やはり俺が軽音部なのはまちがっている。 作:キリマンジャロウ
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これを糧に頑張って投稿していきたいです。
今回はちょっと短めですが、どうぞ。
チャイムが鳴り、6限が終わった。今日の授業はこれで終わりだ。
学校という監獄から解放され、クラスの中にあった一つの緊張が解かれる。
いや学校ってマジ監獄だろ。
学校という監獄で教室という牢屋にぶち込まれ、制服という囚人服を着せられ、授業という苦痛でしかない刑務作業を受ける。
前体育で一緒になった奴が監獄学園に入学したいとか言っていたが、すでに実現できているから安心しろ。
それにしてもなぜこんな蛮行が世間の常識としてまかり通っているのか甚だ疑問である。
俺たちは学校に囚われ、世間は間違った常識に捕らわれている。
つまりこの世の中自身が監獄だったのか…。やはり専業主夫こそが唯一この世の監獄から抜け出せる方法だな。
自分の進路を再確認したところで、俺は同じクラスで、同じ部活の秋山に目を向けた。
昨日、俺はまた新たな黒歴史を作ってしまった。そしてその要因である彼女。
……正直今日は恥ずかしくて一度も顔を見れなかったのだが、そうは言っても同じクラスで同じ部活だ。嫌でも顔を合わせなければならない。
いい加減観念しよう、そういう意味も込めて、別段用もないが彼女に目を向けた。
すると、何故か秋山もこちらを見ていたようで、目が合ってしまった。
「…!…@☆△$□#!?」
慌て過ぎだろ。目が合っただけでこの慌てぶり、昨日は「もう何も怖くない」みたいなことを言ってはいたものの、やはり彼女はまだ俺のことが苦手なようだ。
また顔を赤くして俯かせている。
そういう顔をされるとこっちまで顔が赤くなるからやめてほしいんですけどね。
気を使わせるのもなんだし、さっさと教室から出るか。八幡はクールに去るぜ。
そうと決めたら、さっさと席を立ち扉に向かうとしよう。そう思った矢先――
「ねぇ秋山さん、今日俺たちとカラオケいかね?」
と声がした。その瞬間、クラスの中の喧騒が一気に静まり返る。
え?何事?
そう思い振り返ると、秋山が二人の男にからまれていた。どうやら秋山をカラオケに誘っているようだ。
名前は覚えてないが、たしかトップカーストあたりにいる奴らだったと思う。
「秋山さんさー、好きな歌なに?やっぱそれもバンド?」
「え…えっと…?」
秋山が眉を八の字にして、困惑した表情を浮かべる。
「ああ、俺長岡、んでこっちが大久保。初めて話したよね~」
え、何あいつら初めて話してるのにあんなにフレンドリーなの?コミュ力53万かよ。
「あ…うん」
「そんでさぁ~聞いてよ~、こいつがさ、どうしても秋山さんとカラオケしたいって言ってて~」
「ちょwwお前www、お前が秋山さんと行きたいって言いだしたんだろーwww」
えー?そうだっけー?と言いながら、長岡とかいう男は流れるような動きで、秋山の正面に座った。ちなみにそいつらの席ではない。
なんでトップカーストの奴らって他人の席にあんなに簡単に座れるんだろうな。遠慮とかしろよ。
こっちはお前らのせいで休み時間にトイレから帰ってきても座れなくて授業始まるまで待ちぼうけなんだぞ。
「へ、へぇ…」
「ねぇ~秋山さん行こうよ~w」
「…わ、私…ぶかちゅ、あるから…」
「いいじゃんいいじゃん、クラスメイトと親睦を深めるのも大事!」
「あ、なんなら軽音部のみんな連れてきなよ!」
「え…あ…いや……その…」
秋山が言葉を濁しながら返事をする。苦手な男を前にして緊張しているようだ。
というか、何故クラスの奴らは黙っているのだろうか。
見渡すと、全員が秋山と彼らに視線を集めていた。なんだこれ。
すると近くの男子がヒソヒソと話し始めた。
「おい…長岡と大久保って、ヤリチンって噂だよな…」
「ついに秋山さんに手ぇ出そうとしてきたか…ふざけんなよ…俺たちの澪ちゃんを…」
いやお前らのではないだろ。マジかよこいつら、ガチで言ってるの?だとしたら怖すぎなんだけど。
だがまぁ、大体事態は把握できた。
要するに、みんなのアイドルである秋山が輩に口説かれているので注目しているのだ。
あるものは心配して、あるものは興味を持って、嫉妬しているやつなんかもいるかもしれない。
それぞれの思惑があるのだろうが、それ故にクラスの全員が固唾を飲んで見ている。
…アホらし。
秋山がどうしようが誰にも関係ないというのに、彼女の一挙一動を見守るクラスメイト全員、ひどく滑稽だった。
まぁ、誰にも関係ないので、俺も関係ない。さっさと教室から出よう―――と、思うのだが…。
つい、秋山と目が合ってしまった。
少し湿っぽくなった瞳からは「どうしたらいいでしょう?」というオーラが伝わってくる。
「助けて」と言ってないのが秋山らしい。
…まぁ、なんつーの?
別に助けてやる気はないのだが、知っている女の子が困っているという状況でこのまま立ち去るというのは、我が妹の小町の耳に入ればお仕置きは必須である。
まぁ耳に入れる人なんかいないけどな!何故なら俺は友達がいないぼっちだ。
しかし、万が一ということに備えるのもまたぼっちの特性である。
ぼっちは石橋を叩いて壊すぐらいの慎重さでなければ、この厳しい社会では生きていけないくらいピュアなのだ。
「…小町に怒られるのは避けたいよな」
ボソッと呟き、俺は扉付近にいた体を動かし秋山のほうへと向かう。
「おい、秋山」
「! ひっ、比企谷君…」
吃るのは別に構わないんだけど、そこで吃ると怯えてるように聞こえるからやめようね。
「…何?お前」
長岡の口調が、秋山に対した口調とは打って変わって低くなる。
うわ怖っ。なんでここまで怖い声出せるのトップカーストの奴らって。恫喝スクールにでも通ってるの?
他のクラスメートたちの視線も、怪訝な目つきに変わる。
当然だろう、クラスで一番目立たないであろう俺が、今クラスで一番目立っている場所にいるのだから。
決して「こいつ誰?」とかいう目つきじゃないよね?違うよね?
「今日も部活だろ。さっさと行こうぜ」
「あ…う、うん」
「はぁ?無視してんじゃねーよ。お前何なんだよ」
長岡は今にも殴ってきそうな勢いで睨んでくる。
「俺は軽音部の新入部員だよ。というか、お前こそ誰?秋山、こいつ知り合いか?」
軽音部の新入部員。そう言った途端、静まり返っていた教室がざわつく。
「新入部員ってマジで?」「軽音部に男が?」という声が上がっている。
長岡と大久保という奴らも、驚いてぽかんとしているようだ。
まぁ、当然だろう。不可侵と思われていた聖域に、よくわからない男がいるというのだ。
自称ファンの奴らにとったら、一大事だろうな。
「え…いや、今日初めて喋ったかな…」
「ならさっさと行こうぜ。俺、まだよく軽音部のこと知らねーし」
「あ…うん。えっと、それじゃあ…」
秋山はそう言って長岡と大久保を見なおす。
「私、部活行くから。ごめんね?」
と言い残して席を立ち、俺たちは教室から出ていった。
× × ×
俺たちが出ていった後の教室は、しばらく離れても伝わるぐらいざわざわしていた。
エスポワールかな?学校とは常に騙し、騙される空間だし、あながち間違いでもない。
「あの、ありがとう。比企谷君。助けてくれて」
秋山が、おずおずといった感じで、そう切り出す。
「…いや、助けたわけじゃねぇよ」
そう、俺は秋山を助けたわけじゃない。
ただ周囲の注目を、秋山から俺にずらしただけ。ただそれだけだ。
最初、俺は秋山が人見知りなうえ男が苦手だから、うまく断り切れないだけと思っていた。
しかしこれは誤りだった。
秋山が本当に断り切れなかった理由、それは「注目されているから」である。
聞くところによると彼女は人前に出るのが苦手らしい。
そんな彼女が、クラスの全員から視線を向けられて緊張しないわけがない。
なので、その視線を少しずらしてやったのだ。そして秋山がようやく断ることができる。
ぼっちは視線に敏感なのだ。まぁ、秋山はぼっちどころか学校の人気者だけどな。
ただ素質は十分だと思いました。まる。
要するに俺は、ただ秋山を動きやすいようにしただけだ。
実際に動いたのは秋山自身だ。こんなものは、助けたなんて言えないだろう。
「俺はなにもしてない。ただお前を部活に誘っただけだ」
「…ううん、私が比企谷君が助けてくれたって思ったんだから、比企谷君は私を助けてくれたんだよ」
秋山はすこし不満そうに、しかしどこか嬉しそうな顔をしている。
なんだその顔は。可愛いからやめろ。
「…感謝の押し売りは買わないぞ」
「売ってるわけじゃないよ。無理やり渡してるだけだから」
「さいですか…」
そりゃまた、迷惑なこって。お歳暮も暑中見舞いもまだ時季外れだぞ。ったく。
特別棟に行く渡り廊下には、俺たちの足音だけが響いていた。
この話は、けいおん!×俺ガイルのss書こうかなぁって思ったとき真っ先に浮かんだ内容です。
まぁ書いてみたら前の話と比べて結構短くなってしまいました。
長岡と大久保は適当に駅名からつけました。同姓の方はごめんなさい。