次回からはオリジナルエピソードとなります!
こうご期待!
新人戦モノリスコードに出場することになったのは、達也、幹比古、レオの3人だった。
達也に連絡しておいたので俺が出場する可能性は0であったが、まさか二科生から選ぶとは予想外だった。
とはいえ、一回戦をディスプレイで見た俺は彼らが適任だったと認識することとなった。
特に幹比古は何故二科生にいるのか分からない。
おそらく過去に何かがあったのだろうけど、今回のモノリスコードで何かきっかけを作ってくれると嬉しい。
俺がそうこう思っている間に彼らは決勝までコマを進めていた。
達也が実力を出せば優勝は余裕だと考えてはいるが、あいつがどこまで力を出すかは分からないためそこがネックである。
なんてことを考えていると横から声がかかる。
「ぜろくん、試合を見たいのも分かるけど今はこっちにも集中しない?」
あやなである。
俺は現在彼女に教えてもらい、残りの無頭竜のやつら全員が集まるアジトのすぐ近くへとやってきている。
以前のようにまたメンバーが残ってしまうと、一高が狙われる可能性をなくすことが出来ないため、俺はやつらが全員集まるタイミングで殺ろうと考えたのだ。
「悪い、悪い。でも別に集中するような相手でもないし大丈夫だろ。…それと来る前にも言ったけどあやながついて来る必要はないんじゃないか?場所と時間さえ教えてもらえれば俺一人で十分なんだし」
俺が話したとおりあやなは来る必要が無かったんじゃないか?と今でも思う。
来れば危険が増すだけなのに、そうまでして俺と一緒にくる理由があるのだろうか?
「だめだよ。ぜろくんには私のせいで迷惑かけたんだから私が最後まで一緒にいなきゃいけないの」
どうやら結構気にしているらしい。
もしくは姉アピールをしたいのか、どっちだろう?
「まぁそこまで言うならいいけど、別に気にしてないからな?」
「ありがと。ぜろくんは昔から変わらず優しいままだね」
「…じゃあそろそろ行って来る。10分くらいで戻ってくると思うからここで待っててくれ」
あやなの笑顔が俺の心を痛めつける。
俺はこんな笑顔をされるほどの人間なのだろうか?
少なくても今の俺はあやなの知っている俺ではないはずだ。
すごく申し訳ない気持ちで一杯だ。
そのため少し返答が遅れたが、俺は彼女にそう告げ立ち上がった。
「分かった。気をつけてね」
「あぁ」
あやなの声に言葉を返し俺は無頭竜のアジトへと乗り込んだ。
***
「零夜くん!?どこに行ってたの?もう試合終わっちゃったよ?」
俺が無頭竜のアジトを潰し、ホテルへと戻ると雫と共にフロントで話していたほのかに遭遇した。
「あー、悪い。急用があったんでちょっと違う場所に行ってたんだ」
嘘は言っていない。事実その通りだし。
「ならいいんだけど…。次から何かあるときは私でも誰でもいいから一言言ってから行動してほしいな」
何だかほのかが母親みたいなことを告げる。
まぁ俺の母親は絶対にそんなこと言わないけど。
「肝に銘じるよ。…悪いけど今日は疲れたから休むな」
「分かった。おやすみ」
なんだか長くなりそうだったので、俺はその場を後にする。
そうして次へと向かった場所は達也の元だ。
モノリスコードを押し付けて多少は悪いと思っているので、結果報告だけでもしておくべきだと思ったのだ。
「達也、今回一高に手を出していた連中なんだがさきほど潰してきた。確か無頭竜とか言ったっけかな」
俺がそう告げると達也は目を若干見開き驚きを露わにする。
しかし、すぐにいつものポーカーフェイスに戻ると、淡々と話し始める。
「零夜お前どこでその情報を……いや、なんでもない。お前なら何が出来ても不思議じゃないからな」
「俺はそんな万能な人間じゃないさ。それよりモノリスコードの優勝おめでとう。流石の達也でも一条が相手じゃしんどかったようだな」
「試合前深雪に激励されてな。優勝しないわけにはいかなくなったんだ」
「ははっ、そりゃあそうだな」
その後達也とこれまでのことについて色々話した。
そしていい時間になったので俺は腰掛けていた椅子から立ち上がる。
「それじゃあ俺はそろそろ行くよ。…あっ!そうそう最終日なんだが閉会式後一緒には帰らないから」
「何かあるのか?」
「ちょっと九州の方に用事が出来てな」
「そうか。だが何故俺に言うんだ?」
「さっきほのかに、いなくなるときは誰かに言ってから行ってほしいって言われてな。達也に言っとけば大丈夫だろ」
「そうか…。了解した。あんまり無茶をするなよ」
「あぁ。それじゃあ、おやすみ」
俺はそう告げると今度こそ部屋を後にした。
***
次の日以降は無頭竜の連中を俺が潰したために競技に何かが起こったりすることは無かった。
幸い深雪に影響が出なくてよかったと思う。
もし深雪に何かあったら達也の逆鱗に触れるだろうし。
まぁそんなこんなで一高は優勝し、3連覇を達成したわけだ。
そんなことを思っていると、ふと司会の人の声が耳に入る。
「それでは今から九校戦の閉幕を祝ってパーティーを執り行いたいと思います」
無事に表彰式も終わり、閉会式の挨拶やその他色々が終了した。
早く帰りたいと思うも何でもパーティーが行われるらしい。
開会前のパーティーには出ていないため、今回パーティーに出るのは初めてなのだがどうにも気が進まない。
開会前のパーティーと違い今は皆笑顔で会話をしている。
あのギスギスした感じが無いのは喜ばしいことではあるが、俺は色々疲れていたので会場の隅へと避難していた。
色々疲れている俺であるが、大変なのはこれからだ。
零のこと、母さんのこと、そして俺のこと…
何が正しく、何が間違っているか分からない俺としては頭を抱えたい問題である。
とは言っても自分の信じた道を行くことしか考えてはいない。
俺の人生だ。誰かに指図されたり、命令されたりはしたくない。
「何でお前がこんなところにいるんだ?」
そう考えていると将輝が話しかけてきた。
…有名人であるお前が近づいてくると俺も目立つんだが。
「俺こういう大勢でやるパーティーって好きじゃないんだ。正直早く帰りたい気持ちで一杯だよ」
「そんなこと言うもんじゃないぞ零夜。……まあ気持ちは分からなくもないが」
「気持ちが分かるなら文句くらい言わせてくれ…」
苦笑する将輝に憂鬱な気分を吐き出すようにため息を吐く。
そんなことを話していると、音楽が流れ始めダンスが始まった。
「将輝、踊ってこいよ。俺は終わるまで隠れながら過ごすから」
「まぁそこまで言うなら無理にとは言わないさ。じゃあな」
将輝はそう告げると去っていった。
そんな将輝を遠目で見ていると、顔を赤くしながら深雪と話しているのが見えた。
もしかして将輝のやつ…
…前途多難だけど頑張ってはほしいとは思う。
同じ十師族同士なんだし、何か起こるかもしれない。
と、そこまで考えて俺は少し寂しくなった。
人の恋路を見てるだけってのは何だかむなしい。
俺も恋ってものを体験してみたいけど、立場上難しいよなぁ…
「ぜ、零夜くん!」
そう自分の立場に一人苦笑いしていると、横から声がかかった。
ほのかだ。
少し息切れしていることから俺を探していたと悟ることが出来る。
「ん?ほのか、どうかしたか?」
「~っ」
何か用があったんじゃないのか?と思うがほのかは何も話さない。
何かを話したそうにはしているが。
「何だよ…?」
「お客様~。こういうときは男性のほうからリードいたしませんと」
俺が何かと思っていると、後ろからメイド姿をしたエリカからそう声をかけられる。
「………」
「…お客様?」
エリカが呆れたようにそう告げる。
何となく理解はしているが。
「ほのか」
「は、はい!」
「俺と踊ってくれないか?」
「っ!はいっ!喜んで!!」
その言葉と共に俺はほのかとダンスを踊った。
ダンスなどしたことがないため、ほのかに合わせて行っていたのだが、だんだんと分かってくると自分からステップを踏み始めた。
そうして踊っている中俺は、
(ほのかとなら…。…いや、そんなこと彼女を不幸にするだけだ)
そんなことを考えていた。
そうしてほのかと長い間踊った後、喉が渇いたため飲み物をもらおうと思い、ほのかとウエイトレスを探していると、俺に一直線に向かってくる人物が見えた。十文字先輩だ。
「零夜、ここにいたか。少し付き合え」
そう告げるなり、突然のことに唖然とする俺たちを気にせず背を向けて歩き出す。
どうやら拒否権はないらしい。
「…ちょっと行ってくる」
「う、うん…」
受け取ったばかりのドリンクを一気に飲み干すと、空になったグラスをウェイトレスに渡して十文字先輩を追った。
会場から少し離れたそこそこ広い庭まで俺たちは歩いた。
そして十文字先輩が振り返ったので俺は声をかける。
「いいんですか? そろそろ祝賀会が始まる頃だと思いますけど」
「心配するな。すぐに済む」
俺の言葉に十文字先輩が短く答える。
そして単刀直入に用件を問いただしてきた。
「零夜、お前は十師族の一員だな?」
彼の言葉に俺は少し衝撃を受けたが、動揺することは無かった。
俺はいたって普段どおりの声で彼の問いに答える。
「いいえ。俺は十師族ではありません。まあ、一条に勝ったので疑う気持ちは分かりますけど」
「――そうか」
じっと俺を見据えていた先輩だったが、嘘はないと判断したのか無表情に頷いた。
…今はまだ言うわけにはいかない。
「ならば十師族家代表補佐を務める魔法師として助言する。零夜、お前は十師族になるべきだ」
「…………」
「そうだな……七草なんかどうだ?」
「どうだ、というのはもしかして結婚相手にどうだ、 という意味ですか?」
「そうだ」
ここで七草先輩のことを俺に聞いているのは、十師族と結婚すれば十師族の枠組みの中に入ることになるからだろう。
しかし何というか、言葉を失うとはこういうことなのか。
十文字先輩も十師族の次期当主候補なんだなと再認識する。
「……七草先輩の相手にはむしろ、十文字会頭のお名前が挙がってるんじゃないですか?」
何も言葉を返さないわけにもいかないので、適当におもいついたことを告げる。
「確かにそういう話もあるな」
「……七草会長はタイプではないんですか?」
「いや? 七草はあれで中々、可愛いところがある」
昼間の凛々しい姿が全て夢だったような気がしてくる。
できれば今の方が夢だと嬉しいのだが、残念なことに間違いなく現実だった。
「もしかして歳を気にしているのか? フム……ならば七草の妹はどうだ? 最後に会ったのは二年前だが二人とも将来が楽しみな美形だった」
いや、七草先輩の妹なんてロリそのものじゃ…ゴホン。
とにかく今俺は結婚なんて考えていない。
それに四葉家当主の息子が七草家に入るなんてことは恐らくないだろう。
母さんが許すはずが無い。
「……自分は十文字先輩や七草先輩とは違って普通の高校生なので、結婚とか婚約とかそういう話しはまだ考えたことが無いです」
「そういうものか?」
「はい」
そういえば、本当にそういった話しを考えたことはあまりなかった。
秘密主義な四葉としては婚約者問題とかをどうするつもりなのだろうか?
まぁ例え婚約者を決められたところで従う義理はないんだが。
というか俺が当主になる前提で考えていたことが間違いだ。
「そろそろ戻るか。あまり遅くなるなよ」
何時の間にか話が終わっていた。
十文字先輩はそう告げると一人会場へと戻って行った。
「零夜くん?」
十文字先輩と入れ替わりのように話しかけてきた、ほのかの声に俺は我に返った。
「気になってついて来ちゃった。何を話してたの?」
俺は本当のことを言うかどうか悩むが、結局本当のことを言うことにした。
「あぁ。何でも十師族に入れだと。やっぱり一条を倒したことは十師族の中でそれなりに問題になっているらしいな。…七草先輩やその妹さんたちを紹介されたよ」
「………え?」
「もちろん断ったけどな。普通の高校生である俺に結婚や婚約はまだ早いと思って。そうは思わないか?」
「えっ?あっ、うん」
「どうかした?」
俺の言葉になんだかボーっとしている気がして俺はほのかへと問いかける。
「な、何でもないよ!?それじゃあ私は先に行ってるね」
ほのかはそう告げると会場へと戻って行った。
…何しにきたんだあいつ。
少しほのかのことが気になったが、こういうことはよくあるので気にしないことにする。
それよりも今からどうするかな?
今から戻って一高の祝勝会も面倒だしなぁ…
俺がそう考えていると、
「ぜろくん?」
と、後ろから声がした。
ラッキーと思いつつ俺は振り返ってあやなに声をかける。
「あやなか。…零家行くなら今から行かないか?正直な話もう祝勝会面倒くさくて」
俺は思っていることをそのまま告げる。
そんな俺の言葉に苦笑いしつつあやなは答える。
「私はいいけど、ぜろくんはいいの?」
「いいよいいよ。何回もやってるんだし」
俺のその言葉に考えるそぶりを見せるあやなだったが、数秒後うなづき始め、
「それじゃあ行こっか」
と告げる。
その言葉を最後に俺たちはパーティー会場から姿を消し、零式家へと向かった。