に気にしない」
ぽかん、と口を開けていた秋山が顔をまた赤くし慌てている。青くなったり赤くなったり忙しいやつだ。
まぁ、自分を見抜かれるというのは恥ずかしいものだ。
人はみんな外面を持って生きている。世の中をうまく生きるために、着飾っている。弱さを補う形で。
違うとは言わせない。
イケメンになりたいという弱さを持つ奴は髪型、ファッションという形で補い、さも自分はイケメンという風に装っている
頭が悪いという弱さを持つ奴は、自分自身それをネタにすることで、そんなもの自分は気にしていないという風に装いっている。
これが外面ではなくなんだというのか。まぁ、秋山の場合わかりやすすぎるが。
それを見抜き、指摘されるというのは、パンツを無理やり脱がせるようなものである。
…秋山のパンツか…ハッ危ない危ない!こんなとこでそんな妄想したら大惨事だ。むしろこれを切っ掛けに女子vs俺の第三次大戦が行われる。なにその初手から詰みゲー。
「…うん、実は私、男の子ってちょっと苦手なんです」
しばらくして落ち着いた秋山はポツリと呟くように言った。
「なんていうか、怖い?っていうのかな?昔…小学生の頃の話なんですけど、男の子によくいたずらされて…スカートめくりされたり、机に虫入れられたり…。まぁ、その後律がすぐ怒ってくれたんですけど。あ、律と私って幼馴染なんです」
なるほどな、恐らくその男子は秋山に好意を抱いていたのだろう。
小学生男子というものは、好きな子にちょっかいを出したがるものなのだ。ソースは俺。
まぁ俺がちょっかい出そうものならその後すぐ「しゃーざーい」コールなんですけど。
「情けないですよね…もう別にいたずらされたりしないのに、いまだに引きずってて。律にばっか頼ってて…」
「いや、それは違うだろ」
思わず、自分の気持ちが口から出てしまった。
秋山が目を見開いて驚いている。当然だろう、俺だって驚いているのだから。
「あー…いや、なんていうか、秋山は『人見知り』や『男が苦手』ってことを、弱いことを悪いことだと思ってないか?」
「え…?」
弱いことは悪いことなのだろうか。それは違う。
弱いことは悪いことならば、子供はどうだ。大人から守られなければ生きていけない存在だ。
病人は?治してくれる医者がいなければ死んでしまう。
ならば、彼らは悪だろうか?良識ある奴なら口を揃えてそうではないというだろう。
ではなぜ、こと対人関係における弱さは悪いことだと言えるのだろうか。
弱さに大なり小なりあれど、人は人、家は家だ。他人と比べられるものではない。
「本当に悪いのは…弱さを盾にすることだ」
そこで秋山はハッとした顔になる。
弱いから、自分は病気だから、子供だから仕方がない。
だから自分には何もできないし、何もやらない。
別にそういう奴がいても俺は構わない。
だが、そんなものは―――間違っている。
「俺はぼっちだ。友達がいない。知り合いだって少ない。クラスではいつも一人だし、休日は家に引きこもる。筋金入りのぼっちだ。だけど、誰かを傷つけた覚えも迷惑をかけた覚えもない。俺はそんな俺に誇りを持っている」
ここで一呼吸置く。
「秋山、お前はその人見知りと男が苦手ということで、何か悪いことはしたのか?」
「…え…わ、私は…」
「お前は、お前のその弱さで、田井中たちを傷つけたりするのか?」
そこで秋山がカッっとなり、椅子から勢いよく立ち上がる。
「違う!私…私は、律…唯もムギも、傷つけたりなんかしない!絶対!……って、あっ」
秋山は自分の言った言葉に、自分で驚いていた。そしてまた恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にした。
「ああ、そうだ。違うだろ。なら、お前は悪くない。社会が悪い」
俺は、そう言いきった。
秋山はそんな俺を真っ赤な顔で見つめていた。
× × ×
やっべぇ…勢いに身を任せていろんなこと言ったけど、これ俺新たな黒歴史作っちゃったんじゃね…。あーー顔が熱い。
なに女子に向かって説教みたいなことしてんだよ。一時のテンションは身を任せるなってどっかのマダオも言っていたのに。
あーあ…これで俺も明日から女子からハブ決定か。あ、でももともと俺って女子から存在認識されてなかったから大丈夫だったわ。男子からもだろ。
「ぷっ…くくく…あははは…」
恥ずかしさで悲しい現実逃避をしていると、秋山が急に笑い出した。
キモ過ぎて逆に笑えますかそうですか。泣いていいよね?
「せっかくいいこと言ったのに…最後…社会が悪いって…くくく…」
なんだそっちか。よかった泣く前で。よくはないけど。
「…まぁ、その、なんだ。べつに俺のことなんか気にしなくていいから。入部してほしくなかったら、ちゃんと言ってくれ」
俺がそういうと秋山は急に笑うのをやめた。え、なんか俺変なこと言った?天使が通った?
「…そんなこと、ないですよ。私、確かに昨日は比企谷君が入部ってことになって…ちょっとだけ、怖かったです。でも…そうじゃなくて…なんて言ったらいいかわからないんですけど、比企谷君はいい人だから、もう怖くないです」
秋山が俺を真正面から見つめ、そう言った。何気に彼女の顔を真正面で見つめるのは初めてかもしれない。
「ようこそ、軽音部へ。歓迎します。比企谷君」
秋山が、笑った。俺は思わず見惚れてしまう。
まぁ、なんというか、美人の笑顔の破壊力とは、とてつもないほどだ。
俺じゃなかったら惚れてるぞ、これ。
「…ん、じゃあ、よろしくな」
「はい!」
秋山がそう返事をした。もう平気そうだな。なら―――
「あのさ、俺たち別に歳が違うわけじゃないんだから、タメ口でいいから」
同い年に敬語とか、逆にこっちが気を遣う。
「あ…うん、そうです…そうだね」
「うん、そのほうがいいな」
思わず俺は笑ってしまう。秋山の笑顔に釣られたのか、それとも秋山に入部を認めてもらえたのに安心したのかは、自分でもよくわからない。
でも何故か、笑ってしまった。
って、やばいやばい。俺の笑った顔は凶器なのだ。また秋山が青い顔をして怯えてしまう。
と秋山の顔を見ると、秋山は顔を今までで一番真っ赤していた。
赤くするって…青くなるよりやばいのかな、と思ってしまう。
しかしこの状況はやばい。密室に男女二人、女子は顔を真っ赤にしている。
どう見ても事案です、本当にありがとうございました。
どうにかしなければと思った矢先、扉からガチャリと音が聞こえる。
「おー待ったせー!!!」
「うぅ~委員決め疲れたぁ~」
「唯ちゃん大丈夫?とりあえずお茶にしましょうか」
田井中、平沢、琴吹が来てしまった。
「…よ、よう」
ハハ、と俺は手をあげた。
その後俺が、秋山以外の3人(主に田井中)に秋山に何をしたのかと問い詰められたのは、言うまでもない。
やはり、俺が軽音部なのはまちがっている。
八幡がまだ知り合って間もない澪にここまで言えたのは、やはり自分と澪はどこか似ていると思ったからだと思います。
というオリジナル設定でした。
あ~澪かわいいよ澪。