俺の試合後、雫と深雪の決勝戦が行われた。
雫はフォノンメーザーで深雪に一矢報いるが、深雪はそれ以上の力を見せ、結局は深雪の圧勝で終わった。
ステージで雫がくやしそうな表情でうつむく。
そんな姿を俺は何とも言えない表情で見ていた。
……気持ちは分かる。
俺もフォノンメーザーを発動したときは驚いたものだ。
だが、驚いただけなのだ。
命のやりとりならその驚いた数秒で生死が分かれるものだが、如何せんこれは競技。
圧倒的な実力をもつ深雪にはそれほどの意味をもたなかったのだ。
「今声をかけるのは得策とは言えないな…」
そう思った俺はバトルボードの決勝が行われている会場へと向かった。
***
俺がバトルボードの会場へとつくと丁度ほのかが優勝を決めたところだった。
「やったな、ほのか」
俺はそうつぶやきほのかの控え室へと向かう。
「ほのか、入るぞ~」
そう告げながら俺はほのかの控え室へと入った。
するとそこには笑顔のほのかが待っていた。
「零夜くん、私優勝したよ…!」
「あぁ、知ってる。よく頑張ったな…!」
「夢じゃないよね…?本当に私優勝したんだよね?」
「あぁ、夢なんかじゃないさ。ほのかは新人戦女子バトルボードで確かに優勝した」
「うぅ…零夜くーん!」
ほのかはそう告げ、泣きながら俺の胸に抱きついてきた。
ったく、こんなとこまで変わってないのか。
まぁ信用されているようで悪い気はしないけど。
っていうか、かなり恥ずかしいんだが…。
「よく頑張ったな」
そうほのかを諭すように、俺はほのかの頭をなでる。
その後もほのかが泣き止むまで、俺はほのかの頭を撫で続けた。
「それで雫のことなんだが…」
ほのかが泣き止んだ後、俺は女子のアイスピラーズブレイクの結果をほのかに話した。
雫は一矢報いたが、深雪に惨敗したことを。
「そっか…。雫負けちゃったんだ……」
優勝したばかりのほのかに気落ちさせるようなことを言うのは気が引けたが、事実故に隠すことはできない。
その後ほのかは何度かうなづくと、
「じゃあ雫を慰めに行かないとだね」
と、笑いながら告げた。
こういうところは、ほのかのいいところだよなぁなんて思いながら俺は、
「そうだな。じゃあその役はほのかに任せる。こういう話は女の子同士の方がしやすいだろうからな」
「うん…!雫のことは任せて!」
そう力強く告げるほのかは、普段からは思えないほどたくましく見えた。
そのことに安堵を覚え、俺は次の用事へと向かうため控え室を後にした。
***
「あっ、零くん。優勝おめでとう!」
指定された場所へと行くと、あやながそう祝ってくれた。
「あぁ、ありがとう。…で分かったのか?」
俺が挨拶をそこそこに本題に入ろうとすると、あやなはいかにも嫌そうな顔をして、
「もぅ…、もっと優勝を喜びなよ」
と告げた。
優勝は嬉しいけど、別に負けるつもりはなかったからそこまでの感動はないんだよな…。
なんていったらもっと何か言われそうなので黙って謝っておく。
「わ、悪い。…でどうなの?」
そんな俺にため息を一つつき、あやなは話し始める。
「うん、零家の情報網を甘く見てもらっちゃ困るなぁ。それでお願いされていた一高にちょっかいを出している連中だけど名前は
まぁぶっちゃけ名前は何でもいいんだが…
そんな態度が表に出てたのかあやなは話を折って話す。
「それで、彼らの居場所なんだけど…」
そう告げるとあやなは自身の端末で地図を開き、彼らの潜伏場所を俺に教えてくれた。
その地図を自分の端末でも確認し俺が端末をしまうとあやなが心配そうな顔で、
「…行くの?」
と告げる。
どこに、というのは野暮な質問だろう。
あやなの不安そうな声に俺は普段どおりの声で告げる。
「まぁ説得は試みるよ。それで応じるなら誰も不幸にならずにすむよな」
暗に殺すことは仕方ない、と俺はあやなに告げた。
すると、その言葉にあやなは寂しげな顔を浮かべる。
「…零くんは四葉にだいぶ染まっちゃっているみたいだね」
「ん?何か言ったか?」
「…ううん。何でもないよ」
そう作ったような笑顔で答えるあやなに少し疑問が浮かぶ。
が、あまり聞いてはいけないような気がして言葉を飲み込む。
「それで話の続きなんだけど…」
あやなが空気を換えるように話題を変える。
とは言ってもあながち予想はついているけど。
「零くんのお願いを聞いたんだから私のお願いも聞いてもらうよ!」
やっぱり覚えてたか…
まぁお願いを聞いてもらった以上当たり前のことなんだけど、正直俺はあやながどんな意図をもってあんなお願いをしたかは分からないけど、仕方が無いか。
「分かってるさ。取引で騙したりなんてするつもりはない」
「取引なんて固いものじゃなくて私と零くんの約束みたいな意味で取ってくれると嬉しかったんだけど…」
約束も取引も結局は同じじゃないのか…?という疑問を俺は胸の中に押し込む。
そしてぶつぶつ文句を言っているあやなを無視し、俺は質問する。
「で、零式家にあやなと一緒に行けばいいんだっけ?」
そう。
あやなに頼まれたのは零式家へ行ってほしいとのことだった。
ここまで絡まれてしまった以上無視できるものでないことは分かりきっていたが、正直俺はどんな顔をしていいのか分かっていない。
何せあやなの話では俺は記憶を失っているのだから。
そのことを含め母さんと話をしたいと思っているのだが、これもまた聞きづらい問題である。
しかし、俺がそう悩んでいる間にも時間だけは過ぎていくわけで…
と、考え込んでいるところに、
「うん!出来れば早め…夏休みがいいんだけど」
そうあやなの元気な声が鳴り響く。
…やけに急な気がする。
まぁ長期休暇だから行く機会としては正しいんだろうけど、先ほどの悩みが解決していない俺にとって夏休みは少々急すぎる。
しかし、お願いを聞くといってしまった以上断るわけにもいかないし…
…まぁ仕方ないか。
「夏休みか…休日を使われるのは面倒くさいけど、約束なら仕方が無いか…。了解。夏休みに零式家に行くよ」
俺がそう告げると、あやなはジャンプしながら喜びを表現する。
正直何故そこまで喜ぶかは分からない。
でもまぁここまで喜んでくれるなら、了承してよかった気がする。
「あっ、ところで零式家ってどこにあるんだ?」
ふと疑問に思った俺は、喜んでいるあやなにそう尋ねる。
「九州だよ。だから九校戦が終わったらそのまま来てくれないかな?」
まぁ荷物なんてどうにでもなるから、そのまま行くのはいいけど…
先ほどから何故か早め早めに来てほしい、と言った様子がするんだよな。
理由でもあるのだろうか?
「そのまま?別にいいけど…」
「やったっ!約束だからねっ!」
そう告げると、あやなは飛び跳ねながら去っていった。
そんな後ろ姿を苦笑しながら見送り、俺は次の用事へと向かった。
***
その日の晩、俺は無頭竜のアジトへと乗り込んだ。
あやなには説得を試みるなんて言ったが、こういうやつらに説得が通じないことは百も承知だ。
…できるだけ早く片付けて帰ろう。
「こんにちは~無頭竜のみなさん」
俺は会議室のような部屋のドアを開けながら、そう陽気に告げる。
と、次の瞬間中にいたガードマンのような奴が俺に襲い掛かってくる。
(ジェネレーター…?)
と思いつつも、俺はすぐさま暗黒空間を発動する。
その後、ジェネレーターを焼き消したことを確認し、俺は改めて無頭竜のやつらに挨拶をする。
「聞こえなかった?こんにちは、無頭竜のみなさん」
「お、お前は確か…」
おっ!
やっと反応してくれた。
反応してくれたやつは少し肥満気味な男だった。
様子をみるに俺に恐怖しているようだ。
…まさかとは思うけど魔法師ってジェネレーターだけしかいないの?
そう疑問に思うも、俺はとっとと帰って明日の準備をしたいんだったと思い出し、彼の言葉に言葉を返す。
「はい、第一高校一年、令式零夜です。以後お見知りおきを。…って言っても残り数分の命だけどね」
「な、何だと!?」
俺が笑いながらそう告げると、先ほどとは別の男が俺の言葉に反応した。
「まだ分からないのか、屑ども」
俺は笑っている顔を鋭く相手を射抜くものへと変え、そう告げる。
それにびびったやつらに呆れながらも俺は話を進める。
「お前たちが俺の高校にちょっかいを出したことは知っているんだよ。大会前の事故に見せかけたものだったり、渡辺先輩に対して行った行為だったり…ネタは分かってるんだ」
「わ、私たちがやったという証拠はあるのか!?」
冷徹に告げた俺の言葉に搾り出すようにして一人の男が答える。
だが、その質問は意味を持たない。
「証拠…?そんなものお前たちを殺してから考えればいいだけの話だ」
ったく、面倒くさいったらありゃしない。
母さんから面倒事が多いと言われていたが、まさか犯罪シンジゲートまで相手にするとは…
一高に関係ないところでやってくれる分には何も文句はないが、俺の周りに影響が出るとすれば別だ。
すでに渡辺先輩という見知った人がこいつらの被害にあっている。
これがもしほのかや雫などの友人に起こったとしたら…
考えるだけで怒りが湧き出てきそうだ。
「さて、おしゃべりはこの辺までにしておこう。最後に何か言い残すことはあるか?」
「ま、待ってくれ!」
俺が最後くらい慈悲をあげようと思い、言葉をかけるが奴らから大きな声がかかる。
とっとと始末して帰りたいんだけど、という気持ちを顔に出しながら俺は、
「…何だ?」
と、怒気をかもし出しながらそう尋ねる。
「私はもう第一高校に手を出さないと誓う。だからどうか見逃してくれ」
「わ、私も誓う!」
「私もだ!」
命乞いってわけか…
まぁ分からなくはない。
だが…
「ほう…。手を出さないと誓う、ねぇ。…そんなこと俺が信じると思っていっているのか?本気で思っているとしたらお前ら相当の馬鹿だぞ?」
俺はそう告げながら彼らが会議をしていたと思わしき机の元まで歩き、机の上におかれていたプリントを見る。
そこには『次のプラン』とご丁寧に書いてあり、内容は第一高校の生徒のCADに電子金蚕と呼ばれる魔法を使用する、とあった。
「電子金蚕ねぇ…。何かは知らないが、また第一高校の生徒に何かする気満々じゃないか」
俺が冷酷にそう告げると、奴らは完全に萎縮し、俯いた。
そんな彼らに俺はため息を吐きつつ、
「もういいよ。あんたらみたいな屑は見てられない。死んだほうが世のためだ。俺の炎の中で罪を償え」
そう告げ、俺はその場にいた
一瞬にして3人の幹部たちは炭も残らないくらい燃え去った。
「…屑どもめ」
俺はすでに何も残らない彼らにそう言い残し、九校戦の行われている富士演習場へと戻った。
話が進まない…