魔法科高校の劣等生 ~四と零~   作:ブーミリオン

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第22話

「ほのか、気を付けて帰ってね」

 

「うん、ありがとう…」

 

放課後用事があるため、ほのかと一緒に帰れない雫はそうほのかに告げる。

 

(本当に分かってる…?)

 

多少不安に思う雫であったが、ほのかだって高校生だ。

それに魔法師でもある。

もう子供でもあるまいし、あまり過保護にしてもほのかがいい思いをしないかもしれない。

そう考えた雫はとぼとぼ歩くほのかを見送った。

 

 

 

 

***

 

 

 

「はぁ…」

 

帰り道、ほのかは今日何度目か分からない溜息をもらす。

零夜が学校に来なくなって2週間が過ぎた。

ほのかにとって顔はおろか声までも聞けないなんて死ぬほどとまでは言わないが、それなりには辛いものであった。

恋する乙女ということであろう。

そんな恋する乙女は周りをしっかり見ていなかった。

 

「きゃっ」

 

「おっと」

 

ほのかは40台後半であろう男にぶつかり、尻もちをつく。

男は頑丈だったためか倒れてはいない。

 

「大丈夫か、嬢ちゃん…ってこいつ…」

 

「はい、大丈夫です。それよりぶつかってしまってごめんなさい。ちょっとボーっとしていて…」

 

ほのかの顔を見た男は態度を急に変えた。

まるで獲物を見つけたかのように。

 

「……痛って~。骨が折れちまったかもしれねぇ」

 

 

「えっ?あっ、その、ご、ごめんなさい…」

 

そんな男に対してほのかは驚きながらも謝ることしかできない。

周りを確認していなかった自分が悪いと思い込んでいるからだ。

 

「どうしてくれんだ?あぁん!この後用事があったっていうのによ」

 

ほのかの態度に一瞬微笑を浮かべ、男は怒りながらほのかに詰め寄る。

 

「す、すみません…」

 

ほのかは謝ることしかできない。

彼女の素直さがそうさせていた。

 

「謝ればすむって問題じゃねーよ。そうだなぁ…ちょっと俺についてきてもらおうか」

 

「そ、そんな…」

 

男の言葉にほのかは体を震わせた。

見知らぬ男についていくなんてどうなるかわかったものじゃない。

 

「できないっつうのか?それなら高校に連絡するだけだ」

 

「ま、待ってください」

 

「待てねぇよ。着いてくるか来ないのかどっちなんだ?」

 

(誰か…助けて……!)

 

男の言葉にほのかは肩を震わせた。

そんなとき…

 

 

 

 

 

 

 

「着いてく必要なんてないぞ、ほのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の間に透き通るような声が響き渡った。

ほのかを気遣うように声色はとても優しいものだった。

 

「お、お前は…」

 

「零夜くん!?」

 

ここ最近ずっと考えていた人が目の前に現れ、ほのかは目を見開いて驚く。

そして男の方もほのか同様驚いていた。

しかし冷や汗を流しながら…だが。

 

「なぁおっさん、さっさとこの場から消えてくれないかな。加齢臭がして困る」

 

びびっている男を見据え、零夜は鼻を抑えながら嫌々と告げる。

そんな零夜の態度に男は肩を震わせていた。

 

「な、何だと…!」

 

「それとも何か?ここで死ぬか?」

 

男の態度に零夜は微笑を浮かべ、そうたずねる。

笑ってはいたがその声に感情はこもっていなかった。

 

「ッ!」

 

「別に俺はどっちでもいいさ。さぁ早く選べ」

 

「チッ…。零式のガキがナマイキな口たたきやがっ…」

 

男がすべて言い終わる前に零夜は男の背後に回り手刀を首元にそえる。

 

「死にたいのか?」

 

次はないぞと言わんばかりの零夜の声。

 

「わ、分かった。俺が悪かったよ。すぐ消えるからっ…」

 

「いい年をして…まぁいい。ならさっさと行け」

 

零夜はそう呆れたように告げると、男は来た道を逃げるように去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほのか、怪我とかないか?」

 

男が去っていったあと俺はほのかに声をかけた。

あと少しでも遅かったらほのかがどんな目にあっていたかを考えると…

まぁ後でアイツと会うわけだし問題はないか。

 

「う、うん。大丈夫だよ。助けてくれてありがとう」

 

「なら、よかった。…じゃあ俺は行くな」

 

ほのかの言葉に安心した俺はそう告げこの場を立ち去ろうとする。

逃げられちゃ厄介だし、早めに捕まえたいからな。

 

「え?あっ、ま、待って!」

 

「…どうした?」

 

俺が去ろうとするとほのかが待ったをかける。

まぁあんなことがあった後だし一人になるのが不安だったのかもしれない。

そこんところ配慮が足らなかったのかな、なんて俺は考えていた。

 

「もしかしてまた何か抱えてるの…?」

 

「ッ!…………大丈夫だよ」

 

しかしほのかからかけられた言葉は予想していたものとは違っていた。

 

「嘘!学校始まって2週間…。一度も登校しないなんておかしいよっ!」

 

「わ、分かったから。俺が悪かったから、そう大きな声を出すな…」

 

「あっ、ごめん…」

 

「いや、俺もなんだかほのかに迷惑かけてたっぽいし。お互い様だ。…まぁ明日からは行くようにするよ」

 

「やっぱり厄介事なの…?」

 

「あぁー、うーん、まぁそんな感じだ。って言ってもそんな危ないことしてないから安心してくれ」

 

「…分かった。でも学校には絶対来てね。私も雫も深雪も…みんな心配してるんだから。それに千代田先輩が零夜くんに怒ってたよ」

 

「何でここで千代田先輩の名前が出てくるんだ?」

 

「何でも用事があったみたい。早く学校に戻ってこないと地雷源浴びせられちゃうよ?」

 

ほのかがそんな冗談を告げる。

 

「それは勘弁願いたいね。…じゃあまた明日」

 

俺は苦笑いしそう告げる。

 

「約束だよ?」

 

「あぁ、約束だ」

 

 

***

 

 

 

「ったく、零式のガキめ…覚えてろよ…」

 

「何を覚えてればいいんだ?」

 

「っ!」

 

「何をそんなに驚いている」

 

「てめぇさっきは見逃すって…」

 

「見逃す?そんなこと言ってないが。…なぁ零乃家の分家、黒乃家の当主さんよ」

 

「……」

 

「俺が何も知らないと思ったか?とっくに零式家から情報はもらってるんだよ」

 

焦っている男に零夜は言葉を続ける。

 

「正直お前たち零乃家たちがどんなことをしても俺に関係ない限りは何も手を出すつもりはなかった。けどな…お前はあろうことか一高の生徒に目を付けた。…それも俺の大事な人、ほのかに」

 

「お前らのくだらない実験のせいで、俺の日常が失われるかもしれない。そんなこと許せるわけないだろ?俺は面倒なことから避けて暮らしたいんだから」

 

「あいにくだがお前が面倒事から逃れる術はない。お前は面倒事から逃げられない運命だ」

 

「運命…ね。まぁそんなことは言われなくても自分で分かってるさ」

 

「でもまぁとりあえず死んでくれ」

 

「ほぅ。今のをかわすなんて中々やるじゃないか。おっさんだと思って手を抜いちゃったよ」

 

「でもかわさない方が楽に死ねるぞ?次は当てる」

 

 

 

 

「死んだか?」

 

「はい、死んでおります」

 

「じゃあ後は任せてもいいか?」

 

「お任せ下さい。もしまた何かありましたらすぐにご連絡致します」

 

「そうか。まあ連絡が来ないように祈ってるよ」

 

沙希にそう告げ俺はその場を去った。

 

 

 

 

***

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