やはり俺が軽音部なのはまちがっている。   作:キリマンジャロウ

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1000人以上の方に気に入ってもらえるってすごいことですよこれは…うへへ。
UA数も29000件突破(キリ悪いけど)、感想も40件も頂いて感謝の極みです。ありがとうございます。
八幡のパートがどうなるか気になっている人が多いようですが、決まるのはまだまだ先になりそうです…。すいません。

今回は俺ガイルからキャラが出てきます。誰だろうなぁ(棒)。
それでは第6話をどうぞ。


⑥やはり比企谷小町は最高の妹である。

「うーっす」

 

平沢(妹)と協力し、ようやくビラ配りが終わり軽音部の部室に戻った俺は、ガチャリ、と音を立てて扉を開けてそう挨拶をしながら入室した。すると――

 

「律っ!」

 

「うおっ!」

 

田井中の名前を叫ぶ声が聞こえた。俺はその大きな声に驚き、つい「きをつけ」の姿勢になってしまう。

 

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

「あんたねぇ…私が気づいたからよかったものの、もしこのままだったら、新歓ライブできなかったのよ!?」

 

「うぅ~~…」

 

そこには田井中と一人の女生徒が口論をしている姿があった。いや、口論というよりは叱り付けていると言った方がいいだろう。

田井中を叱り付けている女生徒は茶髪のショートカットで赤い淵メガネをかけている、これまた容姿の整った奴だった。どこかで見たような顔の気がする。どこだったっけ…。

 

「あ、比企谷君」

 

「ヒッキーおかえり~。なんで固まってるの?」

 

いち早く俺に気づいた秋山と平沢が声をかけてくる。

 

「ん、いや…まぁどうでもいい。それよりどんな状況だ、これは…」

 

「ああ…実は律が新歓ライブに使う講堂の使用申請書を出してなくて…」

 

「生徒会の和ちゃんが教えに来てくれたんだ~」

 

生徒会。そう聞いて、そういえばあの茶髪メガネを、全校朝会などで見る姿だと思いだした。名前も何度か聞いたことがある。確か…真鍋、だったか。

 

「知り合いなのか?」

 

「うん!私と和ちゃん、幼稚園の頃から幼馴染なんだ~」

 

「唯のつながりから、私たちとも仲良くなったって感じかな」

 

友達の友達という関係から友達になるとは、さすがリア充。恐るべきバイタリティだな。

 

「それにしては、ずいぶんとご立腹のようだな。真鍋って奴も」

 

「しょうがないよ、律はいつもそうだから。去年だって部活申請用紙が出てなくて、危うく文化祭に出られないところだったんだ」

 

「ふふ~、りっちゃんはアホの子ですからな~」

 

「なるほどな…。あと平沢、お前は田井中にアホの子って言えるレベルじゃないからな」

 

軽音部に入って4日。こいつのアホの子ぶりは予想をはるかに超えるものだったのだ。

人の振り見て我が振り直せ。俺は平沢に釘を刺しておいた。

 

「うぇっ!しょんな~…」

 

ふにゃふにゃと平沢は崩れ落ちていく。

 

「まぁ、そんなことより」

 

俺はそれを無視し話を続ける。

 

「ひどい!?」

 

「…琴吹の"アレ"はなんだ?」

 

「あ、あぁ~」

 

秋山が苦笑いを浮かべる。なんだその顔は。

琴吹は、田井中と真鍋を見ながら顔をウットリとさせ、頬を桃色に染めていた。

なんだ?キマシなのか?タワーなのか?キマシタワーなのか?

キマシタワーというタワーを建てて百合電波を受信してその映像を全国に配信したら一儲けできそう。

 

「ム、ムギは…そういうタイプだから…」

 

おい、口が重くなってるぞ秋山。何かあったのか?何かされたのか?ちょっと教エロください。

 

「…あれ?あなた比企谷君?」

 

そうこうしているうちに真鍋が俺に気づいたようだ。

 

「あぁ、比企谷君!お疲れ様~」

 

「お、ビラはちゃんと配ったのか?」

 

琴吹と田井中もあとから俺に気づく。

 

「ん、さすがに全部は無理だったが、8割ほどはな」

 

平沢(妹)に手伝ってもらったことはまだ伏せておく。それよりも真鍋は俺のことを知っていたのに驚いた。知り合いだったっけ?もしくは昨日の噂を聞いたのかもしれない。

どこで俺の名前知ったのか真鍋を見つめ考えていると、それを察したのか真鍋から話し出した。

 

「同じクラスの真鍋和よ。覚えてないの?」

 

こいつ、同じクラスだったのか。秋山の例の如くまったく覚えてませんでした。はい。

 

「あ、あぁ~…俺、あんま女子と関わりねーしな」

 

同じクラスだと知らなかった、とそのまま言うのも失礼な気がしたので、少し遠回しに知らなかったということを説明する。野球に例えるなら外角ギリギリのスローカーブだ。

 

「そう。確かにあなた、クラスじゃ孤立しているものね」

 

「がっ!?」

 

「「「「ぶふーっ!!!」」」」

 

なんだこいつ。俺がせっかく気を回しながら話したのにド真ん中ド直球かよ!しかも160キロのジャイロボール。パワプロなら余裕でSランクだろ。

ていうかお前ら、声抑えてるんだろうが笑ってるの丸わかりだからな。秋山なんて呼吸困難になってるレベルで笑ってんじゃねーか。

 

「って、あらやだごめんなさい。失礼だったかしら?」

 

「ん…いや、まぁ間違ってはねーから大丈夫だ…」

 

本当は大丈夫じゃないけどな。

クラスの奴らに孤立しているやつ、もしくは「あれ?こいつ誰だっけ?」と思われているのは知ってはいたが、直接言われるとやはり心に来るものがある。

まぁ、俺は優しいからな。大丈夫な振りくらいしてやるよ。こんなに優しいのバファリンか俺くらいだぞ。ちなみに残りの半分は小町でできています。

つまり俺は小町の優しさによって存在できているわけだ。あながち間違いでもねーな。

小町の優しさがなかったら親父に何度殺されるかわかったもんじゃない。

辛い現実から目を背けながら、俺はそんなことを思い浮かべていた。

 

「…それより、8割も配ったの~!?すご~い!」

 

ようやく笑いのツボが収まった平沢が驚きの声をあげる。

 

「主語を言え主語を…」

 

「私たちが配った時は、全然受け取ってもらえなかったものね…」

 

琴吹が思い出すように言っていた。

確か、気味の悪い着ぐるみを着ながら配っていたんだったな。

 

「あー、まぁ俺の力じゃなくて、平沢の妹が手伝ってくれてな」

 

「ふぇ?憂のこと知ってるの?」

 

「お前が妹に俺のこと話したんじゃないのか?それでわざわざ挨拶しに来て、そのまま手伝ってくれたんだよ」

 

「あ、あーそういえば…えへへ」

 

「忘れてたのね…唯…」

 

真鍋が呆れた声で言った。

 

「なるほどなー。ま、比企谷にそんな配れるわけないよな、顔怖いし!納得したよ」

 

「おい田井中、確かにそれはおおむね同意だが、それは過去のお前らに対するブーメランだからな」

 

「言いすぎだぞ律…って、同意しちゃうんだ…」

 

「あ……う、うるさーい!憂ちゃんが協力したのはわかった!お前は何枚配ったんだよ!」

 

くっ、ついに聞かれてしまった。

そのことは隠し通そうと思っていたのに。

 

「…………………………………………1枚だよ」

 

ボソッと呟くように言うと、軽音部の連中(+真鍋)が固まった。

おい、いつから俺の目はメデューサの目になったんだ。腐ってないのを喜んでいいのかわかんねーよ。

 

「1枚しか配れないって…逆にすげーよ」

 

「おい、そんな悲しそうな目で俺を見るな。やめろ、肩に手を置くんじゃない」

 

その時、全員の俺の見る目が優しくなった気がした。

 

 × × ×

 

あの後、俺たちは時間も時間なので解散し、それぞれ帰宅した。まぁ解散といっても女子グループは一緒に帰っていたので実質俺一人が抜けただけだが。

俺も一緒に帰ろうと誘われたが、他の奴らが徒歩で俺は自転車だったので断った。

べっ、別に女の子に囲まれて帰るのが恥ずかしかったからとかじゃないんだからねっ!

そんなことを考えているうちに俺は家に帰り着いた。

 

「ただいま」

 

「あ、お兄ちゃんおかえり~。小町にする?小町にする?それとも…KO☆MA☆CHI?」

 

「飯で」

 

家の中に入ると、妹の小町が制服にエプロン、手にはおたまを持って出迎えてくれた。

つーかどこで覚えたんだよそんな言葉。可愛いからお兄ちゃん以外にやるの禁止な。

マジで親父にやったら可愛さのあまり膝から崩れ落ちるレベル。

彼氏?千葉の妹はお兄ちゃんと結婚するって条例だったはずなのでそんなものはいない。というか作らせない。

「持たず、作らず、(家に男を)持ち込ませず」それが比企谷家における非彼氏三原則である。ちなみに小町限定だ。

 

「もーお兄ちゃんノリ悪いな~。そこは小町を選ぶところだよっ」

 

「選びたいのは山々だがそんなこと親父に知れてみろ、あらぬ誤解を受けて俺が死ぬ。肉体的にも社会的にも。そうなったら小町にまで被害が及ぶだろ?」

 

「おっ、さり気に小町のことも心配してくれてる!小町的にポイント高いよ、お兄ちゃん!」

 

「はいはい高い高い。そんなことより飯をくれ」

 

制服のブレザーを脱ぎ手に掛けネクタイを緩めながらそんな熟年夫婦見たいな言葉を言う。

すると小町が俺の脱いだブレザーを奪い取ってきた。

 

「おい、なにすんだよ…」

 

「いや~お兄ちゃんさ、最近帰り遅いし、目が腐ってるし、なんか顔疲れてるし、目が腐ってるし、どーかしたのかな~?って思って、ちょっとなんかあったのかな~ってね」

 

「おい、なんで目が腐ってるって二回言った。大事なことなのか、大事なことなのか!?」

 

そんな俺の叫びを無視して小町は俺のブレザーのポケットをまさぐる。

 

「特に何もなしか~」

 

「別にポケットになんかあったら、異変があるってわけでもねーだろ」

 

「だってお兄ちゃん、ほっといたらなーんにも話してくれないんだもん」

 

「う…」

 

確かに俺は家族に自分のことをあまり言わない。

そもそも両親が小町にしか目が向いてない上、自分のぼっち生活をわざわざ家族に発信するという苦行を行う気にもなれないからだ。

だが、今までも帰りに本屋やラーメン屋、ゲーセンなどに寄り道(もちろん一人で)して帰りが遅れたがあったが、話さなくてもそこまで心配されたことはなかった。

しかしさすがに4日連続で帰りが遅いとなって小町も心配しているのだろう。お兄ちゃん思いのいい子である。

 

「お兄ちゃんの帰りが遅いと家の雑用やる人がいないから困るんだよね~」

 

訂正。兄を奴隷としか思っていないクソガキである。

 

「あー悪い、実は部活に入ってそれで帰りが遅くなってる。事後報告ですまんかった」

 

そう言うと、カラーンとおたまの落ちる音が聞こえた。小町ちゃん、道具は大事に使いなさいって言ったでしょ。

 

「お兄ちゃんが…部活…?だ、大丈夫?騙されてない?」

 

「うちの学校の校則は詐欺行為を許してないから大丈夫だ。つか俺が部活に入ったぐらいでなんだその反応はっ」

 

小町を正気に戻すためペシッとデコピンをかます。

 

「あうっ…。だってさ、いつもなら『部活?スポーツは個人競技だし文化部だって個人でやるものだ。故に人と群れてまでやる必要は全くない』とか言ってるお兄ちゃんが、部活に入るとか、ちょっとだけ心配になるよ」

 

ちょっとだけなのか…。てか今のは誰のマネのつもりだ。全然似てねーよ。

 

「あー…まぁ色々あったんだよ」

 

「なになに?教えてよぉ~」

 

グイグイくるなこいつ。最近はあまり構ってくれなかったくせに。

べ、別にいままで構って欲しかったわけじゃないんだからねっ!

…まぁ話してもいいか。小町が誰に言うわけでもないし、つーか言われても困らねーし。

 

「…飯食いながら話す」

 

しかし、まずは腹が減ったので夕飯が先である。食べながら話すとしよう。

 

「おーわかったよ!じゃあ超特急で準備するねっお兄ちゃん!あ、今の小町的にポイント高い♪」

 

はいはい。てかそのポイント、いつなったら還元してくれるんですかね。

 

 × × ×

 

「ほほ~なるほどなるほど!英語で言うならOh ,I seaだよ!」

 

「おい、お前それ『おお!私、海!』って言ってるぞ。正しくはI seeだ」

 

小町のアホの子ぶりを再確認したところで、俺の軽音部へ入部した経緯の話は終わった。

というかこいつは今年受験生の癖してこんな簡単な英語もできずに大丈夫なのだろうか。割と真剣に心配するわ。

 

「むっ、い、いいの!今はお兄ちゃんの話なの!…それで?お兄ちゃん、彼女はできそう?」

 

「ぶふっ!」

 

俺は飲んでいた味噌汁を思わず噴き出す。小町が汚っ!とでも言いたいような顔をする。

おい待て、今のはお前のせいだろう。

 

「…あのなぁ、話ちゃんと聞いてたか」

 

「うん?美少女だらけのハーレム状態って話じゃないの?」

 

「ちげーよ、美少女だらけってのは間違いでもないがハーレムではない、あんなもん」

 

「えーなんで?確かにお兄ちゃん目は腐ってるけど顔はまぁ結構イケメンだと思うよ?目は腐ってるけど。あっ、今の小町的にポイント高い」

 

確かにそれは俺も認める。けど目は腐ってるけどが一個余計だったからポイントはなしだ。

 

「あいつらと俺じゃ、まぁ立場が違うんだよ。俺は孤高を極めし高貴なぼっち、あいつらは群れることでしか自己を確立できない弱弱しいリア充。ステージが違うんだよ、ステージが」

 

ふふん、とドヤ顔を決めてみせる。

 

「いや…その場合確実にお兄ちゃんのが下のステージでしょ…なに威張ってんだか…」

 

「違うな。間違っているぞ、小町。そもそもぼっちというのはだな―――」

 

「はいはい、そうだねー。まったく、このごみいちゃんは…」

 

小町は苦々しい顔でそういい、先に食べ終わると食器を片付け始めた。兄がまだ話してるでしょうが……。

くそぅ、適当にあしらわれてしまった。八幡悲しい。グスン。あの平沢(妹)を見習ってほしい。上を敬うその姿、まさしく天使。

 

「でも、お兄ちゃんが部活に入ってくれて、小町は嬉しいな」

 

小町が食器を水につけながら、そう切り出す。

 

「あん?」

 

「だって…お兄ちゃんがいつまでも一人だったら、小町寂しいもん」

 

食器を浸し終わったところで、まだ食卓に座っている俺の肩に小町が手を乗せる。

 

「俺が一人でお前が寂しいって言うのがわからんのだが。俺が一人で寂しいのは俺だけだろ。ま、俺は一人でも寂しくないけどな。つまり誰も寂しくない。俺最強」

 

「なーにワケの分かんないこと言ってんだか…。まぁ、そのさ、それが家族ってことじゃん?繋がってるんだよ、兄妹だもん。あっ、今の小町的にポイント高い♪」

 

……言葉が足りないなりに、小町が何を言いたいのかわかったような気がする。

まぁ、俺が一人で小町が寂しいという理論は結局よくわからないんだけど。

こいつも1年間だけだが、俺の中学校生活を知っているのだ。だからなのだろうか。

小町なりに、俺のことを心配してくれたいた、ということなのだろう。最後の一言が余計だったが。

フッ、と俺は笑う。

 

やっぱ小町は最高の妹だぜ。あっ、今の八幡的にポイント高い。




というわけで小町でした!
小町書くの楽しい…。

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