これからも更新は遅くなると思いますが、続けていくので是非読んでいただけたら嬉しいです
話は少し遡り、九校戦の終わった翌日、俺は零式家本家へとやってきていた。
「へぇ~。ここが零式家本家か。…なんか思ってたより小さいな。四葉とは大違いだ」
「零式家は人があまり多くないからね。無駄に広くてもしょうがないだろって初代零式家当主が言ってこうなったらしいよ」
なるほど。
何だかその初代当主とは仲良くなれる気がする。
「それより早く入ろう?みんな待ってるよっ!」
「みんなって…。俺誰一人として知らないのに…」
そんな俺の言葉など聞かずあやなは俺の手を引っ張り零式家の門を開けた。
「「「おかえりなさいませ、零夜様」」」
「は、はい…?」
「お荷物をお持ちします」
「お体は大丈夫ですか?」
「おやすみになられますか?それとも食事にいたしますか?」
「それとも私…?」
「1人だけ変なの混ざってたぞ」
まったく…
緊張していた俺がバカに思ってしまった。
「まぁ荷物はそんな持ってきてないし、体も大丈夫だ。強いて言うならちょっと腹が減ってるから、ちょっとしたもの作ってくれないか?おにぎりとか」
俺はパンよりご飯派なのだ。
「かしこまりました。すぐにお持ちいたします」
俺の言葉に返事を返したメイドAが下がると、どこかで見たような人物が現れた。
「おかえりなさいませ、零夜様。それにあやな様も」
「ん?お前は確か…」
「はい。一高のテロの際、零夜様のもとへ伺ったうちの一人、唯と申します」
「そっか。あの時は悪かったな。しっかりと話を聞いてやれなくて」
「お気になさらないでください。多少驚きはしましたが、予想の範囲内でしたので」
「そうか…」
記憶の消去が予想の範囲内って…
そう呆気に取られていると、目の片隅で俺を見て挙動不審になっている少女が見えた。
「君は?」
「沙希、挨拶なさい」
「は、はい。」
「沙希です。以前零夜様のもとへ唯さんと一緒に行った者です」
「そうか。…それより何で沙希はそんなに挙動不審なの?」
「そ、それは…」
「零夜様、申し訳ございません。そこの沙希は極度の人見知りでして…。以前のように仮面をつけているとそんなこと全くないのですが…」
「それはまた珍しいな…」
「ねぇみんな、いつまでも門で会話せず中でお話ししたらどう?」
そこで会話中ずっと黙っていたあやなが提案する。
確かに立ち話も疲れるし、中へと入れてもらおうかな。
「そうだな。唯、中に案内してくれるか?」
「もちろんでございます。さぁ、こちらへ」
唯はそう告げ俺の前を歩き始める。
俺とあやな、それに沙希もそれに続くように歩き家の中へと入っていく。
俺は歩きながら家の中のものを眺める。
これと言って珍しいものもないし、何もないわけでもない。
いたって普通の屋敷だ。
しかし、これなら雫の家の方がすごいと思う。
でもあいつの家って金持ちだから特別か。
そう考えるとこの家は普通なのかもしれない。
「どうかなさいましたか、零夜様?」
「…いや、何でもないよ。普通って何だろうって思ってただけだ」
「……??」
「気にしないでくれ」
「それでは零夜様、あやな様、しばらくこちらの部屋でお待ちください」
「はいよ」
「はーい」
「なんだか明るい人たちばっかりだな」
「うん。でもこうなったのはぜろくんが生まれてきてかららしいよ。それまではとっても静かな家だったらしいし」
「そうなのか」
「うん」
会話が終わると俺は部屋の中をぐるぐると見渡した。
…普通だ。
いたって普通だ。
この普通さがなんとなく懐かしいような気がした。
***
「お待たせいたしました」
唯はそう告げると俺の正面に座った。
手には何らかの書物を持っている。
なんだろうか?
「まずは…零夜様が帰ってきてくれたことを大変うれしく思っております。零式家一同この日かと言わんばかりに待ちわびていました。先週あやな様から連絡をいただいたときはとても驚いたものです」
「帰ってきてくれて…か。まぁ間違ってはいないけどさ」
「まずはゆっくりとおやすみ頂きたいところなのではありますが…」
「何かあるのか?」
「はい。ご相談が。どうにも私たちだけでは無理なようでして…」
「まぁ話だけでも聞かせてくれ」
「はい。分かりました」
「零夜様は零乃家については存じておりますか?」
「あやなから聞いたくらいかな。そんなに詳しいことは知らない。だから今日こうして来たんだし」
「そうでございますか。ではご説明させていただきます。まず、あやな様から言われているかとは思いますが、我々零式家は零乃家とあまり仲がよろしくありません。いえ、敵対していると言っても間違いではないでしょう」
「そりゃあまた何で?」
「…少し話は長くなりますがよろしいでしょうか?」
「あぁ。頼む」
「我々零家は3家に分かれております。零夜様も知っていると思いますが、零乃、零式、零宮です。そしてそれぞれの家には零としての仕事が与えられています」
「仕事?」
「はい。零家は精神干渉魔法と記憶の相互変換について研究しております。
零乃には精神干渉魔法を、我々零式は記憶を、そして零宮はその二つの関係についてそれぞれ担当しておりました。
それは初代零家から零夜様のお父上の4代目までずっと続いておりました。
しかし、そこから零家は少しずつ変わっていってしまいました。
零夜様のお父上…渡様と零乃家の当主、明は非常に仲が悪かったのです。
というのも、4代目の当主を決めるときに争った2人だからです。
まぁ簡単に言ってしまえば嫉妬みたいなものです。
2人はそれからというものの毎日のように顔を合わせては喧嘩していました。
それを見かねた当時の零宮家当主、あやな様のお父上…一輝様が2人に
『静かにしないなら相手になるぞ』
と告げました。
一輝様はとても強かったですから、2人は大人しく言うことを聞きました。
それから5年間はとても静かに過ごしていました。
しかしそんなある日、渡様はあるものを見つけてしまったのです」
「あるもの?」
「四葉真夜の冷凍卵子です」
「………」
「残念なことに渡様には奥様がいらっしゃいませんでした。
嫁はいらないが跡継ぎは欲しいと毎日のように嘆いてました。。
そんな彼にとって冷凍卵子は喉から手が出るほど欲したものでした。
それも見つけたのが四葉ともなれば気持ちも上がりましょう。
そしてそのまま持ち帰り渡様は人工授精をさせました。
そこで生まれたのが零夜様です。
渡様は喜びました。
これで零を世界に認めさせることが出来る、と。
生まれて数日後から渡様は零夜様に魔法の練習をさせました。
まだ生後何日かかの赤ん坊に、です。
当然私たちは反対しました。
しかし渡様は聞き入れてくれず、毎日零夜様を鍛えました。
今思えば、渡様はこの頃からおかしかったのかもしれません。
…そのおかげか零夜様は早1歳にして代々零家に伝わる魔法【
この魔法は代々伝わっているモノなのですが、実際に発動させることができたのは初代様だけと聞いております。
つまり零夜様はこの魔法の2人目の拾得者なのです。
それを見た渡様はこいつは天才だ!と大いに喜びその後も零夜様に魔法の練習を強いました。
そして零夜様が5歳のころです。
四葉が動き出したのは。
どこから情報が漏れたのかはわかりませんが、四葉にこれらの経緯を知られてしまいました。
しかし零家はそれに気づいていませんでした。
故に四葉に簡単に侵入を許してしまいました。
その場で渡様は殺され、零夜様は四葉に回収されました。
四葉のあまりの強さに私たちは何もすることができませんでした。」
「ぜろくん…」
「大丈夫だ。まぁ驚きはしたけど…」
その言葉は嘘ではない。
四葉で過ごしていたらこんな会話なんともない。
しかし自分に関してことだったため、少し驚いただけだ。
「で、それと今回の相談とどう関係があるんだ?」
「はい。現零家当主の零乃家が動き出したのです。目的は零夜様の確保と聞いております」
「俺を?」
「はい。零夜様はこの世でただ一人零式行列を使うのことのできる魔法師ですから」
俺が狙われるなんてねぇ…
俺の力を知っていての行動なら自殺行為だと思うんだが。
いや、それより…
「零式行列…ねぇ。俺はそんな魔法知らないんだが」
「恐らく四葉真夜に記憶を消された影響かと。しかし零乃はそれを知りません」
「なるほどね。それならそのことを言えば…って聞いてくれないか。仲悪いんだったな」
俺は話している途中で先ほどの沙希の言葉を思い出す。
「そうです。しかし彼らは零夜様を直接狙ってはいません」
「どういうことだ?」
「奴らは零夜様のご学友を狙っております」
「…何だと?」
俺の学友…
ほのかや雫を狙うってこと、か…?
俺は沙希のその言葉に、殺気を漏らす。
「ぜ、ぜろくん!?お、落ち着いて。まだ大丈夫だから」
「す、すみません零夜様。言葉が足りませんでした」
二人にそう言われ、俺は殺気を沈め心を落ち着かせる。
「…話してくれ」
「はい。奴らは零夜様と戦うことを望んでおりません。というのも零夜様が強すぎるからです。なので人質をとって零夜様と交渉するつもりらしいのです」
「…なるほど。そういうことなら納得だ。でもそれなら零乃家を直接つぶせばいいんじゃないのか?場所さえ教えてくれれば今からでも俺は行くけど?」
「そうしてもらいたいのは山々なのですが…」
「何か問題でもあるのか?」
「はい。問題というのは零乃家当主、明です。奴は零夜様を狙うと決めたときから一度も目撃情報がありません。というのも零乃家が転々と拠点を変えているためです。なので零乃家を直接つぶすのは厳しいかと」
「なるほどな。確かにそれなら乗り込むのは無理かもしれないな。つまり俺たちは後手に回らざるを得ない、そういうことだな?」
「その通りです。零夜様に迷惑をかけるのは大変心苦しいのですが…」
「気にすんなよ。むしろ人に任せるより自分でやった方が安心できる。友人たちの安全は俺が守って見せる。もし俺の友人たちが襲われたら、そいつは殺っていいんだろ?」
「できれば色々情報を聞き出してからの方が望ましいですが、零夜様の思うままに」
「分かった。殺す前に少しでも話を聞いてからにするよ」
「よろしくお願いいたします」
「あいよ」
正直面倒な限りだが、ほのかたちが関わっているとなれば見過ごすことはできない。
そう思っていると、表情を笑顔にした沙希に声をかけられる。
「話は変わるのですが、ぜひ零式家の皆に顔を見せてあげてはいただけないでしょうか?皆零夜様の帰還を楽しみに待っていたので」
「そういうことなら行くか。色々話も聞きたいし。あやな、行こうぜ」
「うん!」
その後俺は零式家の皆と温かい時間を過ごした。
四葉では感じられなかったモノに俺は気持ちが良くなった。
それにしても零乃か…。
俺の友人たちを狙うなんて許せることじゃない。
何としても根絶やしにしなくては。
そう決意する俺であった。