やはり俺が軽音部なのはまちがっている。   作:キリマンジャロウ

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祝!40000UA突破!キリがいいところまで行きました!ありがとうございます。
とっても嬉しいです!

あとあらすじの欄にちゃんとしたあらすじを書いてみました~。
あらすじって書くの結構難しい…。これで大丈夫かと不安です。

そんなこんなで第7話をどうぞ。


⑦まぎれもなく田井中律はアホの子である。

金曜日。学生にとってこれほど心躍る曜日もないだろう。

 

一般的に花金と呼ばれる今日、全国の学生がそうであるように俺こと比企谷八幡も朝から浮かれていた。

今週は特につらかった。月曜日から山中先生に軽音部に入部させられ、軽音部に入部したことが学校中にバレて、ビラ配りまでさせられ、俺の疲れはすでに限界を超えていた。

しかしようやく、今日を過ごせば二日間の休みを得ることができる。

その喜びのせいか珍しく今日の朝はスッキリと目が覚め、俺はコーヒーとトーストを自分で用意し、朝食を食べながら朝の情報番組を見ていた。

ちなみに両親は朝早くから仕事でもう家から出ているので家には俺と小町だけだ。小町はまだ寝てるけど。

…と思ったら二階からなにやらドタバタと聞こえる。ようやく起きたか、あの愚妹は。

 

「うわ~~ん!完全に遅刻だよぉ~~!!」

 

そう叫びながら、小町がバタバタと階段を下りてくる。

 

「よぉ、起きたか」

 

「お兄ちゃん!?先に起きてたなら起こしてよ!!てか、お兄ちゃんだってもう遅刻する時間じゃん!なにゆっくりしてんの?」

 

「ふっ、俺が起きた時には時すでに遅し。既にデッドラインを超えてたんだよ。遅刻が確定してんのに急ぐなんて馬鹿のやることだぜ小町」

 

スッキリと目が覚めたと言っても別に早起きしたわけじゃない。ただスッキリ目覚めただけだった。

 

「小町は起こしてよ!小町はあとちょっと早く起きてたら間に合ったのに!!」

 

「小町、俺たちは繋がってるんだぜ?兄妹だからな。あっ、今の八幡的にポイント高い」

 

昨日小町が俺に言った言葉をそっくりそのまま返してやる。あの感動を小町にも味合わせてやるのだ。別に死なば諸共とか考えてないよ?ホントだよ?インディアン嘘つかない。俺インディアンじゃないけど。

 

「は?マジで何言ってんの?ふざけないでくんない?」

 

途端に小町の声のトーンが低くなる。本気でイラッと来ているときの声だ。

こうなった小町はマジで怖い。普段温厚の奴がキレると怖いのと一緒だ。

俺もあれに倣って中学の頃一度クラスメイトにキレて見たことがあったが益々反感買うだけだった。そもそも俺温厚じゃなかったわ。ただ何言われても黙って過ごしてるだけだったわ。

 

「ごめんなちゃい。出来心だったんです」

 

俺は小町のキレ声を聴いた瞬間に伝家の宝刀『土下座』を繰り出す。

このままでは小町をイラッとさせたという罪で俺がおやじにぶん殴られる。

 

「…はぁ~、このごみぃちゃんは…。今日一日小町のお願い聞くこと!まずは小町を自転車で学校まで送る!いい!?」

 

「イエスマム!」

 

どうにか許しの言葉を得た俺は立ち上がり敬礼をした。しかし今日一日、お願いをすべて聞かなければいけないとは、なかなか高い代償だぜ…。

 

『それでは、今日の星座占いのコ~ナ~♪』

 

一方テレビの中では女性アナウンサーが年齢の割に甲高い声でキャピキャピしながら占いのコーナーに突入していた。

 

 × × ×

 

その後準備が整った俺と小町は自転車に乗り、小町の中学校まで辿り着いた。

 

「んじゃ、お兄ちゃん!車には気を付けてね!あっ、今の小町的にポイント高い♪」

 

「信号無視させようとした奴が良く言うわ…」

 

急がないと一限に遅れると言って赤信号でも「車通ってないからイケる!」といったのはどこのドイツでしたっけ。オラン妹ダ。

 

「それでは、小町は行ってくるのであります!」

 

俺の小言をまるっと無視した小町はそのまま校舎へと走っていった。

 

「ったく…俺も急ぐか」

 

妹の無礼さに不満を抱きながらそう呟き、ペダルに足を掛ける。

 

「あれー?比企谷じゃん」

 

すると後ろから声がした、が俺は振り返らない。あれだろ?俺のこと呼んでると思って振り返ったら俺の前の奴よんでるパターンだろ?俺は騙されないぞ。何故なら俺にこんなフランクに声をかけてくるやつはいない。

…あれ?今比企谷って言ったか?おい、呼ばれてるぞ比企谷って奴。それにしても珍しい苗字なのに俺の家の他にもいるもんなんだな。

 

「無視すんな…よっ!」

 

「ぐぇっ!」

 

俺の後頭部に衝撃が走る。バッと振り返るとそこにはデコ……田井中がいた。

 

「…なんだいきなり」

 

後頭部を擦りながら田井中を睨む。しかしそんなものはどこ吹く風、田井中はにやりと笑う。

 

「呼んだのに無視する方が悪い」

 

「生憎普段人に呼ばれることがねーから反応が鈍いんだよ、って何言わせてんだ」

 

下を見ると鞄が転がっていた。

どうやら通学鞄をぶつけてきたらしい。持ち上げるとずっしり重い。何これ辞書とか入ってんじゃん。

 

「おま…なんてもん投げつけてんだよ。凶器並みに重いわ。下手したら傷害で捕まるぞ」

 

「その時は比企谷に襲われそうになったからって言っとくよーん」

 

「おい、妙に説得力があるからそれはやめろ」

 

「じ、自覚してるのかよ…」

 

「この眼のせいでな…」

 

今のセリフ我ながら中二臭いな。

 

中学生の頃。学校でたまたま通りかかったところで同級生の女子が泣いていたのを思い出す。

ホントたまたま通りかかっただけだったのになんとなく見てると、そこに駆け付けた先生が俺の眼を見た瞬間、俺を叱りだした。

女子は全然泣き止まないので結局俺はそのままずっと叱られ続けたのだった。

あの時俺は初めて冤罪とはこうして生まれるのかと知った。今ではいい思い出…じゃねーわ。絶対に許さないからな学年主任の大谷。

 

「比企谷ここらへんに住んでんの?」

 

「おい、結局俺に対する非礼への謝罪は無しか」

 

「いーじゃんいーじゃん。で?」

 

「個人情報保護法って知ってるか。自分の情報を無暗に言っちゃいけないって法律で決められてるんだよ。だから教えない」

 

「いやそれ、なんか違くね?」

 

ほう、そこに気づいたか。本当は『個人情報を取り扱う事業者などに一定の義務を課す法律』だ。これで誤魔化せると思ったが田井中は平沢よりはアホの子ではないらしい。てか俺の平沢に対する評価すげぇ低いな。

 

「…家はここらへんじゃない。妹を自転車に乗せて送ってきたんだ」

 

「へえ~アンタ妹いるんだ。ちなみに私にも弟がいるんだぜ。ここの中学の三年生!」

 

「へーそう(棒)」

 

「…話聞く気ないだろ」

 

そこに気づくとは…やはりアホの子ではないようだ。つか気づいたならもう放っておいてくれませんかね。

そんなぐいぐい来られたら友達だと勘違いしそうになるんで。

 

「つか、お前急がなくていいのかよ」

 

「へ?なにが………って、そうだったー!遅刻してたんだったーーー!」

 

田井中が急に慌てた様子になる。

前言撤回。やはりこいつはアホの子だわ。

 

「忘れるなよ…。じゃ俺は先に行くわ」

 

そう言い残し俺はまたペダルに足を掛ける。

 

「ちょちょちょ、待って!」

 

「なんだよ…」

 

「お願い…後ろに乗せて♡」

 

田井中が精一杯ぶりっ子した様子で俺に要求してきた…が、全然ときめかなかった。

 

「いや無理」

 

「な、なんでだよぉ!いいじゃん減るもんじゃないし!」

 

「俺の体力が減るだろうが。つーか、めんどくさいし」

 

それに、こいつと自転車に二人乗りしている姿を学校の奴らに見られたら、益々変な噂が立ちそうである。

ぼっちの心得である『石橋は叩いて壊せ』だ。意味は心配事があるならその心配の原因を排除してしまえという荒っぽいことわざである。

 

「とか言って、ホントはあたしみたいな美少女と2人乗りするのが恥ずかしいだけだろ~!いいんだぞ~恥ずかしがらなくて♡」

 

と、セクシーポーズをとってくる田井中…がそれにも全然ときめかなかった。

お前はあれか、残念な美少女か。

 

「自分で美少女とか言ってる時点でお前のほうが恥ずかしいから大丈夫だ」

 

「なっ…!いーじゃん!ケチンボ!なんでもいいから乗せろ!!」

 

ついに駄々をこねてきた。いくつだこいつは。

というか、小町にしかり、平沢にしかり、田井中にしかり、アホのこと言うのは何故こうも他人に対して図々しいんだ…。厚顔無恥というか寡廉鮮恥というか…。中学校の生徒もこっちを見てるっていうのに…って、え?

 

「お兄ちゃん!」

 

「こ、小町?」

 

そこにはジャージ姿のマイシスター小町が腕を組み仁王立ちしていた。

 

「お前、授業は?」

 

「小町、一時間目体育だから急いで体操服に着替えてまた外に出たの。そしたらお兄ちゃんがまだ校門にいるからわざわざ(・・・・)見に来たんだよ♪」

 

そこまでわざわざを強調しなくてもいいんじゃないかな小町ちゃん。まるでお兄ちゃんを見ること自体を良しとはしてないみたいな言い方に聞こえるよ?

 

「え…この子が比企谷の…?うっそ全然似てないね!もちろんいい意味で!」

 

いい意味でってなんだよ。それたぶん俺からしたら悪い意味だと思う。まぁ小町が俺に似てたら嫌だけど。

 

「ありがとうございますー!嬉しいです!もしかしてあなたが軽音部の…?」

 

嬉しいのか…うん…。

 

「あーうん!部長の田井中律っていうんだ。よろしくね!」

 

「はい!いつも兄がお世話になってますぅ。比企谷小町です!」

 

うわもうこいつら早速意気投合してんじゃん。はえーよ。グレンラガンの展開並みに早い。

あれホント早いよな。27話あってアニキが死んだのが8話って早すぎだろ当時小学生ながら生で見ながらそう思った。

つーかなんでアホの子同士の会話にはこうも!が多用されるのだろう。あれか、頭の悪さと声のでかさは比例してるってことかってことか。なかなかひどいな俺。

 

「つーか小町、授業行かなくていいのか」

 

「あ、そうだった!」

 

田井中にしてもそうだがアホの子というのは自分の行動をすぐ忘れる鳥頭なのだろうか。

 

「じゃ、お兄ちゃん。律さんをちゃんと後ろに乗せてあげるんだよ!」

 

「お!小町ちゃん話わかるぅ!」

 

「は?おい――」

 

「『今日一日小町のお願い聞くこと』…忘れてないよね?じゃあね!」

 

そう言うだけ言って小町はグラウンドに走っていった。あのガキ…面白がってやってるな…。

だが…小町と約束したのは事実だし、もし破ったのがばれれば俺がおやじに殴られ下手したら小遣いまで取り上げられる…それだけは避けたい。

 

「…はぁ、乗れよ」

 

「え、いいの?」

 

「お前が乗せてくれって頼んだんだろうが。ま、小町に言いつけられたからな」

 

「うわ、シスコンかよ」

 

田井中は引き笑いをしながらそう言った。乗せてやるっていうのになんだその態度は…。

ていうかシスコンの何が悪いんだ!妹想いって言いかえれば印象いいだろ!

一人でいるのが好きな人のことをぼっちと言ったり!静かなのが好きなだけ人を陰キャと言ったり!全部俺のことだったわ。

そうやってなんでもかんでも悪い方に言い換える世の中はいけないとおもいました。まる。

 

「乗らないなら先行くぞ」

 

「あー待て待て!乗る乗る!」

 

そう言うと田井中は急いで自転車の荷台に飛び乗る。鞄は座布団代わりなのか自分の尻の下に敷いていた。逆に痛くね?

 

「そんじゃ、れっつごー!」

 

「はいはい…」

 

田井中の号令とともに俺はペダルを踏んだ。小町で鍛えられているのでスムーズに漕ぐことができた。

 

「お、上手いじゃん比企谷。友達とよく……あ、ごめん」

 

「おい、謝れるとこっちがみじめになる。というか俺が友達いないこと前提かよ。そっちに謝れ」

 

「あははー!どんまいどんまい!」

 

まったく会話になっていなかった。

 

「ったく、お前が気にしろ……」

 

田井中は俺が自転車を漕いでいる間ずっと喋りかけてきた。

昨日見たテレビが面白かっただの、最近の好きなバンドだの、俺にしたらよくわからない話だ。

「あー」とか「うー」とか適当に返事をする。

田井中は沈黙が嫌いなのだろう。しかし俺としてはあまりにもぐいぐい来るので少々ウンザリしてきた。

それが伝わったのかは知らないが、急に田井中の雰囲気が変わった。

俺なんかしたっけ…?と思ったら

 

「あー…あのさぁ比企谷、軽音部楽しいか?」

 

といきなり聞いてきた。

 

「は?なんだよいきなり」

 

「い、いやー、部長としてさ!新入部員がちゃんと部に馴染めてるかなーって心配してんだよ!」

 

なるほど、確かにそれは気にはなるだろう。

自分から入ってきたならともかく、無理やり入部させられた部活だ。楽しくない、抜けたいと思っているかもしれないと想像するのも普通だろう。

しかし、声の調子から何か別の理由があって聞いているのではないか?と俺は感じた。

表情を見ることができればその真意も少しはわかったかもしれない。だが自転車を漕いでいて前に集中しなければいけないので表情が確認できないのでよくわからない。

 

「ん、んでさ…どう…?」

 

俺は考える。彼女がこの質問で何を得たいのか。だが情報が足りない。

 

「つまんない、か?」

 

田井中が何を知りたいのか考えてもわからない…。

だが、田井中が俺の答えを求めているのはわかる。なら、今は答えてやるほかない。

俺はまた考える。俺は軽音部に入って楽しんでいるのだろうか。

あの日、山中先生に無理やり入部させられ、俺はすぐさま退部したいと考えていた。

が、5日たった今。俺はどう感じているのだろうか。

……くそっ、自分のこととなると益々わかんねぇ。俺は楽しいのか?つまらないのか?このまま軽音部にいたいのか?退部したいのか?

何故か、答えが出なかった。………だけど、別に今すぐ退部したいと思うほどでは、ない…と思う。

 

「…楽しいかどうかはまだ入ってばかりでよくわかんねぇけど。つまんなかったら俺はつまんないっていうタイプだ。…だから、まぁ、そういうことだ」

 

自分の中で出た答えと呼べるかも怪しい答えが、それだった。

 

「…?それは、楽しいってことか?」

 

「よく聞けよ。楽しいかどうかはまだわからんって前置きちゃんと言っただろうが」

 

「?同じことじゃね」

 

「ちげーよ、オーストラリアとオーストリアぐらい違う」

 

「よくわかんない例えだな……。ふふっ」

 

田井中の口から、笑みがこぼれたのがなんとなく分かった。

その笑いの意味は、顔が見えないのでわからないが。少なくとも彼女の知りたいことがわかったということなのだろうか。

 

「比企谷は捻くれてんなぁ~。楽しいなら楽しいっていえばいいのに…捻デレ?」

 

「変な造語を作るな」

 

こいつ、絶対勘違いしてんな。俺は楽しいとは言ってないぞ、ったく…。

 

「…もういい、お前の良いように受け取ってくれ。めんどくせぇ」

 

必死に弁解するのも癪なので、そのまま放り投げることにした。

 

「なぁ、比企谷。次はお前にちゃーんと楽しいって言わせて見せるからな!」

 

「あー、頑張らなくていいぞ」

 

こいつは何に燃えているんだか。この状況で考えても仕方がないので俺は自転車を漕ぐのに集中することにした。

田井中が何を知りたかったのか…この件は学校についてから考えるか。

と、思ったその時、目の前に猫が飛び出してきた。

 

「比企谷!前!」

 

「あっぶ…!」

 

「きゃぁっ!」

 

キィイイイイ!!とブレーキの音が響く。なんとか猫の手前で止めることができたようだ。

猫飼いとしては猫を轢いてしまうのは忍びないからな…。

ふぅ、と安心したところで自分の背中に二つの柔らかな違和感があることが気づく。

 

「ね、猫大丈夫…?」

 

後ろを見ると田井中が目をギュッと瞑り震えた声でそう言いながら俺に抱き着いていた。不覚にもドキッとしてしまう。これがギャップ萌えという奴か…。

 

「あ、ああ…大丈夫だ……」

 

顔がほんのり熱くなるのがわかる。ええい、俺はいつからこんなにチョロい男になったんだ。

 

「そ、そうか…よかった…」

 

そう田井中も安心し一息ついたところで自分の状況を把握したようで、俺からバッと離れる。

 

「あ、あ…ごめん」

 

田井中がなんとも気まずそうにしている。ここはフォローを回してやるか…。

 

「ん…まぁ別に苦しくなかったし…。しかしあれだな。お前、あんまりないように見えてしっかしあるんだな」

 

っておい!俺は何を口走ってるんだ!

自分でも予想以上に動揺しているのか口が滑ってしまう。

 

「え、何が?」

 

幸い田井中はまだピンと来ていないようである。よし、ならまだ勝機は…。

 

「いや、だから当たってさ…背中に」

 

あっ。

 

「ないように見えてある…?背中に当たる…?…………!!!///」

 

気づいて…しまったんだね…。まぁ10割俺のせいだが。

 

「~~~~ッ!この変態!!」

 

田井中が顔を真っ赤に染め自分の鞄を持ち振りかぶる。

おいだからそれは凶器並みに重いからやめ―――――ぐえっ。

 

 




ちょーっと今回はすこしやっつけ気味かなーと書きながら少し思ってしまいましたが、
せっかく書いたのに全部消すのがなんかもったいなくて嫌で載せてしまいました。ごめんなさい。

……と、今から保険をかけてしまう俺でごめんなさい!!!
感想、批評、ご指摘、是非どうぞ!
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