魔法科高校の劣等生 ~四と零~   作:ブーミリオン

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九校戦Ⅷ

その後の3回戦も俺の余裕勝ちで終わった。

またしても使った魔法は雷だ。

というか一条と戦うまでこの魔法以外を使う気はない。

おそらく一条でもこの魔法は通じると思うのだが、如何せんこの魔法は制御が難しい上にまだ使い始めて数日しか経っていない。

だから決勝戦では、俺が昔から使い慣れているあの魔法を使おうと思っている。

俺の流儀には反するが仕方がない。勝つためだ。

そう俺は改めて決心し、次の試合へと望んだ。

その後の試合も、俺は雷だけで勝ち続けついに決勝戦まで上り詰めた。

決勝の相手は一条…

相手にとって不足なし!!!

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「し、雫…。零夜くん勝てるかな?」

 

零夜の試合を前にほのかは雫にそう不安げにつぶやく。

そんなほのかに雫は、

 

「…分からない。でも簡単に負けるほど零夜は弱くない」

 

そう答える。

これまでの試合や学校での実習で、ほのかや雫は零夜の実力を誰よりも知っていると自負している。

しかし相手は十師族の御曹司の一条将輝だ。

故に零夜の勝利を信じられずにいた。

そんな二人を見ながら深雪は微笑みながら彼女たちを諭すように話し始める。

 

「零夜君が負けるはずないわ。お兄様もそう思いませんか?」

 

「あぁ。深雪の言うとおり零夜が負ける姿なんて想像し難いな。少なくとも俺が知る中で零夜は最高の魔法師だ。普段のあいつの姿からは想像しにくいかもしれないが…。」

 

深雪に問われそう答えた達也。

そんな二人にほのかと雫は、何故こんなにも彼を信じられるのかと思う。

そんなことを知ってか知らずか、深雪はさらに話す。

 

「二人の零夜君に対する信頼はそんなものだったの?特にほのかは零夜君のことが好きなら、尚更だと思うのだけれど。そんなことでは零夜君は振り向いてくれないわよ?」

 

そう告げられたほのかは、体に電撃が走ったかのように衝撃を受けた。

自分の愛する人を信じられていない…、それは零夜を侮辱している行為であり、彼女にとっては見過ごせる行為ではなかったためだ。

そう考え落ち込むほのかに、雫は「大丈夫?」と声をかけるが返事はなかった。

雫は、ほのかがよほど落ち込んでいるのだろうと思い、どのように慰めるか考えようとするが、何やらほのかが小さくつぶやいているような気がしたため、耳をすましてみることにした。

 

「そ、そうだよね…。私零夜くんのことしっかりと信じられてなかったみたい…。こんなことじゃだめだよね…」

 

どうやら自己嫌悪してる状態になっている、と感じた雫はすぐにほのかに声をかけようとするが、

 

「雫!」

 

「な、何?」

 

ほのかの大きな声に反応するようにそう返してしまう。

 

「零夜くんは絶対勝つよ!十師族でも戦略級魔法師でも零夜くんは絶対に負けない!」

 

「う、うん。そうだね」

 

ほのかの力強い声に雫は困惑しながらもそう告げる。

ただ、達也と深雪は、ほのかの態度とは別に苦笑いを返していた。

十師族でも戦略級魔法師でも零夜は絶対に負けない、これは達也と深雪の二人共思っていたことだったために…

 

 

「しかしお兄様、零夜君は決勝でもこれまで使ってきた魔法を使うのでしょうか?」

 

ほのかが変に元気になったところで深雪が達也にそう尋ねた。

その言葉にほのかや雫も興味があるらしく達也の言葉を待つ。

 

「…いや、それはないだろう。おそらくあの魔法は一条には通じない。…いや、対策を講じられていると言った方が正しいだろう」

 

少し考えるそぶりを見せた後達也はそう告げた。

 

「えっ?あんなにすごい魔法なのに?」

 

達也の言葉に疑うということを知らない深雪とは違い、ほのかは驚きながらそう告げる。

あれほどの魔法に対策を講じられるなんて、ほのかは考えもしていないためだ。

しかしこれは一般的な考えである。

達也や深雪が少し一般的とは言い難い家系ゆえそう考えてしまうのだ。

 

「一条のいる三高には、カーディナルジョージこと吉祥寺真紅郎が参謀を務めている。彼ならすでに対抗策を考えていても不思議じゃない。俺でも零夜のあの魔法の対抗策なら思いつく」

 

「だったらどうやって…」

 

達也の言葉でほのかは吉祥寺真紅郎の存在を思い出したようで、不安げにそうつぶやく。

しかし達也は何も心配するそぶりは見せず、ほのかに苦笑い気味に話し始める。

 

「心配することはないさ。零夜だって馬鹿じゃない。おそらくこうなることを考えてこれまでの試合で一つの魔法しか使用しなかったのだろう。だから決勝では別の魔法をしようするはずだ」

 

「…納得」

 

「それでは零夜君の試合を見守ることにしましょう」

 

達也の言葉に雫、深雪と続く。

その様子を見て少しは不安が和らいだのか、ほのかは少し笑顔になり会場に入場し始めた零夜に視線を向けた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

俺が舞台へと上がると多くの歓声が沸きあがった。

観客の歓声が、戦闘開始が徐々に近づいて来ていることを実感させる。

正面で向かい合う俺と一条将輝。

止まらない興奮に思わず笑みが浮かぶ。しかし、それは向こうも同じようで若干の緊張の色をかもし出しながらも俺を見て笑みを浮かべている。

高まる緊張感に会場全体が静寂に包まれるが、今の俺にはそれがむしろ心地良く感じられた。

これまでの試合ではCADを使っていなかったが、今回の試合はそうもいかない。

一条家の魔法【爆裂】この魔法はアイスピラーズブレイクにおいて無類の強さを発揮する。

もし、一条に勝つとすれば【爆裂】を使う前に片付けるのが、一番確実な方法だ。

しかし、【爆裂】の発動速度は、達也の【分解】の発動速度に匹敵するレベルである。

もしこの方法で勝つなら、CADは必須である。

いくら俺でもCADを使わずに一条を圧倒するなんて不可能だ。

とにかく、俺は一条の【爆裂】を放たれる前に試合を決める。

…さあ、試合(ゲーム)開始だ!

 

 

 

ポールに青い光が点る。

零夜はCADの引き金に指を掛け、大きく息を吸った。

目を閉じ精神を落ち着かせる。

今、無駄な音はいらない…!

そう思い俺は聴覚をシャットアウトする。

…色もいらない!

次に俺は色彩感覚をポールのみに振り分ける。

そして目を開け、俺は………

 

 

 

***

 

 

 

 

ポールの光が黄色へと移り変わる。

その合図と共に零夜は目を大きく見開いた。

彼の視界にはおそらく氷柱しか移ってはいないだろう。

そして、赤い光が点った瞬間、零夜と一条は同時に引き金を引いた。

 

刹那、世界が変わる。

広がるは黒の世界。

まるで星や惑星のない宇宙のような光景に一条は思わず発動しようとした魔法をキャンセルする。

その様子に思わず零夜は口角を上げる。

続いて零夜は魔法を行使する。

出力された魔法式がイデアに投射され、エイドスに干渉する。

 

 

 

 

 

エリア内に、『爆発』が起こる。

 

 

 

 

 

やけに時間がゆっくり流れる中、一条は何故かはっきりと感じることができた。

始まりという名の終わりを。

そして、小さく囁かれるように発せられた宇宙創造(ビックバン)と言う声を――――――

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

宇宙創造(ビックバン)

この魔法は零夜がはじめて自分で生み出した魔法だ。

何でもいいからオリジナルの魔法を作りたい!と考えていたときにたまたま近くにあった宇宙学の本を見て作り出したのがきっかけである。

きっかけこそ適当なものであるが、威力は適当では済まされないほど強力な魔法になった。

魔法系統は加速・加重・移動・振動・収束・発散・吸収・放出の4系統8種類に属する全てを含んだものとなっている。

無から生み出されるとてつもない大量のエネルギーによって加熱され、超高温・超高密度の状態から急膨張しはじめ起こる大爆発、これが宇宙創造(ビックバン)の仕組みである。

最初一条を黒の世界へと誘ったものはこの魔法の発動範囲を決める範囲となる魔法である。

何も考えずにこの魔法を使うと地球そのものが無くなってしまうと零夜は考えているため、使用する範囲を設定しその中で大爆発が起こるようにしている。

故に……

 

 

「今何か起こった?」

 

「いや、何も起こっていないと思うけど…」

 

「でも氷柱は全部無くなっているぞ?」

 

と、観客には一条コートの氷柱が急に無くなったように見えていた。

そのため試合は決したのに観客から歓声は無く、隣のもの同士で何が起こったのか確認しあっていた。

また、それは観客の一員であるほのかたちも同様であり…

 

「…今何が起こったの?」

 

つぶやくようにほのかは尋ねる。

はたしてその問いは雫に対してなのか達也に対してなのかはわからない。

しかし、ただひとつ確かなことは何が起こったのか理解しているものはこの場にはいないという事実だけだ。

 

「…私はわからない」

 

「…お兄様」

 

「すまない。俺にも何が起こったかはわからない…」

 

3人が続けて答えるが、返ってくるのは分からないの言葉だけだった。

さまざまな疑問が浮かぶも、ほのかは誰よりも早くステージにいる零夜に視線を向ける。

するとそこには、ある程度この結果を予想できていたのか、苦笑いでステージから降りていく零夜の姿があった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

ステージ上から降りた一条は未だ信じられない気持ちで呆然としていた。

もちろん一条も零夜は強敵だと分かっていた。

それでも自分の実力に自信を持っていたし、十師族どころか数字付きナンバーズでない者に負けるとは考えてもいなかった。

 

 

「将輝……」

 

「……ジョージか」

 

「将輝、一体何があったの?僕からは急に氷柱が消えたようにしか見えなかったけど…」

 

「ジョージはあれが見えていなかったのか!?」

 

「…あれって一体何のこと?」

 

「…ッ!!」

 

吉祥寺と話が噛み合わないことに気づいた一条は何も答えることができなかった。

あれほどの大爆発をどのように表現していいか分からなかったためだ。

いや、そのよりもあれが爆発だったのかすら彼には理解できていない。

しかし、それほどの威力だったのだから無理もない。

と、そこで一条が頭をフル回転させながら考え控え室を出ると、自分たちを待ち構えてる人物を発見した。

 

「令式零夜……」

 

「俺のことは零夜って呼んでくれ、一条」

 

「俺も将輝でいい。それで、何の用だ?」

 

一校の制服に着替えていた零夜は、一条の質問に複雑そうな顔をしながら答える。

 

「久しぶりに力を出せたからな。お礼と謝罪を言いにきたんだ」

 

「お礼と謝罪…だと?」

 

「あぁ。お礼って言うのは魔法についてだ。ここまでの魔法を使ったのは本当に久しぶりですっきりしたよ。なんだか体中の汚れが落ちたみたいだ」

 

その言葉に一条は少し不機嫌そうな顔になる。

無理も無い。敗者に勝ててすっきりしたよ、なんて言われれば誰だってそう思うはずだ。

しかし零夜はそんな一条の様子を気にした様子も無く話を進める。

 

「それで謝罪って言うのは試合についてだ。あの魔法は俺と将輝しか見えないものだ。だから観客の連中には見えていない。…せっかくの決勝戦だってのにつまんない試合にして悪かった」

 

その言葉に一条は不機嫌そうな顔から驚きの顔にと変化していく。

 

「とは言っても悪気は無いんだ。将輝、お前には全力で挑まないと負ける気がしたからな」

 

そこまで言い終えると零夜は笑顔になり、

 

「また戦おうな!」

 

と、告げた。

その言葉に将輝の動きが一瞬固まる。

が、徐々に言葉の意味を理解するにつれ、彼の顔にも思わず笑みが浮かんだ。

 

「手加減をしなかったことについてはこっちから礼を言う。俺と零夜の試合だったのだから観客については気にしなくても問題ないだろう。…だが、次に勝つのは俺たちだ!」

 

 

一条はそう告げ零夜に拳を突き出した。

その行為に今度は零夜が一瞬固まるが、意味を理解すると悪い笑みを浮かべ、

 

「残念だが次も俺が勝つ」

 

そう告げ一条の突き出した拳に自分の拳をぶつけた。

 

 

 

 

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